【レポート】Web担当者Forumミーティング 2013 Spring

オウンドメディアの最新マーケティング事例、個客のおもてなし体験を提供するインタラクティブなサイト/サイトコア

顧客とのエンゲージメントを築くためのWebサイト構築は何が必要か、最新事例とともに解説された
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【レポート】Web担当者Forum ミーティング2013 Spring

セミナーイベント「Web担当者Forumミーティング 2013 Spring」(2013年4月24日開催)の講演をレポートする。他のセッションのレポートはこちらから。

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オウンドメディア戦略を成功させるには、個々の顧客(個客)とのエンゲージメント(絆)を築く必要がある。サイトコアの吉田純一氏は、サイトでエンゲージメントを築かなければならない背景を解説し、エンゲージメントを築けるサイトをどのように構築していけばいいのか、最新の事例を交えながらわかりやすく説明した。

“おもてなし”体験の提供がロイヤルティを高める

吉田 純一氏
サイトコア株式会社
セールスグループ
ソリューションスペシャリスト
吉田 純一氏

吉田氏はまず「企業のマーケティング施策において、なぜサイトでエンゲージメントを築かなければならないのか、その背景から確認しよう」と話し、企業のWebサイトが重要視されるようになったのは、顧客の行動の変化が原因であると説明する。

P&Gが2004年に提唱した「FMOT」(First Moment of Truth)というインストアマーケティングの概念は、簡単に言えば、「消費者は並べられた商品を見て3~7秒のうちに魅力的かどうかを見定める」というもので、「ほしい」と思うのが購入行動の直前であることを示している。

一方、2011年にはGoogleがZMOT(Zero Moment of Truth)という概念を提唱し、店舗に行く前にすでに商品の選択が終わっていることを示した。店舗に行く前に、価格比較サイトやショッピングサイトのレビューなど、オンラインで商品をあらかじめ調べてから購買行動を決めることが多くなってきているのだ。

米国では、消費者の70%が購入前に商品レビューをチェックし、79%が買物の際にスマホを活用し、83%の母親がテレビCMで興味を持った商品についてオンラインで調べているという数字がある。つまり、消費者が店に行く前からエンゲージメントできることが非常に重要になってきた。その役割を果たすものがWebサイトだ。

吉田氏は、これからのWebサイトは企業へのロイヤルティを上げ、顧客を理解して価値を提供し、エンゲージメントを感じさせるサイト作りが必要となってくると説明する。

ZMOTに効果を発揮するWebサイトとは?

続いて吉田氏は、Webサイトでのエンゲージメント構築に成功している事例として、オランダの大手スーパーマーケット「C1000」を動画で紹介する。スマートフォンが普及するなか、Webサイトで消費者とエンゲージメントを築くには、マルチメディア対応は欠かせない。

C1000では、デジタルマーケティング機能が統合されたCMS「Sitecore CEP」を導入することによって、Webサイト、スマートフォン用アプリ、電子メールを1つのシステムの統合。店舗側のPOSシステムなどのバックエンドシステムとも連携させ、商品やキャンペーンの情報がWebやアプリ、電子メールなどにリアルタイムに反映されるようにしている。料理の種類から材料の買い物リストが自動的に追加されたり、家族と共有して買い物をお願いするなどの機能があり、料理レシピやキッチンタイマーなどの機能も顧客に提供しているのだ。

限られた狭い土地に住宅が密集し、スーパーマーケットが乱立しているオランダでは、過当競争から価格やサービスが似たり寄ったりとなっていた。C1000はその状況を打開する手段として、Webで他社に真似ができない「おもてなし」の体験を提供し、顧客のロイヤルティを高め、顧客のエンゲージメントを獲得して他社との差別化を実現したという。

吉田 純一氏

C1000では、“モノを買わす”から“ニーズを満たす”ことにビジネスの中核を変えていった。人口減少でマーケットが小さくなっていく日本でも、質を高めて密度を濃くするために、カスタマーバリューにフォーカスすべきだということをよく耳にする。

