マーケター1,000人調査。見込客獲得でSNS施策の効果を最大化させるために「解決すべき2つの課題」
自社ブランドやプロダクトを知らない潜在層に向けたアプローチとしてSNSや動画などを活用したコンテンツマーケティングに取り組む企業は多い。しかし、見込客獲得のプロモーション効果を最大化させるために、解決すべき課題が2つあると「Web担当者Forumミーティング 2018 秋」に登壇した、株式会社ロックオン マーケティング部の井上勇人氏は述べる。
井上氏が所属する株式会社ロックオンは、広告効果検証プラットフォーム「アドエビス(ADEBiS)」や、ECプラットフォーム「EC-CUBE」などを手がけている。同社が実施したマーケティング担当者への調査結果から、「広告予算のより効率的なアロケーション」を実現するために必要なポイントを井上氏が解説した。
約67%のコンバージョンが、複数の広告に接触してから生まれている
SNSをはじめ、オンライン、オフライン両面のプロモーションに関わる井上氏は、昨今のプロモーション事情について整理した。
検索からコンバージョンに至るまでに、ユーザーは複数のデバイスを駆使し、複数のチャネルや施策に接触している。「我々が調査したデータでは、約67%のコンバージョンが、複数の広告に接触してから生まれていることがわかった」と井上氏は述べる。
これまで見込客獲得のプロモーション施策は、自社を知る認知層に向け、リスティング広告の「ブランド・プロダクト」のキーワード購入に多くの予算が投下されてきた。
しかし、認知層は数に限りがあり、検索ボリュームも多くはならない。そこで、より多くの見込客を獲得するためにビッグワードを買うことになるが、当然ながら、ビッグワードは競争が激しく、入札価格は高騰し、CPCや獲得単価が高くなってしまう。
こうした悪循環を避けるため、より効率的な予算のアロケーションを求めて、「より潜在層に近い施策として、SNSや動画、コンテンツマーケティングなどのチャネルに活路を見出そうとするマーケターは昨今多い」と井上氏は説明する。
こうした状況で、プロモーションに成功した企業とそうでない企業にはどんな違いがあるのだろうか。
SNSの利用目的や、評価指標で大きな違いが見えた
同社がマーケティング・Webプロモーションに従事する管理職、担当者(約1,000人)を対象に行った「SNS運用に関する実態調査」の結果から、井上氏は企業のWeb広告費の動向について解説した。
「より多くの広告費を獲得することができるというのは、施策の成果が認められたから」という仮説のもと、「成果を出している」企業を、前年度より広告費が「増えた」企業と設定し、話を進める。まずは施策の「設計」に関して、「SNSにおける現在と立ち上げ当初の活用目的は何か?」を問うたところ、増加層、減少層とも、新規の見込客獲得のためにSNSを活用していることがわかる。
ただし、増加層の方がSNSへの注力度合いが大きい傾向が見てとれる。また、増加層は一貫して「新規の見込み顧客の獲得」に注力しており、SNSの利用目的が明確な傾向があると井上氏は指摘した。
次に、「SNSに現在感じている効果と今後求める効果」について聞いたところ、両者とも認知施策としてSNSを捉えているが、大きく違うのは、増加層は「新規顧客の増加」「顧客満足度の向上」の効果を重要視している点だ。この点について「増加層は、SNSを認知施策としての窓口だけでなく、LTVの向上をはじめから目的に組み込み、焦らずしっかりとナーチャリングしている傾向にあるのではないか」と井上氏は語る。
続いて、施策の「計測」に関する調査結果が披露された。「SNS活用時の現在・今後それぞれの重要指標は?」という問いに対し、減少層は、エンゲージメント数やフォロワー数など投稿に対する反応を重視する傾向があるものの、増加層は投稿後、どの程度サイトに来訪したか、キャンペーン応募が増えたかといった「その後」を追う傾向があることがわかった。
増加層は、投稿のエンゲージメント数や率、フォロワー数といった断片的なポイントではなく、その後のサイト来訪率や、キャンペーン来訪後の応募率など、投稿後に起こしてほしいユーザーアクションを明確にし、そこへの貢献を見ようとしている(井上氏)
SNS施策に成功した企業とそうでない企業の差は「設計」と「計測」にある
調査結果から得られた考察として、井上氏は「成功した企業とそうでない企業には、SNS活用の幅に差があるのではないか」と述べる。
多くの企業は、リスティングやリターゲティング、プロモーション広告などの直接的な獲得施策とSNSなどの間接的な施策は、それぞれサイロ化しており、「SNSについてはいいね数やシェア数などの反応だけを見る傾向がある」と井上氏は指摘する。しかし、SNS施策で効果を出している企業は「ストーリー」を管理している。
広告費が増えない企業は、直近の獲得だけを追いかけ、コンバージョンに直接貢献した施策以外の評価が明確ではない傾向がある。「そのため、経営層は1人あたりの獲得単価を知りたいのに、報告する側は、媒体ごとの成果を報告するというようなギャップが生まれてしまう」と井上氏は語る。
