コンバージョンを増やすには? 「今すぐ客」を増やす“匿名見込み顧客”の育成方法とは
見込み顧客のほとんどは、デジタル上で情報収集や比較検討、購買まで行う。であれば、企業はデジタル上でいち早く見込み顧客とコミュニケーションする必要がある。それを支援するのがマーケティングオートメーションツール(MA)だ。このMAの正しい使い方をマスターしている企業はどれだけあるだろうか。
「Web担当者 Forumミーティング2019 in 名古屋」に、SATORIの相原氏が登壇し、マーケティングオートメーションを活用したデジタル上での顧客接点の作り方、効率的にコンバージョンを獲得する手法を、事例を交えて紹介した。
大多数である匿名顧客とコミュニケーションを取る
相原氏は、今のWebマーケティング上の課題について、2つの数字で示した。
- 売り手と買い手のコミュニケーションのうち、「85%」は非対面(デジタル上)でなされる
- 自社のWebサイトに訪れる「97%」が匿名状態で離脱し、打ち手がない
最近は、何かを買おうと思ったらほとんどの人間がまずはデジタルで情報を調べる。そうして自社サイトを訪れた見込み顧客のほとんどは、接触してくれているが、名前やメールアドレスの収集まで至らない「匿名顧客」ということになる。
それを実感するために、購買プロセスを4つの段階に分けてみよう。
- 第1段階:課題解決のために調査する
- 第2段階:製品・サービスを探す
- 第3段階:資料で比較する
- 第4段階:本格的に購入検討する
買い手の行動は、第1段階でWebでの検索、第2段階でサイト訪問、第3段階で資料請求といったところだろう。そして、第4段階では営業担当と会って商談が始まる。マーケティングオートメーション(以下、MA)の守備範囲はこのうち第1~第3段階で、第4段階はSFAやCRMの守備範囲となる。
企業側から見ると、第1段階と第2段階は、まだ相手が誰だかわからない「匿名顧客」の状態で、第3段階になって初めて「実名顧客」となる。SATORIによると、何も手を打たなければこの実名化まで至る匿名顧客はWebサイトに訪れた見込み顧客の約3%程度という。言い換えれば、実名顧客のみを対象としているMA施策だけでは、多くの機会を損失しているということだ。
MAツールは国内外の製品が多数あり、市場としても活況だ。しかし相原氏によれば、多くのMAツールは、メールアドレスや名前、電話番号などがわかり、実名化した後で活用できるものだという。いまだに「MA=メールマーケティング」、としての活用しかできていない企業も少なくなく、非常にもったいないと語る。
ユーザーとコミュニケーションを取るにあたっては、匿名顧客か実名顧客か、そして、購買意向に合わせてソリューションを選んでいく必要がある。それぞれ、どのようなテクノロジーを使うべきかの例を示したのが以下の図だ。
MAによるリードナーチャリングで重要なのは“コンテンツ”
匿名および実名の見込み顧客に対して、MAをどのように使えばいいのか。見込み顧客の購買意向は購買意向の高いターゲットから低いターゲットまで見込み顧客の数でグラデーションになっているが、まずは今すぐ買ってくれる可能性が高い「今すぐ客(ホットリード)」と、ターゲットではあるが現時点ではあまり関心がなさそうな「そのうち客」に分けて施策を作ることがおすすめだと相原氏は言う。
まず見込み顧客を、「今すぐ客」と「そのうち客」という観点、匿名か実名かという観点で、4つの象限に分ける。
セッションでは、SATORIにおける実データが紹介された。それによると、それぞれのグループのユーザー数は以下のような割合だという。
- A.今すぐ&実名:1
- B.今すぐ&匿名:35
- C.そのうち&実名:70
- D.そのうち&匿名:380
MAツールを最大限に使っているSATORIですら、「そのうち&匿名」が380人いるのに対して、「今すぐ&実名」はやっと1人という状態だ。企業が欲しいと思っている「今すぐ&実名」の見込み顧客はものすごく少ない(相原氏)
