コンテンツ改善でUU数15倍、CV数11倍!オウンドメディア運営者が語る成功の3つの秘訣
自社製品・サービスのPRを目的に、オウンドメディアを運営したい企業は少なくない。とはいえ、多くの企業にとってメディア運営は未知の世界だ。「集客はどうする?」「目標設定は?」「PVを向上させる方法は?」「そもそも売り上げにつながるの?」など、疑問は尽きない。
「デジタルマーケターズサミット 2018 Summer」には、働き方情報サイト「ノマドジャーナル」を運営するサーキュレーションの赤羽宏之氏が登壇。Faber Company(ファベルカンパニー)の大森和博氏を聞き手に、『CV数11倍!新しい働き方を提案する「ノマドジャーナル」のメディア運営戦略』と題して、オウンドメディア運営の内幕を語った。
副業に関心のある個人をターゲットとする「ノマドジャーナル」
サーキュレーションは、プロフェッショナル人材のシェアリングサービスを展開する企業だ。「インディペンデント・コントラクター」と呼ばれる、高い専門性を有した個人が数多く同社に登録しており、企業の求めに応じて適切な業務委託先を紹介するなど、働き方の多様化を見据えた事業展開を進めている。
サーキュレーションのサービスの1つが「X-book」(現在はリニューアルして「Open Research」)だ。X-bookには各ビジネス分野の専門家が個人登録しており、例えば「新規事業展開のためコンサルティングを受けたい」など、ビジネスプロフェッショナルの知見・経験を求める企業とのマッチングを行う。所要時間は1時間単位で設定できるため、お互いのハードルが非常に低い。
今回の講演テーマとなる「ノマドジャーナル」は、このX-bookの知名度向上や新規登録者獲得を目的にサーキュレーションが運営するオウンドメディアだ。想定読者は副業に関心のある個人となり、副業の始め方のナレッジやイメージを読者に届けるため、すでに副業を実践している注目人物へのインタビューや、サラリーマンにオススメの副業リスト、副業サラリーマンのための確定申告の方法などの記事を掲載している。
赤羽氏は2017年にサーキュレションに入社。マーケティング業務全般を取り仕切る傍ら、ノマドジャーナルの運営に携わっている。
一方の大森氏は、Faber Companyのコンテンツ分析・SEOツール「MIERUCA(ミエルカ)」のエヴァンジェリストとして、導入企業のサポートなどを日々手がけている。
メディアにとって「どんな記事を作れば検索で順位があがるか」は喉から手が出るほど欲しい情報だ。コンテンツマーケティング、つまり優良な記事を制作し、自社サイトへ集客したい企業にとって、ユーザーニーズ分析を簡単に実施できる「MIERUCA」の導入メリットは大きい。ノマドジャーナルもMIERUCAを用いて各種コンテンツの分析をしているという。
ノマドジャーナル成功の秘訣は3つ
X-bookは「個人が簡単・短時間で復業するための仲介サービス」だが、その新規性ゆえに、誰もが理解しやすいサービスではない。ノマドジャーナルはその状況の打破を狙った施策であったが、アクセスは伸び悩んでいた。インタビュー記事を中心に良質なコンテンツが多数あったものの、SEOが強くなかったのだ。そこで赤羽氏はノマドジャーナル(の前身のメディア)のリニューアルを一任された。
赤羽氏はリニューアルに際して「コンテンツの方向性変更」に踏み切り、大きな成果をあげた。改善前からの比較で、月間ユニークユーザー数(UU)は約15倍に増加。また、ノマドジャーナルからX-bookへ登録というコンバージョン数(CV)も11倍に増加した。なぜノマドジャーナルはこれだけの成果をあげられたのか?その秘訣を大森氏は3つのポイントとして説明した。
ポイント① 目標設計はエビ反り
「せっかくのサイトリニューアルということもあり、実施前から経営陣の期待は非常に高かった」と赤羽氏は当時を振り返る。
「とりあえず(月間)100万PVくらいは欲しいかな?」「UUなら20万くらいなのかな?」との声が出ていたが、これはUU対PV比として、SEOからの流入を主軸としたサイトとしては少々無理がある。そのため、もう少し現実的な数値を示し、期待値調整を行った(赤羽氏)
仮にサイトリニューアルを実施しても、その直後にすぐPVが爆発的に増加するかといえば、それもまた難しい。実際にリニューアル直後はアクセスを落としたという。あくまで半年~1年という単位で目標値を管理し、当初はなだらかな向上、そしてゴール間近に爆発的向上という目標を立て、それを社内共有することが重要だと赤羽氏は指摘する。X軸が年月、Y軸が目標値のグラフで考える場合、ラインが「直線」ではなく、「エビ反り」になる格好だ。
