商談化につながる良質リードを非対面で獲得する方法とは? MAを活用した7つの事例を紹介
「コロナウイルスの影響もあり、従来活用していたリアルチャネルがあまり機能しなくなってしまった今、マーケティングや営業のデジタル化の加速を余儀なくされる企業は多いはず」と語るのは、SATORIの豊川瑠子氏だ。
オンラインで行われた「Web担当者Forum ミーティング 2020 春」のセッションでは、非対面セールス推進に立ちはだかる壁として7つの課題をあげ、実際にSATORIが行っているMA(マーケティングオートメーション)を使った解決施策を紹介した。
MAで段階的なコミュニケーションをし、顧客を育成する
「マーケからくるリストは質が悪い」というイメージをもつ営業担当者は少なくない。しかしそれは、「MAツールを上手く活用することで改善できる」と豊川氏は語る。
国内でMA導入企業が増加する背景
MAが定着し始めたのは、米国では2000年頃、日本では2014年頃といわれているが、MA導入企業が増えている理由はBtoBにおける「対面セールスの限界」にあるという。それを裏付ける数字として、以下の3つを挙げた。
- 【80%】の見込み顧客は、フォローをやめたら、2年以内に競合商品を買う
- 顧客とのコミュニケーションのうち、【85%】は非対面で行われる
- 見込み顧客の【97%】は匿名状態のまま離脱
つまり、「お客さんは、会ってくれない、名前を明かさない」ため、「お客さんのことがよくわからない」ということをこのデータが裏付けている。また、マーケティングファネルでいう製品選定のうち「比較検討」までのフェーズが、非対面で行われるのであれば、会えないなりにより良い非対面セールスを実現しようというのが、MA導入の動機だろうという。
MAの仕組み
豊川氏はここで、あらためてMAがどのような仕組みかを説明した。
MAの構成要素は、「データベース」と「コミュニケーション機能」である。いつ誰が何を見ているか、といった顧客の情報をデータベースに蓄積し、それを活用してコミュニケーションを最適化する。
MAツール「SATORI」のデータベースでは、顧客を匿名と実名に分け、匿名ならポップアップやプッシュ通知、実名ならメルマガといったように、それぞれ可能な手段(チャネル)にコンテンツを載せて届ける。このように、「適切なタイミングで、適切なチャネルに、適切なコンテンツを載せてお客様に届ける、これを仕組み化するのがMAだ」と豊川氏は語った。
段階的なコミュニケーション
MAを活用することによって、段階を踏んで顧客の興味関心を育成するのだという。たとえば、顧客を「そのうち客」と「今すぐ客」の2つに分けて考えると良い、と豊川氏はアドバイスする。
不動産業界であれば、「そのうち客」は「就職、進学、結婚」などライフスタイルの変化によって、物件を探す可能性がある顧客のことを指す。「今すぐ客」は、「そのうち客」のなかでも、物件検索をする意向が高まっている顧客が該当する。自社にとって、どのような人が「そのうち客」で、どのような人が「今すぐ客」であるか考えてみてほしい。
「そのうち客」と「今すぐ客」を、さらに個人情報を明かしてくれたかどうかの「匿名」「実名」でも分類すると、以下の図のような4つのカテゴリになる。「今すぐ客 実名」まで育成が進めば、営業部門がアプローチすべき「ホットリード」と言える。営業部門には、ここまで絞り込んだうえでリストを渡そう。
育成では、段階的なコミュニケーションをとることが重要だ。上の図では、ピンク色の矢印で示している。「そのうち客 匿名」をいきなり「今すぐ客 実名」にしようとすると、やみくもなリターゲティング広告のような、カスタマーが意図しない顧客体験になってしまう。
マーケティングのKPIはリード数ではなく商談数に
「商談化につながる良質リードを営業部門に渡すために、もう1つ重要なことは、マーケティング部門のKPI設定だ」と豊川氏は語る。もし「獲得リード数」をマーケティング部門のKPIに設定しているなら見直しが必要かもしれません。初めはそんなつもりはなかったとしても、そのうち質を問わず数だけ求めるようになる可能性があるという。
