【レポート】デジタルマーケターズサミット2021 Summer

デマンドジェネレーション組織に必要な10の要素とは?

東芝デジタルマーケティングイニシアティブが実践する、デマンドジェネレーションを推進する組織のあり方を具体的な事例をあげて解説する。
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BtoB企業が行うマーケティング活動「デマンドジェネレーション」を効果的に行うためには、専門性の高い人材とそのチームを動かしていく組織作りが必要になる。そのため、東芝デジタルマーケティングイニシアティブでは、自社のデマンドジェネレーションを推進するための新組織を設立した。

デジタルマーケターズサミット 2021 Summer」に登壇した同社の内村裕香氏は、その新組織を例に、デマンドジェネレーション組織のあり方を語った。

東芝デジタルマーケティングイニシアティブ ソリューション本部 デジタルマーケティング部 参事/マーケティングストラテジスト 内村裕香氏

「デマンドジェネレーション」とは?

「デマンドジェネレーション(Demand Generation)」とは、営業案件の創出・発掘活動のこと。主にマーケティング部門が主体となって実施されるもので、さまざま手法を使ってリード(見込み客)を見つけ、商談化率の高そうなリードを最終的に営業部門へと渡し、案件化まで実施する。デマンドジェネレーションは、一般的には以下の3ステップから構成される。

  1. リードジェネレーション(見込み客の獲得)
  2. リードナーチャリング(見込み客の購買意欲を高める)
  3. リードクオリフィケーション(購買意欲の高い顧客を絞り込む)

見込み客を見つけ、購買意欲を“育てる”ための手法は、かつてなら電話営業や展示会などのアナログマーケティングが主流だった。しかし現在は、インターネットをはじめとするデジタルテクノロジーを使ったデジタルマーケティングも活用されている。

内村氏が所属する東芝デジタルマーケティングイニシアティブは、BtoB企業のマーケティング支援を専門とする。現在は東芝グループ以外の企業のサポートも広く手がけているが、自社自体がBtoBを体現する企業でもある。本講演では、自社がデマンドジェネレーションにどう取り組んできたのか解説した。

部門単位のデジタルマーケティング、その効果と弊害

マーケティングが多岐にわたるなかで、顧客とのタッチポイント(接点)が爆発的に増加した。マーケティング理論における4つのPにうちPromotion(宣伝・販売促進)だけをみても、内村氏が以下の図で示すように多数存在する。

現代マーケティングにおける顧客タッチポイントの例

『デジタルマーケティング』という言葉のカバーする範囲が広がった。その結果、企業のなかでは各部門がそれぞれ独自に、できるところからパラパラとデジタルマーケティングに取り組み始めているというのが実情だ(内村氏)

つまり、何も土台がないところからいきなりデジタル施策を始めるケースは少ない。たとえば、それまでマス広告を担当していた部門がデジタル広告も始めるなど、 “アナログとデジタルの組み合わせ”について、試行錯誤があると内村氏は指摘する。

各部門がそれぞれ、デジタルマーケティングへの対応を考え、バラバラに行動している

そうした部門別の施策は、実行されることで成果を出し、KPIの達成に向けて少しずつ洗練されていく。これが「個別最適」の状態だといえる。ただし個別施策が増えていくと、次のような弊害も出やすい。

  • 似たようなメールが短期間でお客様に届く
  • イベント後にお礼メールが重複して送信される
  • 広告とランディングが連動していない
  • 同じような販促物が重複する
  • イベントの来場者数にフォーカスしてしまう

部門にとってKPI、個別最適は大切だが、真に求められるべきはその上位、企業全体のKGIである。近視眼的な目的に終始することなく、「全体最適」を目指すことが重要になる。そしてそのためには、“顧客コミュケーションの一貫性”が必要なのだという。

つまり、リードジェネレーション→リードナーチャリング→リードクオリフィケーションというデマンドジェネレーション活動に筋を通すことがポイントとなる。この活動をマーケティングファネルにあてはめたのが次図だ。徐々に関係性を強化して、顧客の購買意思を高める施策を行うわけだが、その際にも大切になるのが一貫したコミュニケーションだ。

各ファネルステージに属する顧客を右ステージにシフトさせていくことで顧客の購買意思が高まり、商談につながる

デマンドジェネレーション活動の一貫性を保つために必要なこと

事業部制をとる企業の場合、取扱製品ごとに事業部が存在し、従業員はあくまで事業部門単位で活動する。営業担当者は自分が所属する事業部の製品を扱い、宣伝担当者もまた同様だ。

こうした場合、極論すれば1人の顧客に対して全事業部門が個別にコンタクトをとるケースがある。だが、これは顧客側からすると、“一貫性がある”状態とはいえない。よって、事業部門の個別施策すべてに“横串”を通し、それぞれの施策を協調・連携させることが一貫性確保の第一歩となる。そして、次図のようなことが期待できる。

各事業部に横串を刺すことで期待できること

だが、個別施策を行う各事業部に横串を刺したとしても、全体的な戦略をみる人がいなければ、デマンドジェネレーション活動に一貫性をもたせることができない。

各事業部の各施策を行うプロフェッショナルを料理人に例えるなら、各料理人は美味しい料理を当然のように作る。しかし、その料理をコース料理として提供する場合は完成度が怪しくなる。コースの構成内容や料理の提供順、そして味付けの最適化はもちろん、お客さんに再度来店いただくことなども考える料理長の立場の人が必要だ(内村氏)

