そのSEO施策で合ってる? サイト・クエリに応じて「今」取り組むべき具体策とは?
年々変わっていくSEO施策。今行っているSEOに自信を持っている方はどれだけいるだろうか? ビジネスの役に立っていると言い切れるだろうか? 本当に必要なSEOだろうか? SEOは、サイトの規模や目的、ブランド力によって選択すべき施策は異なっている。
そこで、「デジタルマーケターズサミット 2022 Winter」に登壇したサイバーエージェントの木村賢氏は、サイトの種別、検索クエリ別の今行うべきSEO施策の選択と実践について講演を行った。
クエリは、検索意図によって3種類に分けられる
一言でクエリといっても、検索するユーザーの意図(Intent)はさまざまだ。木村氏は、クエリは検索意図によって次の3種類に分けられると説明する。
Informational:情報を得たくて検索する。たとえば換気扇を掃除したい時に「換気扇 掃除」と検索すると、検索結果上位に、大手から中小企業、スタートアップまでさまざまな企業のサイトが並ぶ。
Navigational:特定のサイトを訪れたい時にサービス名、ブランド名などで検索する。たとえば、ABEMA を見たい時、「ABEMA」と検索すると、検索結果上位にABEMAの公式サイトが並ぶ。
- Transactional:購入や予約などで検索する。「エアコン」と検索すると、検索結果上位にはや大手家電ECサイト、エアコンメーカーのサイトが並ぶ。
ここからわかるように、Informational(インフォメーショナル)クエリはどんな企業でも検索上位を狙えるが、Navigational(ナビゲーショナル)クエリは公式でないと難しく、Transactional(トランザクショナル)クエリは大手でないと難しい。つまり、SEO施策の対象になる検索クエリは、InformationalクエリとTransactionalクエリである。
そしてもう1つ考慮すべき検索内容が、YMYL(Your Money Your Life)にあたるかどうかである。Googleでは、財産や生命、医療に関する情報はYMYLととらえて、専門機関や公的な機関など信頼できるサイトからの情報を上位表示している。
そこで、クエリをInformational / Transactionalか、YMYLかそうでないかの2軸に分けてプロットしてみると次の図のようになる。
Transactionalは決済が発生するため基本的にすべてYMYLになる。Informationalでも医療、法律、金融などに関わればYMYLになり、その分野で信頼できるサイトのみが上位表示される。YMYLで表示されるには、信頼できるサイトとしてGoogleに認識されるハードルをクリアしなければならない。YMYLではないInformationalは、誰にでもチャンスがある。
そこで本セッションでは、SEO施策の対象を次のように分類する。
- Informational
- YMYL(に該当するInformational)
- Transactional
クエリによって、検索ランキングに影響する要素が異なる
木村氏は、クエリの種類による検索結果のランキングと、ページ / サイト要素の関係を分析した結果、Informationalはページ要素が影響し、YMYLはページの要素、サイトの要素の両方が影響。Transactionalはサイトの要素が影響することがわかったという。
つまり、SEO施策を実施する上では、対象クエリやサイト種別によって、対策するポイントが異なるのだ。
ダメなコンテンツSEOにならないために:Informationalの記事の作り方
ポイント① 読後に理想的な行動をとってもらえるコンテンツを目指す
つまり、InformationalのSEOで用意すべきコンテンツは以下になる。
- 読後に理想的な行動をとってもらえるもの
- 検索者の課題に網羅的にこたえるもの
- 独創性・専門性を持つもの
- 読みやすいもの
- 理解しやすいもの
まず重要なのは、コンテンツをInformationalクエリで検索上位に表示させ、コンテンツを読んでもらった後に、ユーザーにどうしてもらうかを明確にすることだ。
自社サービス・製品に誘導するのか、会員登録してもらうのか、名前だけ覚えて帰ってもらうのか。コンテンツを読んだ後、何をしてもらうのかを決めないと意味がありません。読後どうしてほしいかを決めてから、それに応じたコンテンツを準備します。その後、ランキングを上げるための策を講じます(木村氏)
ポイント②検索者の課題に網羅的にこたえるコンテンツにする
ユーザーの検索意図を網羅する
では、換気扇を掃除したい人にコンテンツを読んでもらい、自社のクリーニングサービスに申し込んでほしいという目標を立てたとしよう。その場合、「換気扇 掃除」で検索したユーザーのさまざまな意図・コンテキストをコンテンツで網羅しなければならない。
重曹や高圧洗浄機を使った掃除はどうやるのか、そもそも掃除する必要はあるのか、掃除を頼める業者はあるのか、やる気になるにはどうすればいいのかなど、コンテキストや意図を徹底的に洗い出し、網羅性を高める。
ただし、すでに上位表示されている他社のコンテンツを真似て作成しても意味がない。すでに競合が作っている内容と同じものしかできあがらないし、それではGoogleには評価されにくいからだ。内容の抜け漏れのチェックに使うのはいいが、参考にしすぎないようにしたい。
ユニットでコンテンツを作成する