「NIKE」も、C1000と同じように企業のロイヤルティを高めてきている。以前はマーケティングやブランドイメージを作ることに注力してきたNIKEだが、“靴を売る”から“スポーツを楽しむ/体験する”ということにビジネスの中核をシフトさせ、アプリケーションやサービスをさまざまなデバイスで提供するようになっている。

これらを“おもてなし体験を提供する”と表現する吉田氏は、「NIKEとC1000の事例によって、“消費者がデジタルサービスを日常生活で使用するようになったこと”“信頼されるブランドになればカスタマーロイヤルティが生まれること”“Webサイトが果たす重要性が高まっていること”の3つがわかる」と説明した。

エンゲージメントを実現するパーソナライゼーション

続いて吉田氏は、エンゲージメントを構築するためのパーソナライゼーションについて説明する。

顧客は、自分から口に出さなくても企業が自分の思考を理解し、求めるものを提供してくれると勝手に考えている」と話す吉田氏は、自身の経験から、コンビ二で接客マニュアルどおりにしか対応しなかった店員と、臨機応変な接客対応を行った店員の例を出し、自分を認識し、状況に応じた接客対応によってエンゲージメントが築かれたと話す。

これらの顧客の欲求を満たす手段の1つとしてパーソナライゼーション機能を提供しているが、このパーソナライゼーションは「サイト訪問者の属性や行動履歴に合わせて、サイト上で表示するコンテンツや情報を最適化させること」だと吉田氏は説明する。

パーソナライゼーションの手法にはいくつかあるが、その1つは「グローバル対応」だ。海外進出する企業の増加や競合する企業のグローバル化など、企業を取り巻く環境は変化しており、海外の顧客も日本のWebサイトにアクセスしているなかで、Webサイトのグローバル対応は必要に迫られていると言ってもよい。

英語以外の海外サイトで日本語対応していても、言語切り替えボタンがどこにあるかわからないケースも多いが、サイトコアの顧客である「マンチェスターユナイテッド」や「ジェットスター」では、訪問者に最適な言語を自動的に表示させていると吉田氏は説明し、「このようなグローバル対応は、おもてなしの基本中の基本といえる」と話す。

次に吉田氏は、英国の「easyJet」というLCC航空会社の事例を示す。同社のホームページでは、トラフィックが多い割にコンバージョン率が低いという課題と、効率性を重視するあまり、ユーザーとは関係のないコンテンツが表示されてしまうという2つの課題があった。easyJetでは、このサイトにパーソナライゼーションを施すことによって、明確な訪問目的をもたないユーザーにも最適な旅行プランをサイト上で提供し、コンバージョンの向上を試みたという。

具体的にはまず、IPアドレスや検索言語からグローバル対応を実施し、自動的に最適な言語で表示させた。また、ページトップのバナーでオーディエンスターゲティングを行い、現在のチケット価格などのリアルタイムな情報を提供。リターゲティングを設定したスペースや、地図上で航空ルートとチケット価格がわかる「Where are you going?」というページも用意された。

easyJetが実施したパーソナライゼーションの試み
easyJetが実施したパーソナライゼーションの試み

easyJetのWebサイトでは、たとえばロンドンからパリ行きのチケットを購入した場合は、訪問者がロンドンを拠点としていると認識し、再訪した場合はリアルタイム情報でもロンドン発のチケット価格が表示されるようになっている。ページトップのバナーなども過去のチケット購入から最適なものが表示されるようになっており、最適な旅をお勧めできるようになった。これらの施策によって、課題だったコンバージョン率が20%向上。1秒間に5枚のチケットが売れ、1分間に2機の飛行機が満席になり、2012年1月は過去最高の売上を記録したという。