さらに、この4つのグループのペルソナを具体的にイメージすることも大事だ。SATORIであれば、以下のようなイメージだという。
- D.なんとなくMAに興味を持って、調べていてたまたま自社サイトにたどり着いた人
- C.展示会で名刺をいただいた人
- B.上司に『MAについて調べてね、いいのがあったら予算つけるよ』と言われて調べている担当の人
- A.商談中
Dを母数として育成していくわけだが、そこにMAが役立つというわけだ。
施策① 母集団Dを増やす「コンテンツマーケティング」
「そのうち&匿名」の見込み顧客を獲得するために必要なのはコンテンツだ。「コンテンツがなければ作る。すでにあるなら購買意向に合わせて整理して並べ替えるという活動を地道にやり続けることに注力すべき」だと相原氏は言う。
施策② Dの見込み顧客にCゾーンに来てもらう「資料ダウンロード」
匿名顧客であるDが集まったら、次に必要なのは「名乗っていただく」ことだ。そのためには、「〇〇の情報がもらえるなら、自分の個人情報を提供してもいい」と思ってもらえるコンテンツを用意する。
SATORIでの実践例として、そのうち顧客向けのホワイトペーパーを用意し、ブログを何ページ見た、あるいは何秒見たといったトリガーで、「ホワイトペーパーをダウンロードしませんか」というポップアップを出し、ダウンロードする時に個人情報を入力してもらうという施策が紹介された。
施策③ Cの見込み顧客をAに育てる「メールマーケティング」
名乗ってもらえさえすれば、オートメーションのシナリオを組んでメールを送信できる。SATORIは以下のようにシナリオを組んでいる。
メールマーケティングのポイントは下記だ。
- なるべく相手の個性に合わせて、ホットなもの、新しいもの、役に立つものという視点でコンテンツを送る
- しつこく毎日は送らない(週に1度くらい)
- 「こういう課題にお困りではないですか」など気づきを促す
また、顧客と接触できてもいきなり商談を押し付けることはせず、オフラインでのおもてなし(セミナー等)も大切と説明した。
施策④ Dの見込み顧客の中からBを抽出する「キラーコンテンツ」
匿名顧客ではあるがホットなユーザーを検知し、実名を獲得するためには以下のようなキラーコンテンツをサイト内に用意し、見込み顧客の反応を見る施策が効果を発揮する。たとえば、
- 機能紹介
- ご利用料金
- 導入事例
- 他社との比較
- 解約までの流れ
- 導入後のサポート
SATORIでは、「他社との比較」を閲覧したユーザーの成約率が圧倒的に高いという。ちなみに、さらに施策としてこのキラーコンテンツを「1カ月の間に2回見た」、かつ、「ご利用料金”を見た」といった条件を用意することでより興味関心の高い顧客を抽出することが可能になる(「SATORI」ではセグメント機能を用いる)。
この条件に合致した匿名顧客に資料請求を促すポップアップを出せば、顧客が求めている最適なタイミングでアポイントが獲得できるようになる。実際、SATORIではそこから得た電話番号にインサイドセールスが電話をすると、高角度で商談につなげられるという。
また、すでにある自社サイトを使ってキラーコンテンツを判別する一例として以下のような提案をした。
- すでに顧客になったお客様を10人くらい分析
- その10人のお客様が見込み顧客の間、どのようなコンテンツをたどったか洗い出す
- 見ている数の多い順で3位までがキラーコンテンツ候補
- テストツールで試してみる
MAツール「SATORI」の機能と成功事例
MAツール「SATORI」は、主に見込み顧客の行動をトラッキングする技術と、そのデータをデータベースに溜めていく技術でできている。下記のようなオンラインとオフラインのデータを統合して蓄積し、可視化することで活用できる。
- 見込み顧客がWebサイトに来訪した時の行動データ
- イベントで名刺をもらった時の個人情報
- セミナーにエントリーした時に入力された個人情報
- メール配信の内容やその履歴
- 場合によっては外部から購入したデータ
