リソース不足のマーケター必見! コンテンツマーケティング×MAで商談数を例年比3倍にした秘訣
マーケティング担当者は、施策の立案、企画から、実際の制作・実施・検証と多くの業務を抱えているケースが多く、「成果に結びつけるには時間が足りない」と感じていることは珍しくない。
「デジタルマーケターズサミット 2021 Summer」で講演を行ったナイルの大澤氏は、たった一人でマーケティング施策立案から実施、検証までを自ら行う“ひとりマーケター”という立場ながら、わずか1年間の取り組みで、マーケティング施策経由の新規商談数を3倍に増加させた実績を持つ。
コンバージョンアップにもっとも貢献したのは、MA(マーケティングオートメーション)ツール「SATORI」の有効活用だ。本記事では、MAの選定・導入から短時間で成果を出すための活用法、ナイルの強みでもあるSEO・コンテンツマーケティング施策の実践まで、ひとりマーケターにすぐに役立つノウハウをレポートする。
戦略を考える時間がほしいマーケティング担当者はMAを使うべき
ナイルは、SEOやコンテンツマーケティングの支援を得意とするデジタルマーケティングカンパニーだ。大澤氏の所属するデジタルマーケティング事業部は、BtoB事業として、企業のコンテンツマーケティングに関する課題を解決する各種サービスを提供している。
大澤氏は、「多くのマーケターが施策や戦略を考える時間が足りないと感じている」と指摘する。実務や調整に時間が取られて十分にマーケティング戦略を考える時間が足りない、そんな人こそ、MAツールを使うべき、と強調する。MAツールは一度設定すれば、施策の一部を自動的に実行できるため、余った時間を戦略や施策を考える時間に割くことができるからだ。
全ての機能を使うのではなく、まずは使う機能を絞る
一方で、MAツールには大きな壁が存在する。設定・運用するのが難しそうという心理的なハードルだ。ツール設定の難しさに加え、提供される機能が豊富であるがゆえに、担当者自身が「備わっている機能のなかでどれを使えばいいのかわからない」「どうやって使えば効果が出るかわからない」と運用の手が止まってしまうのである。
そこで大澤氏が提案するのが「まず使う機能を3つ以下に絞る」ことだ。
MAツールは、シナリオ設計やスコアリング、ステップメール、ポップアップなど多数の機能を持つケースが多いですが、無理にすべての機能を最初から使おうとしないほうがいいでしょう。反対に、ピンポイントで主要機能を使えばツールの習得も短時間で済み、成果も出やすいと思います。
マーケティング担当者がMAツールの機能を把握していない段階で、「あれをやりましょう」「これも使うと便利ですよ」といろいろな提案をしてくる営業担当者の言葉を真に受けることはオススメできません。
それよりは、マーケティング担当者が出したい成果をヒアリングし、どの機能を使うべきか的確なアドバイスをくれるツールや営業担当者を信頼するべきです。すべてを使いこなそうとするのではなく、重要な機能だけに時間を使いましょう(大澤氏)
実際に大澤氏は、「SATORI」の機能の中からまずは「シナリオ」と「Webhook」の2つの機能に絞って使いこなし、成果に結びつけた。
ナイルが選んだMAツールは「SATORI」だ。活用支援サイトなどに事例が豊富であり、オプションなしでも設定方法や使い方などのサポートを受けられること、何よりも自社にとって費用対効果が優れていることが一番の決め手となって選ばれたという。
シナリオ設計を克服するには下準備が重要
大澤氏が挙げた失敗しないシナリオ作成のフローは下記だ。
- シナリオはいきなりツールで設定しようとせず、手書きでもいいのでフローを書き、ツールで自動化したいところをピックアップする
- ピックアップしたすべての箇所で設定方法がわかっているか洗い出し、確認する
- わからない機能について問い合わせ、さらに設定方法も確認する
- すべてを準備してから一気にツールで設定する
事前に機能の実装可否や設定方法を調べておくことが重要です。途中で調べものなどで集中を妨げられるよりも、事前に不明点を確認した上で一気に仕上げてしまうほうがはるかに効率がよかったと感じています(大澤氏)
この下準備を徹底することで、資料ダウンロードから電話をして不在だった場合はタグAを、電話に出てくれたけど商談化に至らなかった場合はタグBをつけ、それぞれに合わせたメールを配信する流れをスムーズに構築できたという。
Webhookでインサイドセールスチームと連携
大澤氏が使いこなす「SATORI」のもうひとつの機能が、特定のアクションが発生したら自動で社内に通知ができる「Webhook」だ。
大澤氏はWebhook機能を利用し、Webサイトから資料がダウンロードされたら、そのリード情報が即座にSlack経由でインサイドセールス担当者に送付されるよう設定した。電話番号だけでなく、ダウンロード資料の種類やサイト、会社名などの情報も同時に通知されるので、架電の際の準備も少なく済み、資料ダウンロードからのタイムラグを最小限にできる。
これによりインサイドセールス担当は、見込み顧客が資料をダウンロードした後、5分以内に電話をかけることができるようになった。
シナリオでメールを自動的に送る仕組みと、Webhookで自動的に通知が来る仕組みを組み合わせることで、Webサイト改善など他の業務と並行でインサイドセールス立ち上げまで1人で行うことが出来ました。「こんなにすぐ電話をくれたのは御社が初めてです」と喜んでいただけたこともあり、今ではインサイドセールスは非常に重要なチャネルの一つになっています(大澤氏)
電話が取られなかった場合は前述したシナリオに沿って、自動でメールによる商談打診へと続く。