非対面セールスを実践して成果を上げている組織の例として、豊川氏はSATORIのプロフィット部門の体制を紹介した。
受注までの流れとしては、プロモーション、マーケティングの次にインサイドセールスがあって、セールスやカスタマーサクセスに引き継ぐ。注目すべき点は、以下の2つだ。
特徴① 共通のKGIを設定
最終的な目標は、もちろん受注だ。これを各部門共有のKGIとして設定している。これによって「本質を見て臨機応変な判断ができ、的確なアクションにつなげられる」と豊川氏はいう。
特徴② 各部門ではKGIに貢献するKPIを設定
KPIは部門ごとに決めるが、いずれもKGIである受注に貢献するような数値を設定している。このため、マーケティング部門のKPIは、次の部署であるインサイドセールスが一般的にKPIとして設定する“商談数”になっている。ちなみに、MAツールのレポート機能は、商談や契約への貢献度を可視化することにも役立つという。
マーケティングにおける7つの課題とMAによる解決策
ここからは、マーケティング課題解決のTipsとして、SATORIの事例が紹介された。
課題① 展示会中止でリード不足
コロナウイルスの影響で、展示会が中止となり、リード不足が課題となっている企業が多いが、SATORIでは次の施策を実行していたことから一定のリード獲得数を維持できているという。
解決施策: ブログ閲覧者へポップアップ/パーソナライズでCV誘導
SATORIでは、見込み顧客が「メルマガ開封率」「マーケティングとは」などのキーワードで検索した時に、流入の受け皿となる記事を自社オウンドメディア(SATORIマーケティングブログ)内に用意している。そこで、その記事が読み進められて「スクロール70%」や「10秒後」などになったタイミングで、ノウハウ資料のダウンロードを案内するポップアップを出すようにした。
ポップアップを出すかどうかは、ユーザー属性の他に、「どの記事を閲覧したか」「以前に資料をダウンロードしたか」「セミナーに申し込んだか」など、Web上の行動でも制御。また、資料ダウンロード以外に、メルマガ登録をお勧めするポップアップも用意してあるという。
課題② 広告の投資対効果を見直し・改善したい
やはりリード獲得段階の課題だが、広告の投資対効果の見直し・改善には、ポップアップ&プッシュ通知を活用した。
解決施策: ポップアップ&プッシュ通知×広告で獲得コスト削減
従来は、広告でブログに誘導し、記事を見た人に広告を当てる、というように、1CVを獲得するためにセッション回数4回、広告クリック回数4回を要していた。そこで広告コスト削減のために、広告に接触したユーザーをMAでセグメントし、途中の広告をポップアップとプッシュ通知に置き換えるという施策を実施した。これで、広告費用はおよそ半分になったという。
課題③ マーケが供給してくるリストは質が悪い
マーケの提供するリストは質が悪いという課題には、ステップメールを活用した。
解決施策: 獲得リードへ興味喚起のための自動メール配信
資料をダウンロードした人のリストをそのままインサイドセールス部門や営業部門に渡しても、検討度合いの低い人が混じることがある。そこで、外部メディアから資料をダウンロードした人へ以下の図のようなアンケートを取り、そのデータをMAに取り込んで、検討状況を3つのセグメントに分けた。
そして、セグメントごとにシナリオを変えて、興味の度合いに応じた資料を自動メールで案内。資料がダウンロードされたらアポイント獲得担当者に通知する仕組みにした。それぞれの商談決定率は、シナリオ前が平均20%であることに対し、シナリオ後にはAタグで65%、Bタグで25%、Cタグで37%に改善されたという。
課題④ イベントやセミナー開催の目的が「リード育成」から「開催」に変化
