【レポート】デジタルマーケターズサミット2017

デジタルマーケターが知っておかなければ失格のデジタル以外の大切なこと【飯室氏+中東氏対談】

伝えるだけでなく伝わったかどうか確認して、相手が動くまでがコミュニケーション

「デジタルマーケターズサミット2017」のクロージングセッションでは、B2Bhack.comの飯室氏とKDDIの中東氏の2人が、「マーケティングが本当に利益に貢献するために大切な、たった1つのこと」と題して、主にデジタル以外のことについてディスカッションした。

営業とマーケティングの役割分担や、マーケティングオートメーションの正しい使い方など、さまざまな内容が語られた。

マーケターが果たすべき役割

最初の話題は、デジタルかそうでないかに関わらず、マーケターの果たす役割についてだ。

マーケティングの役割は、認知を上げる、ブランド力を向上させる、場合によっては売上を上げるなどいろいろだが、中東氏は「一歩踏み込んでシンプルに、営業の生産性を上げるのがマーケティングの役割」だと言う。

B2Bの場合は、マーケティング部門が作った案件やリストを営業に渡し、営業がアプローチして売上にするという流れが多い。マーケティングは、「営業ができるだけ無駄な動きをせずに案件や売上を獲得できるために何をすべきかを考えているという。

営業の生産性を上げるのがマーケティングの役割(中東氏)

B2Bhack.com (B2Bハック.コム) B2Bハッカー・プロフェッショナルビジネスファシリテーター 飯室 淳史氏(左)とKDDI株式会社 ソリューション事業本部 ソリューションマーケティング部 部長 中東 孝夫氏(右)

飯室氏の話は少し視点が違う。両氏とも元々外資系でマーケティングの仕事をしていたが、欧米はマーケティング先進国で、マーケターの発言力も強い。

それに比べて日本では営業が圧倒的に強く、マーケティングの部署がないという企業も八割から九割という。マーケティングは売上を生まないコストセンターと見られ、営業の支援をする下請け部門と思われがちだ。

もちろん営業のサポートは必要だが、本来は、「営業は日銭を稼ぐ部署で、マーケティングは未来の売上を作る部署であるべき」だと、飯室氏は言う。

営業は日銭を稼ぐ、マーケターは未来の売上を作る(飯室氏)

営業とマーケティングは話が噛み合わないことが多い。たとえば、マーケティングで広告を使いリストを作って、インサイドセールスに渡す。そこからできたリストを営業に渡す場合、マーケティングとしては「しっかりフォローしろ」と言うが、営業側では「そんなリストは役に立たない」ということがある。

「役に立たない」とは、すでにアプローチしたが案件化しなかった相手か、大きな売上は見込めなかった相手だったりするのだ。だから、「役に立つリストかどうかを、きちんと指標で示す必要がある」と中東氏は言う。

そもそも、営業とマーケティングには共通言語がない。本来は「目標は同じで、役割が違う」という関係のはずだ。しかし、仲が悪いならまだしも、お互いが存在しないかのように振る舞っていることもある。

たとえば飯室氏の会社では、数百円の消耗品から数億の装置や工場まで扱っているが、営業は30人しかいない。そのうち一人が数万円の案件のために北海道に出張するのは、合理的ではない。「数十万円まではデジタルマーケティング、数千万円までは代理店に任せて、クロージングは営業が行く、製造工場は最初から最後まで営業がやる」というように、きちんと役割分担すべきという。

製品分類とカスタマージャーニーのステップごとに、だれがどこを担当するというマップを作る(飯室氏)

商材がそれほど細かく分かれていない中東氏の会社も、案件規模やアカウント(重要顧客かそうでないか)で役割分担している。「大事なお客さんは営業が最初から最後まで担当する。そうでないところは途中までマーケティングがやって、案件化したら一定金額以上は営業が引き継ぎ、それ以下は代理店が引き継ぐ」というようにルートを作り、営業と何度も話し合ったという。

