なぜGA4は“使いづらい”と感じるのか? GA4とUAの違いを理解する3つのポイント
Google アナリティクス 4(GA4)が正式バージョンとなって約1年半。Google アナリティクス(以下、UA)は2023年7月に終了すると発表があり、本格的に導入を迫られている。しかし、UAとGA4は名前は似ているものの、分析軸が異なったり、レポートがなかったりと使い勝手が違い過ぎて戸惑っている人も多いだろう。
「デジタルマーケターズサミット 2022 Winter」に登壇したプリンシプルの木田和廣氏が、コンバージョン(CV)増加戦略のためのGA4活用法について解説した。
GA4のメリットを享受するため、考え方を転換しよう
2020年10月に突如製品版となったGA4。しかし、使い勝手に戸惑う人が多く、「レポートが少ない」「以前あったセグメントはどこにいった?」といったネガティブな意見も少なくない。木田氏は「GA4のメリットを享受するためには、まずは考え方の転換が重要」と語った。
セッション中に行われた受講者(事業会社)を対象としたアンケートによると、約半数がGA4を導入しているが、導入/未導入に関わらず約92%が「活用イメージがつかめていない」と回答している。
また、2022年1月末に行ったプリンシプルのチーフ・テクノジーマネージャー山田氏の調査では、クロールできた上場企業3,868社のうち、GA4を導入しているのは12.6%という結果が得られた。
そもそもGA4は、従来のGA(UA:ユニバーサルアナリティクス)とは大きく異なっている。木田氏は、主要な違いを次のように解説した。
UAとGA4の違い①データモデルの違い
UAのデータモデルは、「ヒット」という単一階層だったが、GA4の「ヒット」は「イベント+パラメータ」という構造でできている。UAでは単一階層なのでほとんど意識する必要がなかったが、GA4を使いこなすためにはこの構造を理解しておく必要がある。
UAとGA4の違い②レポートモデルの違い
UAでは、「獲得→行動→CV」という流れで見る「ABC(Acquisition・Behavior・Conversion)分析」が一般的だった。しかし、GA4では、「獲得→エンゲージメント→収益化→維持」という「ライフサイクル」が重視されている。よりユーザーを長期にわたって観察し、レポートしていこうという考え方だ。
UAとGA4の違い③ディメンション・指標の改廃
ディメンション・指標は、直帰率やランディングページなどがなくなり、ユーザーが最初にふれるメディア(参照元、キャンペーンなど)、エンゲージメントやエンゲージのあったセッション、そしてLTV(Life Time Value)といったこれまでなじみのないものが登場している。
つまり、UAとGA4は全く別製品なのだ。使い方に戸惑うのも当然のことで、考え方を変えればメリットを享受できる。ではどのように考え方を変えればいいのだろうか。木田氏は、3つのポイントを取り上げて解説していった。
思考転換ポイント①
GA4は「自社にフィットするユーザーのターゲティング」を可能にする
【UA】ファネルのボトムを狙う施策の最適化に向いている
まずUAで何を可視化してきたのか。木田氏は「ファネルの最下部にいる購入意欲が高いユーザーを計測・分析できるツールだった」と指摘する。これは一体、どういうことか。
たとえば、「Facebook広告を見て→自然検索をして→リスティング広告(PPC広告)をクリックして→CVした」という複数のメディアを横断するようなユーザー行動があったとする。
CVが発生した場合に、どのメディアにCVを付与するか、というルールを「アトリビューションモデル」と呼ぶが、UAのアトリビューションモデルは「Non-Direct Last Clik(ノンダイレクト・ラストクリック)」であり、最後にクリックされたメディアに紐づけされていた。
上記のユーザー行動があった場合、UAではCVの紐づけを最後にクリックした「リスティング広告がCVをもたらした」としてレポートされる。
つまりUAは、簡易化したパーチェスファネル「認知→関心→アクション」の「アクション部分=ファネルのボトム」を狙う施策の最適化に向いているツールであった。言い換えれば「直接CVしないメディアは分析対象にしない」という思想であり、分析軸はユーザー軸ではなく「セッション軸」であった。
【GA4】自社にフィットするユーザー獲得施策の最適化に向いているGA4
