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受注につながる「導入事例」の作り方 入れるべき“必須6要素”

GAXマーケティングの佐藤岳氏が語る「受注を呼び込む導入事例」の作成方法。効果的なフォーマット、本数の目安など、具体的なノウハウを解説。

「導入事例制作と運用のメソッド」をもとにBtoBマーケティング支援を行っているGAXマーケティングの佐藤岳氏に、BtoBマーケティングにおける導入事例についてお聞きする対談の第2回のテーマは「受注を呼び込む導入事例」の具体的な作成方法。聞き手は、Faber Companyの月岡克博です。

対談の第1回では「顧客自身の生の声だからこそバリュープロポジションを強力に訴求できる」という、導入事例ならではのメリットが明らかになりましたが、今回はその効果を最大限に引き出すために、「導入事例にはどんな要素が必要?」「効果的なフォーマットとは?」「どのくらいの本数を公開すればよい?」といったよくある疑問を解消するほか、「導入事例のインタビュー先にOKをもらうコツ」についても迫ります。

自社の強みを引き立てるための必須6要素とは?

月岡克博(以下、月岡)今回は、ずばり「効果的な事例の作成法」を伺います。

ちょっと変化球から入る形になりますが、BtoBマーケティング支援のための「導入事例制作と運用のメソッド」を確立されている岳さんから見て「あ、これは残念!」と思われた導入事例はありますか?

佐藤岳(さとうがく)氏
2000年より事業会社とサービス提供会社で営業、マーケティング担当者としてBtoBマーケティングに従事。2015年11月に株式会社ブイキューブへ入社し、2016年4月~2020年12月までマーケティング本部長としてほぼゼロベースで組織を立ち上げ、マーケティング活動からの新規受注を2016年比で9倍へと拡大。コンテンツの企画制作、広告運用、アナリティクスを完全内製化し商談の創出、受注に貢献。得られた知見やノウハウ・ドゥハウを提供するBtoBマーケティング総合支援サービスGAX(ガックス)を2021年1月より提供開始。

残念な事例①お客様からの評価ポイントがつかみづらい事例

佐藤岳氏(以下、佐藤)ありますね。残念な事例としては以下の2つが挙げられます。

  1. お客様からの評価ポイントがつかみづらい事例
  2. 「選定ポイント/選定理由」など、導入事例に必要な要素が網羅されていない事例

最近のトレンドとして、導入企業と売り手双方の担当者による「インタビュー形式」による導入事例が挙げられますが、「最初から最後まで対話のみ」で構成されているケースが多く見受けられます。

顧客自身の生の声を訴求するという意味合いでは確かに「インタビュー形式」は効果的です。しかし「対話のみの構成」では、読み込まないとポイントがつかめません。折角、お客様から高い評価が書いてあっても、そのポイントが伝わらないのはまさに「残念な事例」です。

残念な事例②導入事例に必要な要素が網羅されていない

佐藤さらに意外に多いのが「選定ポイントと選定した理由」に触れていない導入事例です。実はこの部分こそ、導入事例の“キモ”と言える要素なのですが……。

「なぜ他社製品でなく、この製品を選んだのか」という点を顧客視点で語ってくれるこの項目は、まさに導入事例最大のメリットであるバリュープロポジションに他ならないからです。

Faber Company 月岡克博

月岡確かに「導入効果」や「抱えていた課題」はどんな事例でも取り上げられているとは思いますが、「選定ポイント/選定理由」は盲点かもしれません。

対談の第1回で「導入事例には導入失敗リスクの回避というメリットもある」というお話もありましたが、「選定ポイント/選定理由」は比較検討する際の注目すべき点として参考になりますね。

佐藤読者が知りたい情報が網羅されていないと読了時の満足度が低く「参考にならない」と判断されてしまいます。読み手(=買い手)にとっては時間の無駄になり、売り手にとっては成果につながらず、むしろ信頼性が低下してしまいます。これこそ究極の“残念な事例”ですよね。

導入事例が成功するためのポイントは?

成功のポイント①必須6項目を必ず入れる

月岡では、どうすれば成功する導入事例になるのでしょうか? よく見る「インタビュー形式」の事例で、効果をもっと引き出せるようになるのでしょうか?

佐藤次の6つの要素を見出しやアイキャッチでしっかりと訴求することで、事例で最も伝えたいことが伝わるようになります。

  1. 導入効果
  2. 抱えていた課題
  3. 選定ポイントと選定理由
  4. 利用法/活用法
  5. 導入後の感想
  6. 導入企業のプロフィール
導入事例で重視されている項目
出典:「製品・サービスの導入検討に関する調査」 調査対象者:アイティメディア読者会員 総回答数:520名 有効回答数:375名 調査時期:2023年1月10日~1月15日 以下、グラフ引用は調査名のみ記載

佐藤第1回でも紹介した「製品・サービスの導入検討に関する調査」では、上記の6項目のすべてを6~9割の回答者が参考にしていることがわかります。「インタビュー形式」自体を否定はしませんが、特に「効果」「課題」「選定ポイント」については、本文を読まなくても伝わるように専用の項目を立てて訴求すべきです。

月岡これは興味深い数字ですね。意外と読者はきちんと細かい要素までみているんですね。

成功のポイント②導入事例はウェブ+PDFは必須、動画は必要に応じて

月岡コロナ禍をきっかけにペーパーレス化が急速に進んだり、ビジネスにおけるスマホの活用が当たり前になった今、導入事例のフォーマットはやはりウェブページがメインになっているのでしょうか?

