部門横断のデジタルマーケはなぜ失敗率が高い? Google Marketing Platform とSalesforceの連携がフルファネルマーケティングを実現する
企業が取り組まなければならない顧客体験の最適化と、そのための顧客理解。だが、実現のための横串の組織がうまく機能しない例もあるようだ。成功のポイントは、社内の誰もが納得するツールを使うことだと言えよう。
「Web担当者Forumミーティング 2018 秋」では、フルファネルマーケティングを実現する方法について、電通デジタルの西氏と、セールスフォース・ドットコムの鈴木氏が、「リード獲得からCRMまで~Google Marketing Platform とSalesforce連携で実現するフルファネルマーケティング~」と題して解説した。
横串のデジタルマーケティング部署はなぜうまくいかないのか
電通デジタルの西氏は、2018年のデジタルマーケティング環境の動向を次のように考えている。
- IoT、マーケティングオートメーション(MA)、オムニチャネル、ジオトラッキング、モバイルペイメントというように、オンラインとオフラインの垣根を壊す概念が多く出現した
- それとともに、デジタルマーケティングのサイロ化が問題となり、「サイロをぶっ壊せ!」というキーワードが登場した
- それに対応するかたちで、デジタルマーケティングを軸に、横串となる部門が作られるようになった
- 横串のマーケティング部署が目指すのは、認知・需要喚起から販売、顧客エンゲージメントまで、フルファネルをひとつのIDで管理し、広告を最適化すること
しかし西氏は「実際には、横串の部署の運営は難しい」と言い、デジタルマーケティング部門に縮小・廃止の動きもあるというニュースを紹介した。その理由をツール軸で考えると、以下の3つの問題が浮かび上がる。
- プラットフォームの問題
- スキル・ノウハウの問題
- 採用・育成・外部支援の問題
つまり、統一するための新しいツールを導入すると、下記のような不満が出てくるということだ。
- 「自分たちが今まで使っていたものの方が使いやすかったのに」
- 「前はできていたあれができない」
- 「使い方が難しすぎる」
- 「使える人を育てる余裕はない」
- 「そのツールを使える委託先が見つからない」
グーグルとセールスフォース・ドットコムの戦略的パートナーシップが生み出す可能性
ツール軸での課題を解決するには、多くの人がすでに使っている使いやすいツールが広範囲に使えればいい。そこで光明となったのが、2017年11月に発表されたグーグルとセールスフォース ・ドットコムが戦略的パートナーシップを締結というニュースだ。
Google アナリティクス 360 のオンラインコミュニケーションやウェブトラッキングと、Salesforce Sales Cloud(以下、Sales Cloud)やSalesforce Marketing Cloud(以下、Marketing Cloud)を連携させることで、オンライン・オフラインのデータ統合と、データのMA活用が可能になる。
Google アナリティクス 360 という、高シェアのソリューション同士の連携は、皆が納得して使えるので賛同を得やすく、ノウハウも学びやすい(西氏)
セールスフォース・ドットコムの鈴木氏は、「サイロを壊すためのひとつの答えが、グーグル社とのパートナーシップ」だと言う。
あらゆる顧客接点に対するサービスを提供するセールスフォース
セールスフォース・ドットコムといえばSFA(営業支援ツール)というイメージがあるかもしれない。実際、セールスフォース・ドットコムのSFAを導入している企業は多いが、それだけではない。セールスフォース・ドットコムではソリューション群をカスタマーサクセスプラットフォームと呼び、リード獲得、ECサイト(購入)、カスタマーサービス、コミュニティ(ロイヤルカスタマーになってもらうための場)を提供、これらをシームレスに連携することで、顧客を360度ビューで理解し、顧客とのエンゲージメントを強化するための支援を提案している。
リアルタイムの顧客データを活用し、最適なコンテンツやメッセージを最適なタイミングで最適なチャネルを通じて配信することでパーソナライズしたマーケティングキャンペーンやコミュニケーションを実現するためのマーケティングプラットフォームがMarketing Cloudだ。
OneToOneコミュニケーションを実現し、デジタルマーケティング施策を成功させる
インテリジェントなマーケティングのためには、下記の3ステップが必要だ。
- 理解する
- パーソナライズする
- つなげる
データがサイロ化されていると、データはあるはずだがどこだか分からない、呼び出せないなど、顧客理解を妨げることになる。セールスフォース・ドットコムは、マーケティングや営業など部門が保有する顧客データを一元管理して、これを解決する。さらには、「Einstein(アインシュタイン)」というAIも活用する。
パーソナライズについての調査によると、パーソナライズされたエクスペリエンスを期待する顧客の割合は76%だという。一方で、企業によるデータの利用に懸念を抱いている顧客の割合は62%だ。「自分にとって有益な情報は欲しいが、データを渡すのは不安」という消費者の気持ちに応えるには、何よりも信頼がもっとも大切だ。セールスフォース・ドットコムは何よりも信頼を重要視している。その上で、もらったデータに値するような素晴らしい体験を提供しなければならない。
