成果につなげる! コンテンツマーケティング最前線

施策開始後わずか8か月でCV数が11倍に。方向性に悩むメディアを立て直した秘訣とは?

トレンドの話題で1000記事掲載してもアクセス低迷、ユーザーからも不評だったオウンドメディアを立て直した手法を「nomad journal」の赤羽宏之氏に聞いた

ビジネスパーソンの副業支援を中心に、いま話題の「新しい働き方」を提案する株式会社サーキュレーションも、2015年にリリースしたオウンドメディアの方向性で悩んでいました。2017年8月、編集長としてメディア再生を任されたのが赤羽宏之氏。「nomad journal(以下、ノマドジャーナル)」は、約8ヵ月でサービスサイトへの送客数が約11倍にも成長しました。当初からSEOプラットフォーム「MIERUCA(ミエルカ)」でコンテンツ施策を支援したFaber Companyの副島啓一、大森和博とともに、新しい働き方メディアの成長戦略を伺いました。

(左から)株式会社サーキュレーション マーケティングマネージャー 赤羽宏之氏/株式会社Faber Company取締役CRO 副島啓一、カスタマーサクセスチーム エバンジェリスト 大森和博

「何のサイトかわかりづらい」。ユーザーにも不評だったリニューアル前

――「ノマドジャーナル」に携わることになったきっかけは?

赤羽宏之氏(以下、赤羽):私は、もともと別のWebマーケティング会社の取締役だったんです。サーキュレーションの経営陣に「うちのメディア、リニューアルしたいんだ」との話を受けて担当することになったのが、「ノマドジャーナル」の前身となるメディアでした。

当時はデザインコンセプトがはっきりせず、登録ユーザーからも「何のサイトかわからない」との声があり、アクセスは低迷。ビジネスパーソンに向けて副業など新しい働き方を提案するメディアなのに、検索上位に来ていたのは「ストックオプション(自社株購入権)」の知識コンテンツでした。つまり、重要なチャネルとしていた検索において「働き方」に関するコンテンツは評価されていなかったのです。

月間投稿数は多く、オウンドメディアで1,000記事も掲載されていましたが、インタビューなどの質の高い読み物が埋もれてしまっている……何とももったいない状態でした。

株式会社サーキュレーション マーケティングマネージャー 赤羽宏之氏

副島啓一(以下、副島):相談を受けてデータを見たとき、僕も「流入がこれしかないのはおかしい……」が率直な感想でしたね。

赤羽:そうですね。SEOを考えると、自社サイトへのリンクやSNSでのメンションを増やすために、コンテンツ施策は必要不可欠な要素の1つです。なのに当時は1記事あたり月平均20~30セッション。ヒットした一部記事を除いた中央値だと月間5セッションとか……。

せっかく「働き方改革」が世間一般でトレンドになってきたのに、「副業」はもちろん「オープンイノベーション」や「リカレント教育」「サバティカル休暇」などで検索しても、2015年からそれらを扱ってきたうちのコンテンツが上位に出てこない。不本意でしかない状況でした。

副島:「興味のあるユーザーをちゃんと検索結果から誘導できるように、ペルソナ設計とそれに合ったキーワードの再設計が必要だね」という話から施策を開始しました。ツール導入後はカスタマーサクセス担当として大森が施策をお手伝いしました。

大森和博(以下、大森):まずは赤羽様のやりたいことをお伺いして、メディアの方向性とやるべきことを整理していきました。

手動で1日かかるデータ分析を約10分で集計し工数削減

――メディア再生のために取り組んだことを教えてください。

赤羽:まずは旧メディアのドメインを変えて、CMSを移行し、既存の記事を「副業系」「フリーランス系」「ビジネスワード」、リンクから流入が稼げる「副業実践者や著名人のインタビュー」の4つのカテゴリに整理し直しました。

目的は明確に「サービスサイトへの誘導」です。各コンテンツから「X-book」をはじめ、3カテゴリ4サイトに紐づける導線を設置しました。

プロフェッショナルな人材を1時間から活用できるマイクロコンサルティングサービス。2018年9月にOpen Researchに統合・リニューアル。

次に、「副業で働く人」全体の中から、サーキュレーションのサービス内容と照らし合わせて、ノマドジャーナルのターゲットとすべきペルソナを整理し直しました。

また、ミエルカのインテンショングルーピング機能を使ってターゲットキーワードを分析しました。ユーザーの検索意図を手動で分析してコンテンツの企画を立てようとすると結構時間がかかります。上位サイトを1つずつ目視で調べるので、キーワードによっては1日ぐらいかかる場合もあります。

