BtoB企業のリード獲得に欠かせないSEO&導入事例コンテンツの作り方
BtoB企業にとって、集客からリード獲得までの流れにおいて、Webサイトの重要性がさらに高まっている。今や購買意思決定に必要な情報のほとんどが、Webで検索すれば入手することができるからだ。顧客の情報収集や意思決定を助ける重要なSEOコンテンツや導入事例は「資産」と言え、その価値を最大限に引き出すためには、いくつかのポイントを押さえる必要がある。
「Web担当者Forum ミーティング 2024 秋」では、コンテンツマーケの施策支援を行うFaber Companyの月岡克博氏と、BtoBマーケの総合支援を行うGAXマーケティングの佐藤岳氏が対談。ユーザーに届くSEOコンテンツと、導入事例コンテンツの作り方や費用対効果を高める活用方法、そして情報メンテナンスのポイントまで、コンテンツの価値を最大化する秘訣を解説した。
BtoBビジネスはコンテンツの影響力が大きい
Faber Companyの月岡氏とGAXマーケティングの佐藤氏は、Web担当者Forumでの連載「成果につなげる! コンテンツマーケティング最前線」において、導入事例の定義や制作・活用のノウハウを披露している。
月岡氏は、BtoB企業におけるオウンドコンテンツの重要性について、改めて次のように語る。
よいコンテンツは会社の「資産」になります。コンテンツに投資し、その活用方法を拡げることができれば、リターンは一石二鳥にとどまらず、一石三鳥にも四鳥にもなるのです(月岡氏)
BtoB企業のマーケティングにおけるコンテンツの重要性は、3つの視点で説明できる。
- 専門メディアが少ない → 自社で発信するしかない
- 案件単価が大きい → 投資対効果が大きい
- 意思決定に関わる人数が多く、検討期間が長い → 検討~意思決定まで影響力が大きい
自社で情報発信することが欠かせないBtoBビジネスにおいて、優れたコンテンツがあれば、Web上だけでなく営業資料やメール配信、記事広告にも転用でき、利用用途が増えれば高い費用対効果が期待できる。
優れたコンテンツは顧客の「情報収集」を支援する
佐藤氏は少し古いがと前置きして、2012年に発表された論文を引用した。2,000人のBtoBバイヤーのエグゼクティブを対象にした調査結果によると、彼らは課題が明確になってから購入に至るまでのプロセスの約6割を、自ら解決策を探すのに費やしていた。そのため、顧客が自分で課題に気づき、解決策を学ぶ過程では、セールスではなく「支援」が必要であり、そのために「コンテンツ」が重要だと言うのだ。
さらに佐藤氏はガートナー社の調査も例に挙げた。バイヤーが、課題を認識して解決策を探り、売り手を選び、発注する一連のプロセスにかけた時間のうち、オンラインの情報収集にかける時間は27%、オフラインの情報収集にかける時間は18%と、情報収集に費やされた時間は全体の45%に上る。一方で、実際に売り手と接触している時間は17%に過ぎないという。
これらの状況を整理すると、BtoB企業は、売れる体制を強化すること以上に、「バイヤー・イネーブルメント」という考え方、つまり「顧客の情報収集を支援し、買いやすいようにする」ことがより大事なのです(佐藤氏)
同業他社の解決事例が求められている
SEOコンテンツは、ユーザーの検索意図とニーズを捉え、自社のサイトを検索上位に表示させる役割がある。では、バイヤーの購買活動を支援する情報発信において、「導入事例」はどのような役割を果たすのだろうか。
佐藤氏は、製品やサービスの導入検討に関する調査結果を用いて、「導入事例がどのフェーズにおいても読みたいコンテンツであり、フェーズが進むごとに重要度が増す」と述べる。
さらに、バイヤーは同じ業種や業界で、同じ規模の企業が、同じ課題を解決した事例を読みたいという調査結果も紹介し、実際に求められている導入事例コンテンツの内容として、下記の5つを挙げた。
- どんなお客様なのか
- どんな課題があったのか
- 製品・サービスでどのように課題を解決したのか
- 選定ポイントや購入の決め手はどこか
- どのように使っているのか
購買を助ける情報とするには、上記の要素をきちんと押さえることが重要です。特に、選定ポイントや購入の決め手が抜けてしまうことが少なくありません(佐藤氏)
現状のSEOコンテンツ、事例コンテンツの課題
逆に、BtoB企業におけるSEOコンテンツや事例コンテンツの現状の課題として挙げられたのは下記のようなものだ。
- 検索上位コンテンツの内容がほぼ同じ
- 独自性や専門性、信頼性に不安
- 選定ポイントや比較検討の情報がない
- 選定ポイントや比較項目の整理が大変
- 内容の確からしさに疑問を感じる
- 売り手としての信頼性に疑問
すでに事例紹介をWebサイトなどに掲載している企業の担当者は、作成フォーマットを今一度、見直してみてもよいかもしれない。
バイヤー・イネーブルメントを進めるコンテンツの作り方
佐藤氏は、前述したバイヤー・イネーブルメント(顧客が自ら情報収集を行い、購買決定をできるような支援)を進めていくためのコンテンツの制作手順を紹介した。
情報ニーズに合致したコンテンツを作成する
まず重要なのは、「購買プロセスでどんな情報が求められているのか」の情報ニーズを把握したうえで、合致したコンテンツを企画・制作することだ。たとえば、営業担当者から「どんな事例を作りたいのか」「何を売りたいのか」「どのようなお客様にアプローチしたいのか」を聞き出し、共通理解を持つことが大切だと佐藤氏は言う。
「企業の属性」と「課題」の掛け合わせを軸にする