企業は顧客を中心にして、顧客のためのアプローチをする必要がある。それが、顧客とつながるということ(鈴木氏)
One To Oneコミュニケーションを実現するには、顧客を知るための様々なデータが必要となる。「顧客により素晴らしい体験をしてもらうためにはグーグルとの連携は不可欠だった。このパートナーシップによる両社製品の連携は顧客に非常にメリットがある」と鈴木氏は言う。これにより、Marketing CloudとGoogle アナリティクス 360 がダイレクトに連携し、Google アナリティクス 360 で作成したオーディエンスに対してMarketing Cloudがコミュニケーションすることが可能になった。
電通デジタルの西氏によると、デジタルマーケティング施策成功のためには、以下の4つのステップが必要だという。Google アナリティクス 360 とMarketing Cloudの連携は、この4つのステップにおいてそれぞれ図のようなメリットがある。
- 分析・施策検討
- 試験運用
- 仮説検証
- 自動化
Google アナリティクス 360 とMarketing Cloudの連携でできること
最後に、連携によって何が可能になるかを紹介する。まずMarketing Cloudは下記を有機的に連携し、メール、プッシュ通知、SNS、LINEなどのマルチコミュニケーションを可能にするものだ。
- 顧客の属性データ
- 購買データ
- アクセスログ
- SNSデータ
- SFAデータ(営業ログ)
例えば、「30代/男性/妻と2人の子どもがいる/長男は小学生/自動車の購入を検討中/昔からSUVに憧れている」というユーザーを想定しよう。
Marketing Cloudが彼のホームページ来訪を検知すると、閲覧したページや事前の登録情報から、適切なコンテンツをメールで送る。そのメールが開封された、あるいはメール内のリンクをクリックしたことを検知すると、購入の熱は高まっていると判断して次のメール(例えば「お近くのディーラーはこちら」のようなもの)を送る。
また、メールを開かない人なら、LINEメッセージやFacebook広告を当てる。LINEとFacebook広告のどちらが効果的かABテストもできる。Marketing Cloudの「シナリオ設計」では、このようなことができるというわけだ。
連携① Google アナリティクス 360 + Marketing Cloud
Google アナリティクス 360 で作成したユーザーセグメントリストをMarketing Cloudに連携して、細かい行動ログをベースにしたマーケティングオートメーションが実施できる。さらに、マーケティングオートメーションの反応データをGoogle アナリティクス 360 で計測し、Marketing Cloud上でもGoogle アナリティクス 360 指標を用いた評価ができるようになる。
① アクセスログを活用したセグメンテーション
Google アナリティクス 360 に蓄積されたオンラインでの顧客の行動から、対象セグメントを生成し、Marketing Cloudへ連携することによって、アプローチするターゲット選定条件に利用できる。
② Marketing Cloudを活用したリマーケティングリストの生成
Marketing Cloudに蓄積されたデータをGoogle アナリティクス 360 に連携させることで、メッセージの開封/クリック有無や顧客の属性情報などを活用したオンライン広告配信が可能になる。
③ 統合レポーティング
Google アナリティクス 360 のデータをMarketing Cloudのジャーニービルダー上のダッシュボードで表示でき、ジャーニーごとにコンバージョンの状況を把握できる。
連携② Google アナリティクス 360 + Sales Cloud
さらに、Google アナリティクス 360 と、SFAであるSalesforce Sales Cloudを連携すると、オフラインのコンバージョンデータを、Google アナリティクス 360 に連携できる。
① オフラインCVユーザーの行動分析
Sales Cloudで取得したオフラインCVをGoogle アナリティクス 360 上で可視化することで、オフラインCVに至った顧客のオンライン上での行動を分析できる。
② オフラインCVを活用した広告の拡張配信
オフラインCVデータを活用して、実際に商品を購入した顧客に類似した潜在顧客へのオンライン広告の拡張配信がシームレスに実施できる。
③ オフラインCV軸での広告のアロケーション
オフラインCVに至った顧客のオンライン上での行動を分析し、広告配信を最適化する。
さらにその場で行われたデモでは、数クリックで連携できる簡単さが紹介された。また、鈴木氏によれば、「グーグルが外にデータをパブリッシュすることを認めたのは、今回が初めて」ということで、Google アナリティクス 360 とMarketing CloudおよびSales Cloudの連携によって他の製品では実現できないことができることを強調した。
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