【レポート】Web担当者Forumミーティング 2021 秋

Cookieレス時代に急成長するD2Cブランド「TENTIAL」の最新デジタルマーケティング戦略

Cookie規制をいかに攻略するかはデジタルマーケティングの重要な課題のひとつ。急成長D2Cブランド「TENTIAL」の成功例をPtmindが解説する。
[Sponsored]

Cookieは、ブラウザやアプリをベースとしたデジタルマーケティングにおいて、中核的な技術の一つだ。その利便性から、匿名顧客の識別、広告ターゲティングなどに幅広く利用されているが、プライバシー上の懸念から世界的に規制される流れが本格化しており、それが緩む気配もない。

オンラインビジネスへの影響が果たしてどれほどのものなのか。そのヒントとなりそうな講演が「Web担当者Forumミーティング 2021 秋」で開催された。アスリート視点でインソールやアパレルの製造開発を手がける新興D2Cブランド「TENTIAL(テンシャル)」から岩松泰平氏が登壇。Ptmind(ピーティーマインド)の窪田知昭氏が聞き手となり、Cookieに頼れない時代のマーケティング戦略について具体的に解説した。

(左から)Ptmindの窪田 知昭氏とTENTIALの岩松 泰平氏
(左)株式会社Ptmind Online Operation Ptengine Senior Specialist 窪田 知昭 氏
(右)株式会社TENTIAL マーケティングマネージャー 岩松 泰平 氏

Cookie規制は世界的潮流に

TENTIALは2018年設立。創業者は、もともとプロサッカー選手を目指していたが、突然の心臓疾患の発覚によって競技人生が絶たれ、ビジネス畑に転身した経験をもつ。このことから、アスリート生活で得た知見を実社会にどう活かすかが、社としての大きなビジョンになっているという。

TENTIALが手がける製品
TENTIALが手がける製品

製品開発には、全国レベルで活躍した元アスリートが多数携わっているのも大きな特徴。当初はインソール(靴の中敷)の販売からスタートし、現在はマスク、着用して寝ることで疲労回復効果が期待できるリカバリーウェア、プロテイン、入浴剤なども手がけている。

これらの製品は自社サイトを通じておもに販売しており、メーカーと消費者が直接取引・コミュニケーションするD2C(Direct to Consumer)をまさに体現する企業といってよいだろう。

一方の窪田氏が所属するPtmindは、Webサイト運営プラットフォームを提供する企業だ。2010年に創業、世界初のスマートフォンサイト専用ヒートマップ分析サービスの開発を皮切りに、現在はアクセス解析からA/Bテスト・Web接客などのサイト改善、ページ制作などをノーコードで行えるサービスを「Ptengine(ピーティーエンジン)」のブランドで広く提供している。

体験改善ツール「Ptengine」概要
サイト運営プラットフォーム「Ptengine」概要

デジタルマーケティングにおける中核的な技術として「Cookie」が使われていたが、近年ではプライバシーの観点から規制が進んでいる。EU圏におけるGDPR(一般データ保護規則)、 米国カリフォルニア州のCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)に代表される法的規制に限らず、アップルやGoogleなどの巨大プラットフォーマーもまた、ブラウザのCookie機能を利用した個人識別について、規制する方向で動いている。

ユーザーが認知していない情報を拒否し、あくまで合意されたもとでデータを利用していくという方向性にあることは、すでに多くの人の共通認識になっているだろう。2021年11月1日からは中国でも個人情報保護法が施行され、これは(情報保護関連では)世界で最も厳しい法律ともいわれている。マーケターはこうしてデータの取り扱いが厳格化する中でも、ポリシーを守りながら成果を上げなければならない時代になった(窪田氏)

ブラウザのCookieは、Webサイト上でお気に入りしたり、動画を一時停止したり、ECサイトで商品をカートに保存しておいたりする機能を持ち、Webサイトを使う上で、必要な情報を保存しておく箱のようなものである。

一方で、Cookieに保存されている閲覧履歴などを活用して、広告のターゲティングやコンバージョン判定に使われてきた背景がある。これらが法的にも、技術的にも規制されつつある。新規顧客の獲得をWebなどのデジタル中心に行っている企業にとって、Cookieレスは少なからず影響があるだろう。

Cookie規制は世界的な潮流となっている
Cookie規制は世界的な潮流となっている

Cookieレスで変わること、変わらないこと

Cookieレスの潮流に対する一つの答えが、「ゼロパーティデータ」である。Webサイトアクセス時に直接発行されるファーストパーティCookieに依ることなく、また外部サーバーとの連携によって発行されるサードパーティCookieとも違い、Webサイトとユーザー間で明示的な確認・合意のもとで集められる行動や心理データのことを指す。これまでのCookieとは一線を画すアプローチだ。

Cookieレスにより本質的要素が重視される

岩松氏はCookieレス時代を「マーケターとして、より本質に向き合わなければならない。規制に対して抗うというのはやはりおかしいと思うし、変化をきっちり受け入れて対応すべきだ」と評する。

広告で訴えるメッセージ、Webサイト上での体験、商品そのものの品質など、小手先の対処ではどうにもならない本質的要素に磨きをかけるという、ある意味、商売でもっとも基本的な部分が重視されるのがCookieレス時代だとした。

Cookieレスによる変化への対応策
Cookieレスによる変化への対応策

ターゲティング精度低下への対応

獲得したい顧客の年代・性別・利用デバイスなどを狙い撃ちできる広告を出せるのがデジタルの強みだが、Cookieレスの状況下では、広告ターゲティングの精度低下が予想されるという。

