未経験者4人で作るオウンドメディアで年間2万人を送客! コンテンツを収益につなげる方法とは?
年々拡大し続けるSEO市場。一因には、コンテンツマーケティングにシフトする企業の増加があるといわれています。そんな中、世界39か国で58万人以上の就業をサポートする世界最大級の総合人材サービス会社・ランスタッドも、オウンドメディア「キャリアHUB」に挑戦しました。
担当者全員がSEO経験なしからのスタートで、コンテンツ投入数は月平均5本にもかかわらず、本業のサービスサイトへ年間のべ2万人を送客できる規模に成長。「キャリアHUB」メインディレクターの柳川しのぶ氏が、コンテンツチームの立ち上げを支援したFaber Companyの白砂ゆき子、ウェブアナリストの小川卓とともに、成功できるメディアの体制づくりと今後の課題を語り合いました。
「日本の広告費は高すぎる」と本国オランダから改善指令。流入を少しでも補うためにコンテンツマーケティングに取り組み始めた
小川本格的にオウンドメディアに取り組むことになったきっかけを教えてください。
柳川ランスタッドの本社はオランダにありますが、もともと数年前から「日本法人は広告費がかかり過ぎている」と指摘を受けていたんです。海外では日本の人材市場と仕組みが違って、リスティングや外部メディアに莫大な広告費を投下する運用はしていなかったんですね。
そんな中、2016年8月に日本のサイト全体を大きくブランドチェンジすることになりました。リニューアル直後に流入減が予想されたので、広告以外のチャネルでそれを少しでも補いたいという思いもあって「コンテンツマーケティングに取り組ませてほしい」と提案したのです。
小川コンテンツ施策を始めようとすると、よく「これ、意味あるの?」と社内で議論になりますよね。
柳川そうですね。「本当に広告の代わりになるのか」という点を数字で社内に説明するのが難しくて……。
小川白砂さんはたくさんの企業さまのコンテンツ施策をお手伝いしていますが、費用対効果の話が出たとき、どういうふうに説明します?
白砂まずは「リスティングより断然安くなります」とお伝えします。ユーザーの検索意図に応えたコンテンツマーケティングであれば、費用のかからないオーガニック検索から継続的に流入を得ることができます。リスティング広告だと費用をかけ続けないといけないですからね。
小川「コンテンツを、他の集客先のCPC(クリック単価)とかCPM(インプレッション単価)と比較する」というアプローチですよね。良いコンテンツを作ることができればコストを抑えられるという。
白砂ええ。良質なコンテンツは長期間アクセスを維持してくれます。これも広告との違いで「1つ1つの積み上げなので、時間がたてばたつほどCPA(顧客獲得単価)が下がってきます」と説明することも多いですね。
柳川そうですよね! 私も「コンテンツは貯金になります」と社内を説得しました。
小川私は「地層」という言い方をします。要は「ベースをためていく」のがコンテンツマーケティングだと。「有料集客ではない集客の割合を増やして、毎月安定して見込める流入を確保するものです」というお話をします。
白砂ユーザーに役立つ良いコンテンツは資産として残って、集客し続けてくれますしね。
柳川そうですね。リスティングって本当に、予算があるかないかの勝ち負けの話になってしまいます。「日本の人材市場の構造上、広告出稿をやめることはできませんが、今後は検索流入という別のチャネルを作ることが大事なんです!」と力説して、オウンドメディア立ち上げの承認を得ました。
「コンテンツは貯金になる」と社内を説得した
後発で予算も人員も限られている。「量より質」で勝負する道を選んだ
白砂当社にお声がけいただいたときはコンペだったんですよね。
柳川はい。コンテンツマーケティングはまったくノウハウがなかったので、3社お声がけしました。1社は「すべてのコンテンツを作って納品する」という外部委託のご提案。もう1社は「1人の担当者を社外で修行させ、社内に戻して編集部を立ち上げる」というご提案でした。でもFaber Companyだけちょっと変わっていたんですね。
