【レポート】デジタルマーケターズサミット2018 Winter

実践者が明かした、コンテンツマーケティングを加速させるチームづくり3つのポイント

メディア運営チームづくりを成功させる秘訣とは
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コンテンツマーケティングを加速させるには、チームづくりが重要だ。そのために重要なポイントは「KPI設定」「標準化/マニュアル」「モチベーション」の3つだと、メディア運営を実践しているアソビューとビズリーチの担当者が語った。

月岡克博氏
株式会社Faber Company
エグゼクティブ・マーケティング・ディレクター
月岡克博氏

ビズリーチアソビューのメディア担当が語る、コンテンツマーケティングに必要なこと」と題して、コンテンツマーケティングを成功させる秘訣を明かすセッションが、デジタルマーケターズサミット2018 Winterにて行われた。Faber Company(ファベルカンパニー)の月岡 克博氏がモデレーターとなり、メディアを運営するビズリーチの大森氏とアソビューの宮本氏がパネリストとなって、運営チームづくりのポイントなどを語った。

宮本武尊氏大森厚志氏
アソビュー株式会社 執行役員 宮本武尊氏(左)と
株式会社ビズリーチ BizHint事業部 大森厚志氏(右)

アソビューとビズリーチのメディアの概要

月岡氏は、SFAからCRMまでマーケ・営業支援の経験を豊富に持ち、現在はFaber CompanyにてSEOやコンテンツマーケティングの支援、さらにはWeb担当者Forumをはじめとしたマーケティング系のイベントでの講演実績も多く持つ。

成功しているメディア運用のリアルから現場に活かせるノウハウを持ち帰ってほしい(月岡氏)

asoview!(アソビュー)」は、遊びのプラットフォームという位置づけで、約5,000社、1.8万の商品の予約・チケット購入をネットで行えるサービスを行っている。

また、オウンドメディアとして「asoview! NEWS」と「asoview! TRIP」を運営しており、顕在層はasoview!に、潜在層は2つのオウンドメディアでリーチすることを狙っていると宮本氏は説明する。

アソビューのオウンドメディアの役割
アソビューのオウンドメディアの役割

一方、HR領域を軸に様々なインターネットサービスを提供するビズリーチでは、1年ほど前に人事・経営者向けメディアとして「BizHint HR」を立ち上げている。

独自取材の「オリジナル記事」と「ピックアップニュース」といったコンテンツのほかに、人事担当者が持つ悩みや課題に対する解決型のコンテンツも提供し、BizHint HRへの登録を促す仕掛けも行っているという。

ビズリーチのメディア「BizHint HR」
ビズリーチのメディア「BizHint HR」

コンテンツマーケティングの成功には、「チームづくり」が重要だ。

月岡氏は、メディア運営で成果を出している企業は、チームや組織づくりがしっかりできているという気づきから、今回2社を紹介することにしたという。

月岡氏は、チームづくりのポイントとして次の3点をあげた。

<メディア運営チームづくり3つのポイント>
  1. KPI設定
  2. 標準化/マニュアル
  3. モチベーション

3つのポイント、それぞれについて解説した。

ポイント① シンプルにモニタリングできる「KPI設定」

まずは、「KPI設定」について、2社の例をあげて紹介する。

アソビュー記事数をKPIにするのをやめた

アソビューの宮本氏は、「これまでオウンドメディアを運営してきて、3つのフェーズがあった」と説明する。

  • 一点突破期
  • 試行錯誤期
  • 拡大成長期

2015年3月~2015年9月の「一点突破期」は、キュレーションメディアの数が増えてきた時期だった。アソビューでは、ブームに乗っていこうと考えて「asoview! NEWS」を立ち上げ、しっかりとニュース情報を発信することでオーガニック流入を加速させるための土台を作っていったという。

続いて、2015年10月~2016年1月が「試行錯誤期」だ。宮本氏は、「KPIを記事数にして、とりあえず何も考えずに記事数を増やすことに注力してしまい、何のためにやっているかわからなくなっていった」と説明する。

