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デジタル広告エコシステムの改革を目指す! WFAが発表した「グローバルメディア憲章」とは?

世界的ブランドのマーケティング責任者が集う「WFAグローバルマーケターカンファレンス」が、5月17日に東京・六本木で開催された。

世界最大の広告主団体「WFA(世界広告主連盟)」と日本の広告主団体「JAA(日本アドバタイザーズ協会)」が主催する「WFAグローバルマーケターカンファレンス」が5月17日に六本木の東京ミッドタウンで開催された。

当日はグローバルブランドのマーケティング責任者(CMO)など名だたるスピーカーが登壇。大手企業のマーケティング担当者や、メディア/エージェンシー(代理店)の関係者など570名が来場し盛況となった。

本レポートでは、グローバルブランドのクリエイティブ制作体制に関するディベート内容を中心に、各セッションの様子を紹介する。

また、記事の最後ではWFAが発表した「グローバルメディア憲章」を紹介する。これはデジタル広告のアドフラウド、ブランドセーフティ、ビューアビリティに加えて、サプライチェーン全体の透明性や第三者による検証を含む大切な指針だ。

ディベートセッション
グローバル制作のクリエイティブはローカルにとっての悲劇か

肯定派、否定派に分かれてのハイレベルなディベートが行われた(左から、パナソニック 山口有希子氏、Death of Bad 曽原剛氏、スタンダードチャータード銀行 サム・アーメッド氏、資生堂 山本尚美氏)

グローバルブランドがマーケティングキャンペーンを実施するにあたり、クリエイティブの制作を「本社側で集約・統括する」のか、「各ローカルオフィスに委ねる」のかは、その有効性やコスト・工数などいくつもの観点から議論の的となってきた。

今回のグローバルマーケターカンファレンスでは、「グローバル制作のクリエイティブはローカルにとっての悲劇である」との主題に対して4名の登壇者が「ローカル個別派」と「グローバル統一派」に分かれ、「ディベート」のかたちで議論を戦わせるという試みが行われた。登壇者と本ディベートにおける立場は以下のとおり。

※本セッションは、あくまでも割り当てられた役割になりきって演説するディベートであり、立場や個々の発言は登壇者個人ないし、所属企業の見解を示すものではない点に留意されたい。

「クリエイティブはローカルに裁量の余地を与えるべき」と主張する役割側(肯定派)
  • パナソニック 山口有希子氏(コネクティッドソリューションズ社 常務 エンタープライズマーケティング本部長)
  • Death of Bad 曽原剛氏(クリエイティブ・ディレクター/パートナー)
「グローバルで統一されたクリエイティブを展開すべき」と主張する役割側(否定派)
  • スタンダードチャータード銀行 サム・アーメッド氏(デジタル&リテールマーケティング グローバルヘッド)
  • 資生堂 山本尚美氏(チーフクリエイティブオフィサー)

モデレーターはWFAのロバート・ドレブロウ氏が務めた。

ディベートの進行は、まずそれぞれの立場からプレゼンテーションを行い、その後に意見を戦わせる、という流れで行われた。

「クリエイティブはローカルに裁量の余地を与えるべき(肯定派)」の主張内容

「ローカルに裁量を与えるべきだ」と考える肯定派は、「クリエイティビティ=コンセプト×コンテクスト」という図式を提示。グローバルで同じコンセプトを踏まえながらも、各国の文化など状況に合わせて伝えることが重要であるとの主張を行った。

さらにその補強材料として次のような例を挙げた。

  • 日本市場で成長を続けるグローバルブランドの多くが、ローカルの状況を踏まえた訴求を行っている
  • メディア環境の変化
  • 各国市場における競争環境や、置かれているポジションの違い
  • 文化/習慣/法律などの違いにより、表現がフィットしないケースがある

「グローバルで統一されたクリエイティブを展開すべき(否定派)」の主張内容

「統一されたクリエイティブを展開すべき」という否定派は、グローバルでメッセージを開発しクリエイティブを制作することの利点として、より深く普遍的なインサイトに到達できること、費用や時間の面での効率性などを挙げ、実際の映像を流しながら聴衆に訴えた。

また、グローバルでの統合とローカルに責任(裁量)を持たせることの両立を目指す、LVMH(エルヴェエムアッシュ モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)やユニリーバ、スターバックスなどのグローバル企業によるトランスナショナルなアプローチが出てきていることも指摘した。

意見交換フェーズ

意見交換フェーズでも、活発な論点の提示と議論が行われた。たとえば、富裕層は地域を越えた共通の価値観を持つため、この層を対象としたラグジュアリーブランドなどはグローバルでクリエイティブを展開すべきだといったことだ(世界の一員であることを意識するミレニアルズを対象とした商品・サービスについても同様)。一方で、白か黒かではないグレーゾーンがあり、ローカルからのインプットを本社側が取り入れることは有効であるといったことが語られた。

最後に「ローカルはローカルだけ、グローバルはグローバルだけを考えてはダメ。“Think Global, Act Local(グローバルで考えて、ローカルで行動する)”のスタンスが重要」との指摘があり、セッションを締めくくった。

このディベートについては専用のスマートフォンアプリを通じて聴衆に賛否を聞いており、ほぼ拮抗する結果(賛成54%:反対46%)となった。かつ、ディベートの前後でこの比率はほとんど変化しておらず、このテーマの難しさをうかがわせた。

質問「あなたはグローバルで統一されたクリエイティブで展開すべきだと思いますか?」ディベートの主題に対する会場からの投票結果(赤がディベート開始前、グレーがディベート終了後)