「Faber Companyにコンテンツを納品してもらい、ランスタッドでも作りながら、チーム全員でノウハウを教わる」、さらに「徐々に自社制作の割合を増やして半年後に独り立ち。メディア運営を内製化する」という提案だったんです。
「いずれは外部会社に依存せず、自分たちで運用したい。でも不安だらけ」という私たちにはぴったりの内容でした。
小川未経験で社内にメディア運営の体制を作るって、なかなかハードルが高いですからね。
柳川そうなんですよ。他の人材メディアはどこも月30本や50本といったコンテンツ量産体制で、すでに何百万PVとはるか先を走っています。後発かつ新規事業の私たちは、限られた予算と人員でそこに切り込んでいかなければなりません。担当するメンバー3人はコンテンツ制作経験ゼロですし、みな広報やマーケとの兼任で、時間をかけてコンテンツを量産するのは難しい。
だから「コンテンツは量より質」というお話が響きました。「ツールを駆使してユーザーに求められるものをきちんと分析すれば、少ない本数でも成果を上げられる」というメソッドに魅力を感じて、Faber Companyに依頼することにしました。
いずれは自分たちで運用したい。でも不安だらけ
小川ツールを使ってユーザーの検索意図を調べれば、経験がなくても取り組みやすいですからね。
柳川ええ。でもそれだけでいいコンテンツが作れるわけではないんですね。白砂さんの「愛のあるコンテンツ」という言葉で気付かされました。つまり「ツールを使うとユーザーの検索意図がわかる。でもそれはまだ、ただのキーワードでしかない。その言葉に隠れた『思い』や『悩み』をしっかりくみ取ってコンテンツを構成するには、愛がないとダメなんだ」と。
ユーザーを本当にわかろうと本気で突き詰めるから、伝わるタイトルになり、わかりやすい構成になり、成果が出せる。そのことをくり返し、熱く教わりました。
白砂分析は機械がしても、人間だからこそ気持ちをくみ取れるんだって点を伝えたくて。でも最初は「何言ってんだ?」って感じですよね(笑)。
柳川確かに(笑)。でも指導を受けるうちに、すごく腹落ちしました。キャリアHUBは2016年6月に公開しましたが、月平均5本しか投稿しなくても、1年ちょっとで当初のKPIだったセッション数を大きく超えられました。その理由は、自分たちでも「愛のあるコンテンツ」を作れるようになったおかげだと思います。
ユーザーをわかろうと本気で突き詰めるから、伝わるタイトルになり、わかりやすい構成になる
4種類のペルソナを作り、それぞれに役立つHowTo系コンテンツを投入
小川「愛のあるコンテンツ」を誰に届けるか、ターゲット設定も重要ですね。
柳川はい。当社は、アルバイトからオフィス・製造業の派遣、さらに転職もハイクラス求人まで幅広くサービスを展開しています。
キャリアHUBでは「1人のお客さまの人生に常に寄り添い、そのときどきの悩みを解決できるような情報発信をしたい」という理想がありました。白砂さんに相談したところ、「ペルソナを4つに絞りましょう」とご提案いただいて。
白砂ヒアリングしていくと、キャリアHUBの場合はユーザーを次の4つに分類できると思いました。そこで昨年4月は週に1回ぐらい打ち合わせを重ねながら、ペルソナごとのカスタマージャーニーを考え、HowTo系コンテンツの制作を提案したのです。
- 技能をつけたい派遣社員
- キャリアアップ・キャリアチェンジをしたい中堅クラスの社員
- 第二新卒
- もともとバリバリ働いていて育児休職中の主婦
柳川ライターさん選びも一緒にやっていただきましたね。Webで書いていらっしゃるライターさんのプロフィールを見てスカウトしたり、「キャリアコンサルタント ブログ」などのキーワードで探したり……大変でしたよね(笑)。
白砂有名な方だと「そのメディア、アクセスどれぐらいあります?」と聞かれ、「新規メディアなのでゼロです」とお答えすると「お断りします」なんて言われたこともありましたね(笑)。
柳川本当に、みんなで一喜一憂しながら。おかげさまで探していただいた3人のライターさんは今でも書いていただいて、良い関係が築けています。
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