SEO×広告のコラボで効果を最大化! 4つの事例から考える、これからの打ち手とは
ウェブサイトからコンバージョンを増やし事業に貢献するという目標は、SEO担当者も広告担当者も同じだが、実際に両者がコラボレーションしているケースはまだ少ないだろう。ユーザー起点でウェブサイトを設計するSEOと、ウェブサイトのデータを活用して集客する広告は深い繋がりがある。両者がコラボレーションすることでよりよい結果が生まれ、企業の持続的な成長につながる。
「デジタルマーケターズサミット 2021 Summer」にアユダンテ株式会社のSEOコンサルタントの江沢真紀氏と、チーフSEMコンサルタントの寳洋平氏が登壇し、ケーススタディを交えながらSEOと広告のコラボレーションのポイントを紹介した。
SEOと広告の深い結びつき。SEOで設計・実装するアセットによって広告は決まる
企業のマーケティングには持続的成長が欠かせない。短期的な成長を目指して、広告の大量出稿するのは手段の一つとしてはあるだろう。しかし、広告だけに頼る成長は健全とは言えないだろう。
健全に成長している企業の多くは、ウェブサイトをしっかり整えて、マーケティングがしやすい環境づくりに投資をしています。その基盤がSEOであって、広告にも活きる(寳氏)
「マーケティングがしやすい環境づくり」とは、SEOで設計するアセットと広告に使うアセットの両方がそろっている状態だという。アセットとは、企業がビジネスを行う上で保持する情報やデータベースのことだ。
広告はキーワードを設定して出稿するものだと思っている方もいると思うが、現在、状況は変わっている(寳氏)
動的検索広告やレスポンシブディスプレイ広告は、SEOで設計・実装するアセットであるコンテンツやカテゴリ、記事を使って広告が出稿される。またショッピング広告は、キーワードではなく商品情報のデータベースを使って広告を出す。カスタマーマッチやリターゲティングの広告は、メールアドレスをはじめとした「同意が得られた顧客から提供される情報」を利用する広告だ。
このように、現在の広告運用は、広告のアセットだけで完結することはなく、ウェブサイトの基盤となるSEOのアセットを使っていく。この意味でSEOと広告は深く結びついているというわけだ。
SEOと広告、それぞれの強み・弱みとは?
続いて、SEOと広告のそれぞれの強み・弱みを見ていこう。江沢氏はそれぞれの強み弱みを一覧表にまとめた。
江沢氏は着目したい点として、まずターゲティングをあげた。SEOは精緻なターゲティングはできない。たとえば、北海道のユーザーや20代の女性にリーチしたいと思ってもSEOではできない。一方、広告は細かなターゲティングができる点が強みだ。年齢、性別、興味関心、地域、デバイス、曜日時間帯など、細かくターゲティングができる。
潜在層へのアプローチという面でも広告に強みがある。SEOは、ユーザーが能動的にキーワードを検索する必要があるため、潜在的なニーズへのアプローチは弱くなる。広告では、ディスプレイ広告やSNS広告などを活用し、潜在層へもアプローチができる。
ターゲティングや、潜在層へアプローチできたとしても、広告効果の最大化には、アセットが充実していることが必須です。広告だけでは難しいというのが現実問題(寳氏)
次に江沢氏はSEOと広告の担当者が行う業務の図を示した。SEOと広告の業務は、重なっている部分が多くある。図の中央は重なる業務だ。「重なり合っている共通の業務はSEOと広告の担当者が連携しながらすすめると、より大きな効果が見込めると思います」と江沢氏。
広告中心の投資からSEOに分散投資を
SEOと広告、双方の強み・弱みをみてきたが、それぞれを活かした理想形はどのようなものなのか。寳氏は理想形として次の図を示した。
上の図の黄緑がSEO、黄色が広告経由のトラフィックや売上をイメージしている。左の広告を中心に投資をしているのはよくあるケースだろう。広告経由の売上は増えているが、SEO(オーガニック)の流入は横ばいのままとなっている。売上は広告の投下量に依存している状態だ。
それに対し、理想的な状態は右のグラフだ。広告を使ってテストマーケティングを行い、その学びをSEOに投資をし、デジタルマーケティングの環境を整えていく。それにより、SEOのトラフィックや売上が増えていく。SEOをベースにアセットが実装されることで、広告も効率的に成果に結びつきやすくなる。
