顧客に選ばれるマーケティングオートメーション3つのポイント
マーケティングオートメーションツールは、闇雲に導入するのではなく、あらかじめきちんと分析してその結果を基に導入すべき――アクティブコアの山田氏は、そう強調する。「顧客をランク化して優良顧客を育てたい」と相談に来た会社が、分析してみるとそれよりも「まずリピートしてもらうことが先」という場合もある。
マーケティングオートメーションのポイントは、「顧客タイミング」「分析に基づいたアプローチ」「顧客の嗜好に合わせること」の3つだと言う山田氏が「Web担当者Forum ミーティング 2016 秋」において、「顧客に選ばれるためのマーケティングオートメーションの3つのポイント」と題し、それぞれのポイントをアクティブコアのユーザー事例を使って解説した。
「アプローチ」は顧客のタイミングに合わせる
マーケティングオートメーションツールを導入する目的としてよくあるのが、「顧客をランク化して優良顧客を育てたい」というものだ。しかし導入準備のためにその企業のデータを分析してみると、購入1回のみのユーザーがほとんどで、常に新規顧客獲得が必要というケースがある。この場合は、「顧客を育てる」よりも前に、まず「リピートしてもらう」ことが先決だ。そのためには、顧客のタイミングに合わせてアプローチする必要がある。山田氏は、次のような具体的な事例で紹介した。
1. ライフサイクルが長い商材では、タイミングに合わせてメールすると開封率が上がる
たとえばあるEC/通販会社では、以前は3か月ごとや半年ごとなど、常に同じサイクルでメールを出していた。しかし購買データを分析してみると、「商品Aは10か月後、1年半後、2年後に再購入されるが、商品Bは半年~1年後に再購入されることが多い」というように、商品カテゴリによってリピート購入のタイミングが違う。これは、商品によって使い切るタイミングが違うためだ。
そこで、メールでのアプローチを商品のライフサイクルに合わせて送るようにしたところ、開封率が向上した。
2. サイト訪問状況から休眠会員を特定し、行動に合わせてパーソナルアプローチ
ある人材サイトでは、会員行動分析結果から、会員登録後90日以上応募もサイト訪問もないユーザーを抽出した。その休眠会員に対して、
- 会員登録情報を元に求人情報をメールでレコメンドし、
→反応があればWeb上でもレコメンド
→反応がなければ再度リマインドメールを送る - Webでのレコメンドに反応がなければ、サイトの行動履歴から求人をメールでレコメンド
のようにパーソナルアプローチを行った結果、応募件数が35%上昇した。
3. 電話をかけるタイミングをマーケティングオートメーションで絞り込む
B2B企業では、展示会に出展して来場者リストを獲得することがある。しかし、全ての来場者に電話をかけてアポイントを取ろうとするのは無謀だ。そこでまず、翌日あるいは数日後の午前9時に「お礼メール」を送信する。
そのメールを午前中に開封した人は、「午前中に会社にいて、関心がある」人なので、それを企業マスターと突合する。ある事例では、7000人の来場者リストから、300人に絞り込めた。この300人に対してアウトバウンドでフォローすると、アポイントの確率が40%まで上がった。
「顧客属性」を可視化してアプローチする
マーケティングオートメーションに取り組む場合、「とりあえずやってみて、走りながら考える」というパターンもあるが、山田氏は次のように言う。
しっかり分析してからやるほうが、効果は高い
次の図はあるECサイトの顧客属性を、性別・年代別で可視化したものだ。
この表からは、次のことがわかる。
- 男性は、年代が高くなると平均購入金額が上がり、購入回数が増える
- ただし、コアは30代
- 女性も、年代が高くなると平均購入金額が上がり、購入回数が増える
- シニアの方がたくさん購入し、たくさんお金を使う
- 休眠率(一度だけ購入)は、男女ともに若い人のほうが比率が高い
さらに購買データを分析すると、次のようなこともわかった。
- 購入商品が単一カテゴリーの顧客は、休眠の可能性が高い
- 複数カテゴリを購入する顧客は、休眠率が低い
