リード獲得数14倍「匿名ナーチャリング」実践モデルを解説。MAで見込み顧客を増やす最新事例も
Webサイトにおける顧客の行動を分析し、ページの閲覧回数・頻度などを元に見込み顧客(リード)を探し出すMA(マーケティング・オートメーション)は、近年急速に広がっている概念だが、Webサイト訪問者の大多数を占める「匿名顧客」に対しては、必ずしも有効に機能していない場合がある。
その現状を打破するためには、どのような取り組みを行えばいいのか。「デジタルマーケターズサミット 2019 Winter」において、匿名ナーチャリングに強いMAツールを提供するSATORIの石坂氏が解説した。
リードマネジメントの3ステップ
SATORIは2015年9月の創業以来、一貫してMAツール「SATORI」の開発・販売を手がけている。「SATORI」の導入企業は約400社、顧客からは「Webでの集客に強いMA」との評価が多く寄せられているが、その中核とも言えるのが「匿名ナーチャリング」機能だと石坂氏は説明する。
ナーチャリングは「教育」「育成」といった意味があり、今やWebマーケティングではおなじみの概念だ。石坂氏は、基礎をしっかり理解するために「リードマネジメント」の解説から講演をスタートした。
マーケティングにおけるリードとは、「見込み顧客」のこと。リードマネジメントは以下3つの段階から構成される。
- リードジェネレーション(集客)
- リードナーチャリング(育成)
- リードクオリフィケーション(絞り込み)
1. リードジェネレーション
リードを収集すること。展示会などに出展して顧客から名刺を集めたり、飛び込み営業などでリードを獲得する「アウトバウンド」型と、Webサイトにユーザーを招き入れ、資料をダウンロードしてもらう際にメールアドレスを入力してもらったり、問い合わせフォームを設けて顧客からの連絡を受け付ける「インバウンド」型がある。
2. リードナーチャリング
リードを「育成」すること。興味関心の高い情報を提供し、購買意欲を醸成させる方法全般を指す。担当者へ直接電話したり、対面で商談したり、あるいはメールマガジンを配布するといった行為などが挙げられる。
3. リードクオリフィケーション
リードナーチャリングの過程では、購買意欲が高い顧客・低い顧客が混ざってしまう。これを選別し、購買意欲の高い顧客だけを絞り込み・リスト化することを「リードクオリフィケーション」と呼ぶ。基準は一定ではないが、たとえば、面会した際に顧客が積極的に質問してきたり、Webサイトの料金解説ページを頻繁に見ているユーザーは「意欲が高い」と判別されるだろう。
リードマネジメントを理解する上で意識すべき2つの“軸”
リードマネジメントを理解する上では、さらにいくつかの“軸”を意識しなくてはならない。1つめの軸は「リアルかネットか」である。
たとえば、展示会で名刺を交換するのは「リアル(現実世界)」でのリードジェネレーションであるし、Webサイトの行動履歴をスコアリングして購買意欲の高低を測るのは「ネット」でのリードクオリフィケーションになる。
加えて、「実名か匿名か」も非常に重要だ。オンライン広告やSNSへの書き込みを通じて自社サイトへ流入した顧客は当然「匿名」である。メールアドレスや電話番号、氏名などをサイト運営側が知る由はない。そうした匿名顧客にアプローチし、匿名のまま態度変容を促していくのが「匿名ナーチャリング」だ。
なぜ匿名ナーチャリングが必要なのか
石坂氏によると、商品に興味を持ってWebサイトを訪れる訪問者のうち、メールアドレスを認知している「実名顧客」はわずか3%程度にとどまり、「匿名顧客」が97%と大多数を占めるという。
一方で、「SATORI」はWebサイトを訪れた顧客にMAによってアプローチすることで、この比率を「匿名顧客76:実名顧客24」まで引き上げた。つまり8倍の顧客リストを構築した実績があるという。
匿名顧客へのアプローチは、今後ますます重要になる。インターネットがない時代であれば、顧客は営業マンを呼んで話を聞いていた。しかしネット全盛の現在、顧客はネット上で「情報収集」「商品選定」を済ませてしまい、営業マンが売り込みをかける余地が減ってしまっている。この「非対面化」は年々進んでおり、ガートナージャパンによれば2020年に85%にまで増えると言われている(石坂氏)
商品選定段階の顧客に営業マンが会える可能性が減るということは、匿名顧客が相対的に重要になる。しかし匿名顧客の電話番号を調べることはできない。メールマガジンを送りたくても送り先のアドレスはわからない。これでは営業マンがやれることがなくなってしまう。だからこそ、「匿名ナーチャリング」が必要になってくるという訳だ。
匿名ナーチャリングを行うにあたっての課題とは
匿名ナーチャリングは、そもそもインターネットマーケティングの世界において一般的な考え方ではない。その理由として、下記がある。
- 可視化の問題:匿名顧客の数や各々の嗜好が見えない
- コミュニケーションの問題:匿名顧客へ個別にアプローチできない
匿名顧客はまず可視化すること自体が難しい。ユーザー数はもちろん、さらに趣味・嗜好までを匿名のまま把握するのは極めて困難である。そして、匿名顧客の電話番号やメールアドレスがわからない以上、顧客の趣味嗜好に応じて、メッセージの“出し分け”をしようとするとさらにハードルが上がってしまう。