それがツールを使うと数分待てば、わかりやすくバブルチャートで出てくるのです。「これなら加速度的に工数も削減される。思考も活性化されて企画が立てやすそうだな」と感じました。導入前のデモの途中、頭の中でライターさん向けのマニュアルを組み立て始めたぐらい、具体的に「使える」イメージが湧きましたね。

インテンショングルーピング機能でターゲットキーワード(赤丸)「副業 サラリーマン」を分析した例(円の大きさ=ニーズの多さ/距離の近さ=ニーズの一致度)

大森:ミエルカでは、そのキーワードを検索窓に入力するユーザーが何を知りたいのか(検索意図)を人工知能も活用しながら詳細に解析し、競合サイトとのSEO状況を比較できます。

副島:この機能は「大量データの分析を自動化してわかりやすく可視化したい」というところから開発をスタートしました。メインキーワードの周囲に配置されたトピックの集合体が、「ユーザーニーズのカタマリ」を示し、サジェストキーワードの分析だけではあぶり出しにくい「隠れたニーズ」や気づきが得られます。

赤羽:今もコンテンツ企画の際は必ず使います。URLを設定すれば競合サイトとの差異も明確に計測できますから。分析時間は手動と比べて20%~25%に削減できている印象ですね。

自ら書いたコンテンツで上位表示を達成し、メソッドを横展開

――新しいコンテンツはどのように制作されましたか?

赤羽:新規コンテンツはしっかりCV(サービスサイトでの問い合わせ)獲得に貢献しそうなテーマやカテゴリに絞って300キーワードほど選定しました。

また、自分でメソッドを言語化できないとライターさんに指示もできないので、一度ミエルカをフル活用して自分で書いてみたのが「新しい働き方」のコンテンツです。

ノマドジャーナル内のページ「新しい働き方 入門ガイド」サイトで見る

まずはミエルカのセミナーで教わったように、何も見ずに「自分が『新しい働き方』というキーワードで検索するユーザーなら何を知りたいか」を想像してメモしました。それが終わったら、分析データで補強。大森さんのアドバイスをもらいながら、構成案に落としていきました。

サジェストキーワードの分析データ(左)からは「新しい働き方の定義を知りたい」「企業実例を知りたい」などユーザーの意図が読み取れる。ユーザーに評価されている検索上位サイト(中央)やQ&Aサイト(右)では、どのようなトピックがよく検索されているかを把握できる

赤羽:大まかなユーザーニーズがつかめたら、次は社内取材をして「この辺の情報って何か知らない?」「おすすめの本を紹介して」など、詳しい社員に聞いて回りました。データだけを追うと検索上位サイトと似通ったコンテンツになってしまいがち。それを避けるためにも、「1人ブレスト」や「一次情報の取材」は重要だと思います。

――分析したユーザーの検索意図データからは何かつかめましたか?

赤羽:「新しい働き方」の検索上位コンテンツはほぼ書籍紹介です。しかし横断的に書籍を分析しているサイトはありませんでした。さらにミエルカで分析すると、企業事例や女性を中心としたサービス紹介にもニーズがあることを発見しました。これらを「新しい働き方」のトレンドとして、当社のサービスとともに紹介すれば、きっと評価されるコンテンツになるはずだと思いました。

新しい働き方を支援する企業事例、特に女性向けサービスや育児支援サービスなどもコンテンツ内でまとめた

――結果はいかがでしたか?

赤羽:11月に公開し1月には「新しい働き方」で10位以内にランクインしました。現在は検索3位(2018年7月現在)です。予想してはいたものの、リニューアル後はサイト流入が半分ほどとずいぶん低空飛行をしていたので、この1本の成功で「あぁ良かった……」と、今後の足掛かりがつかめました。

(左から)株式会社Faber Company カスタマーサクセスチーム エバンジェリスト 大森和博、取締役CRO 副島啓一/株式会社サーキュレーション マーケティングマネージャー 赤羽宏之氏

未来のビジネス貢献度を設計し、数年かけて挑む覚悟を社内共有

――施策を始めるにあたってどのようなことを意識されましたか?