なお、検索表示ランキングと文字数について木村氏が分析してみたところ、ランキング上位になるほど、文字数が多い傾向があった。だからといって、単に長いコンテンツを作ればよいかというと、最近はそうでもない。同時に、サイト内にキーワードを含むページの数も影響する。
たとえばランキング1−5位のコンテンツを見ると、LP(ランディングページ)の文字数は約4,000文字と最も多くなっており、サイト内にキーワードを含むページも最も多くなっていることがわかった。
文字数が多いとは言っても4000文字は極端に多いわけではない。今のトレンドは、サマリーコンテンツを作った上で、検索意図やコンテキストに沿った詳細なページを作成し、キーワードを含むページを増やすこと。ページ1つではなく、サマリーと詳細ページを合わせたユニットで検索順位を上げていく意識を持つとよいでしょう(木村氏)
木村氏はサマリーと詳細ページのユニットの例として、STORESのオウンドメディア「STORES Magazine」の「SNSを活用してネットショップの集客をする方法と注意点」をあげる。SNS活用の記事のサマリーがあり、さらに各SNSの活用の詳細ページが用意されている。
ポイント③独創性と専門性のあるコンテンツを用意する
もちろん詳細ページは、独創性があり専門的であることが求められる。プロの自分たちならではの解釈、方法の提案で、ユーザーの課題の解決レベルを上げる必要がある。
Googleは世界最高峰の自然言語処理アルゴリズムを持っています。専門家、プロらしいコンテンツを網羅的に用意すれば、Googleが認識してくれます。また、網羅すれば結果としてキーワードや文字数が増えます。さらにユーザー評価テストをしてみても、「キーワード、テキストが多い方が、満足度が高い」という結果が出ています。GoogleのAIを信じて、人に好かれるものを作ることが大事です(木村氏)
ポイント④読みやすく、理解しやすいコンテンツにする
しかし、専門的であっても難しそうと思わせてはいけない。漢字が多く行間が狭いと読みにくいので難しく感じるため、ひらがなを多めにし、行間を広めにとって読みやすくするとよい。加えて、専門的な内容は、図や画像を使って補足するのも有効だ。
さらに、理解を助けるためにより詳しい情報を用意したり、簡単に理解するためにサイト内外の発リンクも設置したりするとよい。
ポイント⑤コンテンツが主役、SEOはコンテンツのポテンシャルを引き出すもの
つまり、InformationalクエリのSEOを換気扇掃除の例でいうと、「換気扇掃除の必要性、メリット、方法など情報の網羅性を高め、さらにプロ独自の提案を入れることで、検索上位に表示させ、さらには読後には『大変そうだな、素人がやると難しいので専門業者にやってもらおう』と理想的な行動とってもらう」ことだ。
コンテンツをリリースした後は、キーワードやタイトルなどをチューニングしながら、SEO施策をやればよい。ここで木村氏は世の中にあふれる目的のはっきりしないコンテンツSEOに苦言を呈した。
本来のコンテンツSEOは、引き出せていないコンテンツの力を最大限発揮させること。SEOのためにコンテンツを作るのではなくコンテンツにSEOをかけて、ポテンシャルを発揮させます。コンテンツがカキフライなら、SEOはレモン。100%のおいしさを引き出すものがSEOなのです(木村氏)
なお、詳細は割愛するが、最もやってはいけないことのひとつは、サブディレクトリの貸し借りだ。一部ではディレクトリを貸した側のドメインのランキングが下がることが報告されており、今後厳しいペナルティを受けるようになることが予想されるという。
よいSEO施策ができていると木村氏が評価するのは、オリオンビールの「オリオンストーリー」だ。沖縄の文化や料理、観光地などを伝えながら、ビールを飲みたくなるコンテンツになっており、ブランド力を上げながら検索結果の上位表示ができている。
目の前の検索順位や数字に追われると、本質的な成果を忘れて誤ったSEOに走りがちだ。「SEO業者を選ぶ時は、コンテンツを読んだ後のことを考えて、会社の強みや独自性を一緒に引き出してくれるパートナーを選んでほしい」と木村氏は述べた。
TransactionalのSEOはサイト全体の強化がポイント
ポイント①クロールとインデックスをケアする
Transactionalクエリの対策は、クロールとインデックスをケアすることだと木村氏はいう。その理由は、Transactionalクエリを狙うサイトの多くが、大規模サイトであるため、クロールバジェット(クロールの割り当て)の上限に達してしまうことがあるからだ。クロールバジェットとは、Googleが1つのサイトをクロールする上限のことで、大規模なサイトになると全ページをクロールせずに上限に達してしまい、残りのページはインデックスされなくなってしまうような現象が起こることがある。
そのため大規模なサイトであれば、絶対にクロールしてインデックスしてほしい「重要なページを定義」し、「重要でないページのクロールを減らす」ような努力が必要になる。重要なページとは、ランディングページになり得るようなページ、そしてランディングページを強化し得るページだ。
以下の図は、Transactionalクエリの検索表示ランキングと、キーワードを含むページ数との関係を示したものだ。サイト内にキーワードを含むページが多いほど、圧倒的にランキングが上がることがわかる。
