プライベートDMPを活用した顧客分析・機械学習/ディープラーニング・マーケティングオートメーション
Web行動履歴に顧客データや広告データなど、さまざまなデータを統合するデータマネージメントプラットフォーム(DMP)と、ステップメールやスコアリングといったマーケティングオートメーションは、別物として取り組む企業も多い。しかし、統合したデータを分析し、機械学習やディープラーニングを活用してマーケティングオートメーションに繋げると、より大きな成果を上げることができる。
アクティブコアの山田氏が「デジタルマーケターズサミット2017」において、「プライベートDMPを活用した顧客分析・機械学習/ディープラーニング・マーケティングオートメーション」と題して、統合されたマーケティングデータを分析・アクションへつなげる仕組みづくりのポイントについて解説した。
マーケティングオートメーションの精度はデータ抽出で決まる
マーケティングオートメーション(MA)では、顧客の行動を分析・可視化してターゲット顧客を抽出し、メールやレコメンド、電話をかけるなどのアプローチにつなげる。マーケティングオートメーションが成功するためには、適切な相手に適切なタイミング、適切な方法でアプローチすることが重要だ。つまり、MAで成功するかどうかはターゲット抽出の精度(とシナリオ設計)にかかっている。
ターゲット抽出の精度を高める役割を果たすのが、プライベートDMPだ。主に、次の3点のようなことが可能になる。
- Web系、マスター系、トランザクション系といったすべてのデータを統合し、会員IDでひも付ける
- DMP内部でCookieと会員IDをひも付け、過去やコンバージョン以降のWeb履歴を会員IDで管理する
- 異なるデバイス間、異なるCookieをIDでひも付けて、ログイン前のデータもトラッキングする
山田氏は次のように言う。
マーケティングオートメーションとプライベートDMPを組み合わせることで、データ統合、ターゲット抽出、シナリオ作成、オファーという一連の流れがシームレスになり、アプローチをより適切にパーソナライズできる
たとえばメール自動化では、定期的に情報を配信する定期フォロー型が多いが、プライベートDMPを組み合わせれば顧客の行動を起点にステップ方式で配信するイベント起点型や、カスタマージャーニーをシナリオに落とし込んだシナリオ型が可能になる。
イベント起点型の例では、初回購入のAさんには購入した商品に基づくアフターフォローのメールを送り、カート放棄したBさんには属性や購入履歴に基づいたリマインドメールを送るなど、ユーザーの行動に基づいたステップメールが可能になる。
その他、カタログ請求した人には、請求時に登録した内容を元にキャンペーンをオファーし、キャンペーンを応募した人には最寄りの店舗を案内して来店を促すなど、データを統合してあればオンライン、オフラインを問わずシームレスなアプローチができる。
また、B2Bの場合は、営業担当者や展示会などの重要性が高いが、Webがまったく関係ないというわけではない。営業履歴やWebのデータをひも付け、電話でのアプローチの精度を上げることが、データ統合によって可能になる。
オンライン/オフライン統合でよりパーソナルなレコメンド
Web履歴とそれ以外のデータを統合することで、レコメンドの精度も上がる。Webの閲覧履歴だけで判断すると、同様の商品や関連商品など、商品の相関でレコメンド内容が決まる。しかし、会員データなどを統合してユーザーの属性情報も踏まえると、その人と同じ属性の人が購入した商品や、その属性の人の嗜好に合った商品など、さらに進んだレコメンドが可能になる。
さらに、機械学習を活用して、行動履歴から次回購入商品を予測することが可能だ。機械学習とは、「確率・統計モデルに基づくパターン認識」のことだが、より多くのデータを学習させて予測させると、正解率が上がる。この学習させるためのデータに、DMPが使える。会員データ・購読データ・分析データなど多くのデータを学習させることで、「これを買った人は、次にこれを買う確率が高い」という予測が得られ、レコメンドに反映すれば購入の確率が上がるというわけだ。
つまりさまざまなデータを統合することにより、分析やマーケティングオートメーション、レコメンドの精度向上と同時に、AI・機械学習・ディープラーニングの入力層に利用できるというメリットもある。将来、AIやディープラーニングに取り組もうという方針があるなら、そのためにもプライベートDMPの整備が先決だ。
データ統合のポイント
プライベートDMPのメリットに納得し、いざ構築しようというときに、最大の課題となるのはデータがきちんと整備されているかという問題だ。さまざまなデータを日々登録していても、全ての項目がきちんと埋まっているとは限らない。
たとえば、会員マスターには、会員番号とともに生年月日や性別、居住地、入会日、メールアドレスといった項目があるだろうが、すべてきちんと登録されているだろうか。あるいは、記入ルールが統一されているだろうか。性別ひとつとっても、男性を「0」女性を「1」としているデータと、男性を「M」女性を「F」で登録しているデータが混在している状態も珍しくはない。
あるいは、他システムのデータとのひも付け精度や、フラグ値の統一に問題がないだろうか。実は、DMP構築の前提となる最も重要な部分は、このようなデータ整備という地道な作業である。この作業を乗り越え、イベントや案件データのひも付けができていると、マーケティングオートメーションでできることが広がる。
データ統合のポイントを簡単にまとめると、次のような点に注意が必要だ。
- 何のIDでひも付けるのか、連携仕様を明確化し変換する(マルチデバイス対応にはどのCookieを使うかも明確化)
- データの統一化
- データ取り込みのフォーマットや転送方式、反映タイミングを明確化
- IT部門やベンダーとの連携
アクティブコアの場合は、社内にデータベースを構築するのではなく、クラウドにデータを集める。また、社内データだけでなく社外のデータも統合・分析できる。蓄積したデータをさまざまな角度で分析し、ひとつの画面にWebデータと基幹データを並べて比較したり、Excelで手間をかけて作っていたようなレポートもボタンひとつで作成できるようになる。
最近のトレンドとしては、広告をCVやCPO、CPIで評価するのでなく、最終的に累計いくらの売上をもたらしたかという広告LTVでの分析が多いという。また、広告だけでなくメルマガやLINEもLTVで見るというケースが増えている。
さらに、広告LTVデータを元にした広告出稿先・ボリュームの最適化で、機械学習やディープラーニングの活用に取り組んでいる。機械学習は、シナリオの改善やスコアリングの高度化にも利用できるという。
分析だけでなく、レコメンドやマーケティングオートメーションも、生命線はデータである。データが分断された部分最適化での分析やマーケティングオートメーションは、いずれ頭打ちになる。そして、データ統合を念頭に置かずにシステムを構築すると、後から再構築の必要が生じ、業務増大につながる。
とはいえ、データだけあればいいというわけではない。もうひとつ重要なことは、データを生かす組織づくりだ。そのためには、経営層の支援と組織横断が不可欠で、データを統合し、皆が同じデータを見ることが重要だ。
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