【レポート】Web担当者Forumミーティング 2021 秋

「推し武将」は誰? 戦国時代の生存戦略に学ぶマーケティングの本質

藤堂高虎の子孫とコピーライター、プロマネが「戦国武将」をテーマに鼎談。武将の生きざまや考え方は、現代でも参考になるのではないだろうか。

マーケティングの視点で見ても生存戦略の宝庫である戦国時代。武将の生きざまや思考は、現代でも参考になるのではないだろうか。

Web担当者Forumミーティング 2021 秋」では、戦国武将・藤堂高虎の子孫であるAZ代表取締役の藤堂氏、電通のコピーライター橋口氏、大広でプロジェクトマネジメントを務める平野氏の3人が登壇。戦国武将を題材にしながら、マーケティングについて鼎談を行った。

(左から)株式会社電通 橋口幸生氏、株式会社AZ 藤堂高義氏、
株式会社大広 平野陽子氏

戦国武将は、現代だとどんな人?

講演の冒頭で、「戦国武将は、現代だとどんな人?」というアンケートが出題された。選択肢は次の3つ:

  • CEOや代表取締役社長的な存在
  • CMOやマーケター的な存在
  • プロジェクトマネージャー的な存在

聴衆者による回答結果は、「CEOや代表取締役」「プロジェクトマネージャー」「CMOやマーケター」の順になった。

戦国武将に求められた要素

この3つを選択肢に入れた理由について平野氏は「組織を率いる役割(CEO)、メッセージを届けて人を動かす役割(CMO、マーケター)、チームで成果を生み学びを資産にする役割(PM)、戦国時代とはこれら全部の要素が必要な時代だったからだ」と明かした。

戦国時代とはどんな時代だったのか

戦国時代サマリー

諸説あるが「戦国時代」は一般的に、応仁の乱で守護大名が没落し戦国大名が台頭した室町末期から、織田信長、豊臣秀吉、そして関ヶ原の戦いと大阪夏の陣を経て徳川幕府の治世へと移り変わる江戸時代前期までの約150年(1467年~1615年)を指す。

では、3人から見た戦国時代とはどんな時代だったのだろう。

藤堂氏: スタートアップと老舗企業の戦い

無理やり経営者的な観点から見るなら、没落する朝廷と台頭する戦国大名の関係はスタートアップと老舗企業の戦い(藤堂氏)

兵農分離による職業軍人の出現や貨幣経済の発達など、環境や価値観が大きく変化するなか、既存勢力と新参勢力が新しい環境に適応しながらしのぎを削った時代という認識だ。

橋口氏: PDCAがPDD(Death!)だった時代

英雄が群雄割拠して華やかな時代に見えるが、実は現代の常識や道徳観では考えられないほど命の価値が軽く、PDCAが『PDD(Death!)』だった時代。間違えたらすぐ死んでしまうので、それに比べたら僕たちは気楽な世界に生きている(橋口氏)

平均寿命は驚くほど短いし、合戦も領土争いというよりは略奪や人身売買が目的の一つでもあったらしい戦国時代。しかし現代人が偉い人を担ぐように、織田信長も足利義昭の権威を利用しようと上洛するなど、あまり変わらないところもあると橋口氏は考察する。

平野氏: 人生は運ゲーと悟った者勝ち時代

自分が生き延びられるかどうかも運次第。それを認めたうえで、持っているカードを切り続けることができた人が後世に名を残したのではないか(平野氏)

技術や資金、知恵などで誰でも成功するチャンスがある現代と異なり、戦国時代は生まれた土地や血縁など、どうにもならない理由で死んでしまうことも普通にあった。人生は、運に左右されるゲームのようなものと悟ったものが勝つ時代だったと推測した。

3者それぞれの「推し武将」を発表

次のコーナーでは、三者三様の「推し武将」プレゼンテーションが行われた。

藤堂氏: 藤堂高虎推し

藤堂高虎を推す、そのこころは?

高虎は、1人の主君に尽くすのが良しとされた戦国時代において、浅井長政、羽柴(豊臣)秀長、豊臣秀吉、徳川家康など異例とも言えるほど主君を変えた。

しかも徳川幕府では、外様大名にもかかわらず32万石という譜代大名と同等の石高を与えられ、家康をして「国に大事があるときは高虎を一番手とせよ」と言わしめた。死後も日光東照宮に家康、天海僧正と共に祀られるなど異常な厚遇を受けている。

毀誉褒貶にモノ申したい! そのこころは?

主君を次々に変えたことで「不忠義者」「転職しすぎ」など毀誉褒貶が多い高虎だが、失敗すると自身の命に関わるだけではなく、家臣や領民が露頭に迷ってしまう時代。「“命をかけた転職”を行っている高虎は、経営者としてとても優秀である」と藤堂氏は評する。

また、若い頃は武勇に長けた猛将として名を馳せたが、後にテクノクラート・技術者へ転身。和歌山城、宇和島城、今治城、そして江戸城の改修作業など「築城の天才」と言われるまでになった。

高虎は、環境変化に応じてポジショニングを変えていった自己イノベーションの達人(藤堂氏)

この結論に「高虎は忠誠心がないとか言われているが、権謀術数が当たり前の戦国時代に現代の視点で見て“裏切り者”と言うのは違う」と橋口氏は同意する。

高虎という強そうな名前でかっこいいイメージがあるが、実は世渡り上手でセコいことや卑怯なこともいとわないというところがあり、経営者としても優秀だったと思う(橋口氏)

橋口氏: 織田信長推し

織田信長を推す、そのこころは?