最後が2016年2月~2016年10月の「拡大成長期」となる。この時期は、チーム内のコミュニケーションの取り方を大きく変え、何のためにメディアを運営し、この記事は何のためにあるのかをしっかりと社内で共有してコンテンツを制作。試行錯誤期には1日50本作っていた記事を、拡大成長期には1日3~5本に抑え、より質の高いコンテンツを作るようにしたというのだ。

たとえば、試行錯誤期は、人気スポット情報をただ集めてまとめただけのようなコンテンツも多かった。しかし、そのようなコンテンツでは読者にとって本当に参考になる情報とは言いづらい。他のメディアでも同じようなコンテンツがあって、どこが違うのかも明確にできていなかった。

そのため、取材を中心とした「1次情報」を大切にして、アソビューでしかできないコンテンツを作る方向に考え方を変えていったのが、次のような記事だ。

  • 浦安万華鏡に行ってきた! 大江戸温泉 浦安を徹底解説
  • テルマ―湯(新宿)歌舞伎町で天然温泉!? 館内の魅力を徹底解剖!

おすすめスポットを独自に深堀りして徹底取材した上記のようなコンテンツが、メディアの拡大成長につながったと宮本氏は説明する。

試行錯誤期は、「1日●本の記事を書けば、●●だけPVが増える」と考えていたが、そんなにうまくいくはずがない。改めてメディアの価値を考えることで拡大成長できた(宮本氏)

宮本氏は、asoview!はいつでもチケット予約やレジャー予約ができる“自動販売機”という位置づけで、オウンドメディアは“人が集まる場所”だと説明する。たくさんの余暇を楽しみたいユーザーが集まる場所に自動販売機を置けば、買ってくれる人がいるはず。「余暇を楽しむユーザー」にとって、どのようなコンテンツが必要となるかに立ち返ることで成果が出てきているというのだ。

現在は、オウンドメディアのコンテンツから本サイトへの誘導、レジャー予約のコンバージョンもかなりの確率で生まれていることを宮本氏は明かしてくれた。

ビズリーチファンダビリティスコアを報告指標に

一方でビズリーチの大森氏は、「BizHint HRを始めた当初、社内にSEOを意識したコンテンツマーケティングのノウハウがなく、どのように進めていけばよいか悩んでいた時期」と振り返る。

また、社内にコンテンツマーケティングの実績がなかったため、経営陣とコミュニケーションする際、何を指標にモニタリングをしていくかも大きな課題だったと言う。

世の中的にはPVなどを取り上げるケースが多いが、BtoBメディアはターゲットとなる読者が限定されることや、そもそも0からのコンテンツマーケティングは時間が掛かるため、施策の効果が見えはじめる前に軌道修正を迫られるリスクがあると考えていた。

それが一変したのは、Faber Companyの提供するコンテンツ&SEOプラットフォーム「MIERUCA(ミエルカ)」を使い始めてからだという。

ミエルカでは、検索順位状況をスコア化する“ファンダビリティスコア”を計測する機能があり、施策実施状況をファンダビリティスコアで評価、経営陣への報告指標にもしたという。現場では様々なKPIを設定したものの、経営陣には早くから評価できるファインダビリティスコアで状況を可視化した。しかも、ミエルカでモニタリングは自動化し、手間がかからずリアルタイムで確認できたことも大きかった。

季節変動も多いPVを見るのではなく、ファンダビリティスコアを見ることによって、アクセスは少ないがしっかりと順位が上がっていることで施策の進捗状況を確認できた。シンプルな指標で経営陣と一緒に効果検証することで、やり方は間違っていないことを確認しながら運営していけた(大森氏)

ポイント② 誰でも継続的に運用できる「標準化/マニュアル」の整備

つづけて、「標準化/マニュアル」について、2社の取り組みを説明する。

ビズリーチ属人化されず誰でも同じことができるマニュアル

「BizHint HR」を運営する大森氏は、自分が「BizHint HR」の担当ではなくなっても、ノウハウやナレッジを引き継いでいけるように、

  • ライター発掘方法
  • 構成作成方法
  • 執筆依頼フォーマット
  • ライティング
  • リライト/改善
  • 社内依頼方法
  • 業務マニュアル

