顧客ステータス・タイミングに合わせた施策とマーケティングオートメーション
デジタル化・デバイスの進化によって顧客側のタイミングで容易に情報収集が可能な時代になっており、顧客の可視化・顧客タイミングに合わせた事例とその仕組みを実現するマーケティングオートメーションが望まれるようになっている。
アクティブコアは、プライベートDMPとレコメンドエンジン、Web解析、A/Bテスト、メールオートメーションなどを統合したワンプラットフォームのクラウドサービスを提供している。Webの情報だけでなく基幹システムの情報などとも統合することで実現する、顧客のステータスやタイミングに合わせたアプローチについて、社長の山田賢治氏が解説した。
顧客のタイミングに合わせたマーケティングとは?
購買行動に関する概念として、グーグルが提唱した「ZMOT(Zero Moment of Truth)」がある。デバイスが普及してインターネットが身近になったことで、消費者は実際に購入する前に、情報収集や下調べをして意思決定の大半を済ませていることが多い。ZMOTとは、この事前の下調べのことだ。
インターネットが登場するまでは、商品パッケージや店員による説明が購入の意思決定に影響を及ぼしていた。これを、FMOT(First Momemt of Truth)と呼ぶ。ZMOTは、購買のきっかけとなる出来事とFMOTの間、ファーストよりも前の段階だから、ゼロと呼んだものだ。
B2B
これを裏付ける事例として、山田氏はあるグラフを見せた。あるB2Bの事例で、初回サイト訪問からコンバージョン(Webでの問い合わせや資料請求)までの時間をグラフ化したものだ。
商談にまでつながったケースで見ると、初回サイト訪問から60日以内にコンバージョンしているケースが約半数だ。これは、サイト訪問後、60日間が比較・検討期間だと予想できる。
一方で、商談につながったコンバージョンのうち三割程度は、初回サイト訪問当日に資料請求している。これは、それ以前に製品・サービスを聞いたことがあって、関心があり、すぐに資料請求していると思われる。初回訪問はすごく重要であることがわかる。
B2C/通販
次に紹介したのは、単品通販・ECサイトの事例だ。初回購入と2回目購入までの経過日数をグラフ化すると、大きく山になっているのは初回購入から14日後、30日後、60日後である。
単品通販ではリピート購入が重要で、これが売上を決める。このため、初回購入からリピート購入までの期間にアプローチすることが重要だ。この事例では、14~60日以内のアプローチが全てで、このタイミングを逃すと、2回目購入はほとんどないことを示している。
また、ECサイトの不満を女性向けサイトで聞いたところ、「情報が多すぎて欲しい物が見つけられない」という意見が半数以上だった。欲しい情報は、サイトに訪問したばかりの人か、一度購入した物を追加購入したいのかなど、人によって違う。
つまり、ステータスに合わせた情報提供が必要ということだ。現在はさらにデバイスの違いも考慮しなければならない。ちなみに、アクティブコアの調べでは、B2BかB2Cかを問わず購買の前の情報収集ではスマートフォンが多い。
これらの事例が示す通り、顧客のステータス、タイミング、デバイスに合わせたアプローチが重要だ。タイミングに合わせたマーケティングということだが、そのためには顧客接点を可視化する必要がある。
たとえばECサイトではリピート購入が重要だが、初回購入はメールやコールセンターで、リピート購入はWebからというケースも多くある。この場合、Cookieベースのアクセス解析では、リピートではなく初回購入に見える
つまり、メールやコールセンターの情報と統合して見なければ、そのユーザーが本当に必要としている情報や適したアプローチがわからないということだ。
また最近は、どの広告によってリピート購入に至ったのかわかるように、Webのデータと基幹系のデータを、請求番号や注文番号とひもづけて分析するというニーズが高まっている。分析してみると、サンプル購入した広告と、2回目以降の購入に至った広告では大きく違っていることが多い。
紹介された事例では、初回サンプル購入はインフィード広告、スマホ広告、FB広告が多く、2回目以降の引き上げ率が高いのは検索エンジン(指名検索)、エバンジェリストのブログや特定のアフィリエイトからだった。
効率よく重点的に訴求するには、初回購入につながる広告はどれで、売上が高い広告はどれか、どのような人がどの広告に反応するのかを知る必要がある。特に最近は、成約にひもづく顧客接点を可視化したいという要望が増えている。
Webのアクセス解析だけでなく、どの広告やメールから来て、どのページを見ているのかまで広げてさかのぼる必要があるが、EC以外でも資料請求番号などがあればひもづけることができる。
カスタマージャーニーに営業ステータスを含めたデータが必要だ
B2Bのカスタマージャーニーを考えてみよう。