「メアドあり」の実名顧客だけでなく「ウェブのみ」の匿名顧客のデータが以下のように可視化される。
個々の見込み顧客については、「メールを開封した」「どのコンテンツを見た」などのオンラインの行動が自動的に蓄積され、商談時の会話などオフラインの情報はその内容を書き込むこともできる。Web上での行動履歴は180日間保存されるため、ある時点で個人情報を入力して実名顧客になってくれたユーザーの行動をさかのぼって、過去にどのような行動をしていたか確認することも可能だ。
事例① BtoB 大手通信事業企業
ある大手通信事業者では、数万件のリストが放置され、休眠状態なので活用したいという課題があった。
そこで、休眠状態だったリストを全て「SATORI」に入れ、数パターンのコンテンツを作ってメール配信。元々休眠状態だったため、それだけである程度開封された。購買意向を判断して、架電や訪問を行ったことにより、従来の3.5倍の案件化に成功。その後定期的にメールマーケティングを行っている。
また、同社では、セミナー告知ページにフォームを設置していたが、あまりコンバージョンに至っておらず、新規リードを獲得したいという課題もあった
そこで、「SATORI」を活用し、Webサイトで特定のコンテンツに遷移をした見込み顧客にセミナー案内のポップアップを出すという施策に取り組んだ。ポップアップを押さなくても次に行ったらまた別のポップアップを出すというシナリオを組んだ。その結果、セミナー集客1.5倍を達成し、費用としては十分ペイしたという。
事例② BtoC 中堅不動産住宅企業
ある不動産住宅企業では、複数のポータルサイトにそれぞれ広告を出稿していたが、リターゲティング広告や資料請求者へのフォローメール配信などを一律で行っており、どの広告が効いているのか、その後のどのアクションが効果があったのかなどを測定できていなかった。効率的に広告を打ちたいという課題があった。
そこで、口コミサイトから収集したオーディエンスデータをすべて「SATORI」に投入し、築年数やグレード感などによっていくつかのセグメントに分けた。そのセグメントを基に、Yahoo!やGoogle、Facebookのプラットフォームから広告配信を行った。
その結果、サイトを訪問したユーザーのクリック率が0.1%から0.6%に上昇。すべての情報をSATORIのデータベースにまとめることで担当者が管理をしやすくなり、運用負荷が軽減したという。
事例③ BtoB SATORI
これはSATORIの実例となるが、同社では、匿名顧客を実名化するため、段階を踏んで運用型広告を複数使用し、ナーチャリングしていたため、費用がかさんでいた。
そこで「SATORI」のプッシュ通知機能を活用することにした。一度「SATORI」に接触すれば、匿名顧客のままでもプッシュ通知を出せるようになる。例えば、Google広告に接触したユーザーに、オプトインで「SATORI」からプッシュ通知を送ることができる。合計で3回広告を打っていたような場合、2回目の広告をやめてプッシュ通知にすることとした。その結果、CPAを2/3に抑えることができたという。
プッシュ通知の許可をもらうユーザー数がそれなりに必要だが、母数の大きい大企業であれば広告効率が大きく改善するだろう。
最後に相原氏は、「SATORI」の特徴を以下のようにまとめた。
- 「匿名」と「実名」双方に可能な顧客ナーチャリング
- 国産なので管理画面もマニュアルもすべて日本語、サポートも手厚い
- 導入までのリードタイムが短い、最短で申し込み即日の利用開始も
SATORIではユーザーに「SATORI」を活用してもらうために、ユーザー会やユーザー限定の利活用セミナーなどさまざまな支援を行っているという。相原氏は「ご興味をお持ちいただけましたら、SATORIの渋谷オフィスで毎週開催している紹介セミナーにお申し込みください」とアピールし、講演を終えた。
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