たとえば、新宿のホテルの紹介ページがあって、詳細ページに各ホテルの情報がのっている場合、詳細ページの数が多いほどランキングが上がりやすくなる。ここで注意したいのは、ページが在るだけではなく、これらをインデックスさせなければならないことだ。
では、重要なページのクロールを確保するために、重要でないページのクロールを減らすにはどうすればよいか。方法の1つとして、重要ではないページは特定のディレクトリ(たとえばnotneed)に格納し、robot.txtでそのディレクトリ全体のクロールをDisallowに指定すればよい。
さらに重要度の高いページへのリンクを多く設置したり、サイトマップの上位にURLを記載したりといった対応をして、クロール優先度を高めるのがおすすめだ。
ポイント②サイトやサービスのブランド力を高める
もう1つの対策がサイトやサービスのブランド力を高めることだ。ブランド力がないサイトはTransactionalクエリでは、上位を狙えないということでもある。では、ブランド力を高めるにはどうすればよいのだろうか。
Googleはブランド力を、被リンクとサイテーションで評価している。サイテーションには、サイトやブランドについての「オンライン上のメンション(言及)」「指名検索」「オンラインブックマーク」などが加味される。
以下のグラフは、検索表示ランキングと被リンクドメイン数の関係を示したものだ。サイト全体に被リンクが集まるとランキングが上がりやすくなることがわかる。同様に、メンションの数、指名検索の数も、ランキングに対して同様の傾向がある。
では、ブランド力を上げるためにはどうすればよいのか? 木村氏は、PR、マイページ、プロダクト、SNS、広告・CM、スポンサー、イベント、コンテンツといった施策が効果的だとし、なかでも「PR」「マイページ」「プロダクト」について、事例を紹介した。
PR
たとえばARUHI 不動産では、「本当に住みやすい街大賞」を開催しPRタイムズで配信している。これはニュースとして複数のメディアに取り上げられ、ブログで記事にする人も多い。2021年は川口市が1位になり、意外性がある結果となったことからテレビやWebメディアに取り上げられ、大手不動産サイトにもメンションがついて引用された。話題を作ることで、多くのメディアに取り上げられ、サイテーションを増やした事例である。
マイページ
指名検索を増やすには、マイページ機能を用意するとよい。たとえば、クレジットカード会社のマイページを使う場合、多くの人がまずは社名やサービス名で検索して辿り着くからだ。
なお、マイページにはログインしてアクセスする理由付けが必要だ。ポイントがもらえる、ポイントを運用できる、キャンペーンにエントリーできる、他では買えない特別な商品を買えるなど、チェックしたくなるようにしなければならない。木村氏の経験でも、塾・学習塾検索サービスの「テラコヤプラス」のサイトに、塾向けの管理画面を用意したところ、指名検索が増えたという。
プロダクト
プロダクトが良ければサイテーションは自然に獲得できる。たとえば、ある商品を買ってよかったと思った人がTwitterにあげ、それを見た人がその商品を購入してツイートするというように、高評価が伝播していく理想の状態だ。
YMYLのSEOでは専門性を伝える
YMYLの場合は、ページ要素とサイト要素の両方の強化が必要だ。つまり、これまで説明してきた双方の対策を行うことになる。ただし、InformationalのYMYLでは、大規模サイトを除きTransactionalの対策であるクロールバジェットに合わせた対策は不要だ。
その上で、サイト全体でYMYLのハードルを超える必要がある。そのためには、その分野で検索ランキングが高いサイトや専門機関からの被リンクの獲得、専門機関への発リンク、「固有名詞」や「固有名詞+検索ワード」での検索数増加といったことに加え、サイトの実態の証明として、WHOIS(ドメイン名登録情報検索サービス)の登録、SSL証明書の設定、Google ビジネス プロフィールの設定など信頼性のシグナルになりそうなものを可能な限り対応しておくとよい。
どれだけやったとしても、YMMLのハードルを超えられるかどうか明確に断言することはできません。何が効くのか正直わからないので、やれることは全部やるつもりでいましょう(木村氏)
効果が出るまで時間がかかるので、施策は早く始めるほどよい
木村氏は「本当はYMYLやTransactionalを狙いたいけれど身の丈に合っていないから非YMYLの“コンテンツSEO”しかできない」という悩みを聞くことがあるという。これに対しては、長期的な仕込みが必要だと木村氏は考える。
Informationalクエリだけを狙っているうちはInformationalクエリしか上げられない。コンテンツSEOだけがSEOではありません。TransactionalやYMYLは、ある時急に上がってくるので、その時までじっくり腰を据えて仕込みを行う必要があります。いつ効果が出るかわからないので、将来のために早めに対応しておく必要があります(木村氏)
最後に木村氏は、「Googleが掲げる10の事実」を紹介した。ここには、ユーザーに焦点を絞れば結果は後からついてくるという趣旨のことが書かれている。
「ユーザーの検索意図にフォーカスしてコンテンツを制作し、サイトそのもの、製品・ブランドをより良くすることが何よりのSEO施策です」と述べて、木村氏は講演を締めくくった。
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