TENTIALでは、この問題に対し、広告クリエイティブによるターゲティングを試みている。同社がこのほど発売した「MIGARU」という衣類は、在宅時間が長時間化している世相を背景に、リモートワークでの快適性を確保しつつ、近所への外出に十分耐えるデザイン性を備えるなど、多用途な製品となっているのが特徴だ。

そこで広告で用いる写真を「リモートワーク訴求」「外出訴求」の2つに分散。こうして、広告に興味を持ち、クリックするユーザーを意図的に変化させることで実質的にターゲティングしたという。

「MIGARU」では、広告クリエイティブで実質的なターゲティングを試みた例も
「MIGARU」では、広告クリエイティブで実質的なターゲティングを試みた例も

ただ、2種類の広告があっても、遷移先サイトが一つでは、広告メッセージに対して反応してくれたユーザーが、その訴求内容との差に違和感を抱く可能性もある(リモートワークの広告をクリックしたのに、外出着としての説明が書かれたページが表示されてしまうなど)。その対処のため、PtengineのA/Bテストやヒートマップ機能を活用。訪問ユーザーに合わせた表示内容の調整にも取り組んでいると岩松氏は明かした。

こうした作業はどうしても工数がかかってしまうので、ツールを使って少人数で最適化していく。Ptengineだと、画像さえあれば簡単に差し替えができ、広告のパラメーターでの出し分けができるので効果検証も精度高くできた(岩松氏)

広告の訴求内容に合わせて、ランディングページを調整
広告の訴求内容に合わせて、ランディングページを調整

広告効果の不明瞭化への対応

この他、Cookieレスが進むと、広告効果の不明瞭化も懸念されるという。アナログ広告と異なり、どれだけの広告費でいくら顧客を獲得できたか、その費用・割合などを明確な数値で示せるのがデジタル広告の特徴であるにも関わらず、コンバージョン測定ができないために正確なROIを出せない可能性が出てきている。

ただ岩松氏は、広告管理画面で確認できる数字が100%正確かについては、現状でも疑問の余地があるとも指摘する。TENTIALでは、実際の受注データをGoogle BigQueryに読み込ませた上で、さらに広告パラメーターと紐付け。重複や欠損のない正確なCPAを算出することで、より正確なデータを把握し、広告調整の判断に間違いが起きないように努めている。

Cookie規制は貧しすぎるオンライン体験が原因? だからこそ改善を

Cookieレスへの備えとして、TENTIALではCRMの体制強化を重点項目に挙げている。取扱商品のほとんどが買い切り型のため、サブスクリプション型ビジネスと比べて顧客との関係性は弱くなりがちだ。新規客だけをひたすら獲得していくのが厳しい以上、既存客のリピート注文をどう増やすかが課題で、CRM強化はその現実解でもある。

LINEを活用したリピート注文の強化

より具体的には、LINEの友だち登録獲得を大きな目標としているという。

ただ、いきなりWebサイト訪問者に『友だち登録してね』と出すのは、いちユーザーとしてもイヤな気持ちになるだろうと考え、いろいろと検証した。いまは商品をカートに入れるタイミングでポップアップを出している(岩松氏)

岩松氏としては、購入意思が決まった顧客に対し、LINEを通じた「送料無料」の登録特典をアピールすることで、友だち登録のハードルを下げようという狙いがあった。この施策に対するクリック率は50%を超え、開始から約3か月で10万人が友だち登録するという成功事例となった。

顧客との関係強化にはLINEの「友だち」登録を活用
顧客との関係強化にはLINEの「友だち」登録を活用

優れた顧客体験の提供を改めて意識する

岩松氏は、こうした施策の積み重ねの先に「オンライン上での購買体験をリアル店舗以上のものにする」ことを思い描く。

恐らく、Cookie規制がされるようになったのは、オンライン購入のユーザー体験が低すぎたから、社会的にそうした議論になったのではないか。広告の体験も同様で、どのWebサイトを見ていても同じ広告に追い回されるのは、やはり価値の高い体験とはいえない。そうした現状はやはり変えていきたい(岩松氏)

足を運ぶだけで楽しい。行ってみたら新しい発見があった――優れた店舗は、そうした体験を顧客に提供している。ならば、そうした体験をオンライン上でもできるようにしたいと岩松氏は語る。

窪田氏もまた、そのような優れた顧客体験を提供するためのソリューションとして、Ptengineの利用を広めていきたいという。現在、新プロダクトとなる「Ptengine Page Studio」(β版)を提供開始し、ユーザー別に異なるコンテンツを表示するためのページをノーコードで作成できるようにする。そうすることで、Webサイトの改善をよりスピーディーに、かつユーザーを中心にして実現させることが狙いだ。

「Ptengine」の多種多様な機能で、企業の成長をサポートしていく
「Ptengine」が目指すユーザー中心のサイト運営サイクル

Cookie規制の強化や、あるいはメルカリのようなC2Cプラットフォームの台頭により、D2Cをはじめとしたリテール(小売)ビジネスの外部環境はまさに激変している。新規顧客を獲得するためのコストがうなぎ登りの中、それを抑え、効率的に既存顧客の体験価値を高めるために、Ptmindは全力でサポートしてきたいと窪田氏は述べ、講演を締めくくった。

用語集
CPA / アクセス解析 / クリエイティブ / クリック率 / コンバージョン / スマートフォン / 訪問 / 訪問者
[Sponsored]
この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

アクセシビリティ
広義には、障害者、高齢者を含むすべての人間が、同じレベルでサービスや機器、施設を ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]