「SEO×広告」でユーザーとの接点を増やし、効果を最大化! EC担当者必見の打ち手を徹底解説
SEMが複雑化し、SEOと広告、それぞれが単独で持続的な効果を得ることは難しくなっている。SEO×広告で、双方を活用しユーザーとのタッチポイントを増やしていくことが重要だ。
「Web担当者Forumミーティング 2021 秋」のセッションで、アユダンテのSEOコンサルタントである江沢真紀氏と、SEMシニアコンサルタントの河野芽久美氏が、ECサイトを対象に、購入までの態度変容のステップごとにSEOと広告の最適な打ち手を事例とともに紹介した。
検索行動の変化とともに「SEO×広告」の連携が重要なカギに
ECサイトの持続的な成長を行うために、なぜSEOと広告を一緒に考える必要があるのか。江沢氏は理由として次の3つを挙げた。
1. 広告の変化とSEOとの親和性
これまでの広告は、キーワードを使って出稿することが一般的だったが、昨今は「動的検索広告」や「スマートショッピング広告」など、キーワードを使わない広告も増えてきている。
これらの広告は、SEOで設計するアセットが活用されている。「アセット」とは、企業やWebサイトが保持する情報やコンテンツなどのデータベースのことだ。SEO施策として、商品データベースや商品ページなどを最適化していくと、広告にとっても好影響が及ぶのである。つまり、親和性が高まっているというわけだ。
2. 双方の強みと弱みを理解して活用
次に江沢氏はSEOと広告の強み・弱みの一覧表を示した。
SEOの弱みは、速攻性が無いことやターゲティングができないこと。さらに、検索が発生しない潜在層へのアプローチも苦手で、チャンネルもGoogleのみで1つしかない。一方、広告の弱みは、ランニングコストが掛かることや広告の改善を行ったとしても、直接的にWebサイトが改修されることはないため、サイト最適化ができないことだ。つまり、SEOと広告は両者の弱点を補い合える関係にあると言える。
下図は、SEOと広告で行う業務内容を示した図だが、下図の赤枠部分は、検索ニーズの理解や調査、ターゲットユーザーの設定など、SEO、広告の双方で作業が重なるものだ。両者の連携により、より効率的に高い効果を出せる可能性があると江沢氏は言う。
3. スマホ時代はタッチポイントを増やす
2015年にGoogleが提唱した「マイクロモーメント検索」という考え方では、スマートフォンが普及するにつれ、ユーザーが通勤時間や食事中といったスキマ時間で、検索を“刹那的”に行うようになったことが示されている。2019年にGoogleが発表した調査では、かつてのような「気づいて→調べて→買う」という消費行動から、「探求して→何かにヒットして→買う」という「パルス消費」が増えてきたことが紹介されている。
パルス消費とは、24時間すべてが買い物のタイミングで、瞬間的に買いたい気持ちになり、商品を発見し、買い物を終わらせる消費行動であることである。しかしながら、Googleはパルス消費を「衝動買いではない」と報告している。未知のサイトであっても、タイミングが合えば買うという消費行動が発生しているということだ。
Googleが2020年に発表した調査結果では「バタフライ・サーキット」という情報検索行動が紹介されている。Googleはユーザーの情報検索行動を、「さぐる(選択肢を探ろうとしている)」「かためる(選択肢を固めようとしている)」という2パターンに分けられると定義した。その行動は直線的ではなく、蝶の形(バタフライ・サーキット)になるとしている。こうしたことから、広告だけでなく、SEOも含めてあらゆるタッチポイントでユーザーと接触し、機会を逃さないことが重要だと江沢氏は言う。
ユーザーが購入に至る態度変容は予測不能。それでも態度変容を前提に最善の打ち手を考える
江沢氏はユーザーがECサイトで商品を購入するまでの4ステップを紹介した。まずは「①見る・知る」というサイトやSNSで接触する機会があり、その後、見たものや聞いたものを検索エンジンで探す「②ライトな検索」。そして、興味が深まってより深く調べたり、絞り込んだりしていく、「③ディープな検索」を行い、最後に買いたい気持ちになって「④Webサイトや店舗に訪問」し、買い方やレビューを確認するという消費行動が一般的だ。ただし、パルス消費とバタフライ・サーキットのように、必ずしもこのステップは直線ではない。