コピーライターならではの視点で橋口氏が注目したのは「天下布武」「第六天魔王」「人間五十年」「是非もない」といった数々の信長にまつわる言葉たちだ。

本当に本人が考えたかどうかは置いておいても、上司が『天下布武』と言っていたら、この人について行こうとなる。理念や目的などを耳あたりのいい言葉にして掲げることは、現代で言う“パーパス経営”に通じるものがある(橋口氏)

信長に限らず、人気武将の名コピーを挙げた:

  • 風林火山(武田信玄)
  • 敵は本能寺にあり(明智光秀)
  • 難波のことは夢のまた夢(豊臣秀吉)
  • 直江状(直江兼続)

平野氏も「人を動かさなければいけないときに、部下がその言葉に納得できなかったら自軍は負けて本人も死んでしまう。だから戦国武将にはいい言葉を残す人が多いのかもしれない」と賛同する。そして直江兼続の名前を挙げる。

血で血を洗うこの時代に兜に“愛”と付けて出てきたり、直江状では家康の言いがかりに対して、逆転裁判のように1つひとつ理詰めで反論して逆に煽り返したりしたそうで、国語が得意なタイプだと感じる(平野氏)

平野氏: 徳川家康推し

徳川家康を推す、そのこころは?

プロジェクトの成功を左右する要素はヒト・カネ・モノの3つ。その中でも一番むずかしいのはヒトだとされている。プロジェクトマネージャーの視点で関ケ原の戦いを分析する平野氏は「徳川家康こそマネジメント上手だった」と言う。

その理由として、次の3つを挙げた:

  • 適材適所
    スペックや華やかさで評価せず、相手の適正、志向や性格を見抜いて役割分担をしていた。たとえば伊達政宗は合戦によく遅れる人なので、戦いには期待せずに関東を守る役割を任せていた。
  • 選択肢の確保
    スキルセットの違う多様な家臣や同盟相手を選んでパイプ数をキープしておいた。たとえば耳の痛いことを言う家臣をむやみに殺したりしないし、息子の秀忠とはタスクを分割したりしていた。
  • パーパス視点
    家臣に残酷な命令をする際にも、目指したい未来に基づき中長期の視点で納得できる説明ができた。戦をしないと気が済まない人はすぐに廃したり、大航海時代のスペイン人宣教師を追放したりしたのも、パーパス視点で見ているからだろう。

家康はとても苦労してきている人。だから目先の利益に左右されず、最終的な目的はなにかをきちんと目を向けたうえで、人を動かしていた(平野氏)

橋口氏も「家康のパーパス視点でいうと、日光東照宮もすごい」と称賛する。

将来、皇室と戦うときのために、自分が神様になることによって天皇と同じくらいの権威を持っておこうと考えて建てたという説を聞いた。その当時、自分が死んだ後のことまで考えている経営者はなかなかいない(橋口氏)

戦国時代と現代の共通点について

共通点は「大きなパラダイムシフト」

続いてのテーマは「戦国時代と現代の共通点」。両時代とも大きなパラダイムシフトであるとしながら、3人がそれぞれ持論を展開した。

藤堂氏:

「戦国時代は朝廷の権威が失われたところからスタートし、兵農分離からの職業軍人の登場、個人戦闘から集団戦闘への移行、貨幣経済・グローバル経済の登場など、環境や価値観が激しく変化した時代」と説明する藤堂氏。

このような時代には、新しいスキームや価値観を取り入れ、いち早く自分のものとして使えるようになる必要がある。

現代のスタートアップなどで、従来では考えもしなかったようなサービスが出てくる点は、戦国時代に似ているのではないか(藤堂氏)

橋口氏:

戦国時代だと、秀吉レベルの運と才能がなければキャリアアップできないが、現代は生まれに関係なくできる。歴史を知れば知るほど現代は最高だと思う。そうそう死なないから(橋口氏)

ユーモラスを交えて語る橋口氏。また、それ以前の時代とは違い、戦国時代になるとかなり正確な記録が残っているので、施策や考え方など現代に取り入れることが可能なものも多いという。

平野氏:

「セミナーなどでは成功事例を講演する人は多いが、ケースバイケースでベストプラクティスは変わるため、手段だけに囚われてしまうと失敗することも多い」と平野氏は指摘する。

ベストプラクティスはころころ変わって当たり前。企業も人も“どのような人格を持ち、どのような心でどんな価値を世の中に提供するか”という心の中の“錦の御旗”を持って変化に臨み、打ち手を選んでいくことで生存確率が上がっていく。これらは歴史から学べる(平野氏)

◇◇◇

最後には、視聴者から寄せられた質問に答える時間が設けられ、三者三様の視点で戦国武将を考察するセッションを終えた。

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