10万ユーザーの利用分析からわかった「データから価値を生みだす企業」の3つの特徴
マーケティングのデジタル化には、データをもとに顧客を理解し、効果的な施策に活用していくことが欠かせない。企業がデータから価値を生み出すためのツール選びやデータ運用方法とは? そして、新しいROIの考え方「Return On Information」とは?
全世界で10万以上のユーザーが利用するデータ解析や管理のクラウドサービスを手がけるPtmindの安藤氏が、「デジタルマーケターズサミット 2017 Summer」において、「10万以上の利用ユーザーから判明。データから価値を生みだす企業の3つの特徴」と題し、企業がデータから価値を生み出すためのツール選びやデータ運用方法を紹介した。
マーケティングツールは「個人・少数利用」から「コラボレーション」へ
Ptmindは、2010年末に日本と中国で同時に創業した企業だ。Webサイトのデータアナリティクスサービス「Ptengine」と、データ可視化や共有を可能にするダッシュボードサービス「DataDeck」というクラウド型のサービスを手がけ、世界で10万ユーザ以上の利用者を擁する。
安藤氏は、データ活用による「顧客理解」がビジネスにとって重要性を増していることを示す例として、Web広告に関するある数字を提示した。
Web広告のコンバージョン率は、全業界平均で、検索広告が2.7%、ディスプレイ広告は0.89%となっており、ほとんどの広告投資は無駄になっている現状があります
マーケティングの効果を高めるためには、
- 早く顧客を理解し
- 組織全体にスピーディにデータの価値を伝える
サイクルを確立することが欠かせない。そして、マーケティングツールの導入ひとつとっても、変化の激しいマーケティング業界の動向をつかみ、自社の規模や目的に応じて、適切なツールを導入する必要があるのだ。
安藤氏は、マーケティングツールに関する業界のカオスマップを示した。これによると、2015年1月のカオスマップでは、
- マーケティングエクスペリエンス
- マーケティングオペレーション
- ミドルウエア
- インフラ
などのカテゴリ分類がなされていることがわかる。
このカオスマップのカテゴリ分類は、2016年になると大きく変化していると、安藤氏は続ける。
2016年3月のカオスマップでは、カテゴリ名から「マーケティング」というキーワードが消えました。さらに、一見マーケティングと関係ないような「マネジメント」カテゴリが新設されています
背景には、マーケティングというジャンルが広範になってきたことが挙げられる。あらゆる部署や役割でデータ活用の重要性が高まっているのだ。たとえば、1エンタープライズ企業が利用するツールの数は、全業界で平均1000個近いが、このうちマーケティングのカテゴリに属するツールは91個と1割弱に過ぎない。安藤氏は次のように指摘する。
部署や役割を超えたマルチクラウド、データ利用を前提としたツールの活用へと、シフトしつつある
さらに「マネジメント」の重要性が高まっている背景には、組織マネジメントやコラボレーションの重要度が増していることが挙げられる。
企業内コラボレーションツールとして急成長を遂げるSlackは、約2年半で年商100億円に到達した。これはセールスフォースの2倍以上のスピードです
顧客接点の改善や最適化には、複数の部署が関わる。ワークフローや部門間横断など、メンバーがストレスなく、スムーズに、リアルタイムに仕事をするためのツールに対する関心が高まっており、このため「『マネジメント』がサービスとしてカテゴリ化されているのではないか」と安藤氏は分析する。
これらを総括して、安藤氏は次のように述べた。
マーケティング領域以外でのクラウド活用が進み、マネジメントの比重がかつてない高さになっている
ROIの定義が「Return On Information」に変わってきている
では、データから価値を生み出すことに成功している企業にはどういう特徴があるか。安藤氏はまず、データ活用の「ROI」の定義が変わってきていると指摘する。
ヒューレット・パッカードが提唱したROIの定義によると、ROIは「Return On Investment」から「Return On Information」に変わってきています