広告強化のタイミングでもテストマーケティングを行い、ウェブサイト側にフィードバックし、調整や再設計を行うと、広告に依存せずに安定して売上を増やしていくことが可能になります。これが広告とSEOの強みを活かした持続的成長の理想形です。この理想を実現するためにはSEOと広告の間をまたがって学習をしていく必要があります(寳氏)
広告の結果はアセットに対するユーザーの評価。広告だけでなくウェブサイトや商品も改善を
双方の強みを活かすために、ダブル・ループ学習で考える必要があると寳氏。ダブル・ループ学習とは、一度決まった戦略の維持・継続や目標を達成する範囲内で行う「シングル・ループ学習」に対し、環境の変化や現実に即して、戦略や目標などの根本的な見直しを含めて行う学習のことだという。
ダブル・ループ学習でSEOと広告を考えてみよう。広告の結果を受け止め、その学びを広告の改善のみにとどめているのは、「シングル・ループ学習」だと寳氏。ウェブサイトの改善には手を出さず、一度決めた戦略や目標からギャップがあったとしても見直しを行わず、ただ広告の改善を続けているような状態だ。
広告はウェブサイトの商品情報や記事といったアセットをもとに決まります。広告の結果はアセットに対するユーザーからのフィードバックです。広告だけの問題にするのではなく、提供している商品・サービス自体や、見せ方、ウェブサイトに問題はなかったか前提から問う必要があります。広告の改善に加え、商品・サービス自体やその見せ方をアップデートして変えること、これがSEOと広告におけるダブル・ループ学習であると言えます(寳氏)
SEO×広告の4つのケーススタディ
では、SEOと広告におけるダブル・ループ学習のケーススタディを4つ見ていこう。
ケース① SEO→広告 SEOでアセット整備、広告に活用
1つ目のケーススタディは、ECサイト担当者が広告運用においてよく抱える「動的検索広告がうまくいかない」「ショッピング広告が伸び悩んでいる」という課題だ。課題に対し、SEOでウェブサイトのカテゴリの階層化と細分化、商品データを整備することによって、広告の改善を目指す方法を紹介する。
- カテゴリページの階層化・細分化
ECサイトの構成は、トップ、カテゴリ、そして商品ページが配下に連なり、その他特集コラムや店舗へのページがあるのが一般的だ。カテゴリページは自然検索の入口ページになる。SEO観点でカテゴリをチューニングする場合、カテゴリの階層化、細分化を行うが、これによって動的検索広告の最適化にも繋がるという。
具体例としては、「スカート」のような大きなカテゴリを「フレアスカート」「プリーツスカート」などに細分化したり、丈別、色別、素材別などを組み合わせたクロスカテゴリーを作ったりしていく。細分化を行うことで、ランディングページが増え、流入機会が増加する。
カテゴリの細分化は、広告にもメリットがある。検索広告において、ランディングページが増えることで、広告を細かくターゲティングでき、パフォーマンスアップが期待できる。ただし昨今のSEOでは、ページの品質も重要なので、商品が1、2点しかない内容が乏しいページが大量にできるとGoogleからの品質評価が下がる。そのため、インデックス制御を行うなどのSEO面での対応も重要だ。
- 商品ページの改善
商品ページの改善施策として、商品データの最適化、構造化マークアップの2つを紹介する。商品データの最適化例として江沢氏は商品タイトルを上げた。ある商品のタイトルとして悪い例を良い例を例示した。
- 悪い例
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- 良い例
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悪い例はSEO面から見ると語句数が多く、長すぎます。商品タイトルは多くのケースでページタイトルに設定される場合が多いと思いますが、ページタイトルが長すぎると何がキーワードかGoogleが理解できず、テーマ性が薄れてしまいます。良い例のようにキーワードを2つ、3つくらいにし、わかりやすく、簡潔なタイトルをつけていくことが重要です(江沢氏)
広告でも、商品名はわかりやすく、文法的に正しい言葉で記述することが推奨されていると寳氏。広告には推奨されている商品名の基本的な構造があり、たとえば、アパレルだと以下のようになっているという。