赤羽:コンテンツマーケティングを始めるときに重要なのは、メディアの将来像を描いて社内理解を得ることだと思います。

UUやPVを1年3ヵ月後に約8倍にするのが目標でしたが、流入だけでなくビジネス貢献度が可視化されないと、途中でやめたくなっちゃうと思うんですよね。ですから、サービスサイトに対してキーワード広告を出稿した場合のCPA(コンバージョン単価)やCPC(クリック単価)と比較したROI(投資対効果)を参考に、「コンテンツ施策でこの広告効果を上回るには」という視点で数年がかりの事業計画を立てたのです。

副島:広告のROIを参考値にするのはいいですね。コンテンツ施策はすぐ成果が出ないので、社内からの期待との調整に悩まれるご担当者様も多いと思います。

極論ですが、半年で効果を求めるぐらいならSEOをやらないほうがいいと僕は思います。広告を出して高騰するCPCと戦い続けるのと、SEOで数年先に安定的な流入を稼ぐようになるのとどちらが目的に合っているのか、コストを含めて最初に話し合うべきかと。

株式会社Faber Company取締役CRO 副島啓一

赤羽:そうですね。ジャンルによりますが、過去の経験からもSEOは一般的には2年間ぐらいかけて取り組むべき施策だと思います。1年目は目標に対し50%~100%の達成度、2年目で5倍にする覚悟で。

今回は特に、企画の練り直しに2ヵ月かけて全面リニューアルし、いったんドメイン評価が下がったメディアです。月に2~3本コンテンツを投入していっても一気に右肩上がりの曲線になるまで1年3ヵ月ぐらいが妥当だと見込んでいました。

皆が一喜一憂せずに着実に進められるよう、社内には「コンテンツはすぐにCVするわけではない。投稿後にいじり回さず『信じて待つ勇気』を持ってほしい」と伝えました。

――流入が増えない時期の進捗報告はつらそうですね……。

赤羽:社内のレポートをひと工夫しました。メディアへの流入計測という観点では「ファインダビリティスコア」の機能を見るのが一番良いのですが、この計測軸の概念を説明しても全員にはピンとこない。そこで採用したのが「50位以内ランクイン率」です。これなら毎月作った記事がしっかり成果に結びついていることがわかります。

 検索エンジンでの見つけやすさを表す数字

メディアのリニューアル直後は「各キーワードの検索50位以内率」を月次報告の指標に入れることで社内のモチベーションを維持

副島:たしかに「300本設定した記事が、今回は150本が50位に入りました」、次回「180本入りました」と聞くとわかりやすいですよね。スタート時の指標として最適だと思います。20位以内に入るコンテンツが多くなった後にファインダビリティスコアに移っていくといいですね。

赤羽:はい。この指標ならジワジワでも動いていることがわかるし、「もうすぐ検索順位が上がると思います」と伝えることもできました。

大森:これは他社さんにもヒントになりそうです。多くの企業様で「Web担当者がマネジメント陣を口説いて、コンテンツ施策に取り組むのが難しい」と聞きますから。小さい成果を出してわかりやすく周知して、ちょっとずつ売り上げ貢献のイメージを持ってもらうって大事ですよね。

株式会社Faber Companyカスタマーサクセスチーム エバンジェリスト 大森和博

投稿した80本中70本が1ページ目に入り、CV数は約11倍に成長

――現在の成果について聞かせてください。

赤羽:特に注力した副業関連ワードでは、約80本投稿したコンテンツのうち70本が1ページ内にランクインしています。「副業」の単ワードでも上位に表示されるようになりました。

新規コンテンツ投稿前に比べると、サイト全体の月間UUは15倍に成長。サービスサイトへの送客も好調で、「X-book」ではノマドジャーナルのサイト経由で約11倍の月間登録者数を確保できるようになりました。キーワード広告ベースのCPC/CPAベースでも、月次で100万円以上の広告効果があると思います。8ヵ月間の成果として最大級にうまくいった状態だと言えるでしょう。