デマンドジェネレーション活動の一貫性を保つには、戦略・分析を行う人(料理長)、各施策のプロフェッショナル(料理人)、また各製品のエバンジェリスト(食材のプロ)の支援が必要になる

デマンドジェネレーション組織に必要な10の要素

顧客とのコミュニケーションに一貫性をもたせ、さらにデマンドジェネレーションを効率化するには、それだけの組織体制の整備が欠かせない。そのために必要な要素を内村氏は10個挙げた。順に見ていこう。

デマンドジェネレーション活動を効率化する組織に必要な10の機能

1. マーケティング戦略

内村氏のいう“料理長”を据え、全社的・事業部横断的な発想でマーケティングを行っていこうという戦略そのもの。

2. Webサイト

企業によるSNS活用などは広がっているが、BtoB領域でのデマンドジェネレーションとなるとまず重要なのはWebサイト。すべてのデジタルマーケティングの基盤といってよい。

3. 広告

製品について知らない、社の存在を認知していない生活者を誘引するためには、広告もまた重要な存在だ。

4. 動画

商品の認知、購買意欲の活性化、ブランディングなどの観点から動画の重要性は近年高まっている。また内村氏は「若年層にとって、動画サイトは『第3の検索エンジン』といってもよい存在」と述べ、将来的な動向を踏まえれば、動画についての知見は欠かせないという。

5. イベント

セミナーの開催や展示会の出展などを指す。BtoBマーケティングでは元々、関係者が直接相対するオンサイト(現場)型のコミュニケーションが重視されてきた。コロナ禍ではその代替として、オンラインウェビナーの注目度が一気に高まった。

デジタルマーケティングにおける「イベント」の位置付け

6. MA(マーケティングオートメーション)

メールを用いたマーケティング手段は、メールの受信側にとっては「未読のメールがすぐ溜まってしまう」などの悩みがあるが、送信側にとっては、スポット的とはいえ送った分だけの成果が着実に出る、有効な手段であることは疑いようがない。MAツールと組み合わせれば、Cookieとの併用によってサイト閲覧履歴なども判別できるようになり、「マーケティングファネル」における段階の変化、たとえば認知から興味・関心への変化もトラッキングできる。

7. 分析

ここまで列挙した要素は、実施されたらその成果を正確に計測しなければならない。ただし個別最適化が進んでいれば、施策と分析はワンセットで、部署単位のKPIは日常的に計測されているのが一般的である。

8. リーガル

マーケティング活動では、なんらかのかたちで顧客情報、つまり個人情報を扱う。GDPR(EU圏における一般データ保護規則)、CCPA(米国カリフォルニア州 消費者プライバシー法)など、個人情報のプライバシー保護強化は大きな潮流となっているが、日本でも2022年4月に改正個人情報保護法が完全施行される。法的動向にいち早く対応するためには、マーケティング部門はリーガル部門とも積極的に連携しなければならない。

9. IT

インフラとしてのマーケティングツール全般(CRM、SFAなど)の整備も、デマンドジェネレーションには必要である。

10. 営業

Webやイベントなどで顧客の購買意欲を高めていき、見込み度が高まった顧客の情報を営業部門に受け渡すことが、デマンドジェネレーションの最終段階である。

10の要素を踏まえた組織作り

東芝デジタルマーケティングイニシアティブでは、上記10項目のうち、リーガル、IT、営業以外の要素を受けもつ部署「デマンドセンター」を組織した。そして、リーガル部門、IT部門とは必要なときに相談できる関係性を築いているという。また、社内の他部門との調整を目的とする、窓口機関も別途設置した。

マーケティング戦略、コンテンツ、マーケティングオペレーションを推進するデマンドセンターを設置

デマンドセンターはその横断的な性質からもわかるように、社内調整が極めて重要なミッションである。そこでデマンドセンターのセンター長には役員が就任している。「組織構成上しっかりした発言権を確保しておくことは、その後の業務の円滑度を高めるためにも非常に重要だ」と内村氏は強調。調整のために過度な時間や労力をかけないためにも、意識すべきポイントだとした。

「デマンドセンター」では、Webや展示会といった個別の施策に詳しい専門家(ここでは“料理人”とする)が専従ないし兼務というかたちで所属する。そして、その施策に一貫性を保つため、“料理長”がマネジメント・戦略担当で腕を振るう。また、マーケティングの専門性はないが商品知識が豊富な“食材のプロ”の力も借りる。これが東芝デジタルマーケティングイニシアティブ流のデマンドジェネレーション組織だ。

人材は「育てる」という中長期的アプローチが重要

ただし、死角はあると内村氏も認める。兼業メンバーは、本来の所属部署の仕事を優先するため、業務量にはどうしてもムラが出てしまう。また“料理人”は専門知識豊富な一方で、必ずしもマーケティング全般に精通しているとは限らない。

“料理長”に求められるスキルはさらに高い。マネジメント力、コミュニケーション力、顧客思考、クリエイティブ、ITリテラシー、どれも兼ね備えるというスーパーマン的な人材は人数も限られる。この人材不足解決のための短期的手段としては、協力会社からの支援を得たり、人材獲得を積極的に行ったりすることがあり得るが、最終的には“育成”という中長期的アプローチが重要だという。

また「社内横断の新組織の設立」となると、革新性ゆえ、机上の設計の段階で議論が空転する恐れもある。「まずは実行することが、デジタルの時代に相応しいのではないか」――内村氏はそう述べ、講演を締めくくった。

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