商談化率が上がるMA導入は「目的の明確化」と「インサイドセールス部門との連携」がカギ
人材不足や顧客の購買行動の変化を背景に営業業務の効率化が求められ、MA(マーケティングオートメーション)の導入が急速に進んでいる。しかし、導入しても「成果が出ない」「活用しきれない」といった声も少なくない。成果を出すためには、はたしてどのようにMAを選定し、活用すればよいのか。
「デジタルマーケターズサミット 2020 Winter」に登壇したSATORIの尾崎氏とエッジテクノロジーの清水氏が、見込み顧客開拓を目的としたMA導入のコツについて、ベンダーとユーザーの両面から見た実際や効果について紹介した。
対面セールスに限界が来ている
MAツール「SATORI」を提供するSATORIと、営業支援ツール「GeAIne(ジーン)」を提供するエッジテクノロジーは、それぞれの営業活動で両社のツールを連携させて活用している。互いに「ベンダーであり、ユーザー」という関係だ。急成長中の日本のMA市場にあって、両社のツールとも順調にユーザーを獲得しているという。
その背景について尾崎氏は、「対面セールスに限界が来ていると感じている企業が多いため」と評し、それは次のような事象に現れていると語る。
- 顧客とのコミュニケーションの約85%が非対面(Webサイト、メール、電話など)になっている
- 自社サイトに来訪しているユーザーのうち97%は匿名の状態である
- 見込み顧客の75%は未だ購入検討のステータスにない
- それにも関わらずフォローしないと2年以内に80%が競合商品を購入してしまう
購入検討時期になるまでお客様は会ってくれない」という状況があり、それに伴って、MAを導入する企業が日々増えているというわけだ。
成功するMA導入は「目的の明確化」と「人・組織づくり」がカギ
だからといってMAの安易な導入は禁物である。尾崎氏は「MAツールの導入においては、なにより目的を意識することが大切」と語る。
目的について考える際に、ユーザーの「匿名・実名」と「今すぐ客・そのうち客」のマトリクスが参考になります。「今すぐ客×実名」ならば、すぐにインサイドセールスがアプローチし営業担当にトスアップします。その他のステータスについては、コミュニケーションを図りながら、最終的に「今すぐ客×実名」へと導くことが必要で、その領域を担うのがMAです。その ために「MAツールを、どのように使うか」を考える必要があります(尾崎氏)
組織や業務連携など「人」も重要な要素だ。現在SATORIでは、次のような部門に分かれて、明確なKPIを定めている(2019年2月時点)。
- マーケティング部門:リード獲得
- インサイドセールス部門:商談数
- フィールドセールス部門:受注数
- カスタマーサクセス部門:解約防止数
この体制になる2年半前、SATORIではマーケティング部門内に、初めて「インサイドセールス」の担当者を1名配置した。その後、営業との連携を密にするために2018年1月には営業部門直下にインサイドセールスチームを配置。さらに2019年1月には営業やマーケティング、カスタマーサクセスと並ぶ独立部門となった。
部門別にミッションが定められているが、互いの部署が強力に連携しながら業務を遂行することも重要だ。インサイドセールス部門のミッションは先述の通り、「商談数」だが、マーケティング部門が獲得したリードに対して、リード育成・抽出、商談化・追客まで幅広い業務を担うという。
そして現在、営業関連で最も大きな組織へと成長したSATORIのインサイドセールス部門は、下記の3つのチームに分かれている。
- SDRチーム:インバウンド対応。マーケティングから供給されるリードのフォローを行う
- BDRチーム:アウトバウンド対応。あらゆるチャネルを活用し、ターゲット企業に絞ったアプローチを行う
- パートナーチーム:パートナー企業ともにエンドクライアントの成功を支援するチーム
そしてこのBDRチームで、エッジテクノロジーの「GeAIne」を導入しているという。尾崎氏は導入理由について、「低コストで数千件にアプローチできる点、見やすいユーザーインターフェースに魅力を感じた」と語った。
新規営業開拓に有効な“フォーム営業”で決裁者にリーチする
エッジテクノロジーの「GeAIne」が提供する“フォーム営業”とは何か。エッジテクノロジーの清水氏は、「新規営業開拓で、決裁者にいち早くアプローチできる営業手法」と説明する。
エッジテクノロジーは、もともと5名体制で新規営業開拓を行っていたが、テレアポに疲弊し、問い合わせフォームやメールを手動で送っている状況に限界を感じていた。また、マーケティング施策にコストがかかり、アポ獲得単価が高額となりがちなことも悩みだった。そうした課題感の中で、「GeAIne」は効率的に新規ターゲットへのアプローチを実現するために開発されたという。