一方、GA4は「ファネルの上部にいる認知段階で将来的にCVしそうなユーザーを計測・分析できるツール」となっている。それがわかる特徴的なレポートに、[ユーザー獲得レポート]がある。このレポートのディメンションとして、「最初のユーザーのメディア=ユーザーが初回訪問に利用したメディア」が記載されている。
たとえば、「ソーシャルで3PV→リスティング広告で1PV→参照トラフィックで5PV→自然検索で10PV→CV」というある一人のユーザー行動があったとする(下図の赤枠はエンゲージのあったセッションを意味する)。この場合UAでは、4回のセッションとして記録され、CVは最後にクリックされた自然検索に紐づき、「自然検索で10PVあり、1件のCVを獲得した」と分析される。
一方GA4は、ユーザー軸でレポートするため、最初のユーザーのメディアは「ソーシャル」であり「合計19PVをもたらし、その後3回のセッションでエンゲージメントがあり、最終的にCVにつながった」と分析される。
つまり、UAがファネルのボトムにいるユーザーへの効果を見るのに対して、GA4は将来的に自社の顧客になる可能性のあるユーザーへの効果を分析できるツールなのだ。
それでは「自社にフィットするユーザー」とはどのようなユーザーなのか。木田氏は「自社サイトに継続して訪問してくれて、エンゲージ(10秒以上滞在/2PV以上/CVのいずれか)してくれるユーザー」と言い、以下GA4のレポートを示して説明した。
たとえば上図のように、[ユーザーあたりのセッション数][エンゲージのあったセッション数][エンゲージメント率][エンゲージのあったセッション数(ユーザーあたり)]などが、メディアごとにわかるレポートがある。
何度も何度も接触することで、商品やサービスに愛着がわく『ザイオンス効果(単純接触効果)』というものがあるが、『エンゲージメントの多いユーザー=自社にフィットするユーザー』とGA4では定義し、それを可視化している(木田氏)
GA4のメリット① 新規顧客獲得手段の拡大に使える
木田氏は、「ユーザーを『ファネルのボトムにいるかどうか』ではなく、『自社にフィットするかどうか』でターゲティングするという考え方に大きく転換することが大事」と語り、「それによって、競合他社との競争が激しく飽和したボトム層への訴求だけでなく、ファネルの上部で自社にフィットしたユーザーにアプローチし、新規顧客を獲得することもできる」と強調した。
思考転換ポイント②
GA4は「LTVベースROAS+ユーザーベースCVRでの広告の評価」を可視化する
自社にフィットするユーザーを獲得する戦略の意義を、LTVから考えることもできる。
たとえば、「“ワンピースを探しているユーザー”を広告で集めてくる」というのはよくあることだが、「1回は商品を買ってくれるユーザー」と「何度も買い続けてくれるユーザー」どちらが自社にフィットしているかと言えば、当然ながら「何度も買い続けてくれるユーザー」だろう。
ファネルのボトムにいる「1回は商品を買ってくれるユーザー」を獲得するよりも、「何度も買い続けてくれるユーザー=LTVが高いユーザー」を獲得できる方が、結果的にビジネスの成長につながる。このLTVという指標をGA4では可視化できる(木田氏)
LTVベースの指標が利用できるGA4の「ユーザーのライフタイム」レポート
LTVベースの指標を可視化できるのがGA4の[探索 ‐ ユーザーのライフタイム]レポートだ。このレポートは、[最初のユーザーメディア]別に、[ユーザーの合計数][LTV:合計][LTV:平均]が見られるレポートになっている。
ここで注意したいのは、LTVが指標になっている点だ。下図で表示しているレポートの期間は2/1~2/10であるが、その期間に購入した総額が記載されているわけではなく、2/1~2/10の期間に訪問したユーザーの以前購入した金額も含まれたLTVの合計と平均がレポートされている。
つまり、[探索 ‐ ユーザーのライフタイム]では、LTVが高いユーザーが、どのメディアから来るのかを可視化してくれているわけだ。
GA4のメリット② ビジネスの成長に直結する指標での広告の最適化が行える
広告の評価指標「ROAS(Return on Ads Spent)」で考えると、UAの場合、「1回あたりの広告経由の売上÷広告費」で算出していたが、GA4の場合は「LTVあたりの広告経由の売上÷広告費」で算出でき、LTVベースのROASを指標にできるようになる。
1回買ったきりの人より、何度も買ってくれる人を呼び込むことを重視すべきなのは明らか。GA4によって、ビジネスの成長に直結する指標で、広告の最適化を図れるようになる(木田氏)