たとえば、SNSのタイムラインに動画広告が出てすぐに購入する「パルス消費」が発生したり、欲しい商品を探してライト&ディープ検索して最終的には店舗に見に行ったりと、ユーザーの購入に至る態度変容は予測ができない。予測できないながらも、態度変容を前提に最善の打ち手を考えるのが重要だと江沢氏は言う。
では、各ステップでどのような打ち手が有効なのだろうか。「①見る・知る」ではSNS広告、「②③探す」ではカテゴリと動的検索広告、「④Webサイトや店舗への訪問」ではサイトの最適化という打ち手を江沢氏は紹介し、それぞれのポイントを解説していった。
「見る・知る」の打ち手、SNS広告の活用のポイント
まずは「①見る・知る」では、検索が発生しないためSNS広告を活用するのがポイントだという。SNS広告は、ユーザーの趣味・嗜好別に最適な広告が表示されているため、商品に興味関心が高いユーザーとマッチングできる場である。
特に、SNS広告では「なんの広告であるか」が、すぐに伝わるイメージ画像を使うのが非常に有効で、こういった画像によって「パルス消費」が起こる可能性が高まる。また、SNS広告にはCTA(Call To Action)として、「インストール」や「詳しくはこちら」など、行動を促すボタンが備わっていることが多いが、これも重要なポイントだ。
加えて、「今ならば送料無料」「50%オフ」など、次に起こすべきアクションが広告で訴求されていることも大事だと河野氏は言う。広告を通じて得られたユーザーの反応を、オーガニック投稿やサイト構成のブラッシュアップにも活用できる。
次に、河野氏は主要なSNSと機能について一覧にして示した。最近、FacebookやInstagramなど、広告だけでなく、オーガニックにもショッピング機能が備わるSNSが増えている。オーガニックのショッピング機能のメリットは、広告を介さずに、自分たちの商品をユーザーとコミュニケーションを取りながら販売できる点だ。
広告と連携したショッピング機能も登場している。たとえば、YouTubeの「動画アクションキャンペーン」は、Google マーチャントセンターに自社の商品を掲載し、「動画アクションキャンペーン」とリンクさせることで、YouTube広告に自社商品を提示できる。現在はYouTubeのみだが、「Google Discover{Find広告(Discover面・Gmail・YouTube面に配信される広告)}」でも、順次そうした機能が搭載されるという。
またSNS広告を使うことで、SEOのターゲティングができないという弱点も補完できる。自社のアカウントのフォロワーにオーガニック投稿で告知できるだけでなく、広告を使えばフォロワーと類似属性の人たちにアプローチすることができる。
SNS広告は、BtoB商材でもコンバージョンが発生している。SNSは、サービス・商品が印象に残るようにイメージ&コピーをしっかり考え抜いて提示すれば、ポジティブな印象をもってもらえ、パルス消費が起きたり、商品を選択肢の一つと捉えてもらえるようになったりする。出会いに最適な有望な媒体である(河野氏)
検索連動型広告のトレンドの変化。動的検索広告には整頓されたカテゴリが必須
「②探す」の打ち手では、まず「検索連動型広告」を思い浮かべる人が多いだろう。しかし近年、そのトレンドが大きく変わりつつある。以前は、キーワードとURL、広告文を設定・配信する標準キャンペーンが主流だったが、現在は、サイトのURLやカテゴリ情報を活用して広告を配信する「動的検索広告(DSA)」のパフォーマンスが高いと認識されている。実際、アユダンテの施策でも、クリック率に大きな差があり、標準キャンペーンに比べ動的検索広告の平均クリック単価が1/3程度になっていることが示された。
次に河野氏は動的検索広告でのターゲット設定ごとのパフォーマンス結果を示した。「URLの文字列の中に『次の文字列を含む』としたケース」「Googleが抽出してきたカテゴリを設定したケース」、そして「ページタイトルの中に含む文字列を設定したケース」の3つを比較したところ、クリック率(CTR)、クリック単価(CPC)、コンバージョン率(CVR)、コンバージョン率(CVR)、コンバージョン単価(CPA)ともに「カテゴリを設定したケース」が最も高く、効果的だという結果になった。
ただし、カテゴリはGoogleがクロールするため、抽出されづらいカテゴリについては「特定のURL指定」をするのがおすすめだ。さらに、「特定のURL指定」を行う場合は、より詳細なカテゴリを指定する方が良いという。