佐藤こちらも調査結果をもとに説明しましょう。月岡さんのご想像のとおり、「ウェブページ」は80.0%が重要・やや重要と回答し、「PDF形式のパンフレット」は72.3%、「複数の導入事例をまとめたPDF形式の冊子」も66.4%という結果が出ています。

必要としている導入事例のフォーマット
出典:「製品・サービスの導入検討に関する調査」

佐藤第1回で購買活動の多くの段階でも導入事例が活用されていることを紹介しましたが、どの段階でも「PDFによる事例」を添付して回覧する企業が多いからです。

さらに、パンフレットや事例冊子といった印刷物も3割超のニーズがあります。たとえば官公庁や自治体などでは、稟議段階で紙のフォーマット添付が必要なケースもまだ多いのも実情ですので、自社のメイン顧客の業種などを参考に「ウェブページ+PDF+印刷物」も検討するとよいでしょう。

月岡「導入事例ビデオ」は半分以下なんですね。動画を作るのは結構大変なんですけど……。

佐藤もちろん製品によっては、動画の方が伝わりやすい場合もあります。ただ、動画でも前述の6項目が伝わりやすい構成になるような工夫が必要です。

成功のポイント③最低3~6本が理想(同一製品・サービス)

月岡多くのマーケターが思っていそうな疑問に「事例は何本作ればいいのか?」が挙げられます。

佐藤導入事例は複数読まれるケースが多いです。理想で言えば同一製品・サービスで3~6本の事例があると、読者の満足度は高くなるでしょう。

製品・サービスの選定で読む導入事例の件数

出典:「製品・サービスの導入検討に関する調査」

成功のポイント④導入事例の制作件数を「評価指標」にする

月岡ミエルカSEOでも導入事例の公開には力を入れていて、弊社のカスタマーサクセス部門は、導入事例を制作できた顧客件数が業務の評価対象になっています。

SEOの取り組みは成果がでるまで時間がかかりますし、そもそも成果が出ていないと事例化のOKはもらえないため、カスタマーサクセス担当は自分の担当クライアントの成果をあげないといけません。だから事例をつくることを目標の1つに置いているのです。

佐藤それは上手いやり方ですね。導入事例の候補を挙げていく際に、どうしてもマーケティング部門だけが「あの顧客を事例化したい」というスタンスになりがちで、社内の他部署と温度差が出ることがありますよね。Faber Companyさんのやり方なら、複数部門のベクトルが一致します。

成功のポイント⑤ターゲットとしたい顧客が求めている事例から制作に着手

月岡とは言っても、現在、まだ公開事例数が多くない企業では「急に公開本数を増やすのは難しい」です。その場合、どこから手を付けるべきでしょうか?

佐藤まずは「事例化すべき顧客を洗い出す」から始めてください。洗い出しの具体的な方法として、まずは導入事例を作りたい製品・サービスの顧客リストを作成しましょう。そしてこのリストに「業種」「規模」「地域」「用途」「契約数量や期間」を記載し、「業種」と「規模別」で集計します。こうすることで、すでに自社の製品・サービスが導入されている企業属性の傾向が可視化できます。

受注顧客の傾向を可視化(集計)した例

月岡なるほど。現状の受注状況が可視化できると、自社製品・サービスがどのような属性の企業にニーズがあるのかが一目瞭然ですね。

佐藤これをもとにターゲットとしたい顧客の属性を決定します。「これまで受注できている層を狙って強化する」のであれば、受注傾向が強い属性の顧客に事例制作の依頼をします。逆に「受注が少ない層をねらう」のであれば、ピンポイントでその分野の受注顧客に事例制作の協力をお願いします。

導入事例のインタビュー先にOKをもらう方法とは?

月岡導入事例を制作する上でのハードルに「顧客のOKがもらえない」ケースもありますが、岳さんはどのようにアプローチするのですか?

佐藤「お客様の手を極力煩わせないこと」と「お客様のメリットを明確にすること」が大切です。まず、窓口になるご担当者様へ「取材依頼書」を提示して取材意図を明確にします。これにより担当者も「何に協力すればよいのか」を具体的に把握でき、上長や広報など関係者に展開しやすくなります。

取材依頼書はテンプレートを用意しておけば、お客様に応じて最低限のカスタマイズだけでスムーズに依頼が行えるので効率的です。

導入事例の取材依頼状例(黄色いマーカー部分は各事例によってカスタマイズ)

月岡「お客様のメリットを明確にする」とは、具体的にどうすれば良いのでしょうか?

佐藤お客様のステークホルダーに対し、「お客様の取り組みを第三者視点でアピールできること」がメリットになります。製品・サービスの導入には、業務上の課題を解決する目的があるわけですから、たとえば「業務効率を●●%改善するために〇〇〇を導入した」「働き方改革により社員の工数が●●%改善した」と対外的に訴求できます。

また、「お客様の業務実績を社内外にアピールできること」もメリットになるでしょう。たとえば、過去のケースで言うと「導入事例に取り上げられるような取り組みをした」ことが業務評価の対象になり「社内の業務改善コンテストで受賞した」ということもありました。

「導入事例は、お客様の成果につながる」と佐藤氏

月岡確かに、こうしたメリットがわかればお客様も動きやすくなりますね。当社の事例も実担当者に出演してもらうことにこだわっています。取り組みが担当者のわかりやすい成果になりますし、それをもってWeb担当者Forumなどの外部セミナーイベントで講演もできれば、マーケターとしての実績にもなるんですよね。

今回は、効果的な導入事例にするためには、訴求ポイントを明確することの必要性がわかりました。最終回の第3回は作成した導入事例を「効果的に活用する具体例」を掘り下げていきます。

※本文内の写真は、 WeWork 神谷町トラストタワーにて撮影されたものです。
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