従来のROI(Return On Investment)は、投資した資本に対して得られた利益を指し、「収益/投資」の計算式で示されていた。これに対し、今後のROI(Return On Information)は、データに着目して得られた価値を算定する。
そして、特にデータアナリティクスやダッシュボードなどのマーケティングツールに対する満足度の高いユーザー企業は、
- 組織内で何人がデータを活用しているか
- データから価値を理解する時間
- 運用コスト(他のツールとの連携性が運用コスト軽減に寄与する)
といった変数に着目し、サービスを運用していることがわかったと安藤氏は説明した。
安藤氏は、これらの3つの変数、すなわち
- データの活用人数: コラボレーション重視
- データ理解の時間: エクスペリエンス重視
- 運用コスト: インテグレーション重視
に成功企業の特徴があるとし、実際の事例を紹介した。
特徴1 コラボレーション重視
理解しやすく、使いやすいサービスは汎用性が高く、多くの関係者をデータ活用の議論に巻き込むことができる。その結果、データから価値を生むまでの時間が早くなる。
自動車メーカーのスバルでは、電通をはじめ複数の代理店や制作会社と一緒にデータアナリティクスサービス「Ptengine」を利用している。関係者に同時にアカウント開設し、関係するメンバー同士でデータを共有、施策の改善に役立てている。
その企業間を超えて分析、改善する取り組みが評価され、2016年には中国最大規模のマーケティングイベント「MEXPO」で、スバルによるPtengineの活用方法が銀賞を受賞した。
また、小売業などでは、現場から出てくるサイト改善のアイデアをいかに吸い上げるかが重要なポイントとなる。「カラオケパセラ」などのカラオケ事業を中心にエンターテインメント事業を手がけるニュートンでは、「Ptengine」を活用することで、店舗スタッフも一緒にマーケティングの運用改善ができるようになったという効果が得られた。
特徴2 エクスペリエンス重視
法人向けソフトウェアにも「ユーザーエクスペリエンス」を重視する傾向が強くなってきた。安藤氏は次のように話す。
法人向けソフトウェアもコンシューマー向けソフトウェアと同様の体験が望まれてきている
法人向けのソフトウェアやサービスを扱う先進企業では、5~7年前に比べ、技術者に対するデザイナーの比率が圧倒的に高まっている。
ニュース共有サービス「NewsPicks」では、「Ptengine」の学習コストの低さを評価している。また、デザインだけでなく、カスタマーサービスを重視している点も評価が高いポイントだ。 安藤氏は次のように説明する。
無償サポートあっても、ユーザーが理解できるよう支援するきめ細かいサポートを心がけている
特徴3 インテグレーション重視
ソフトウェアやサービスの連携性は重要なポイントだ。APIにより、異なるツールやサービス、データと相互に連携し合うことで、マーケティングツールの運用効率は格段に高まる。
米国のマーケターを対象にした調査でも、「1社が提供するスイート製品(一連の製品群)に依存するよりも、部分ごとに最適なツールを選び統合することで全体最適を実現するほうが有効だと考えるマーケターは増えている」と安藤氏は説明する。
ROI(Return On Information)を実現するための最適なツール選びを
安藤氏は、Ptmindの取り組みを「データからゴールまでのアクションをゼロにすることにある」と総括した。
PtengineとDataDeckというサービスは、全世界の7万のSaaSサービスや、MySQLなど多種多様なデータソースと連携し、顧客理解のためのコンテンツ分析とアクションを促すデータ統合を同時に実現します。前述したROI(Return On Information)になぞらえると、データ活用人数が多く、データから価値を理解する時間が短く、運用コストが低いツールということができます
そして、会場のマーケターに対し次のように呼びかけ、セッションを締めくくった。
データを価値へ変えるために、皆さんには
- 何人がデータを見ているか?
- ツールの学習コストは発生しているか?
- いろんなサービスと相互に組み合わせているか?
という観点で、今お使いのツールを見直してみてほしいです
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