イベントやセミナーを開催する本来の目的は、「リード育成」と設定していたが、イベントの回数を重ねるとその目的が薄れてしまい、「開催すること」が目的となってしまっていた。この状況から抜け出す施策として、見込み顧客の属性で目的を分けたイベントやセミナーをした。
解決施策: 見込み顧客属性で分けたイベント/セミナーの実施
セミナーでは、参加人数ばかりを追いかけてしまいがちだが、本来は受注数が増えなければ意味がない。そこでSATORIでは、「そのうち客」向けには大人数の共催セミナー、「もうすぐ客」向けには少人数の単独セミナー、「今すぐ客」には担当がアプローチして商談するというように、使い分けた。
なお、セミナー設計のポイントとして、豊川氏は以下を挙げている。
- 「そのうち客」向けでは、 ある特定の課題に対して複数の解決手法をお伝えするために合同セミナーを開催しメリットを増やす
- 「もうすぐ客」向けでは、営業カラーをなくすなどデメリットを減らす
どちらのセミナーでも注意すべき点として「商談」につなげるには、コンテンツは80点にとどめて全てを伝えきらない(インセンティブにより、本当に興味がある人を取り込み次のアクションに繋げる)ことだとしている。
課題⑤ ウェビナーアンケート回答率を改善
ウェビナー(Webセミナー)のアンケート回答率を改善するという課題には、終了後すぐのお礼メールの配信を実施した。
解決施策: ウェビナーツール×MA連携で参加者への即時お礼メールを配信
ウェビナーでアンケートを書いてもらうには、終了後15分がキモだという。そこで、終了後すぐに参加のお礼メールが届いてアンケート記入ができるように設定した。また、回答特典を準備することも効果的だという。
課題⑥ 行動量でカバーする、やみくも営業から脱却
リード抽出/商談獲得の際の課題である「やみくも営業からの脱却」には、キラーコンテンツによるあぶり出しを活用した。
解決施策: キラーコンテンツによるあぶり出し
SATORIでは、購買意欲をあげるためのコンテンツを「キラーコンテンツ」と定義している。たとえば、SATORIのキラーコンテンツはWebサイト上の「他社との比較」が該当する。それを見た人にポップアップを出して、資料ダウンロードを促し、個人情報獲得につなげているという。
キラーコンテンツに触れているかどうかで、アポ率が8倍くらい変わる(豊川氏)
自社のキラーコンテンツを見つける方法は、大きく分けて2つ。確実なのは、営業担当に「契約に至ったお客様が欲したコンテンツは?」と聞く方法だ。しかしさまざまな事情でコミュニケーションが難しい場合は、Googleアナリティクスで「CVした人が見たのはどのコンテンツか」を分析し、データからあたりをつけるという方法をも効果的だ。
課題⑦ オフィス不在で電話をかけても誰も出ない
7つ目の課題は、テレワークが多くなり、オフィスに電話をしても目的の人物につながりにくくなったことだ。そこで、個人情報を取得するフォームの見直しを行った。
解決施策: フォーム見直しによる個人情報の追加取得
従来は個人情報取得の時に会社の電話番号を記入してもらっていたが、「日中につながりやすい電話番号」という項目を追加した。その結果、インサイドの架電到達率をアップさせることができた。
以上が、SATORIが自社で行っているさまざまな施策のうち、7つの課題にしぼった改善施策だ。MAでは、実名顧客だけをデータベース化してさまざまな施策を行うものもあるが、MAツール「SATORI」は実名顧客と匿名顧客の両方をデータベース化し、管理できるのが特徴だ。
「SATORI」の導入企業からは、導入費用、使いやすさ、サポート体制も評価されているという。サポート体制にも注力しているとのことで、豊川氏は「活用を軌道にのせるためのウェルカムミーティングやフォローアップミーティングをはじめ、利活用セミナーなど、導入で終わらず成果に繋げていただくための幅広い支援メニューを用意している」と強調してセッションを締めくくった。
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