パーソナライゼーションにはソーシャル連携も含まれる。効果的なソーシャルネットワークの活用は今や必要不可欠だと、吉田氏は自身の経験とともに説明する。米国の有名ホテルチェーンで予約していたにもかかわらず部屋を確保できなかったことをTwitterでつぶやいたところ、翌朝、そのホテルのコミュニケーションマネージャーからダイレクトメッセージが届き、お詫びとともにギフト券が提供されたというのだ。

こうしたオンラインでの顧客との関係作りやおもてなしが重要だと話す吉田氏は、サイトコアの提供するCMS「Sitecore CEP」では簡単にSNSと連携することが可能であり、APIで連携するソーシャルコネクタを使って次のようなパーソナライゼーションが行えると説明した。

  1. Webページの更新と同期が取れる

    IRページや新商品/新サービスの開始発表など

  2. プロファイルデータを利用できる

    性別、年齢、居住地、生年月日、交際ステータス、etc

  3. ユーザーのトラッキングができる

    ソーシャルサービスにおける効果測定が可能

  4. ガバナンスが効かせられる

    承認者の設定、ログによる配信履歴の確認で炎上事故を防止

コンテンツを活かしてエンゲージメントを構築する

エンゲージメント構築について、吉田氏はコンテンツという観点から話を続け、英国のサッカークラブ「マンチェスター・シティ」のWebサイトを事例として紹介する。マンチェスター・シティでは、Webサイトリニューアルの目標を以下のように立てていたという。

  • 試合やイベント中に、編集者がリアルタイムでWebサイトを更新可能にする。
  • 契約更改や重要な試合、発表などによるWebサイトへのアクセスの集中に対処する。
  • オンラインコミュニケーション機能との連携など、将来のWeb戦略に合わせて、継続的に進化できるWebサイトを構築する。
  • 魅力的なデザインと優れた機能をサイト訪問者に提供する一方で、編集者が作業しやすいWebサイトにする。
  • いわゆる従来型CMSによるWebサイトを脱却し、テンプレートで作られたWebサイトの常識を覆すような、インパクトのあるWebサイトにする。

「単なるサッカークラブから世界的なエンターテインメントブランドへ」という目標を掲げていたマンチェスター・シティでは、あらゆるファンのあらゆるニーズに答えられるコンテンツ作りに取り組み、試合の「実況データ」を提供できるコンテンツフィードモジュールを開発したという。また複数の他社システム(ビデオ管理、チケットシステム、店舗管理、物流管理、EC、CDNなど)との連携を短期間で実現し、Webサイト全体を6か月で構築した。これによって、世界中のサッカージャーナリストやファン、アンチファンからも賞賛のコメントが得られたという。

顧客のロイヤルティを高めてエンゲージメントを獲得するには、顧客と企業Webサイトの間にコミュニケーションが存在することが大事。そのきっかけとなるのがコンテンツ」だと話す吉田氏は、一部の熱狂的なファンだけにしか楽しめないようなマンチェスター・シティのサイトが、一般的なサッカーファンやサッカーに詳しくない人でも楽しめるようなコンテンツの見せ方に改善したと説明した。具体的には、ゲーム状況をシークバーで操作して把握できるようにしたり、開発したリアルタイムソーシャルモジュールで、ジャーナリストがリアルタイムにコメントや画像をアップしたりできるようにした。

マンチェスター・シティは、以前から存在していたバラバラのコンテンツをまとめ、見せ方やユーザービリティを大幅に改善することで、以前とは見間違えるようなサイトリニューアルに成功している」と吉田氏は話す。

これらの成功事例は、しっかりとしたコンテンツ管理システムの上でサイトが構築されているからこそ実現していると説明する吉田氏は、最後に次のように話し、講演を終えた。

このセッションを聞いて、小さなことでもいいから何かやってみよう、今までとは違うことを始めてみようと考えていただけたらうれしい。選択肢がサイトコアでなくても、新しいことにチャレンジするキッカケとなったのなら、今日のセミナーに登壇してよかったと思う。もちろん、サイトコアを選んでもらえたら、もっとうれしい。

吉田 純一氏

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