あるユーザーが展示会に参加する。展示会に参加すれば、参加者リストや展示会での名刺収集などで個人データが得られるので、これをDMPに登録する。
展示会に参加したユーザーは、その後の比較検討のために、製品サイトを訪問する。サイトを訪問すれば、どのページをどのように遷移していったかというWeb解析データが取れる。
この閲覧履歴から見込み客を抽出し、名刺リストなどからアタックリストを作って営業担当に渡す。営業担当者は電話営業や訪問を行い、受注に至る。受注後はメールなどでフォローする。
営業担当がアプローチするために必要なのは、Webの行動情報だけでなくそれに営業ステータスを含めたデータだ。たとえば、最近製品ページを頻繁に見始めたユーザーのデータは、見込み客のデータとなる。また、商談中の相手がどのページを見ているかというデータがあれば、相手が何に興味を持っているかわかるので商談がスムーズに進む。
あるいは、受注でも失注でもない塩漬け状態の企業もあるかもしれない。再アプローチのために連絡先データが欲しいが、過去にセミナーに来たなら参加者リストがあるし、かつてお問い合わせやカタログダウンロードがあったならその企業名、部署、担当者名がわかるはずだ。
また、これまで成約した顧客の閲覧履歴とマッチングすることで、有望な顧客かどうかを判断することもできる。例えば、成約した顧客が見ていたページの上位が「サービスカタログ」「会社情報」「保守情報」なら、この3つを見ていれば成約の確率が高いということだ。これは、単にWebのPV数などで見るより、実際の売上に繋がるデータとなる。
展示会来場者のフォローのシナリオでは、例えば朝の9時にメールを配信すると、お昼頃までにサイト訪問があるので、サイト閲覧者のリストをDMPで企業マスターなど突き合わせ、アタックリストを作ってアウトバウンドコールでフォローする。これでかなり効率が上がる。
B2Cの事例では、人材サイトを取り上げた。会員登録から応募、面接という流れである。顧客ステータスを分類すると、以下のようになる。これらのステータスに合わせたレコメンドが必要で、異なるステータスのレコメンドは効果がない。
その他、不動産のサイトで、閲覧していくとレコメンドエリアがそれに最適化される事例や、オムニチャネルの事例などが紹介された。また、マルチデバイス対応のレコメンド事例では、平均購入金額が上がることが紹介された。
その他、広告に合わせてランディングページを最適化するだけではなく、その後のフォローも広告に合わせた文面にすると効果がある。化粧品メーカーの場合は、効能を訴求する広告に反応して購入した顧客には、その後のフォローメールには使い続けることで効果が持続することのメリットを訴求し、成分訴求の広告から購入した顧客には商品の成分の独自性・品質・安全性を伝える。
マーケティングオートメーションのシナリオはこれだ
これまで解説してきた施策を実行するためには顧客のタイミングに合わせて、適切なメッセージを届けなければならない。
これらの施策を顧客毎に自動実行するソリューションとしてマーケティングオートメーションがある。
マーケティングオートメーションのシナリオには大きく分けて3つのタイプがある。
- 定期フォロー型: ユーザーに定期的に情報を配信・レコメンドする
例えば、登録した全員に定期的にメールマガジンを送る。マーケティングオートメーションツールでは、人手によらずオートマチックに配信する。基本的なことだが、マーケティングオートメーションに取り組むにはまずここから始め、データを取ることが重要。
- イベント起点型: ユーザーの行動を起点に、ステップ方式で情報を配信する
商品Aのページを閲覧したら商品Aに関する情報を配信するなど、企業側のタイミングではなく、ユーザーの行動でアプローチが決まる。
- シナリオ型: カスタマージャーニーをシナリオに落とし込む
フローチャートのように、人の行動によってその後のステップを変える。このシナリオ型をすぐにやろうとする場合も見受けられるが、いきなりこれに取り組むのは推奨しない。シンプルな定期フォロー型から順番に進めないと、うまくいかなかった場合にどこに問題があるかわかりにくくなる。
「アクティブコア マーケティングクラウド」は、分析機能、ターゲット抽出マイニングオートメーション機能、レコメンドやメール配信、他サービスとの連携といった機能を提供する。また、オートメーション機能のためのシナリオを自分たちで最初から作るのは難しいので、業界ごと、サイト特性ごとの鉄板シナリオを用意している。
しかし、最も重要なのは、運用と継続であり、アクティブコアでは導入後のメンテナンスにも力を入れている。これにより、導入から運用まで一環して提供し、顧客のステータスやタイミングに合わせたサービスを可能にしているというわけだ。
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