マーケターが経営者になって見えるようになったこと! マーケターと経営者の目線の違いとは?
マーケティングのデジタル化が進む一方、「デジタルシフト」の壁に直面する企業も多い。また、デジタル人材の確保や育成に悩みを持つ企業も多いだろう。 マーケターの考え方と経営者の考え方は何が違うのか。マーケターがやりたいことを実現するには、どんな観点に気をつければいいのだろうか。
マーケターが抱える課題の背景に「マーケターと経営者の目線の違いがある」と語るのは、アクティブの藤原氏だ。「デジタルマーケターズサミット2017 Summer」において、「マーケターが経営者になって見えるようになったこと! マーケターと経営者の目線の違いとは?」と題し、「部分最適と全体最適」「人と組織」といった経営者の目線を理解するためのポイントについて紹介した。
マーケティングのデジタルシフトを阻む「経営層」と「現場」の溝
藤原氏は次のように指摘する。
マーケティングの「デジタルシフト」の壁に直面したときに、「経営者としての考え方や目線の違い」をマーケターが理解することが解決のポイントになる場合がある
たとえば、デジタルマーケティングを実行する現場を例に挙げてみる。
現場のマーケターとしては、ブランド認知に必要なリスティング広告やリターゲティングを行い、見込み客獲得後のCRM施策としてステップメールやサイト改善も行っている。
しかし、ディスプレイ広告は一定の効果は出るものの、手法は効率化し尽くした感があり、CPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得コスト)やCPO(Cost Per Order:受注1件あたりのコスト)など、投資対効果の観点から規模を拡大しづらい。また、SNSや動画広告も、効果は認知が中心で、継続的に投資できない課題もある。
結果として、限られたリソースでは目の前の仕事に追われることが多く、デジタル施策それぞれの費用対効果の最大化に意識がとられ、目の前の仕事に追われる状況に陥ってしまう。
一方、同じ事象を経営側から見てみるとどうだろう。
成長戦略の1つとしてデジタルマーケティングに着手し「現場は既存の手法とリソースを有効活用しながら施策を実行しているはず」だと認識している。
しかし、どうもデジタルシフトのスピードが遅い。また、専門知識やノウハウが少なく、デジタルマーケティング全体を任せられる人材も少ない。コストがかかるし、効果が見えづらいという課題もある。
こうしたことが、「将来の成長軸の一つであるものの、まだまだ規模が小さく、リソースを割けない」という悩みに繋がっている。
藤原氏は、「このような両者の溝をいかに埋めていくかが重要だ」と述べた。
マーケティング部門のマネージャーは、「全体最適」の視点を意識すべし
藤原氏が指摘するのは、マーケティング部門のマネージャーと経営者の視点の違いだ。組織機構を人体の機能に置き換えてみて、次のように考えるとわかりやすいという。
- 経営層 → 「司令塔(脳)」の役割
- 各部門長 → 指揮命令系統としての「心臓」「血液」といった機能
- 各部門 → 実際に命令に従って動く「手足」などの機能
つまり、経営者は全体を見渡して優先順位をつける全体最適の視点で考え、現場のマネージャーは、自部門をいかに効率的に、スピーディに動かすか、部分最適の考え方をするのです
この違いを認識し、「マネージャーは、経営者の視点を理解し、経営者と話をしなければいけない」と藤原氏は指摘する。経営層の考え方を知り、他の部門がどう動いているかを観察、理解することがマーケティング部門のマネージャーには求められているのだ。
デジタル人材に必要な3つのポイント
次に重要なポイントが「人」だ。求められる「デジタル人材」について藤原氏は次のように述べる。
- 俯瞰した目線でデジタルマーケティングの絵を描ける人
- チームを動かし、目標を達成するリーダー資質の人
- 社内調整を行う「Hub(ハブ)」になれる人
「絵を描ける」とは、具体的には次のような「デジタルマーケティングストーリー」を図示できることだ。
「AIDMA」と呼ばれた購買行動は、デジタルの進展により「DECAX(デキャックス)」などと呼ばれるようになってきた。
- Discover(発見)
- Engage(関係)
- Check(確認)
- Action(購入)
- eXperience(体験と共有)
顧客の購買行動が変わっているので、目的に応じたマーケティング施策案を考えることが欠かせないのだ。そして、こうしたマーケティングストーリーを具体的なデジタルマーケティング手法にブレイクダウンしていくことも重要だ。
デジタル、プリント、店舗といった「チャネル」と、獲得(アクイジション)、維持(リテンション)といった「目的別」に、必要なリソースが何で、どういう人材が欲しいかを経営層と折衝していくスキルが求められる。
組織マネジメントに必要な2つのポイント
そして「組織マネジメント」の方法論について藤原氏は2つのポイントを示した。
1つ目のポイントは「褒め方と叱り方のテクニック」だ。
褒めるときはなるべく第三者にやってもらうことが大事。なぜなら、人は周りの多くの人に認められることを望んでいるからです
そして、褒めるタイミングは「いつでもOK」ということだ。
一方で、叱るときは「直接叱る」ことが最も重要だ。そして「叱り方も大事」だという。
言い方も「前に言ったよね」という言い方ではなく「これはどうすればよかったんだっけ?」と、原因と対策を相手に考えさせるアプローチを取ることが大事です
その際、よくない点を明確に指摘することと、叱るタイミングは時間をおかず、ミスの直後を心がけて欲しいとのことだ。
2つ目のポイントは「組織に応じたマネジメントのテクニック」だ。
藤原氏によれば、組織に応じて「プロジェクト型」「行脚型」の2つのテクニックがあるという。
「プロジェクト型」は、文字通り組織横断型で進めるやり方のことで、こうした場合は、「第1回のキックオフが重要」だという。
最初のミーティングで、役割分担、タスク管理、すべてを明確にします。タスクの実行は担当者に任せ、サポートに回るために、マネージャーは課題を可視化、簡易化していくファシリテーション能力が求められます
一方、大企業に適しているのは「行脚型」の進め方だ。キーマンが複数いるため、そのキーマンを見つけ、味方にしていくために「社内行脚」すなわち相手の懐に飛び込むことが欠かせない。
相手の優先順位を確認し、有利な条件を見つけ、それに合わせたストーリーを部門ごとに資料化し、それを持って社内各所を行脚することが求められます
相手の懐に入るためには「自分を丸裸にする(隠し事をしない)」ことが重要だと 藤原氏は述べる。
最後に
そして、「経営視点」と「現場視点」では予算に対する考え方も異なる。藤原氏は次のように述べる。
たとえば、施策に対して1000万円の予算があるとして、現場は、個別施策の最適な運用を通じた投資対効果を考えるが、経営は、全社視点に立って収益、キャッシュフロー、成長性などを考慮し、投資対効果を判断、評価するというように、同じ予算でも見方、使い方が違うということを知って欲しい
最後に、藤原氏は、マネージャーの役割を総括し、次のことを提唱した。
- 会社の組織や体制、状況を把握すること
- デジタルマーケティング全体を俯瞰し、施策の優先順位をつけること
- 社内、社外問わず、チームとして人を動かし、目標達成の道筋を立てること
デジタルマーケティングを進めていくため、経営層と現場の目線の違いを認識し、両者の溝を埋めるための参考にしてもらいたい
藤原氏はこのように述べ、セッションを締めくくった。
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