新規コンテンツ投稿開始から8ヵ月後、「ノマドジャーナル」の月間UU数は約15倍に。メディアのコンテンツからサービスサイト「X-book」に遷移し、登録したユーザーは月間約11倍に増えた

副島:赤羽さんの成果は、ユーザーのことを徹底的に考え抜いた結果ですよね。すごく抽象的ですが、やはり読者不在のコンテンツを「とりあえず」で作らないこと、スタート時に決めた「誰に何を伝えるか」をブレさせないことです。

また、リンクを意識したサイト内設計も最近は重要です。ページに入ってだれも何もアクションしなくて、すぐ他のページに行ってしまうようなサイトって良くないですよね。仮説ですが、「ちゃんと押される」リンクがどれだけページ内にあるかも含めて、検索エンジンはユーザー満足の評価対象にしているように思います。

さらに質の高いサイトやSNSからも引用されるような、じっくり読まれるインタビュー記事をコツコツ作り続けたことも重要だったのではないでしょうか。

「ノマドジャーナル」には月に数本インタビュー記事が掲載されている

赤羽:インタビュー記事やイベント記事などはある種、ブランディングのためのもの。月数本は、広報予算の枠組みの中で制作しています。

社外資源の活用で、ライター管理・メンバー育成を効率化

――ライターさんはどのように探したのですか?

赤羽:弊社にご登録いただいている専門家のほかに、クラウドサービスでもお声がけしました。テストライティングをして、採用は10人中1人~2人ぐらい。特に「しっかりリサーチできるか」を見て選びました。Web検索や書籍から情報をまとめるSEOコンテンツは、ライターさんの知識量で質が大きく左右されます。文章力よりも「専門的な知識に対していい加減に調べたり、主観で解釈して間違った文章を書いたりしていないか」のほうが、重要だと感じました。

――ライターさんのギャラはどのように決めましたか?

赤羽:3000文字の基本単価は決めていましたが、そのコンテンツのトピックス性に応じた文字数・手間の予測を加味して都度最適化しました。最終的にそのキーワードで上位表示された場合のトラフィック、広告出稿を想定した場合のCPC試算も参考にしましたね。

参考例:毎月250セッション見込めるコンテンツで、CPC500円のキーワードを施策する場合。

  • 250 × CPC500円 = 12.5万円/月
  • 5万円 × 12カ月 = 150万円/年
  • コンテンツ型はLP型よりCVが1/6程度と見積もって
  • 150万円 ÷ 6 = 25万円/年

→順位が上がる原稿なら執筆に5万円程度払ってもOK。

――発注から入稿まではスムーズでしたか?

赤羽:そうですね。今回は「コミュニケーションコスト」を削るように努力したことも大きかったです。例えば当初半年間、法律や税金に詳しい専門ライターさんのマネジメントや原稿チェックを外部会社に委託したのもそのひとつ。編集部とライターさんの間に入ってくださるので、こちらで制作した構成案と要望をビジネスライクに伝えるだけでよく、効率的でした。

また社内チームに新しいメンバーが配属されたらミエルカ大学に通ってもらい、コンテンツ制作の基礎を外部で習得してもらいました。ワークショップ形式で実際に手を動かしてSEOの基礎が学べたのも良かったです。

「入門編」「基礎/設計編」「分析/改善編」に分けて学ぶワークショップ形式のミエルカ大学。少人数制で毎月開催されている。

大森:ツールだけあっても活用していただけなければ意味がありません。ミエルカのカスタマーサクセスではまさに「自身で実践していただける」「すぐ質問できる」環境づくりに力を入れているため、評価していただけてうれしいです。

「認知」という資産を成約へ。ナーチャリングの仕組み化が課題

――今後の目標をお教えください。

赤羽:コンテンツマーケティングが全盛ですが、今回改めて1記事をしっかり書くことの重要性についての理解が深まりました。サーキュレーションは急速に複数の事業立ち上げている会社なので、社内では「各サービスでしっかり検索面を取っていければ…」という夢が大きく広がったと思います。

2018年から来年にかけては、「ノマドジャーナル」で築いた認知という資産を、MAなども使って成約に誘導する仕組みを強化する予定です。ミエルカもその仕組みの一環として活用し続けたいと思います。

――ありがとうございました!

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