とはいえ、ナーチャリングとは本来「顧客の興味や課題に合わせた情報を提供すること」に意味がある。ユーザーが匿名なのか、あるいは実名なのかはあくまでマーケター側の都合であって、本来はすべての顧客に“出し分け”を行ってしかるべきだと石坂氏は指摘。それを実現しうるのが「SATORI」の強みだとアピールした。
「キラーコンテンツ」で購買意欲の高い見込み顧客判定、「ポップアップ」で匿名顧客に個別メッセージ
「SATORI」は、2つの機能によって、匿名ナーチャリングを手助けする。
- 顧客DB
- コミュニケーション
まず、「SATORI」は実名顧客・匿名顧客を単一データベースで一元管理できる。もちろん名刺、SFA/CRMの情報なども取り込める。メールの送受信歴や資料DL履歴、ウェブ閲覧履歴といったオンライン行動履歴も記録できる。一方で、匿名顧客についてはCookieで行動を追跡し、具体的にどんなページを見ているかも匿名のままで把握できる。
次にコミュニケーションだ。「SATORI」は、顧客によってWebコンテンツを出し分ける「Webサイトのパーソナライズ」と「Webサイトへの再訪施策」の2つのコミュニケーションで顧客にアプローチができる。これを活用した匿名ナーチャリングのモデルはこうだ。
- 行動履歴から購買意欲の高い見込み顧客を絞り込む
- Webサイト回遊&申し込み誘導
- Webサイト再訪対策
ステップ① 行動履歴から購買意欲の高い見込み顧客を絞り込む
顧客がサイト内でどんな行動を取っているか把握できたら、まず「キラーコンテンツ」を探す。キラーコンテンツとは「購買意欲が高い人しか見ないページ」のことで、たとえば、SATORIでは「料金ページ」「他社MAとの比較ページ」の2つだ。これらを週に3回見ているユーザーに対して商談を持ちかけると、成功率が高いという。
キラーコンテンツ(URL)が見つかったら、そのページを「SATORI」に登録。あとは、該当するコンテンツを見たユーザーだけを「SATORI」が自動でグルーピングしていってくれる。
ステップ② Webサイト回遊&申し込み誘導
絞り込んだ顧客に対して、「ポップアップ」「エンベッド」の機能を使って、ユーザーごとにパーソナライズしたメッセージを届ける。
ポップアップは、該当ユーザーがWebサイトにアクセスしてきた際、ブラウザー内の四隅などにメッセージウインドウを表示させる方法だ。一方のエンベッドは、Webサイト本文のうち一部分をユーザーごとに差し替え、よりダイナミックにパーソナルなメッセージを伝えることができる。
これらの工夫を組み合わせると、セミナー開催概要ページを何度も見ている、つまりセミナーに参加するか迷っているユーザーにだけ、次回のWebサイト来訪時、TOPページでいきなりセミナー申し込みフォームをポップアップさせるといったことも可能だ。
弊社では週に2回ほどセミナーを開催しているが、集客にメールは使わない。このポップアップだけで十分集客ができている(石坂氏)
ステップ③ Webサイト再訪対策
自社Webサイトから離脱してしまったユーザーに対しても、ブラウザーのプッシュ通知機能でメッセージを送ったり、リターゲティング広告と連携してメッセージを表示したりなどの方法で個別アプローチが可能になる。
リード獲得数が5倍や14倍になったケースも
「SATORI」導入に際してサイトを改善し、キラーコンテンツへの導線を整理した結果、大きな成果を上げている企業も出てきている。
たとえば、某オウンドメディアコンサルティング会社では、自社サイトを分析し、構造やコンテンツの徹底的な見直しを行った。そしてサイト改善をしたうえで、ダウンロード用資料を拡充させた。これらをポップアップ機能でわかりやすく明示する体制としたところ、3か月でリード獲得数が5倍になった。
また、某HRtech関連のSaaSベンダーでは、全顧客に対して一斉にメールマガジンを送付し、そこからの反応を詳細に分析、“既存顧客に人気のある記事は、新規顧客の獲得にも有益”との仮説を立て、「SATORI」で実際に検証した。結果を基に、キラーコンテンツの拡充、ポップアップによる告知などをこまめに実施した結果、リード獲得数が約2か月で14倍にもなったという。
石坂氏は「MAの中でも、標準機能で匿名顧客にアプローチできるのは『SATORI』だけ」と強調。またせっかく導入したMAを最大限に活用して成果を出していただくために、利活用セミナーの開催やユーザー会で成功事例の共有などにも務めている。また、「SATORI」は国産のMAでもあり、操作性はもちろん、日本市場にフィットした素早い導入サポートも、大きなアドバンテージだ。
石坂氏は「大企業であっても、まずはミニマムでMAを始めたいというケースは多いと思う。たとえば、採用関連限定、自社のブログ限定など範囲を限定して『SATORI』を使っていただくのもオススメ」とアドバイスし、まずはMAの利便性を実際に体感してほしいと呼び掛けた。
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