顧客接点を作りCVアップにつなげる! MAツール×コンテンツ活用 5つのTIPS
顧客と企業のコミュニケーションがデジタル中心となった現代において、“コンテンツ”に寄せられる期待がますます高まっている。いかにコンテンツを活用して潜在顧客に自社を認知してもらうか、コンバージョンにつなげていくか、試行錯誤を重ねている企業も多いだろう。
そこで、「デジタルマーケターズサミット 2022 Winter」では、コンテンツマーケティング支援を行っているFaber Company の月岡克博氏をモデレーターに迎え、オウンドメディアでのMA(Marketing Automation:マーケティングオートメーション)とコンテンツの効果的な活用法について、SATORIの宮林彩智子氏に成功体験を伺った。
新規コンテンツ数を減らしても、コンバージョンが増加!
本セッションは、SATORIのコンテンツ運用体制の話からスタートした。現在、主にコンテンツ制作に携わっているのは、担当者とダブルチェック者の2名。さらに四半期に1回、上長を交えて方針策定を行っているという。
コンテンツ運用としては、大きく2つある。1つ目がオウンドメディア「SATORIマーケティングブログ」(以下、ブログ)。2つ目がホワイトペーパーの制作。これら2つのうちブログに関しては、Faber Company がコンテンツマーケティングの支援を行ってきた。
1ヶ月に公開するブログは2本、ホワイトペーパーは四半期に1本というペースだ。新規コンテンツ数は少なく感じるかもしれないが、すでに一定量のコンテンツを蓄積していることに加え、新規公開だけでなく、過去記事のリライトも行っている。
以下は、ブログとホワイトペーパーへのアクセス状況をグラフにしたものだ。緑の棒グラフはブログのリリース数(左)・ホワイトペーパーのリリース数(右)を示し、赤の折れ線グラフはPV数(左)・ダウンロード数(右)を示す。2020年4月時点と比べるとブログの月当たりのPV数は約2.3倍、ホワイトペーパーダウンロード数は約3倍となっている。
このグラフによると、新規コンテンツのリリース数を減らしても、コンバージョン(CV)数が増加していることがわかる。
コンテンツの捉え方をかなり変えました。今までは、『コンテンツをどれだけ作るか』と考えていましたが、『どのようにコンテンツを活用するか』という思考に変換したところ、CV数が増えました(宮林氏)
では具体的に、どのようにコンテンツを活用したのだろうか?
コンテンツ活用での重要な視点とは?
SATORIでは、来訪者を検討度合いに応じて2つに分類している。製品の比較検討をしている人、つまり“MAの導入を具体的に考えている人”を「今すぐ客」と定義し、マーケティングの基礎情報などを情報収集している方、“今後MA導入検討の可能性を秘めている方”を「そのうち客」と定義しているのだ。
宮林氏は「他の業界の場合も同様に分類することができる」と話す。たとえば、不動産サイトなら今物件を探している人を「今すぐ客」、住環境を変える可能性のある人を「そのうち客」と捉えることができる。
こうした話を受け、月岡氏は「コンテンツマーケティングをやってもCVに至らないという相談を受けるが、その場合、そのうち客に向けたコンテンツしか用意していない場合も多い。それぞれのニーズに合わせたコンテンツを作っていく必要がある」と宮林氏の話に同意した。
では、それぞれに対してどのようにアプローチしているのだろうか?
MAツールを使って顧客の検討状況を把握し、適切なタイミングで、適切なコンテンツを提供するようにしています(宮林氏)
たとえば、そのうち客向けには、マーケティングの情報収集に役立つ情報や資料、課題解決セミナーの案内をお届け。今すぐ客向けには、ツール活用に特化したセミナー情報や比較のための資料、事例集などを届けるようにしているという。
続いて、月岡氏はSATORIが実践している顧客接点の作り方のTIPSを、次の5つに整理。宮林氏に具体的な施策例を聞きながら、それぞれを解説していった。
- TIPS①:来訪コンテンツごとに誘導先を最適化
- TIPS②:興味度合いによって誘導先をキラーコンテンツに
- TIPS③:CV直後に別オファーでさらなるCV獲得
- TIPS④:メール以外でもコンテンツへの再訪促進
- TIPS⑤:閲覧コンテンツに合わせた行動喚起のシナリオ化
TIPS① 来訪コンテンツごとに誘導先を最適化
1つ目のTIPSは、コンテンツごとに訪れるユーザーの属性を考えて、誘導先をポップアップで出し分けることだ。新規獲得に効く施策になる。
まずは、次のような仮説を立てた。
- そのうち客が求めているのは、SATORIの入門的なコンテンツなどお役立ち情報が多い。
- 今すぐ客が求めているのは、導入事例やマーケティングブログの中でもMAについて解説している記事が多い。
この仮説に基づき、そのうち客向けに、トップページでマーケティングの基礎をまとめた資料のダウンロードを訴求や、情報収集目的でサイト内を回遊している人に、お役立ち資料を案内したところ、サイト内のCVの底上げとなった。
一方、今すぐ客向けとして、導入事例を見ているが事例集をダウンロードしていない人に事例集を訴求したところ、事例集のダウンロード数は150%になった。さらに、Webサイト/ブログのMAのカテゴリを見ている人にMAカテゴリのセミナー告知をしたところ、CTR(Click Through Rate)は130%となり、セミナー申込みの獲得にもつながっている。
以前のトップページでは、今すぐ客向けの製品資料、問い合わせ先を案内していましたが、そのうち客向けの案内を追加したところ、今すぐ客のCVを下げずに、新しいCVを増やせました。また、セミナー案内のポップアップの文言を「SATORI紹介セミナー」から「MAの疑問を解決!」のように変更したことも効果につながりました(宮林氏)