注意点:CVRの定義に注意が必要
広告を評価する際には、CVRの定義にも注意が必要だ。たとえば、次のような施策があったとする。
- 施策A:12人中4人がCV → ユーザー軸のCVRは33%
- 施策B:12人中8人がCV → ユーザー軸のCVRは67%
施策A、Bともに12人のユーザーを獲得し、施策Aは12人のうち4人がCV。施策Bは12人のうち8人がCV。施策Aのユーザー軸のCVRは33%、施策Bのユーザー軸のCVRは67%となり、施策Bの方が良い施策だと判断できる。
しかし、この施策をセッション軸で評価した場合、施策Bから獲得しユーザーの方が、より頻度高くセッションをもたらしてくれるため、施策Aが良い施策であると評価される逆転現象が起こってしまうことがある。
- 施策A:12人中4人がCV、セッションの合計18 → セッション軸のCVRは22%
- 施策B:12人中8人がCV、セッションの合計60 → セッション軸のCVRは13%
たとえば、施策Aから獲得したユーザーのユーザーあたり平均セッションが1.5の場合、セッション合計は18となり、セッション軸のCVRは22%となる。施策Bから獲得したユーザーのユーザーあたり平均セッションが5の場合、セッション合計が60となり、セッション軸のCVRは13%となる。結果として、施策Aが良い施策だと評価されてしまう。
このようにユーザー軸での施策は、セッション単位のCVRではなくユーザー単位のCVRを用いるべきというわけだ。この意味でも、GA4では「ビジネスの成長に直結する指標で広告の最適化ができる」というメリットを味わえる。
思考転換ポイント③
GA4が「コンテンツのCV貢献を精緻に評価」できる
GA4の考え方の転換ポイントとして木田氏が挙げたのが、「コンテンツのCV貢献の可視化手法」だ。従来、GAは歴史的に自社のビジネスに直結する「トラフィックを獲得するチャネルの最適化」は得意でも、「コンテンツの最適化」は意識されてこなかった。
しかし、GA4になって、次のような3つの変化があり、コンテンツのCVへの貢献を可視化することで、コンテンツの最適化も図れるようになった。
- 変化1 計測機能の強化:スクロールやビデオ再生等をデフォルトでトラッキングできるようになってきた。
- 変化2 探索配下レポート群の強化:分析目的のレポート作成機能の大幅な強化された。
- 変化3 分析自由度の向上:BigQueryへの生データのエクスポートで分析の自由度が向上した。
なお、コンテンツのCV貢献には、マーケターの状況に応じて大きく2つの手法があり、「CV貢献を可視化したいコンテンツ」がある/なしで分類できる。
- 「ある」場合はA/Bテスト
- 「ない」場合はコンテンツアトリビューション分析
手法1A/Bテスト:キャンペーンや特集ページなど特定ページの効果測定
特定ページのCVへの貢献度を可視化し、今後の改善につなげる手法としてA/Bテストがある。特定のコンテンツを熟読(≒スクロール完了)したユーザーと、していないユーザー間でのCV率を比較すれば、CV貢献を可視化できるのだ。具体的には、GA4の探索レポート「セグメント」を用いて、ユーザーをグループ分けし、それぞれユーザー軸でのCVRを比較することで容易に分析可能だ。
たとえば次図のように、「Saleページを非閲覧」「Saleページを閲覧したが、非スクロール」「Saleページを閲覧し、スクロール完了」をセグメントしてCVRを比較すれば、「Saleページを閲覧し、スクロール完了」がCV貢献していることは明らかだ。
手法2コンテンツアトリビューション分析:CVにつながったコンテンツを特定する
もう1つの手法は、CVしたユーザーの閲覧したコンテンツに、「CV価値」を付与していくことで、どのようなコンテンツを閲覧したユーザーがCVしやすいのかを特定するというもの。いわば逆引きしていくという手法だ。重み付けは、起点、終点、線形、起点と終点など、さまざまなモデルで行っていく。すると、各モデルによって貢献度が違って見える。その中から、目的に合ったコンテンツを最適化・強化していくというわけだ。
GA4のメリット③ コンテンツの最適化(内部施策)を可能にしている
木田氏は「GA4ではコンテンツのCV貢献を精緻に評価できる。メディアの最適化だけのツールと思っていたらもったいない。ぜひともコンテンツの最適化のために役立てるという考え方を新たにして、活用してほしい」と強調し、セッションを終えた。
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