案件規模やアカウントで担当ややり方を決める。営業とマーケティングでじっくり話し合う(中東氏)

ポイントは、マーケティングのチームが営業のチームとじっくりコミュニケーションをとるということだ。マーケターはお客さんにわかってもらうのが仕事であり、自分たちの後工程に営業がいるなら、営業はお客さんだ。そこのコミュニケーションに時間をかけるほうがいい。

営業とのバトルはA/Bテスト。相手側にいかに受け取ってもらうか考えるのがマーケターの仕事(中東氏)

マーケティングオートメーションは何の役に立つのか

営業に渡すリストの質が上がらない理由のなかには、マーケティングオートメーションの使い方の問題がある。中東氏は、「スコアリングといいつつも、実際にしていることはフィルタリングで、やりすぎるといつもの案件しか出てこない」と言う。すでに営業が知っているか、営業がやらない案件ばかり出てくるのだ。

飯室氏によれば、メールアドレスの取得方法が米国と日本で違うのが、根本的な問題だという。海外では、メールアドレスを買うことができる。まったく誰だか知らない人にメールを送って、反応のあった人たちをナーチャリングして顧客化していくというのが、マーケティングオートメーションの米国での使い方だ。

しかし日本では、マーケティングオートメーションの最初のファネルに入れるメールアドレスは、営業が名刺交換してもらった名刺や展示会で得た名刺、あるいはWebで会員登録などをして入力してくれたメールアドレスしかない。

ある程度のエンゲージメントが済んだ状態のメールアドレスばかりで、そこからさらにスコアリングという名のフィルタリングをするのだから、出てくるリストは目新しいものにならない。

海外と日本では、MAの使い方が違う。エンゲージメント済みのメールアドレスをMAでスコアリング(フィルタリング)しても、出てくるのはもう営業が知っている相手だけ(飯室氏)

つまり、重要なのは「メールアドレスを集める」という部分だ。そのためには、MAツールよりもむしろコンテンツマーケティングやCMSに投資するほうがいい。マーケティングオートメーションは、「スコアリングして30ポイント以上の人にアプローチする」のではなくて、「1ポイント2ポイントの人をどうやって30ポイントにするか」に使うべきで、それには半年や一年の時間はかかると覚悟しなければならない。

MAは30ポイントの人を抽出するためではなく、1ポイント2ポイントの人をなんとかして30ポイントにするために使うべき(飯室氏)

中東氏も、インサイドセールスを立ち上げて、案件が発生してからクローズするまでを調査すると、9~18か月はかかるという。9か月先の案件はスコアが上がるはずがないが、それを早めに掴み、育てて、売上を作るために、マーケティングに何ができるかを考えるようになったという。

9か月先に成約する案件を、いかに早く見つけ、どう育てて、競合他社に流れないようにし、勝ち取るか(中東氏)

営業は日々の仕事が忙しいので、ひとつの案件を半年や一年もの間、追い掛け続けられない。それをマーケティングがやるのは、理にかなったことだ。

その際には、マーケティングオートメーションはただのツールなので過度な期待をせず、自分たちのマーケティング戦略をきちんと作ることの方が大事だと飯室氏は言う。コンテンツさえあれば長いナーチャリングができるが、カタログしかないサイトでは不可能だ。

コンテンツさえあれば、長いナーチャリングができる(飯室氏)

一朝一夕にできないエンゲージメントは、日々の売上に追われる営業にはできない(中東)

失敗は成功の反対ではない

マーケターにとって大切なことは「失敗して、そこから学びを得て、PDCAを回すことによって良くしていく」ことだというのは、両氏の共通意見だ。同じテストを10回受ければ、だれでも100点を取れる。間違えたところを直せばいいからだ。それと同じように、失敗して成功の方向へ直していけばいい。その時の注意点として、両氏が挙げたものをまとめると、次のようになる。