たとえば、ホットプレートのカテゴリTOP(/category/hotplate/)よりも、ホットプレートサイズ大(/category/hotplate/large/)といった、具体的かつ詳細なカテゴリの方が良いパフォーマンスが得られることが上図スライドの下表からも明らかだ。つまり、パフォーマンスの高い広告には整頓されたカテゴリが必要だということだ。
動的検索広告のメリット。広告の最適化のためにSEOでカテゴリを整備していくことが重要
河野氏は、動的検索広告のメリットについて、以下のようにまとめた。
キーワードの選定・設定が不要で、広告タイトルの設定やランディングページURLの設定も必要ない。ターゲット(カテゴリ、URLなど)と2つの説明文を設定するだけで広告を素早く始められる。Google、Yahoo! でも一定の効果が出ており、カテゴリ階層がきちんとしているECには向いている広告である(河野氏)
広告にも関係する、SEOのカテゴリ整備の課題
では、どのようにカテゴリを整備していけばいいのか。江沢氏はよくある課題として、次の4つを紹介した。
課題1. 絞り込みが甘い=カテゴリが粗過ぎる
サブカテゴリがあれば、広告でランディングページに使えるところ、ないためにサイト内検索でURLを作る必要があり、不便。
課題2. 絞り込みが動的検索なのでクロールされにくく、URLがパラメータ付きの長いものになっている
広告観点でも変化しやすいパラメータURLは使いたくないと言われる。URLが構造化されていれば広告を効率的に出せるはずだが……。
課題3. カテゴリの整理ができていない
カテゴリ以外にも、絞り込みやタグ、サイト内検索などで、同じカテゴリ名のページが複数できてしまい、キーワードが食い合ってしまう。また、クロールに負荷がかかり、動的検索広告にも影響することが考えられる。
課題4. 0件ヒットのカテゴリは流出につながる
カテゴリを作成しても、ヒットが0件ならユーザーは直帰してしまう。広告的にもランディングページの品質は重要だ。
カテゴリ最適化のための3つのポイント
こうした課題を解決するためのカテゴリ最適化のポイントとして、江沢氏は次の3点を紹介した。
カテゴリ最適化1. カテゴリと絞り込みナビの定義
1つ目はカテゴリと絞り込みナビの定義だ。ここを最初に実施すると、その後のSEOの施策が行いやすくなる。カテゴリの他に、絞り込みやサイト内検索、タグなどもあるが、江沢氏は、カテゴリがSEO的に「非常に強い」と感じているという。
江沢氏は「カテゴリ」と「絞り込み、サイト内検索、タグ」のSEO要件を比較した表を示した。カテゴリがSEOで重要な理由を次のように解説した。
サイト内検索やタグは、基本的にはフラットな構造であるのに対し、カテゴリは階層構造が明確であり、パンくずリストやリンク構造の設計がしやすい。さらにカテゴリはサイト内からのリンクが容易で、手動でコンテンツを登録するので一覧ページの質が高い。一方、絞り込み検索などでは、検索軸で無限にページが増えてしまうのでコントロールしづらく、動的生成も多いためクロールされにくい(江沢氏)
SEOや広告に活用するにはカテゴリの整理が重要となるが、一方で絞り込みやサイト内検索、タグなどは訪問したユーザーにとって、商品などが探しやすくなるため、UX観点で重要な機能である。それぞれの役割を定義したうえで、施策を実行することが大切だ。続いて、江沢氏はカテゴリ設定のポイントを解説していった。
カテゴリはできるだけ名称にキーワードを使い、最大三階層に収めること。特に三階層目をしっかり細分化すると、キーワードが増え、広告のランディングページにも活用できるという。そしてリンクでは、JavaScriptをクロールできるものの確実ではないため、<a>タグの静的リンクでカテゴリリンクを設定しておくといいだろう。
絞り込みに関しては、大規模サイトで3〜4語対策できる場合は、キーワードとなる軸を最初に定義してSEO対象とし、検索が少ない価格や色はSEO非対象とするとよい。この時URLパターンを分けてクロールコントロールをするなど、最初に定義することで絞り込みも活用できるという。
カテゴリ最適化2. URLをきれいに
2つ目はURLについてだ。URLは構造化できるとベストだが、SEO観点では“URLの歴史”も重要なので安易に変えるべきではないという。新規サイトやリニューアル時に見直そう。江沢氏はカテゴリの整備例をスライドで示した。