営業担当者は「課題を抱えている決裁者に、どれだけ早く、多く会えるか」を考え続けています。裏を返せば経営者は「いち早く課題を解決できる人に会いたい」と考えているはずです。そのための手法を模索したところ、問い合わせフォームでダイレクトに決裁者にアプローチするという営業手法にたどり着き、その効率化を考えました(清水氏)
サイトに公開されている問い合わせフォームなら、リード情報がなくても、ナーチャリングやインサイドセールスなどを飛ばしてでも、決裁者に直接アプローチができ、通常の営業メールよりも開封率が高いという。リード情報がなくても、ターゲット企業へアプローチすることができ、アポ獲得につなげられる。これが“フォーム営業”だ。
アンノウン(匿名)に対する施策を打ちたい
しかしエッジテクノロジーでは、アウトバウンドに対しては自社ツールである「GeAIne」でアプローチできるものの、その後のリード管理やナーチャリングが十分にできていなかったという。また、展示会を開催してリードを獲得したものの、同様に的確な管理ができていなかった。そこでインサイドセールス担当を配置し、「SATORI」を導入することにした。
「SATORI」導入の決め手となったのは、獲得したリードの管理やナーチャリングに加えて、マーケティングからの「アンノウン(匿名)に対する施策を打ちたい」という要望にも対応していたことです。その両者に対応できることから、高い費用対効果が見込めそうという判断がありました(清水氏)
「SATORI」で商談化率と受注率が大幅に向上
では、お互いにユーザーでありベンダーである両者が、「GeAIne」と「SATORI」を活用してどのような変化が生じてきているのか。
エッジテクノロジーでは、当初は清水氏が「SATORI」の運用を担当し、メール送付やセミナーへの誘致などを行ってきたが、「導入して約3か月後より、セミナーからの商談化率が急に上がってきた」と語る。セミナー開催後にも継続して「SATORI」を活用して資料のダウンロードやサイトへの誘致を行い、コミュニケーションを取り続け、“思い出してもらえる存在”になったことが大きいという。ただし、この時にはまだ受注率向上にはつながっていなかった。
その後、2019年7月にインサイドセールス専属の担当が入ったため、「SATORI」を利用してサイトから資料をダウンロードした人にアプローチを開始したところ、1か月後には商談からの受注率が15~20%から30%にまで向上したという。
この理由として考えられるのは、インサイドセールス担当者とMA「SATORI」の連携によって、見込み顧客のフェーズに合わせたコミュニケーションが実現したからだと考えます。サイトの閲覧履歴やページ遷移などの分析によって、受注可能性の高いリストがとれるようになり、商談化だけでなく受注率も上がりました(清水氏)
さらに「サイトへのアクセスがあり、企業名はわかるが担当者がわからない」というリードを「SATORI」でリスト化し、「GeAIne」でフォーム営業を行ったところ、12件中1件の商談につながったという。
このように、「GeAIne」と「SATORI」を連携させて新規営業開拓を実施したところ、「SATORI」導入前は30社程度だった「GeAIne」の導入企業が、現在は大手企業も含めた350社に到達するほどになった。こうした成果を受け、現在では清水氏が所属するAIプロダクト事業から、他部門へと活用範囲を広げているという。
「SATORI」と「GeAIne」の連携で商談創出
一方、SATORIにおける「GeAIne」の活用について尾崎氏は、「ツールの特性上1回のフォーム送信から商談化につなげるのは難しい部分もあった」と語り、「GeAIne」の使い方を切り替え、事例集などをリンク先としてサイト閲覧を促すようにした。
その結果、「SATORI」を認知していない匿名層を自社サイトに誘導することができ、ホワイトペーパーのダウンロードは30件/月ほどになりました。このような形で導線を作ることにより、インサイドセールスが電話する“実名見込み顧客”を作ることに成功しました。その中から月6件程度、四半期で18~20件と、効率的に商談を創出しており、契約に貢献した実績もでてきています(尾崎氏)
最後に尾崎氏は「『GeAIne』は、実名リードのない企業を商談に繋げることに効果があった」、清水氏は「リードに対してできていなかったナーチャリングを『SATORI』で効果的に行えた」とお互いのツールについて評し、「実名リードを持っていないゼロの状態から、いかに質の高い商談を獲得し成約に結びつけるか。私たちの知見をMAツールを活用する一助にしてほしい」と語り、セッションの結びとした。
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