代理店との協業姿勢、クリエイティビティ、カスタマーファースト……先進企業による取り組みの数々が披露される

丸1日をかけて行われた本カンファレンスでは、グローバルブランドのマーケティング責任者など著名なスピーカーが登壇。マーケティングに関わる課題をどのように捉え、取り組んでいるかについて共有された。それらの内容についてかけ足で紹介する。

※以下、強調かぎかっこ内はセッションの日本語タイトル

【エージェンシーユニオンの現状】
理想的な広告主と広告代理店の関係(日産自動車)

世界160カ国・地域でビジネスを展開する日産自動車からは、グローバルマーケティング/ブランド戦略担当であるルードゥ・ブリース氏が登壇。企業のマーケティングを取り巻く環境が大きく変化していることを指摘し、理想とするマーケティングを実現するための広告主と代理店の関係性について語った。

同氏によれば、日産自動車はグローバルで10以上のエージェンシー・ネットワークと取り引きしており、マーケティングに関わる人員は、自社と代理店あわせて1,600名を超えているとのこと(比率は、自社:代理店=1:2)。また、顧客体験の各フェーズにおける最適なアプローチを実現するためには、小刻みなKAIZEN(改善)ではなく、パラダイムシフトが必要であると訴えた。

ルードゥ・ブリース氏

【クライアントよ、クリエイティブであれ!!】
マーケターはクリエイティブでなければならない(クリス・バレス・ブラウン氏)

グローバルブランドのクリエイティブを支援してきたUpping Your Elvisのクリス・バレス・ブラウン氏は、マーケターがよりクリエイティブとなるための姿勢や考え方について、紙飛行機を作って飛ばすなどの軽いアクティビティを交えながら解説した。知らないことや変化に対する恐れを克服し、自分の感情・感覚を信じることが重要だとアドバイスした。

サブ会場ではセッションの内容をビジュアルに記録する「グラフィックレコーディング」が実施された。写真は本セッションに関する箇所を切り出したもの

【クリエイティビティがもたらすもの】
アートがどうブランドを築き、ビジネス貢献するのか(Google)

AIのクリエイティブ・ディレクターが採用される現代において、なぜ世界で最もデータ・リッチなGoogleが優秀なクリエーターを採用するのか……?

これは、登壇したGoogle クリエイティブラボのVPであるロバート・ウォン氏が投げかけた問いだ。ウォン氏は10年前に入社して以降、これまでに携わったサービス/プロダクトのエピソードを挙げ、エンジニア中心のGoogle において、アートがどのようにブランドを築き、ビジネスに貢献しているかを解説した。

ウォン氏が入社後すぐに手がけた、「Google Search」を題材としたビデオ「Parisian Love」。この動画は好評を博し、後にスーバーボウルでも放映されたという

質疑応答のパートでは、先に紹介したクリエイティブ(グローバル/ローカル)についてのディベートに関する質問があった。これに対して同氏は「Google ではグローバルとローカルのチーム間での緊張はない。コアのアイデアはグローバルに通用するものだ」と回答した。

【テックジャイアントが取組む真のカスタマーファースト】
テクノロジー企業に人間味を与えるとは?(サムスン電子)

いまや世界的なテクノロジー企業となったサムスン電子から2名を迎えてのセッションの原題は“Humanizing a Global Tech Brand”(邦題:テックジャイアントが取り組む、真のカスタマーファースト)。

左から、サムスン電子 イ・ヨンヒ氏、サムスン電子アメリカ マーク・マシュー氏

ロレアルから12年前に転身したサムスン電子 EVP/CMOのイ・ヨンヒ氏は、技術主体の企業がグローバルで受け入れられるために「テクノロジーに人間味を与える」ことを自分の使命にしてきたと語った。同時に、100以上の国・地域に展開し多様な製品領域を手がける同社にとっての一貫したブランドイメージの重要性と、その一方で柔軟であることの必要性について言及した。

同じくサムスン電子アメリカのCMOであるマーク・マシュー氏は、3年前の着任直後に発生したGalaxy Note 7 の発火問題などを経て、消費者を中心に考えることで事件を乗り越え、ブランドを再構築してきた過程を説明した。

サムスン電子のブランド価値は事件後も順調に増大し、現在では世界6位となる562億ドル(約6兆円)に達しているという(Interbrand調べ)。

セッションで紹介されたサムスン電子のブランドメッセージ“Do What You Can't”

デジタル広告エコシステムの改革を目指す「グローバルメディア憲章」を発表

カンファレンスのクロージングでは、デジタル広告を取り巻く諸課題について、WFAのプレジデントであるデイビッド・ウェルドン氏が言及した。WFAとしても対策に取り組んでいくことをあらためて表明し、トップ広告主や業界団体の協力のもとで制定した「Global Media Charter」(グローバルメディア憲章)を披露した。

  • 広告詐欺(アド・フラウド/フロード)の完全なる排除
  • ブランドの安全性(ブランドセーフティ)を保つための厳格な措置
  • 広告の視認性(ビューアビリティ)の最大化
  • サプライチェーン全体の透明性
  • 第三者(サードパーティ)による検証と測定の受け入れ
  • 「ウォールドガーデン」問題の除去
  • データの透明性に関する基準の維持・向上
  • 消費者の体験を向上させるための取り組み

ウェルドン氏はデジタル広告のエコシステムに関わるすべての関係者が、これら8つの原則を遵守することにより、禅のような「和」を回復させることができると呼びかけた。

WFAのデイビッド・ウェルドン氏がグローバルメディア憲章を紹介した
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