次に、顧客は「自分の会社と同じような会社が、同じような課題を解決した事例」を求めているので、次の2つの要素を軸として掛け合わせることが重要だ。
- 企業の属性(社歴/業種/規模/地域)
- 課題(製品・サービス)
ビジュアルで表現する
こうして作られた記事をまとめる際には、売り手側が顧客に対して提案できる価値、バリュー・プロポジションをわかりやすくビジュアルでも伝えていくためのフォーマットが重要となる。
情報がしっかりと整理されたフォーマットで配信されると、読者にメッセージが一目で伝わり、自分たちが同じことをするところを簡単にイメージできる。「その結果、受注につながったケースも多数あった」と佐藤氏は語る。
導入事例の表示方法にも工夫をする
月岡氏は、導入事例の魅力のひとつとして「高い費用対効果」を挙げ、「Webサイトの事例ページにただ記事を掲載するだけではもったいない」と言う。
たとえば佐藤氏は、CRMにある顧客情報を使って、訪問者の地域や業種に応じたページ画像と事例を自動的に切り替えてトップページに表示する手法を紹介した。実際に佐藤氏の支援した企業では、この方法により、サイト訪問者の地元企業の事例を表示するなどして興味を引き、コンバージョンの増加につながったという。
導入事例をさらに効果的にする3つの活用方法
佐藤氏は、導入事例にはさらに次のような3つの活用方法があると紹介する。
- WebページとPDF、ナーチャリングメールで送信
- 印刷物(デジタルの時代だからこそ、リアルが有効)
- 広告宣伝での活用(記事広告がおすすめ)
たとえば、Webサイトから事例紹介のPDFファイルをダウンロードされたお客様に、メールで同じ製品やサービスに関連するブログ記事や資料紹介を自動的に送信します。これらのメールは、開封率50%という驚異的な反響を得ています。
最終的には、関連する製品・サービスの資料のダウンロードやセミナー集客につなげています(佐藤氏)
SEOに強いコンテンツ制作は情報ニーズへの理解から始まる
Web担当者であれば、関連キーワードで、競合他社よりも少しでも検索上位に表示されたいと思うのは当然のことだろう。GAXマーケティングでは、アドバイスの成果を自分たちで実証していくという視点で、「導入事例」のキーワードでSEOに取り組み、効果検証するプロジェクトを2022年7月下旬からスタートさせた。
そこで得た知見として、SEO対策につながるコンテンツ制作の手順を次のようにまとめている。
最初に行うのは「検索意図を確認する」ことだ。検索窓にキーワードを入力したときに自動的に表示される検索候補のことを「サジェストワード」(正式名称:オートコンプリート機能)と言う。佐藤氏は、これがユーザーのニーズ、検索意図を満たす「購買を支援する」コンテンツ作成に役立つと述べる。
検索意図の確認のために利用しているのが、Faber Companyの提供するSEOツール「ミエルカSEO」だ。
ミエルカSEOの「検索ニーズ分析」機能を使い、キーワードを打ち込むと、検索数が円の大きさで、ニーズの近さが円同士の距離で表示される。
ユーザーが知りたいことを把握し、コンテンツの方向性を決めるのに有効です(佐藤氏)
こうしてミエルカSEOで調べたところ、「導入事例」の検索意図は大きく4つに分かれていることが把握できた。
そこで、調べたキーワードをもとに、自分たちが提案できる情報を考え、似たり寄ったりな記事にならないよう独自性を出すことを意識してコンテンツを企画、記事の見出しにもその独自性をしっかり反映させた。
その結果、「導入事例 デザイン」のキーワードで、公開から1カ月半で4位を獲得、また「導入事例 テンプレート」のキーワードでは、公開から2カ月で1位を獲得できたという。
コンテンツの価値最大化のためのポイントは「メンテナンス」
無事に検索結果で上位に表示されると、そこで安心してしまいがちだ。しかし月岡氏は、「コンテンツはメンテナンスが重要、リライトはコンテンツの価値を最大化することにつながる」と呼びかける。
佐藤氏は、上記の検証プロジェクトの中で、2023年に入っても「導入事例」単体のキーワードでは検索10位以内をウロウロしていた状況を確認し、3月頃に検索意図を読み解き直し、リライトを実施した結果、4月末には検索1位を獲得できたという。
Webコンテンツの良い点は、何度でも修正できること。完璧に仕上げてから公開するのではなく、完成度が60~70%の段階で一度公開し、検索結果を見ながら内容を追加していく方が早く成果を出せる場合があります(月岡氏)
月岡氏はセッションの最後に、「BtoBマーケティングにおいてはコンテンツが重要です。広告は積み上がりにくく“経費”と言えますが、コンテンツは末永くWebサイトを成長させてくれる“資産”になります」と述べ、コンテンツの重要性を改めて強調。ミエルカSEOの提供とSEOコンサルタントのサポートがセットになったプランや、今回登壇した佐藤氏が共にサポートしてくれるプランも紹介した。
検索意図をきちんと捉えたSEOコンテンツで潜在~顕在層へのリーチ力を高め、ユーザーの知りたいポイントを押さえた導入事例コンテンツでお問合せ、リード獲得につなげる。集客からリード獲得まで、一貫して「コンテンツ」が重要になってくる。
ここで紹介した視点だけでなく、情報を探している人たちにリーチするための方法など、まだ工夫できる点が多くあるとのことである。集客からリード獲得までに悩んでいるBtoBマーケティング担当者は一度相談してみてはいかがだろうか。
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