ただ、エビ反り型の成長とは、現場目線では「施策を打っても、すぐに効果がでない」のと同義。関係者から疑念の声が高まることも予想される。そこで赤羽氏らはMIERUCAのレポート機能を使い、記事ごとに設定したターゲットワードがGoogle検索にて50位以内にランクインした率を算定し、経営陣に毎月報告した。
ユーザーの検索意図に沿った記事であれば、早い段階で検索50位以内に入る確率は高い。PVやUUが上がらない中でも、数字的にきちんと進捗しているんだとアピールすることは、社内モチベーション維持のためにも重要(赤羽氏)
大森氏は「集客効果の観点からは、やはり検索で10位以内に入る記事が欲しいところではある。ただ時間がかかるので、コンテンツの方向性が正しいかどうかは50位以内にランクインするかどうかで十分判断できる」と補足した。
ポイント② 行動シナリオからコンテンツ設計
ノマドジャーナルでは、一か月あたり4~8名程度の外部ライターに記事制作を依頼している。赤羽氏は編集を取り持つ一方、自社ブランドのPRにつながるような記事は自身で執筆する場合もある。
記事作成には、徹底したSEO視点を持ち込んでいる。まずは検索ユーザーの心理を、AIDMAなどの消費者行動でいう「認知前」「認知」「興味」「比較検討」などのプロセスを経るごとに、実際に用いられる検索キーワードがどう変化していくかを考え、ユーザーの行動をシナリオ化しておく。
MIERUCAでは各種のニーズ分析機能を用意しており、検索ボリューム、コンバージョンとの関連性などを加味して重要なテーマ・トピックを抽出できる。これに前述の行動シナリオを掛け合わせれば、制作すべきコンテンツ像が自然と見えてくる。
以下の図は「副業 サラリーマン」で検索するユーザーの意図をMIERUCAで分析した結果だ。「副業 サラリーマン」で検索する際に表示されるサジェストキーワードを分析し、ユーザーの知りたい事柄の近似性を円の距離で表現している。
赤羽氏は実際にこの分析結果から、網羅すべき重要トピックを洗い出し、「サラリーマンでも簡単にできる副業を知りたい」「具体的な副業事例が知りたい」「確定申告の手続きについて知りたい」など、少なくとも6つの記事を作成する必要があると考えた。結果、サイトのPVの大半を稼ぎ出す人気記事「副業のおすすめ25選~サラリーマン向けから在宅ワーカー向けまで~」が生まれるに至った。
この記事は「副業 サラリーマン」などで検索順位は1ページ目に入り(2018年8月当時)、月間ページセッション数は平均8万まで飛躍的に伸びた。ライターへの記事発注にあたっても、ユーザーの検索意図を徹底的に意識させるため、専用の記事構成シートも作成しているという。
ポイント③ CVR改善は後でいい
ノマドジャーナルでは、こうして人気記事が生まれるようになってから、初めてUI改善・UX向上に関する施策に着手した。その真意は「選択と集中」。予算やリソースなどに限界がある以上、まずは記事制作に集中してアクセスを集め、PVが上昇する局面でUI・UX関連の施策をしてもしても遅くはないと赤羽氏は考えたのだ。
実施したコンバージョン改善アクションの一例が、「記事末尾にサービスサイトへの導線を盛り込む」というものだ。その他にもいくつかの施策の積み重ねによって、結果的にコンバージョンレート(CVR)は5倍に増加したという。
少なくともノマドジャーナルのサイトリニューアルでは「コンテンツ拡充」と「UI改善」を同時並行的に追求せずとも成果を挙げられることを実証した。
オウンドメディアに重要なのは「初期設計」
赤羽氏は「SEOは年々難しくなっていて、テーマに対する“深い理解”がそもそもメディア運営者には必要になっている。記事も1つ1つコダワッて作っていかなければ、最初は(検索順位が)良くても3か月後に順位が下がってしまうといった事がありがちだ」と述べ、オウンドメディア運営の難しさにも言及した。
その中でも、赤羽氏がメディア運営上、特に重要と指摘するのが「初期設計」である。
サイトの導線やUI、デザインなどの話ではなく、どんなユーザーに向けて、どんなコンテンツを作っていくべきか考えることに時間を割くべきではないか。長期的な視点で成果を出せるような設計がいる(赤羽氏)
赤羽氏の話を受け、大森氏は「オウンドメディア運営において、サイトデザインや導線設計など見た目の改修でアクセスアップを狙う話はよく聞くが、そこは本質ではないし、実際にアクセスにも繋がりにくい。大前提として“ユーザー目線のコンテンツ設計”こそが重要ということを再認識した」とコメント。今後もMIERUCAの提供を通じてカスタマーサクセスを後押ししていきたいとアピールし、セッションを締めくくった。
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