「ブランド+性別+商品カテゴリ+属性」
寳氏は非常に重要なこととして、宣伝文や無関係なテキストは含めないことを挙げた。「送料無料」や「お買い得」といった文言は、2021年5月以降、広告審査が厳しくなり、不承認となるケースが起きているという。
- 構造化マークアップの活用
検索結果で商品名だけでなく、価格や、在庫の有無、レビューの星の数やスコア数が表示されている商品を見たことがあるだろう。これらは構造化データで商品をマークアップすることで表示することができる。このようなリッチな内容が検索結果に表示されることでCTRの向上が期待できる。SEO面では商品ページを構造化マークアップすることをおすすめしていると、江沢氏。
構造化マークアップは広告面でもメリットがあると、寳氏。商品を構造化マークアップすると、Google Merchant Centerで商品アイテムが自動更新され、価格や在庫情報の不一致が原因で発生する不承認リスクが減らせるという。
ケース② SEO→広告 LPの質を上げ、広告の成果向上
2つ目のケーススタディで取り上げるのは広告のCVRを上げたい、集客後の直帰率や回遊性を改善したいという課題だ。SEOでLP(ランディングページ)のUXとパフォーマンスを最適化し、広告の課題を解決していく。SEO面でランディングページの改善というとh1にキーワードを入れる、strongタグを使う、リンクのアンカーテキストにキーワードを入れるといったhtmlのチューニングが主流であったが、Googleの進化にともない最近ではページの使いやすさ(UX)と、速さ(パフォーマンス)が重要になっているという。
- UXの向上
UXと一口に言っても施策は無数にある。その中で江沢氏はSEO面で改善を行うときにナビゲーション設計にフォーカスしているという。ナビゲーションとは具体的には次の図で黄緑色に囲われている部分だ。なお、MFI(モバイルファーストインデックス)への移行でGoogleが評価するのはスマホページとなるため、最適化は必ずスマホページで行うこと。
スマホページでは、ハンバーガーメニューに項目を詰め込む、フッターに大量のナビを置いているサイトも多くある。ユーザーは非表示のナビゲーションは気づきにくい。重要なリンクは隠さずに、メインエリアに入れたほうがよいと江沢氏。重要なリンクは、数個は初期表示をして、残りは折りたたむなど見せ方の工夫が必要だ。
ページ内で一番クリックされるのは、メインコンテンツを見終わった後にカテゴリを選び直すリンクだと江沢氏。この位置にはカテゴリページであれば同列横階層へのリンクや、1つ上層へのリンクをおくと非常にクリックされるという。
- パフォーマンスの向上
SEOに携わっている方はパフォーマンスの最適化は関心がある話題だろう。2021年6月からGoogleの検索ランキングの指標としてCore Web Vitalsが取り入れられるようになった。Core Web Vitalsは3つの指標からなる。
- LCP……速度の指標。コンテンツエリアが何秒で表示されるかを評価。
- CLS……視覚の安定性の指標。ページ読み込み中に広告が差し込まれ、レイアウト崩れが発生し誤タップが発生するページは悪い評価になる。
- FID…操作性の指標。ボタンをクリックしても応答が遅いと低評価となる。
Googleは表示速度だけではなく、スマートフォンで快適に操作できことが重要だと考えている点は留意したい。表示速度の改善は広告にも大きな影響を与える。モバイルサイトの読み込み時間の0.1秒の改善によって小売り系のサイトで8.4%以上、旅行業のサイトで10.1%以上、CVRが向上したという調査データもある。モバイルサイトの読み込み速度は広告担当者にとっても重要な指標だ。
ケース③ 広告→SEO 広告データをSEO施策に活かす
3つ目のケーススタディは、SEOではキーワード単位のCVがわからないという課題に対し、広告データを活用するという手だ。Google広告ではさまざまなレポートがあるが、江沢氏がおすすめするのはGoogle広告の検索語句レポートと、有料およびオーガニックレポートの活用だ。
- Google広告の「検索語句レポート」を検索語句ごとのCV分析に