などのマニュアルを作り、細かく業務を設定していくことで、属人化されずに誰もが同じことができるようにしていった。

アソビュー“ミエルカのユーザーニーズ分析で制作工数を50%以下に

オウンドメディアの集客でSEOは欠かせない。そのためアソビューでは次のような手順を設定してコンテンツを制作していた。まず、検索エンジンで「検索されるキーワード」からユーザーがどのような意図を持って検索しているのかを調査。そして、調査結果に基づいてコンテンツ構成案を設計。構成案にそって、取材・執筆・校正を行い、最後にSEOチェックするという流れを作っていた。

しかし、検索キーワードの検索ボリュームや検索結果のの内容を見て、ユーザーがどのようなコンテンツを求めているかという意図を読み取っていくためには、高度な分析力とストーリー設計力が重要だ。その部分をマニュアル化していくのは非常に困難だったと宮本氏は振り返る。

そこで有効だったのが、ミエルカのユーザーニーズ分析機能である“サジェストネットワーク”機能だ。

「上野動物園」で検索した場合のサジェストネットワークの例
「上野動物園」で検索した場合のサジェストネットワークの例。一緒に検索されているキーワードから、どういった情報が求められているのかをミエルカで推測できる

この機能により、検索意図を容易に分析することができ、ユーザーが何を求めているかがわかりやすくなる。この情報を構成に落とし込み、取材先に事前に取材内容を伝えることで、取材内容の抜け漏れなどもなくなったという。

さらに、工程の標準化によって宮本氏が監督しなくても、アルバイト主導でコンテンツを作ることができるようになり、制作工数をこれまでの50%以下に減らすことも実現できたという。

ポイント③ 中長期で評価を明確にして「モチベーション」を維持

そして、最後のポイントである「モチベーション」について、2社は次のように対応した。

ビズリーチ評価基準をライターに提示、コミュニケーションも密に

ビズリーチでは、募集したライターにあらかじめ同一テーマでテストライティングしてもらい、合格したライターを本採用するようにしている。テストの合格通過率は5%程度と厳しい。また、ライターはA~Fまで6段階のレベルに分けて報酬にも差を付けており、評価基準を明確に示すことで、ライター各自に努力意欲を持ってもらうようにしている。

また、ライターのレベル向上を促す一方で、ライターとのコミュニケーションも重視している。コミュニケーション能力の高い人材をディレクション担当として、フィードバックを必ず行うようにしている。その際に伝えるのは「ポジティブ」なことを中心に伝え、多くの人に読まれていることへの喜びを感じてもらうなどモチベーションアップにつなげている。

アソビューコンテンツ制作自体がモチベーションに

アソビューでは、社員とアルバイトでコンテンツを作っている。“お出かけしたくなるコンテンツを作る”というKPIがあるなかで、お出かけしたくなる現地にライターとして取材に行くこと自体がモチベーションとなっていると宮本氏は説明した。

ときには、オープン前の話題スポットにプレスとして参加できることもモチベーションアップになっているという。

コンテンツマーケティングを加速する「チームづくり」に必要な3か条
コンテンツマーケティングを加速する「チームづくり」に必要な3か条
◇◇◇

月岡氏が2社のチーム作りのポイントを改めて3つに整理した後、両氏は次のように話してパネルディスカッションを締めくくった。

チームを作るときは、「そのチームで楽しく仕事ができるか」を追求したほうがよい。目標だけを追いかけてしまうと目的を見失ってしまう。われわれの場合は、「お出かけしたくなる」ことを追求していくことで、自分たちがよいメディアを作っているという納得感と満足感が高まっていった。何のためにこのメディアが必要なのか、をキックオフのときに意識すれば、うまくいくのではないだろうか(宮本氏)

1年前に始めたときには、何もわからず、コンテンツマーケティングの初心者だった。その中で、第1歩を踏み出すツールとしてミエルカを活用したことが成功につながったと感じており、各事業部にも横展開して活用している(大森氏)

最後に月岡氏は、オウンドメディア運営に悩む企業に向け、「ミエルカでは、ツール、学習コンテンツ、個別コンサルティングの三位一体で、全面バックアップする」とアピールして、ディスカッションを終えた。

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