なお、ポップアップツールを使わず、コンテンツそのものにダウンロードフォームを設置しているケースもある。たとえば、基礎的なマーケティングのブログ記事の最後に、そのトピックと関連するホワイトペーパーのダウンロードフォームを直接埋め込んだのだ。ホワイトペーパーをダウンロードした顧客のうち、新規リードは50%ほどであるのに対して、この施策経由でホワイトペーパーダウンロードした顧客は新規リードが70%であった。
TIPS② 興味度合いによって誘導先をキラーコンテンツに
2つ目は、MAツールの機能を使い、ユーザー行動に合わせてバナーを出し分けて、キラーコンテンツに誘導することだ。たとえば、今すぐ客のうち、よくブログを訪れている人、MA関連のコンテンツをよく見ている人に、バナーを表示してキラーコンテンツに誘導している。SATORIでは、この結果、キラーコンテンツのPVが上昇した。
キラーコンテンツは、見込み客に刺さるキーワードを意識して作成していますが、そのキーワードは、営業部門と相談してチューニングしながら改善しています。営業部門に気軽に相談できることが、こうした施策につながりました(宮林氏)
TIPS③ CV直後に別オファーでさらなるCV獲得
3つ目が、コンバージョン後のThanksページのような完了ページで、資料ダウンロードした人にはセミナー申込みのバナーを、セミナー申込みをした人には資料ダウンロードのバナーを表示するといった施策だ。その結果、通常のブログ記事の中に埋め込んだバナーと比べて、CTR(Click Through Rate:クリック率)は3倍、CVR(Conversion Rate:コンバージョン率)は6倍になったという。
すでに個人情報入力のハードルを乗り越えていて、モチベーションが高いときのオファーは受けやすいという心理があるのかもしれない(宮林氏)
さらに、CV向上に効果がある2つの施策も発見した。
ポップアップの案内先をLPとする
1つは、ポップアップで資料のダウンロードを案内するときに、資料を一覧にまとめたLP(Landing Page:ランディングページ)に誘導する施策だ。実施前は、LPを入れるとユーザーの手間が増えるので、ダウンロードが減るのではないかという懸念があったが、意外にも複数ダウンロードする人もいて、CV数が増加した。月岡氏は「どんな資料を案内していいかわからないという人は、資料ダウンロードフォームをまとめたLPに誘導するというアイデアを参考にしてほしい」と提案した。
メルマガ登録をライトなCVとして設定する
もう1つは、メルマガ登録をライトなCVとして設定することだ。セミナー申込み、資料ダウンロードはハードルが高いと感じても、氏名とメールアドレスだけで登録できるメルマガは登録しやすい。実際に、月に10数件の登録があるという。さらに、メルマガで資料ダウンロードやセミナーを案内すれば、興味をもった人はさらなる情報も入力しやすくなる。
なお、メルマガは月に10回ほど配信しているが、ユーザーに合わせて最適なコンテンツを届けるようにしている。たとえば、製造業のユーザーには、製造業に関するセミナーや事例を案内しているのだ。
TIPS④ メール以外でもコンテンツへの再訪促進
4つ目は、メール以外の来訪促進を考えることだ。宮林氏がおすすめするのは、Webサイトからのプッシュ通知だ。Webサイトに来訪した人にプッシュ通知のオプトインをしてもらい、プッシュ通知を配信している。
月岡氏が「プッシュ通知は一度許可しても、その後拒否される率が高いのでは?」と質問すると、「コンテンツの出し分けによって、拒否率を下げている」と宮林氏は答えた。
最初は、全員に同じ情報を配信していたので拒否率が高くなってしまいました。そこで、行動データをもとに「今すぐ客」と「そのうち客」に分けて、コンテンツを配信したところ、拒否率を抑えられるようになりました。プッシュ通知は、メールアドレスがなくても配信できるのでおすすめの施策です(宮林氏)
TIPS⑤ 閲覧コンテンツに合わせた行動喚起のシナリオ化
5つ目は、たとえば今すぐ客がWebサイトを訪問して、キラーコンテンツを閲覧していることをMAで検知したら、メールでセミナー案内を自動的に配信することだ。自動化することで、抜け・漏れなく、必要な情報を配信できるという。
閲覧コンテンツに合わせたメール配信は、MAツールを活用しているからこそのシナリオですね。たとえば、問合せページまで進んだけれどCVに至らなかった人に、1クリックでダウンロードできる資料を提供するといったシナリオも効果がありそうです(月岡氏)
まとめ:今すぐ客、そのうち客、それぞれの接点を最適化しよう
なお、Faber Company ではMAツール「SATORI」を、SATORIではFaber Companyの提供する「ミエルカ」を使っているので、それぞれの製品の感想を語りあって講演を締めくくった。
「ミエルカ」はユーザーの検索ニーズを簡単に可視化できるので、ニーズに合わせたコンテンツ作りに活用しています。公開後の記事の分析も可能なので、既存コンテンツの改善、リライト作業の効率化にもつながっています(宮林氏)
最初は1人マーケターだったので、リード獲得から育成まで一気通貫で実施可能な「SATORI」を導入しました。今はメンバーが増え、権限委譲をして3年目の社員を中心に活用しています。経験の浅い人でもすぐに使いこなせるUI(User Interface:ユーザーインタフェース)ですし、メルマガやLPも簡単に作れるので便利です。少人数でスピード感をもって業務をまわしたい方にもおすすめです(月岡氏)
ソーシャルもやってます!