[失敗から学び成功するための注意点]
  • いきなり大きなプロジェクトでやらない

  • 小さく初めて、小さい成功と失敗を繰り返す

  • 会社全体が失敗から学ぶ文化になる必要があるが、まずは上司がそうならなければ現場は萎縮してしまう

  • 失敗したところで諦めるから失敗なのであって、成功するまでやり続ける

成功まで何度でも繰り返すのは、デジタルのA/Bテストと同じだ。

製品を売るのではなく、成果を売る

製品だけを売っていると、そのうち競合が出てきて価格競争になる。このためB2Bビジネスは、ソリューション営業や提案型営業、コンサル営業といった方向に進んできた。さらに、従来は提供側が情報を持ち、消費側はそれを受け取るという情報格差があったが、ネット社会になってその格差はほとんどなくなりつつある。こうなると、小手先のソリューションではお金を払ってもらえなくなる。そこで必要になるのが、成果を売ることだ。

たとえば飯室氏の会社では、医療用測定装置を製薬会社に納入するが、自社製品か他社製品かを問わず、すべての装置のメンテナンスを請け負うというビジネスを行っている。そうしたビジネスを始めるにあたって社内からは「製品を売らないのか」「他社装置のメンテナンスなんかして責任を取れるのか」といった反論があったし、研究所の人たちも外部の人に触らせたくないと抵抗したという。

しかし、ある顧客企業には装置が5000台あり、装置をメンテナンスするのに500人の研究者が業務時間の20%をそれぞれ費やしていたのだという。つまり、100人の研究者が研究以外をしているのと同じだ。それを請け負うことで、顧客企業で研究が進み新薬を早く市場投入できれば、助かる患者さんがいる。製薬会社側は、それを理解して契約に至った。

中東氏は、このようなストーリーを作る能力がマーケターに必要だという。作るとは、マーケター自身が考えるのではなく、ユーザーに本当のニーズを聞くということだ。ユーザーニーズを聞き、製品やサービスを直していく。ソフトウェア開発で言う「アジャイル」(目前のことを俊敏に解決していく)が、マーケティングでも一番いいと飯室氏は言う。

お客さんからのフィードバックを受け続けるカルチャーとか組織、マインド、これをどう作るかが、マーケティング組織にすごく重要(中東氏)

リーダーやマネージャーが果たすべき役割

「リーダーとマネージャーは違う」と飯室氏は言う。マネージャーは、会社から任命される役割で、歯車を回す、オペレーションをしっかりやるというイメージ。リーダーは細かい部分は適当でもビジョンを示し、チームのモチベーションを上げる人。アップルでいえば、ティム・クックがマネージャーで、スティーブ・ジョブズがリーダーというと、わかりやすいだろう。

また、チームの全員がオール5というのでつまらない。短所があっても専門性の高い能力があるような、特殊な人が集まった方が面白いものができる。

また中東氏は、ビジョンを描いたらコミュニケーション増やすという。話し好きのリーダーであれば、自分の考えをインフルエンスしやすい。飯室氏が強調するのは、「情報を出すことがコミュニケーションではなく、相手に伝わって、行動するまでがコミュニケーション」ということだ。カタログができたらお終いではないし、プレスリリースを出したらおしまいでは意味がない。

コミュニケーションは、伝えることが目的ではない。伝わったかどうか確認して、相手が動くまでがコミュニケーション(飯室氏)

最後に、中東氏は「B2Bのマーケティングの目的は、後工程の生産性向上」で、以下のように因数分解することが重要とした。

  • 生産性は単位活動当たりのアウトプット
  • 単位活動は架電数や訪問数、アウトプットは案件金額

飯室氏は、「マーケティングは売れる仕組み作りというのは過去の話で、成果を売るならまず見つけてもらうところからと言い」、以下のような短歌と川柳で締めくくった。

見つけられ いつも選ばれ 喜ばれ
 いいねをもらい みんな幸せ

失敗に 学ぶ今から アジャイルで

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