コンテンツの検索順位を上げるコンテンツマーケティングとは?
コンテンツマーケティングを実施しているが、どうも効果が上がっていない――。そういうときは、ユーザーが置き去りになっているかもしれない。はたしてユーザーの検索意図をつかめているだろうか。
株式会社Faber Companyの月岡氏は「Web担当者Forum ミーティング 2016 春」の「集客力が高まるコンテンツ企画とは? ~自然言語処理技術の活用事例~」セッションにおいて、どのようにコンテンツを企画設計すればパフォーマンスの高いコンテンツマーケティングが実施できるかについてプレゼンテーションを行った。
コンテンツマーケティングしてますか?
月岡氏は自己紹介のあと、本セッションの主題であるコンテンツマーケティングについてクライアントから受ける典型的な3つの相談と回答例を紹介する。
- 記事は何本必要ですか?
ある一定以上のボリュームは必要だが、単純に数ではない。ユーザーにとって読んで価値のあるコンテンツでないと意味がないだろう。
- コンバージョンしますか?
情報収集段階のユーザーにリーチするコンテンツでいきなりコンバージョンを獲得するのは難しい。長い目でコンテンツに取り組んでほしい。
- バズりますか?
ソーシャルのシグナルを獲得するのは重要な指標の1つだが、バズるコンテンツを継続的に作り続ける施策は難しいのではないか。
これらの相談内容に対し「そのコンテンツは本当にユーザーのことを考えられていますか?」と疑問を呈した月岡氏は、Faber Companyが提供する「自然言語処理技術により、ユーザーの検索意図を把握しアクセスを10倍にするコンテンツ企画方法」の紹介に入った。
重要なのはユーザーの検索意図(インテント)を把握すること
まずはコンテンツマーケティングを語る上で避けることのできないグーグルのアルゴリズムについて「グーグルの目的はユーザーの検索体験をよりよくしていくのが目的なので、日々検索アルゴリズムの最適化を行っています」と指摘し、特に「言葉の意味、検索ユーザーの意図を理解」することを目的とした「ハミングバードアップデート」の重要性を強調した。
このアップデートは、グーグルのマット・カッツ氏が「検索ワードの背後にある意味」と説明した通り、自然言語処理と機械学習・ディープラーニングを駆使し、たとえば「北京」というワードを単なる文字列ではなく、「中国の首都の北京」であると理解するためのものだという。
そのため、単にコンテンツに検索されるワードを散りばめるだけではなく、ユーザーの検索意図(インテント)を把握することが重要となってくる。
ここで月岡氏は次の例を示す。
グーグルで「掃除機 壊れた」というキーワードで検索する人はなにを知りたいのか?
単純に考えると「掃除機が壊れたので修理方法が知りたい」と思ってしまうが、グーグル検索結果には「故障かなと思ったら…」というコンテンツが検索結果1位に表示される。
「掃除機 壊れた」と検索しているユーザーは「目の前に動かない掃除機がある。その原因の切り分けをしたい。」という意図があることを意味しているのだ。
ちなみに「壊れた掃除機を直したい」検索ユーザーは「掃除機 修理」というキーワードで検索するという。このようにグーグルは、検索した人がなにを知りたがっているのかを理解している。
しかも、そのページのタイトルや本文中には「壊れた」という文言がないことにも注目したい。これもグーグルが単純にページ内にキーワードが含有するかどうかではなく「検索ワードの背後にある意味」を理解していることの証左だ。
多くのユーザーが訪れるコンテンツを作るためには、検索ワードの裏にあるユーザーの意図を把握し、検索意図(どのようなシーンでなにを知りたいと思っているのか)を把握することが重要になっている。
良いコンテンツなのになぜ順位が伸びない?
次に月岡氏は、Faber Companyがコンサルティングを担当した、ニキビに関する総合情報サイト「ニキペディア」の事例を通して「ユーザーの検索意図を把握する」というコンテンツマーケティング最重要ポイントの具体的な解説を開始する。
ガシー・レンカー・ジャパン(GRJ)の運営する「ニキペディア」は、コンテンツ数200超、月間80万PV以上。ニキビ治療薬「プロアクティブ」の周知と販売が主な目的となる大型オウンドメディアだ。
月岡氏はコンサルティング開始時に2つの課題を発見したという。
- ニキビ関連キーワードの開拓余地
「ニキビ ○○」というニキビの周りに存在するニーズにまだ開拓余地があるのではないか。
- パフォーマンス低下のコンテンツの存在
公開当初は検索上位にあったものの、徐々に順位が下落しているコンテンツが散見されていた。
月岡氏はその中からパフォーマンスが低下していた「ニキビが改善しない方は必見!ニキビができやすくなる4つの食べ物」というコンテンツを例にとり、課題解決手順を紹介する。
ニキペディアでは、コンテンツごとに検索ユーザーのペルソナを設定し、ターゲットキーワードを策定している。
このコンテンツのターゲットキーワードは「ニキビ 食べ物」であったが、公開時には検索結果上で1ページ目に表示されていたコンテンツが、その時点では15位~20位で停滞している状態になっていた。
そのページのコンテンツ構成は以下のとおりだった。
- 糖分のとりすぎ
- アルコール
- 油脂分
- 辛いものの刺激
- 結論:バランスのよい食事が必要
文字量も十分で、よいコンテンツだと思われるのになぜパフォーマンスが低下しているのだろうか。
月岡氏は「コンテンツがユーザーの検索意図とずれているのではないか?」という疑問から以下の手順で分析・コンサルティングを行った。
- サジェストキーワードで仮説立案
- 具体的な検索意図の把握・分類
- 詳細なテーマと内容の企画設計
サジェストキーワードから仮説を立案する
グーグルにおけるサジェストキーワード(オートコンプリート機能)とは、ユーザーの検索頻度や言葉の関連性で表示されていると言われる、検索時に検索窓下に出てくる候補キーワードのことだ。
「ニキビ 食べ物」に続くサジェストキーワードは500個程度、そこから検索者の意図を探るのだが、キーワードの羅列をみてもなかなか判断が難しい。
そこで月岡氏は、Faber Companyが豊橋技術科学大学との産学共同研究によって昨年リリースしたコンテンツマーケティング支援ツール「MIERUCA(ミエルカ)」を使い、サジェストキーワードを分析し、検索意図の仮説立案を開始した。
ここから導かれるユーザーの検索意図は下記のようなものである。
- ニキビに食べ物は 関係ある?ない?