広告担当者にはお馴染みの「検索語句レポート」は、Googleアナリティクスで見られなくなった検索語句ごとのCV数、CVRがわかる。江沢氏がこのレポートを活用する際は、表示回数の降順にソートし、CV数を1以上にフィルタ、CPAの高いものをチェックしているという。
「この条件は表示回数が多いので流入機会がうかがえ、CVも発生している。ただCPAが高いのでコストがかかり続けてしまう検索語句です。こういった検索語句はSEOで解説記事を作って強化する、すでに記事があるのであれば記事を強化していくという施策が考えられます」と、江沢氏。
- Google広告の「有料およびオーガニックレポート」を広告+オーガニックの分析に
「有料およびオーガニックレポート」は、Search Consoleと連携すると広告とオーガニックの両方のパフォーマンス分析ができる。このレポートでは、検索結果の結果を「検索広告とオーガニック」にフィルタし、クリック率で反応のいいクリエイティブを探し、平均掲載順位という検索パフォーマンスデータで1前後(=SEOで上位にきている)のデータをみていくのがおすすめだという。平均掲載順位が高くオーガニックで十分に集客できるクエリは広告を停止したり、広告のCTRが高いものは内容やタイトルをSEO記事のtitleに活用したりする案が考えられる。ただし、このレポートでは画像検索の数値が含まれないなどの差異があるので、広告停止の判断は元データも確認し、慎重にしてほしいと江沢氏。
ケース④ SEO+広告 コンテンツマーケティングのコラボレーション
4つ目のケースは、SEOで記事を作成したが流入もCVも増えないという課題に対して、広告でCVを強化するという方法だ。
- 獲得系記事のコンテンツデリバリーとして広告を活用
SEOで記事を制作する場合、その目的は大きく「集客系」「獲得系」に分けられる。獲得系の記事は、検索流入数は少ないがCVが着実にあるタイプ。集客系の記事は、検索流入数は多いがCV数は低いタイプだ。SEOで記事制作する際、目的はどちらか区別しておき、獲得系はディスプレイ広告やSNS広告でデリバリーし、集客系はSEOで集客を行おう。
なお、広告を出稿することがわかっているならば、記事作成時にサムネイル画像、見出し、説明文など広告に使う要素を記事段階で考慮して作っておくとよいと寳氏。広告出稿時に、慌てて素材探しや準備をしなくていいので、有効性の高い広告がスムーズに出せる。
- 公開後の検証/CTA設置
記事公開後は必ず検証を行おう。公開後の検証にはミエルカ等のヒートマップ分析の利用がおすすめだ。江沢氏がSEO視点で検証する際は、5秒以上熟読されている箇所、離脱箇所などをチェック。離脱箇所はリライトを検討し、CTA(Call To Action)の設置箇所を変更したり、文言を改善したりしている。離脱直前や読了直後はとくにCTAの設置が効果的だという。
CTAの誘導先は、一律にせず、文脈やニーズに応じてブロックごとに飛び先を変えるほうがよい。またCTAのコピーは、広告担当者はSEO担当者よりもクリックさせるコピー制作の経験が豊富なので、知恵を借りていくのがよいだろうと江沢氏。
寳氏は、CTAにかかわるマイクロコピー、文脈に応じたコピーの作成や、CTAと広告の文言を合わせる、クリックされやすい色彩のアドバイスなど、SEO担当者と広告担当者が連携することで、よりCVを上げていけるはずだと語った。
SEOと広告、一緒に取り組むために大切な4つのこと
今回の講演では、持続的成長のために、ウェブサイトの資産をアセットと捉え、ダブル・ループ学習で改善することで、SEOと広告の強みを活かしたコラボレーションについて4つの事例を挙げ解説した。
しかし、SEOチームと広告チームが一緒に取り組むにあたって直面するのは組織の壁だ。一緒に取り組むために大切なこととして、寳氏は次の4つを挙げた。
- リスペクト
- 目線合わせ
- 人材育成
- 繰り返しの対話
お互いをリスペクトし、同じゴールを共有しながら、SEOと広告のどちらにも精通した人材を育成していく必要がある。そのためには繰り返しコミュニケーションと学びの場を共有することで、学びを共通の資産・文化としていくことが大切だ。最後に、明日からできる! SEO×広告のチェックリストを紹介し、講演を締めくくった。できることからぜひ試してみよう。
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