この分析結果をもとに、Web上のレコメンドに複数カテゴリを織り交ぜることで、クリック率が向上した。
また、女性は若年、男性は高齢層が休眠化しやすい傾向(単一カテゴリー)にあるため、送料無料オファーのメールなどの休眠掘り起こしアプローチを行った結果、一定数の休眠顧客が帰ってきた。ただしこのケースでは、メールで帰ってきた休眠ユーザーは主にシニア層で、若年層はあまり帰ってこなかった。
そこで、メールでリーチできなかった若年層に対するアプローチとして、Facebook、Twitter、Googleディスプレイ広告ネットワーク(GDN)を利用した。結果的にこのケースではGDNが効いたが、ポイントは個別のメディアの善し悪しではなく、分析してアプローチすることが重要ということだ。
「顧客の嗜好・行動」に合わせたレコメンド
レコメンドは、企業側がお勧めしたいものを出すことも重要だが、購入に至った広告に合わせたアプローチのように、顧客の嗜好に合わせることはレコメンドでも重要だ。
たとえば化粧品で、成分を訴求した広告クリエイティブと効能を訴求した広告クリエイティブがあった場合、ランディングページをそれぞれ作り分けるだけでなく、その後のフォローメールやウェブ上のレコメンドなども、成分を訴求するものと効能を訴求するもので作り分ける。
アクティブコアはクラウドにプライベートDMPを構築するタイプのマーケティングオートメーションツールだが、蓄積したユーザーの行動履歴から次回購入商品を予測するために機械学習も活用している。機械学習から「××の行動をしたユーザーは商品Aを買う可能性が高い」という結果が出たら、履歴やステータスに合わせて自動的にレコメンドするという機能だ。これにより、クリック率は41%、追加注文率は7%向上という効果が出た事例がある。
また、最近のマーケティングオートメーションのトレンドとして、商談管理システムとの統合がある。一般的には、セールスフォースやExcelなどで管理されている案件ベースの商談データと、マーケティングオートメーションのデータは分断されている。そこで、社名や案件でデータ統合し、見込み客や掘り起こしリストの抽出から、商談管理、Webの閲覧履歴、フォローメール、レコメンドまで案件単位で管理するというケースが増えている。
その他、広告を評価するのにクリック率、CPA、CPOだけでなく、「この広告から、複数年を通算してどれだけ売上が上がったのか」というLTVも含めたいという要望が増えているという。
しかし、広告データ、Webデータ、会員データ、購入データ、契約データなどはそれぞれ異なるシステムで管理されている。このため、LTV分析には膨大な時間と労力がかかり、PDCAを高速に回せないのが課題だ。
そこでアクティブコアでは、顧客でひも付けて広告単位でCPA/CPO/LTVを可視化する仕組みを作っている。
マーケティングオートメーションのシナリオには、次の3つのパターンがある。
- 定期フォロー型(定期的に情報を配信)
- イベント起点型(顧客の行動を起点にステップ方式で情報配信)
- シナリオ型(カスタマージャーニーをシナリオに落とし込む)
多くの企業で、どうせマーケティングオートメーションに取り組むなら3つ目のシナリオ型をやりたいと考えるが、山田氏は次のように言う。
実はシナリオの実装は、シンプルなところから始めるのがいい
定期的なメルマガをステップメールにすることから始める。そして徐々に複雑な取り組みにステップアップし、最終的にシナリオ型ができれば効果は絶大だ。そのためのポイントは、次の3つである。
- 顧客タイミング
- 分析に基づいたアプローチ
- 顧客の嗜好に合わせる
しかし、山田氏は次のように言う。
本当は、4つめのポイントがある。それは、継続だ
自動化というと、放っておけばすべてよいように回るとイメージしがちだが、マーケティングオートメーションツールはまだそこまで賢くない。そこで、人の手によるチューニングが必須だ。これを継続することが成功のポイントで、イメージすると次の図のようになる。トライ・改善を継続することが最も重要ということだ。
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