- ニキビにいいものを食べたい?
- ニキビに悪いものを避けたい
- みかん 何を食べたらいいの
- コンビニ コンビニの食べ物は?
合わせて月間検索ボリューム(検索回数)を調査し、そこからは「ニキビに 効く 食べ物」「ニキビ を直す 食べ物」などの検索ボリュームが多いことがわかった。
つまり、ユーザーの知りたいことは「ニキビの原因となる食べ物」だけではなく「ニキビによい(効く)食べ物」もあるのではないかという仮説が立案されたのだ。
さらに深く検索意図を考察
次に、抽出されたサジェストキーワードを使ってWeb検索を行い、検索結果上位に表示されるコンテンツのタイトル文(≒ユーザーにもっとも強調したいこと)を対象にコレスポンデンス分析を実施した。
コレスポンデンス分析(対応分析)とは、多量のデータを視覚的に捉え分類しやすくする解析手法で、アンケートなどで回答の相関関係を分析する際などに利用される。
現在不足しているテーマを可視化、把握することでコンテンツ企画設計に活用することが狙いだ。
たとえば「ニキビ 食べ物」の検索結果で表示されるコンテンツのタイトルをコレスポンデンス分析すると、大きく3つのカタマリ(検索意図)があることがわかった。
- 良い、悪い、食べ物、関係、関係ない (ほんとにニキビに良いのか、悪いのか、知りたい)
- みかん、ビタミン、レシピ、水 (良い食べ物にたいしての具体的な内容)
- 肌荒れ、お菓子、即効性、コンビニ (その他、コンビニでなんとかしたい?)
にも関わらず、旧コンテンツでは一部の検索意図にしか答えていない。これは改善ポイントとなる。
さらに詳細なニーズを把握するため、「ニキビ 食べ物」で検索結果上位に表示されるサイトのメインコンテンツ内で頻出する単語を「MIERUCA」で解析を行った。
ここでは通常のウェブページ検索の他に、Q&Aサイトの質問文も解析対象に加えている。ユーザーのリアルな声は、企業サイトや製品サイトよりもユーザーインテントに近いのではないかという推測からだ。
分析結果から導かれた頻出単語の中から、「ビタミン」「食物繊維」「野菜」「改善」「飲み物」などのキーワードに着目。「手軽にビタミンと食物繊維を摂取できるようなレシピの提案はできるか」という発想も生まれた。
以上の分析より「検索ユーザーはニキビに悪い食べ物だけではなく、良い食べ物も知りたい」「どうすれば改善するのか、なにが悪いのか具体例も知りたい」という検索意図が導き出された。
詳細なテーマと内容の企画設計
以上の分析により、新コンテンツは「ニキビと食べ物は関係あるの?」という問題提起からはじまり、「ニキビに悪い食べ物」について書かれた現状のコンテンツを残したまま、「ニキビに良い食べ物」を加え再構成することとした。
タイトルは、「ニキビが改善しない方は必見!ニキビができやすくなる4つの食べ物」から「ニキビに“効く食べ物”と“原因となる食べ物”をまとめました」に変更し、ビタミンを含む食べ物の説明、野菜ジュースやスムージーなど良い食べ物を摂取できる具体例も記載した。
その結果検索順位が2位に、アクセス数も10倍に増加
その結果、「ニキビ 食べ物」での検索順位が公開直後に5位まで上昇、3月には4位、5月には2位と着実に結果が出た。
セッション数を比較すると
再構成前(9/16~12/15)のセッション数から、リフォーム後(12/16~3/15)のセッション数は約10倍となった。
流入キーワードのバリエーション数も3倍以上にアップ、「ニキビに悪い」関連だけではなく「ニキビに良い、効く」といったキーワードからも流入してくるようになった。
以上の結果はユーザーの検索意図把握が成功したおかげだと月岡氏は胸を張った。
もちろん手を加えたコンテンツは1つだけではない、このようなリフォーム(再構成)を複数コンテンツに加えた結果、「ニキビ 薬」などのキーワードでも上位を獲得し、Web上での見つけやすさの指標であるファインダビリティスコア(FS)も大きく上昇した。
また、リフォームだけでなく、ユーザーインテントを把握した新規制作コンテンツでも成果がでており、キーワード「ピーリング石鹸」は圏外→9位にランクインするなど着実に成果を上げている。
月岡氏は最後に
集客力を高めるにはユーザーインテントを理解したコンテンツ設計が鍵
と再度強調、そのために自然言語処理技術の活用とコンテンツ分析は必須と主張した。
なお、同社のコンテンツマーケティング最適化ツール「MIERUCA」は72時間トライアル実施中、加えてFaber Companyでは、コンテンツ施策のサポートから企画制作まで請け負っており、気軽に相談いただければとアピールして講演を終えた。
ソーシャルもやってます!