【レポート】デジタルマーケターズサミット2017 Summer

目標を430%達成した事例にみるコンテンツマーケティング成功のコツ――ビズリーチの場合

指標数値はファインダビリティスコアのみに
[Sponsored]

人事・経営者向けのメディア事業を立ち上げ自然検索からの集客に注力し、検索流入数は6か月で当初目標の430%になった事例がある。HRテック領域でサービスを提供するビズリーチの「BizHint HR」だ。その成功の背景について、メディア事業に取り組む理由、制作体制、評価改善手法を紹介する。

月岡 克博氏
株式会社Faber Company
エグゼクティブ・マーケティング・ディレクター
月岡 克博氏

Faber Companyの月岡氏が「デジタルマーケターズサミット2017 Summer」において、「目標を430%達成したビズリーチ事例にみる、コンテンツマーケティング成功のコツ」と題し、ビズリーチの関氏と同社BizHint事業部の大森氏にインタビューするかたちで、時間のかかるコンテンツマーケティング施策のKPIについて、経営陣との握り方やチーム作りについてのコツを解説した。

関 哲氏大森 厚志氏
(左)株式会社ビズリーチ 執行役員 関 哲氏
(右)株式会社ビズリーチ BizHint事業部 大森 厚志氏

マーケティングコストを抑えるコンテンツマーケティング

ビズリーチは、転職サイトや「戦略人事」を実現するクラウドサービスなど、HRテック領域を中心としたインターネットサービスを提供している。2016年8月にスタートした「BizHint HR」(以下、ビズヒント)は、人事担当および人事・組織に興味を持つ経営者、事業責任者を対象にした専門メディアで、次の3つのタイプのコンテンツを提供している。

  • 自社取材記事
  • ニュースピックアップ
  • 悩み/課題解決

ビズリーチの関氏によれば、「当社では広報室が人事・組織に関する記事をさまざまなメディアからクリッピングして社内に共有していた。これは便利なので、人事に携わる方からニーズがあるのではないかという新規事業アイデアが出てきた」という。また、「やるからには、自分たちでも記事を出そう」ということでオリジナルコンテンツ(自社取材記事)も作ることにした。

オリジナルコンテンツは内部で作れるようになったのだが、次の課題は、ビズヒントを狙った方(人事・経営者)にいかに知っていただくか。そこで考えたのは、人事領域に悩みを抱えた人のヒントになるような記事を提供し、自然検索流入を増やすことだった。そのためのコンテンツが「悩み/課題解決」である。このコンテンツ施策を開始してから8か月で、オーガニック(自然検索)流入は約56倍となった。それに伴い、コンバージョン(会員登録)も順調に伸びている。

オーガニック流入状況

ビズリーチは創業当初よりSEM(検索連動型広告)やディスプレイ広告など運用型広告を中心としたオンラインマーケティングに注力してきた。一方で、コンテンツマーケティングのような中長期的な取り組みを求められる施策については手薄になっていたという。本腰をすえるきっかけとなったのは、事業成長により企業の体力がつき、中長期的なマーケティング戦略を遂行できるようになったことと、運用型広告費の高騰に合わせて別手段を模索する必要性が生じ始めたためだ。

また、コンテンツマーケティングを開始した当初は「暗中模索な状態で、純粋想起したキーワードを元にがむしゃらにコンテンツを作るなど、極めて非効率な状態だった」とビズリーチの大森氏は言う。実行していく中で、純粋想起を元に作ったコンテンツと検索者のニーズはほとんど一致せず、逆に検索意図からコンテンツ設計する重要性に気がついたという。

経営会議ではたくさんの指標を説明しない

インハウスでコンテンツマーケティングに取り組むことには、次のようなメリットがある。

  • 検索意図に応えたコンテンツを有することで持続的な検索流入を期待でき、中長期的な集客コストが下がる
  • 検索行為を行う情報収集意欲が高い方にサービスをリーチできる
  • 改善活動を回しやすく、自社内にスピーディーにナレッジが蓄積される

ビズリーチでは前述の通り自社内にコンテンツマーケティング知識を有さなかったため、社内でコンテンツの制作やディレクション、改善を行うことで「何をするとどうなるか」会社内に知見を蓄積することも新たな施策のポイントだった。

