AIとMAを活用したデジタルマーケティング基盤構築で重要な4つの秘訣とは
企業マーケティングの課題は、「マーケティング基盤を構築して、最適化と自動化を実現する」こと。AI(ディープラーニング)とマーケティングオートメーション(MA)を活用して実現するためのポイントを徹底解説する。
デジタルマーケターズサミット 2018 Winterに登壇したアクティブコアの山田賢治氏は、「AI x MAを活用したデジタルマーケティング基盤構築 ~統合した顧客接点データをAI x マーケティングオートメーションにどのように活用するか?~」と題して講演を行った。
企業マーケティング4つの課題
山田氏が事前に企業に行ったヒアリングによると、企業マーケティングには大きく分けて次の4つの課題があったという。
- 顧客データ統合
- 施策分析・アプローチ
- AI・自動化
- 業務効率化
これらをまとめると、マーケターが求めているのは、次の4つとなる。
- バラバラのデータを顧客単位で統合して顧客を可視化したい
- 蓄積したデータから顧客行動を予測して顧客接点を最適化したい
- パーソナライズされた施策をチャネル横断で実行したい
- 実行から分析までの作業を効率化したい
企業においては、マーケティング基盤を構築して、最適化と自動化を実現するのが課題となっている(山田氏)
デジタルマーケティング基盤構築の重要ポイント
この課題を受けて山田氏は、企業がデジタルマーケティングの基盤を構築する際に押さえておくべきポイントを4つ挙げた。
- データは可能なかぎり顧客単位でひもづける
- シナリオはレコメンド+効果測定とセットで設計
- 組織体制は、システム部門やベンダーとの連携が必須
- レポートやアプローチは自動化する
それぞれについて解説する。
ポイント 1 データは可能なかぎり顧客単位でひもづける
基盤構築においてまず大きな課題は、顧客と企業の接点がさまざまなチャネルを横断している一方で、企業では「広告データ」「Webアクセス」「メール」「売上データ」などそれぞれバラバラにデータをもって分析をしていることだ。また、BIツールを導入して可視化したはいいが、その後データを活用して個々の顧客へのアプローチを改善するまではできていないことが多い。
ポイントは、「顧客は点ではなく、線や面でコミュニケーションしている」ということだ。「会員登録」「レコメンド」「購買」といった“点”で見るのではなく、顧客単位のデータを時系列で統合し、可能なかぎりデータを顧客単位でひもづけて見ていく必要がある。
またDMPベンダーによっては、固定フォーマットを要求することが多いが、拡張性や他社との差別化を考慮して、自社データフォーマットでDMPを構築するほうが望ましい(山田氏)
ポイント 2 シナリオはレコメンド+効果測定とセットで設計
自社顧客の現状把握を行い、シナリオを作ると同時にレコメンド設計を行うが、この時点でシナリオとレコメンドの効果測定も設定しておくことが重要だ。また、自社データとオーディエンスデータをマージして、見込み顧客や休眠顧客へのアプローチも最初から設計しておく。
山田氏によると、「施策の効果を顧客LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)で評価し、一画面で時系列に見たいという要望が多い」という。これを実現させるためにも、「顧客単位で施策とひもづける必要がある」と山田氏は強調する。
ポイント 3 組織体制は、システム部門やベンダーとの連携が必須
組織体制については、デジタルマーケティングを統括する部門が必要なほか、外部であっても社内であってもシステム部門の協力が非常に重要となる。ベンダーコントロールも含め、システム部門の協力を得られるかどうかが基盤立ち上げ期間に大きく影響するという。
ポイント 4 レポートやアプローチは自動化する
施策別レポートや顧客アプローチは自動化して効率的にすることが必要となる。
導入スケジュールは、次の図のようになる。基盤始動後の第1フェーズから第3フェーズまで含めて、ベンダーと取り組むことが重要だ。
こうして、顧客軸で統合したデータから顧客単位でアクションが可能なデジタルマーケティング基盤が完成するというわけだ。
機械学習の課題をディープラーニングが解決
続いて山田氏は、話をデジタルマーケティング基盤におけるAIと機械学習に移し、AIを支えるディープラーニングの仕組みについて解説する。
ディープラーニングはニューラルネットワークの発展形だ。たとえば、Webサイトを訪問したユーザーがコンバージョン(CV)するかどうかを予測する場合には、ユーザーの行動に合わせて点数に重みを掛け合わせ、一定のしきい値を超えればCVするというように予測する。このように複数の入力から予測(出力)するのが神経と似ていることからニューラルネットワークと呼ばれる。
実際のAI・機械学習ではニューラルネットワークを幾層も重ねて多層モデルを構築する。点数と重みを一度掛け合わせるだけでなく、ニューラルネットワークを何層にも重ねて、実際の結果との誤差から重みづけを前の層に遡って更新(学習)していく。これを繰り返すことによって予測の正解率が向上する。これがAI・機械学習の本質だ。
従来のスコアリング手法では、特徴量設計ができず、変数や重みづけは人間が決めていたことが大きな課題だった。これを解決したのがディープラーニングだ。特徴量抽出がアルゴリズムに組み込まれており、特徴をフィルタして抽出することで、特徴量を学習する。
たとえば、画像認識では、画像ビットマップにフィルタをかけ、どれだけ合致するかの特徴マップを作る。
ディープラーニングは特徴をフィルタして抽出、特徴量を学習する。
目や耳や鼻の特徴を自動的に抽出してその出力を多層ニューラルネットワークに渡す。これにより大幅に予測精度が向上する。これまでの統計・機械学習では特徴量は人間が決めていたが、ディープラーニングが画期的なのは特徴量をデータから自動抽出して学習する点だ。
購買やCVしそうな顧客を予測し、自動アプローチする
山田氏は次のように説明する。
アクティブコアでは、デジタルマーケティングでAI・ディープラーニングを活用して、行動履歴を機械学習する仕組みを提供している。アクティブコアのAIは「ピタゴラス」と呼ばれ、購買やCVにつながりそうな顧客の特徴を自動学習し、スコアリングではなく、データから確率の高い顧客セグメントを自動抽出し、自動でアプローチを行う
ピタゴラスを使用したとある事例では、
- メール開封率: 通常は30~40%のところが54.7%
- CV率: 通常は1.0~1.2%のところが6.6%
に向上したという。
同社の提供する「アクティブコア マーケティングクラウド」では、次のようにさまざまなマーケティングをAIで容易に行える。
レコメンドメールなどの配信時間を顧客のアクティビティに合わせることで開封率を向上
A/Bテストを自動化して最適化
ディープラーニングを使ったレコメンドでマッチング率とCV率を向上
自然言語処理レコメンドで履歴データなしでもレコメンドでき、レコメンド精度を向上
Webサイト訪問後に店舗で購入する会員のデータを機械学習させて、類似顧客にアプローチ
アプリ行動から顧客嗜好を予測してターゲット抽出やレコメンドに活用
さらに、機械学習を使ってYahoo! DMPと連携し、広告連動によって顧客接点を拡大することで、CV率の向上やCPA(Cost Per Action)の削減が行えるという。
「ターゲット抽出」「パーソナライズ」「配信」がバラバラなシステムでは、顧客単位で一貫性を持ってシームレスにアプローチできず、自動化もできない(山田氏)
最後に山田氏は、「AI×マーケティングオートメーション」のポイントとして、次の4つを示し、講演を締めくくった。
- AIでは顧客軸で統合・学習されたデータを使う
- 分析とアクションが一体化していること
- アクションの結果を機械学習して精度を上げる
- 効率化・自動化を実現するためにAIを活用する
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