被リンクが少なくても大手に勝てる! 最適化したファセットナビゲーションの力
「ファセットナビゲーション」は、特にECサイトでは欠かせない、重要なUX要素だ。サイトを訪問した人が求めている情報にたどり着きやすくするために「あなたの知りたいことは、このなかのどれですか?」と聞くようなもので、多くの場合はサイト内検索(商品検索)やカテゴリナビゲーションとして設置する。
この記事では、ファセットナビゲーションに関して
- SEOを考慮したうえで
- 競合も拾えていないニーズをコンバージョンに結びつける
ための調査から構築までの手順を理解してもらう。
ファセットナビゲーションを利用すると、ユーザーは特定の製品属性に基づいて検索結果を絞り込める。このナビゲーションは商品一覧ページ(PLP)にあるのが普通で、直感的に商品を発見するのに役立つ優れた方法だが、こうしたフィルタリングシステムの管理はSEO共通の課題だ。クローリングとインデックス化を制御する必要がある。
ただし、本来の機能の先に目を向けると、ファセットは大きな可能性をもたらしてくれる。ロングテールキーワードの機会を中心にセカンダリナビゲーションを構築することで、
- 消費者の意図を戦略的に利用し
- さらなるウェブコンバージョンを確保し
- 売上水準を押し上げる
ことができるだろう。
消費者の意図とロングテール検索キーワードのマッチング
SEOにおいて、
- 確立されたブランド
- 強固なドメイン名の被リンクプロファイル
を有しているからといって、成功が保証されているわけではない。これは小規模なブランドにとって朗報だ。というのも、SEOのゲームでは常に業界大手が勝つとは限らないからだ。
たとえば、次のキーワードで検索してみよう:
- 「long sleeve wedding dresses」
(長袖 ウェディングドレス)」
検索結果の1位と3位は次のとおり、ページオーソリティでもドメインオーソリティでも劣るページが1位を獲得している:
- 1位: David's Bridalの最適化済みファセットページ
- ページオーソリティ:30/100
- ドメインオーソリティ:67/100
- 3位: Nordstromの結果
- ページオーソリティ:64/100
- ドメインオーソリティ:82/100
Davids's Bridalのページがこれほど効果的な理由については、後で取り上げよう。
ファセットナビゲーションをどうすれば最適化できるかを考えるにあたっては、製品の属性が消費者のニーズや願望を伝えるものである点を認識することが重要だ。たとえば、ウェディングドレスを探しているなら、
- 色
- 生地
- ネックラインの形
- 袖の長さ
の組み合わせで検索しているかもしれない。
検索需要曲線によると、オーガニック検索全体の70%をロングテール検索が占めている。ロングテール検索は対象をかなり絞り込んだクエリであり、トラフィックを増やす大きな機会になる。
業界ではここ数年、こうしたロングテールの検索意図に長いコンテンツで対応する方向へと大きくシフトしている。そうした訪問者を獲得する主な手段として、多くの人が利用するようになっているのが、次のような「コンテンツ」だ:
- ブログ記事
- 着こなし解説
たとえば、次に示すのは英国の小売であるマークス&スペンサーの「Inspire Me」セクションの例だ:
こうしたコンテンツは、次の2点において価値がある:
多くの人は買い物をする際にインスピレーションを求める
これらのページはカテゴリページや商品ページへのサイト内リンクを増やす効果的な手段になる
ただし、こうした深い階層のコンテンツページほどPageRankが低い傾向にあることを考えると、このアプローチに頼っていては幅や奥行きが出ない。そのため、望む結果を得るには膨大な時間と労力が必要になる。
これに対して、商品一覧ページはより広範な検索キーワードを対象としており、ファセットナビゲーションは一般に受動型の機能になる。というのも、ファセットナビゲーションはクロール対象から除外することが多く、SEO上の価値がないからだ。イギリスの書店大手Waterstonesは、オンページフィルタにこのルールを適用している小売店の1つだ。
こうした設定によって、このページは「5歳~8歳の子ども向け書籍を探している親」という特定のユーザーのニーズを満たす可能性があるにもかかわらず、Google検索のSERPからは顧客を獲得できない(クロール・インデックスされていないため)。このことは、ユーザーの検索意図とオーガニック検索結果に表示されるページを一致させるうえで、根本的なズレが生じかねないことを示している。
次の図を見てほしい。これは、ブログ記事や着こなしガイドなどの編集コンテンツと商品一覧ページで、購買ファネルの異なる部分をターゲットとしていることを示している:
- 編集コンテンツ(ブログ記事や着こなしガイドなど): 「認知」と「関心」の段階に重点を置いていることが多い
- 商品一覧ページ: 「検討」と「購入」の段階に近い傾向がある
成功するために極めて重要なのは、購入までのプロセス(バイイングジャーニー)全体を通してユーザーに適切なコンテンツを提供することだ。
多くの小売業者から見ると、飽和状態の市場において競合他社は相変わらず広範かつ大量のキーワードを優先している。同じ水準の検索トラフィックを維持するために、同じキーワードをターゲットにしている。これは非常に厳しい見通しを示しており、市場の隙間を開拓しなければ、望む結果が得られるとは限らない。
同様に、ロングテールのキーワードをターゲットにするのに情報提供型のガイドを利用するということは、購入条件が極めて具体的なユーザーの大多数を逃してしまうということだ。そう、これらのユーザーには購入する用意があるのだ!