たとえば、「ホットプレート」という商品カテゴリは、「category/hotplate/」の下に切っていく。動的検索広告のランディングページもそこを指定すればいいので効率的に行なえる。
一方で、絞り込みナビは特定のディレクトリか、パラメータを使っておけば、SEOでインデックス除外を行いやすい。そして、「商品詳細」は親カテゴリの配下に切っておくと、自動的に動的検索広告のランディングページとなる。登録などを行うことなくランディングページが増えるのだ。
カテゴリ最適化3. カテゴリは質を担保する
近年のSEOは量より質になっており、検索数+商品数が重要になる。そこで、キーワードツールで商品に関連する人気の派生語を調査し、さらに該当する商品点数を調べてみるとよい。恒久的に0件ならばカテゴリは作らず、一時的な在庫切れの場合は、ユーザーに見せないようにナビゲーションにリンクを出さず、noindexを設定しておくと0件ヒットのページがユーザーの目に触れることがなくなる。
質という意味では、コンバージョンも重要な要素だ。広告を出稿しているのであれば、動的広告の検索語句レポートを活用し、たとえば、検索数があまり多くなくても、コンバージョンに寄与しているキーワードなどを探して、カテゴリに盛り込むなどの工夫をするとよい。
SEOと広告の連携を意識した、サイトの最適化の3つのポイント
最後に「④サイトの最適化」のポイントについて、江沢氏より次の3点が紹介された。
サイト最適化1. 速く快適に操作できること
2021年6月~8月にリリースされて大きな話題になった「Core Web Vitals(コアウェブバイタル)」では、たとえば「一番大きいコンテンツが何秒で表示されるか=速度(LCP)」、「広告が差し込まれてレイアウトが崩れ、誤ってタップしてしまうといったことがない=安定性(CLS)」、「ボタンクリックのしやすさ=操作性(FID)」などの3つの指標があり、Googleはランキング指標にも入れている。
ただし、アユダンテのモニタリングでは、この「Core Web Vitals」で流入が減ったというケースは1件もないという。江沢氏は「これをやれば上がるというものではなく、ユーザーのことを意識して改善するという方針が妥当」と評した。
サイト最適化2. E-A-Tのチェック
E-A-Tはあくまで概念なので、実質的にはExpertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)を担保するサイトであることが重要だ。江沢氏は「ぜひ確認して欲しい」とチェック項目を提示した。ユーザーが安心して買い物ができるサイトであるかということが重要だ。
サイト最適化3. 商品ページの最適化
商品ページの最適化では、画像など商品データを充実させることが大切だ。アイテムキーワードで最上部に出るショッピング広告に、数年前から無料リスティングも行われているので、広告出稿していなくても、商品データはGoogle マーチャントセンターに送ると良いだろう。
また、ユーザーからのレビューコンテンツも重要だ。構造化データにも取り組んでほしい。Productの構造化データでマークアップすることで検索結果に価格などのデータを表示でき、さらにGoogleマーチャントセンターが自動更新されてタイムラグによる不承認リスクも減るので行わない手はないだろう。
ECサイトにおけるSEOと広告の打ち手
江沢氏は「今回紹介してきた、SEO施策による操作性や信頼性、関連性などの向上は、すべて広告にも関係する。SEOでしっかり基盤を整えると、広告のランディングページにもメリットがあるのは間違いない」と強調し、「SEOでアセットを整え、広告に活用すること、双方の強みと弱みを理解して施策設計をすること、パルス消費などを鑑み、ユーザーとのタッチポイントを増やすこと、この3つの施策で持続的成長を目指して欲しい」とまとめた。
河野氏も「お金をかけて広告で集客しても、サイトが整っていなければ、ビジネスの成長にはつながらない。SEOと広告を一緒に行っていくことが重要」と語った。
最後に明日からできる広告×SEOのチェックリストを提示し、セッションを締めくくった。
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