今後は、以前に電話で商談をしたことがあったり、一度は案件化していたが成約に至らなかった顧客が、再度サイト訪問した場合に、改めてセールスから連絡をとるシナリオも追加する計画だという。
3つの“王道”施策でオウンドメディアを改善
ナイルでは、MAへの取り組みと合わせて、オウンドメディアの改善も行った。
同社のオウンドメディアにおいて、ユーザーのページ滞在時間はだいたい30秒、長くても3分だった。また、サイト回遊をしてコンバージョンするケースは少なく、問い合わせフォームへのアクセスはトップページから直行するケースが過半数だということもわかっていた。
そこで、大澤氏は「Webは質より量」をキーワードに、お問い合わせの質ではなく量を確保していくことに決めた。その際に実施されたのが下記3つの“王道”の施策だ。
- CTAの“王道”
- BtoBのSEOの“王道”
- コンテンツ制作の“王道”
CTAの“王道” CTAボタンをファーストビューに
2020年3月以前は、ファーストビューに資料ダウンロードやお問い合わせのCTAが存在していなかった。そこで大澤氏は、CTA(Call to Action)ボタンの設置場所を、トップページのファーストビューに配置し、デザインも大きく目立つようにした。
BtoBのSEOの“王道” CVに近いキーワードにCVRの高いページを上位表示
BtoBのSEOの王道パターンは、「SEO」などのビッグキーワードではなく、「SEO 相談」「SEO対策」など、コンバージョンに近いキーワードにおいて、コンバージョンレート(CVR)の高いページを上位表示することだ。検索ユーザーが実際にコンバージョンしなかったとしても、キーワード検索の上位に配置されることで、会社名が潜在顧客にインプットされるチャンスにもなる。
そこでナイルが実行したのが、サイト名の変更だ。もとは「SEO Hacks」というサイト名だったが、社名であるナイルを知ってもらいづらく、SEOの相談サービスがあることも伝わりづらかった。そこで、「ナイルのSEO相談室」というサイト名に変更することで、社名やサービス内容を検索ユーザーにわかりやすく伝えられるようになった。
その結果、「SEO 相談」で1位と2位を取ることができ、1位のランディングページはCVRのもっとも高いトップページとなっている(2021年8月現在)。
コンテンツ制作の“王道” コンテンツは既存のものを活用する
コンテンツ制作の王道は「コンテンツは既存のものを活用する」ことだ。コンテンツをゼロから考えるのではなく、社内に既に存在する営業資料や社内教育資料をホワイトペーパーや記事に活かせば、ネタ切れになることはない。
ナイルでは、マーケターが毎週営業ミーティングに参加し、営業資料などを活用可否の確認や、事例の収集を行っている。これにより、早いサイクルでコンテンツを出し続けてもネタ切れにならず、潜在顧客にも読まれやすいコンテンツを継続的に生み出すことができる。
大澤氏は2021年から、ダウンロードするホワイトペーパーを月に2~3本、ブログ記事は月間60本を目標に運営し、さらにコンテンツ数を増やしている。ダウンロード用のホワイトペーパーは、SEOだけでなくコンテンツ制作やGoogle アナリティクスなどの周辺知識に関しても用意することで、幅広い層にリーチが可能になった。
このように、「SATORI」のシナリオ機能とWebhook機能の2つを活用し、インサイドセールスやメールの自動化を進めると同時に、3つの“王道”を意識したオウンドメディアの改善を推し進めた結果、Web経由の資料ダウンロード数は1年で約10倍に、有効商談数は約3倍まで増加したという。
営業部門からの協力を取り付ける方法とは?
ここまでの取り組みを振り返ると、大澤氏の戦略や施策運営は順風満帆のように見えるが、ひとりで計画した施策が営業部門に受け入れられ、連携がうまくいったのは、初期の段階で営業部長から協力を獲得したことも要因ではないかと大澤氏は考えている。
我々のマーケティングチームの評価は営業部長が行っており、営業部の一部という捉え方をしています。そのため、チームの目標も「有効商談数の最大化」と定められています。そのため、営業メンバーが商談に持っていきやすいユーザーを呼び込まなくてなりません(大澤氏)
営業部門にデジタルマーケティングに労力を割いてもらえない、協力してもらえないと嘆くマーケティング担当者も多いはずだ。大澤氏は下記のようにお願いしてみるのはどうかとアドバイスする。
「受注しやすい案件の特徴を教えてください」「最近、インサイドセールスからトスされたこの案件はどうですか」「マーケティングチームでこんな取り組みをしようと思うのですが、●●さんはどう思いますか」など、日頃から営業部長や営業チームのメンバーにマーケティングで困っていることや気になる案件についてこまめに質問することで、マーケティングチームの相談に乗ってもらうことに慣れてもらうのが有効です。
このようなアプローチで、マーケティングチームは有効商談数を集めてくれる存在だと営業部門に理解してもらうことで、営業メンバーも積極的に協力してくれるようになったという。
営業部門からもらったさまざまな意見や見解は、重要な仮説として受け止めて、必ずコンバージョンの数値などデータを分析して再検証しましょう(大澤氏)
大澤氏は最後に、本セッションのポイントを下記の通り提示し、講演を締めくくった。
\Web担主催リアルイベントが“オンデマンド配信”決定!/
満席で申し込みできなかった講演も聞ける【12/13(金)18:00まで視聴可能】
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