ユーザーの真のニーズと期待に応えることに焦点を移すことで、あらゆるインタラクションにおいて満足できる摩擦のない体験を提供でき、最終的な購入に結び付けられるようになる。
ユーザーの真のニーズと期待に応えるSEOとファセットナビゲーションの構築ガイド
ステップ1 ロングテールキーワードを調査する
以下を含むさまざまなソースのデータを利用し、潜在顧客についてかなり包括的な視点を構築する。
キーワード調査ツール ―― Moz、Googleキーワードプランナー、AnswerThePublicなど。
SERP ―― オートサジェストの結果、People Also Ask(PAA:他のユーザーも行った質問)、ページ下部の関連検索リンクから着想を得る。
競合他社の取り組み ―― SEOモニタリングソフトウェアを使用する以外にも、Scraperなどのデータマイニング用拡張機能を使用できる。このツールは、競合他社の商品一覧ページから直接ファセットオプションを抽出してくれる。これらのツールは無料でダウンロードできるものが多く、製品カテゴリをすばやく複製できる。
Google Search Console、Googleアナリティクス、リスティング広告のアカウントで、訪問者やウェブコンバージョンが最も多いキーワードやURLを確認する。サイト内検索のデータからも、消費者に関するすばらしいインサイトを得られる。
マーチャンダイジングチームと話して、製品の需要やフルフィルメント能力を把握する。
ステップ2 意味のあるサブトピックにまとめる
こうした情報をすべてスプレッドシートにまとめると、検討すべきロングテールキーワードが見えてくる。個々のキーワードから大量の月間検索ボリュームを生み出すことは期待できないかもしれないが、全体として見ると、購入意欲をより一層引き出せる箇所が浮き彫りになる。
この点を理解してもらうための例として、ランジェリーに関するごく一部の検索キーワードと、その検索で示すべきファセットを見てほしい:
キーワード | 平均月間検索ボリューム | 適したファセットの組み合わせ |
---|---|---|
レース ブラレット | 9900 | 素材+製品タイプ |
レース ブラ | 4400 | 素材+製品タイプ |
黒 レース ブラレット | 3600 | 色、素材+製品タイプ |
白 レース ブラレット | 2400 | 色、素材+製品タイプ |
黒 レース ブラ | 1300 | 色、素材+製品タイプ |
白 ストラップレス ブラ | 1300 | 色+製品タイプ |
白 レース ブラ | 1000 | 色、素材+製品タイプ |
黒 レース ブラレット トップ | 1000 | 色、素材+製品タイプ |
白 プッシュアップ ブラ | 720 | 色+製品タイプ |
白 ストラップレス プッシュアップ ブラ | 260 | 色+製品タイプ |
白 パッド付き スポーツブラ | 170 | 色+製品タイプ |
白 プッシュアップ ブラレット | 140 | 色+製品タイプ |
上の表では、どの検索キーワードにも色や素材のバリエーションにパターンのあることが一目瞭然だ。そのうえで、既存のクリック率やコンバージョン率のモデルを利用し、セッションと収益予測でこの情報を実証できる。これは、オーガニック検索順位上昇によって得られる価値を、新しいファセットの組み合わせごとにシナリオとして定量化するのに役立つ。こうした収益予測には、グーグルで「10位」「7位」「5位」「3位」「1位」といった順位を獲得した場合の推計値をそれぞれ含めておくと判断しやすく良いかもしれない。
ここで注意するべきこととして、同義語は除外するほうがいい点がある。誤って高めに計算してしまいがちからだ。たとえば、
- 「chest of drawers(たんす)」
(月間検索数20万1000件)
のパフォーマンスを確認する場合は、
- 「storage drawers(収納用のたんす)」
(月間検索数2万2200件)
のデータは除外しよう。両方のバリエーションを含めると誤ったデータから誤った結論を導き出すことにつながる。
ステップ3 「サービス内容」「評価」「価格」に関する広範なキーワードを、より深く掘り下げる
「サービス内容」「評価」「価格」といった条件での絞り込みは、多くの場合「SORT(並べ替え)」ドロップダウンボックス内にある。しかし私の経験では、これらはユーザーがページの結果を再指定できるようにするだけのものであり、検索エンジンのことは考慮対象外になっていることが多い(つまり、最初からこれらのフィルタを適用したページでは「noindex」を設定している)。もちろん、ShopifyやShopwareなどのコンテンツ管理システムでは、この設定がデフォルトになっている。
こうしたフィルタの目的は、
- ページコンテンツを単に並べ替えたり絞り込んだりできるようにすること
であって、決して
- ユーザーに別の結果や(ファセットナビゲーションを通じて得られる)付加価値を提供すること
ではない。そのため、検索エンジンにインデックスさせないことは理にかなっている。
通常はフィルタによって見せるのは「そのときに見てもらうため」の結果であり、後から参照することは想定していない。しかし、このルールを厳格に守ることが現実世界で常に正しいやり方だとは限らない。個別の業界に目を向け、それぞれに異なる顧客にとって重要なことは何かを理解する必要がある。
たとえば、「だれかにプレゼントを贈る」というユーザー行動に目を向けてみよう。プレゼントの場合、ある程度の予算を念頭に買い物をしている人が多い。そのため検索キーワードとしては、
「birthday gift under £20」
(誕生日プレゼント 20ポンド未満)
(月間検索ボリューム4000件)「Secret Santa gift under £10」
(クリスマスのプレゼント交換 10ポンド未満)
(月間検索ボリューム2900件)
といった金額を含むものがそれなりに多い。となると、プレゼントの予算感ごとに一覧ページを公開すれば、買い物客にとって便利かもしれない。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。今回は、6つのステップのうち3つを紹介した。後編となる次回は、残る3つのステップ「技術的な手順」「ファセットURLの最適化」「アクセシビリティの確保とページオーソリティの構築」について説明する。→後編を読む
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