一方、広告費が増えている企業は、費用対効果を可視化している。広告の役割を明確化、改善し、勝ちパターンの組み合わせを最適な指標で管理しているからだ。つまり、直接施策と間接施策とのサイロ化を防ぎ、両者の施策が「つながって管理」されているかが重要なポイントとなるのだ。
そのために必要になるのが「設計」と「計測」だ。すなわち、中長期的なユーザー育成を考慮したコミュニケーション設計や、認知から購買に至るストーリーを勘案した成果ポイント(CPA)の設定だ。
そして、すべての広告を横断した「ユーザー1人あたりの獲得単価」を可視化し、広告の役割を考え、施策全体を組み合わせで評価することで「費用対効果の明確化を実現することができる」と井上氏は説明する。
「CV重複」「ラストクリック評価」の課題を解決する具体的手法
では、具体的に施策ごとの効果を「可視化」するにはどうしたらよいか。井上氏はそのために解決すべき課題が2つあると説明する。
課題その1 CVの重複
1つ目の課題は「CV(コンバージョン)の重複」だ。コンバージョンまでに複数の広告に接触しているケースにおいて、個々の広告媒体ごとに見てしまうと、コンバージョンの「貢献度」が見えず、正しい評価ができなくなってしまう問題だ。
この課題を解決するには「CVフローの可視化」が必要だ。記事広告やバナー広告、リスティング、SNSなど、CVに至るまでに接触した広告の「フロー」を可視化することで、各施策の「貢献度」が見えてくる。
ある企業では、コンバージョン全体の65%以上が、複数の広告施策に接触してからコンバージョンに至っていたことがわかった。各媒体ごとにレポートしていては自社製品購入に至るまでの勝ちパターンを65%以上も把握できていないことになる(井上氏)
課題その2 CPA評価の機能不全
2つ目の課題は、「CPA評価の機能不全」だ。これまでは、コンバージョンに直接貢献した直近の広告(ラストクリック)のみが評価されてきた。
これでは、認知や興味喚起に貢献した施策が評価されず、疎かにされてしまう課題がある。
ある企業では、コンバージョンの間接効果が可視化、評価できなかったため、直接貢献している施策だけに予算を投下した結果、認知や興味喚起の施策が減り、今まで獲得できていた潜在層の母数が減ったため、CPAが良い広告だけに予算を集中したのにもかかわらず、結果的にコンバージョンが減ってしまったという事例があった(井上氏)
このように、コンバージョンは少ないが、初回接触や間接効果でアシストしている広告というのは評価が難しかったが、こうしたラストクリック評価の課題を解決するのが、「再配分CV」と「CPA(再配分モデル)」だ。
つまり、「CVを生み出した成果を、CVに寄与したすべての広告に再配分する」ことで直接効果と間接評価を評価し、正当な広告の評価を行おうという考え方だ。
ラストクリック評価と異なり、初回接触や間接効果に貢献した広告も評価できるようになり、さらに、各広告の貢献度をコスト換算することも可能になるのだ。
広告予算のアロケーションが実現可能な「アドエビス」
広告全体を一元管理し「アトリビューション分析」が可能な広告効果検証プラットフォームが「アドエビス」だ。
「アドエビスは、ゴールに貢献した広告だけでなく、パスをつなげた広告もしっかり評価して、全体の広告を的確に評価していくことが可能だ」。
アトリビューション分析に必要な成果配分モデルは均等配分のほかに、「初回接触重視」「ラスト接触重視」などさまざまな設定が可能で、検討期間が短い商材であれば初回接触を高く評価して、検討期間が長い商材であれば、初回と最終接触を重めに評価するといったカスタマイズも可能だ。
実際に導入した企業では、広告の直接効果、間接効果が可視化されたことで、パフォーマンスの悪い「無駄な広告施策」の予算を効果の高い広告にアロケーションが実施可能となり、獲得数維持や最大化といった成果を上げている。
このように、現代のマーケティング手段に合わせた考え方をすることで「正しい」コストアロケーションが実現できるのがアドエビスだ。
新機能も順次、実装されている。たとえば、「スマホで広告を閲覧し、その後、パソコンのブラウザで購入」「スマホアプリの後に、スマホブラウザで購入」などのように、複数のデバイス、ブラウザやアプリを駆使してコンバージョンに至る場合、これまで、Cookieベースでの計測ロジックでは、スマホアプリと、スマホのブラウザ、PCのブラウザはそれぞれ別のユーザーと認識されてしまう問題があった。
こうしたクロスデバイス、クロスブラウザの問題を解決するために、ビッグデータとAI(人工知能)による分析で、特定のブラウザとアプリ、デバイスを同一ユーザーだと推測し、計測を行う機能を2018年8月に実装している。
井上氏は、「皆さんのプロモーション改善に向けて、我々に力になれることがあれば、ぜひ、お気軽にご相談ください」と述べ、セッションを締めくくった。
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