コンテンツマーケティングの指標となる数値としては、次のようなものがある。

  • PV/UU
  • 検索順位
  • 滞在時間
  • ソーシャルシェア
  • 読了率
  • コンバージョン

これらを見るのは間違っていないが、一度に複数の指標を追うのは困難であり、経営会議など報告の場でも問題点がわかりにくくなる。

そこでビズヒントの現場では、改善活動のためにさまざまな指標を見るものの、経営会議で報告するのは検索順位をスコア化した「ファインダビリティスコア」のみにしている。ファインダビリティスコアとは、検索エンジンにおいて各キーワードの順位を点数化して積み上げるもので、行った施策の効果が一目瞭然となる。

ファインダビリティ

ビズヒントではFaber Companyのコンテンツ&SEOプラットフォーム「MIERUCA(ミエルカ)」を活用しているが、計測キーワードのファインダビリティスコアを自動で計算してくれるため、集計工数がかからない。

また、施策開始当初は検索ボリュームの少ないキーワードから効果が出てくるため、アクセス数では変化が読み取りにくい傾向がある。

ただ、同指標であれば成果を早期に可視化することができるので「このチームは正しいことをやっている」と経営会議の場でも評価を得やすいという。

コンテンツチーム作りの3つのポイント

「BizHint」では、コンテンツマーケティングをサポートするツールとして「ミエルカ」を導入している。ミエルカのベンダーであるFaber Companyの月岡氏は、「ビズヒントのコンテンツ施策がうまくいっているのは、チーム作りがうまくいっているからだ」と言う。ポイントは3つある。

①マニュアルによる業務の定型化/仕組み化

ナレッジを蓄積していく上でも業務の属人化を徹底的に避け、

  • ライターの探索・選考方法
  • コンテンツの構成作成方法
  • ライターへ執筆を依頼する際のフォーマット

など、業務フローを言語化/フォーマット化した。仕組み化が行われることでコンテンツの品質は担保され、持続的に世の中に質の高い情報発信を続けることが可能になる。たとえば、次の図はコンテンツの構成要素のテンプレートだ。こうした雛形を元にライターに依頼すると、ライターも求められている要点がわかりコンテツが書きやすいという。

構成要素のテンプレート例

②ライター選定/モチベーション管理

ビズヒントのライター選定基準は厳しく、応募総数に対し発注に至る通過率は5%程度だという。長く付き合うパートナー探しをしているからだ。関氏は次のように言う。

去年の秋、ネット業界全体としてWEBコンテンツを巡る問題があり、クラウドソーシングで記事を書くのはよくないという風潮があった。しかし、じっくり探せば良いライターもいる。

また、記事執筆の過程のコミュニケーションやライターのスキル・能力に応じた6段階の報酬区分など、ライターが持つ「良いコンテンツを書き上げたい」という気持ちを刺激するような仕組みづくりをしているという。

③トライ&エラーによるPDCAのループ

ビズヒントでは、トライ&エラーで業務の進め方や組織体制を随時変えている。モニタリング指標としては、

  • 流入推移
  • キーワード別順位状況
  • ベンチマークとの比較
  • ファインダビリティスコア

などがあり、ヒートマップによるコンテンツ改善も行う。組織変更は9か月間で5回も行ったという。

コンテンツマーケティング成功のために

こうしたビズヒントの取組から学べるコンテンツマーケティング成功のコツは、次の3つだ。

  • 業務の仕組み化/定型化によってノウハウ共有、作業を効率化
  • 関わる人が楽しくなるような組織風土作り、体制を含めたトライ&エラー
  • ユーザーに向き合う時間を作る

ユーザーに向き合う時間を作るためには、手間のかかる作業や調査などをツールやシステムで効率化することも重要となる。ビズヒントでは、前述の「ミエルカ」を活用して分析、改善も効率化しているという。「ミエルカ」には、AIも用いたユーザー検索意図の可視化する機能やコンテンツ改善案のレコメンドをしてくれる機能がある。ビズヒントのコンテンツ改善事例の1つとして、ミエルカのレコメンド通りにコンテンツタイトルを変えただけで、自然検索流入が250%になった例もある。

検索意図の可視化

最後に、メディア運営やコンテンツマーケティングについて、ビズリーチの2人にアドバイスを聞いて、ディスカッションを締めくくった。

メディア運営には多くの人が関わるので、属人化しないことが重要で、その仕組みをミエルカが提供してくれた(関氏)

ユーザーの検索意図に向き合い続ける事が、成果を出す一番の秘訣であることがわかった(大森氏)

用語集
KPI / SEM / SEO / クラウド / コンバージョン / 検索エンジン / 検索連動型広告 / 自然検索
[Sponsored]
この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

Python
「Python」(パイソン)は、プログラミング言語の1つ。プログラマのグイド・ヴ ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]