【レポート】デジタルマーケターズサミット2018 Summer

富士フイルム、Googleアナリティクス360でCVR最大21.4倍! メール・リアルDMに非接触者をターゲティング

施策を成功させる体制作りについて、マーケター・エージェンシー・リセラーの立場から考察

富士フイルムは、写真年賀状のキャンペーンに「Googleアナリティクス360」を活用。CVR最大21.4倍という大きな成果を出したという。写真フィルムも年賀状も市場が縮小しているなか、リピーターの獲得に注力し成功した事例を紹介する。

「デジタルマーケターズサミット 2018 Summer」では、アユダンテの山浦直宏氏がモデレーターを務め、パネリストに富士フイルムの角田旬氏、インハウスエージェンシーである富士フイルムビジネスエキスパートの佐藤裕介氏を招き、データ統合の課題や施策を成功させる体制作りについてディスカッションが行われた。

(左から)富士フイルム e戦略推進室の角田旬氏、アユダンテ チーフエグゼクティブコンサルタント 山浦直宏氏、富士フイルムビジネスエキスパートの佐藤裕介氏

せっかくのデータも“サイロ化”されていたら宝の持ち腐れ

写真フィルムの市場は、2000年をピークに年率10%で縮小しており、非常に厳しい状況にある。市場自体がなくなる可能性があるなか、富士フイルムはイメージングソリューションの技術をドキュメントソリューションやヘルスケア&マテリアルズソリューションに拡大してきた。

今回パネルディスカッションでテーマになったのは、同社のイメージングソリューション「フジカラーの写真年賀状サービス」の事例だ。毎年、有名タレントを起用したプロモーションを展開しており、目にした人も多いだろう。

「フジカラーの写真年賀状サービス」(http://www.postcard.jp/nenga/

登壇した三人の立場は、三者三様だ。

  • 広告主の立場である、マーケターの富士フイルム角田氏
  • キャンペーンを実際に回した、広告代理店(インハウスエージェンシー)の佐藤氏
  • Googleアナリティクス360を基盤にしたデータプラットフォームの構築およびデータ活用支援の山浦氏

リピーター施策はメルマガ中心

年賀ハガキの発行枚数は、2003年に44億5936万枚とピークを迎え、2017年には29億6527万枚まで減少するなど、写真フィルム同様に市場が縮小している。

富士フイルムでは、市場開拓に加えて、リピーター施策にも取り組んでいる。リピーター施策の中心はメールだという角田氏は、「メールマガジンで、パーミッションをもらって配信できる人、さらにメールを開いてくれる人となると、アプローチできるお客様は限られてくる」という悩みがあると話す。

一方、Googleアナリティクスのリセールとコンサルティングを行っている山浦氏は、富士フイルムの担当になったとき、「このままではもったいないと思った」という。

富士フイルムでもデジタルへの取り組みは進んでいた。広告配信に関するデータも、Webサイトの行動データも、顧客情報データもきちんと収集されていた。にもかかわらず、情報が共有されず分断されている“サイロ化”の状態だった。それぞれの部署では有効活用されてはいるが、「つないでいけばもっといいことがある」と山浦氏は思ったという。

そこで山浦氏は、まずエージェンシーである富士フイルムビジネスエキスパートの佐藤氏に、「Googleアナリティクス360を活用したプラットフォーム構築」の提案を行った。

Googleアナリティクス360を活用したプラットフォームの構築

Googleアナリティクス360を活用したプラットフォーム構築

富士フイルムでは、有料版のGoogleアナリティクス360をすでに使っていた。Googleアナリティクスのコアはアクセス解析ツールだが、プラットフォーム機能が強化されており、外部データのインポートや広告ターゲティングへの利用も簡単にできる。それを利用してプラットフォーム構築を行うというのが狙いだった。

インハウスエージェンシーとして、Googleアナリティクス360を活用したプラットフォーム構築により、CRM領域への広告活用など、施策の幅を広げることができるという知識はあった。ただ実行するとなると、ハードルがあってなかなか踏み出せない状況だった。それをタイミングよく提案してもらったので、一緒に広告主である富士フイルムに提案していこうという流れになった(佐藤氏)。

しかし、マーケティング主体である富士フイルムへの提案は、仕組みの説明では不十分だ。ツールのサポートベンダーの用語も通用しない。「データを使うことで、どのようなマーケティング課題が解決するのか。シナリオにして提案したほうがいい」(山浦氏)と考え、山浦氏と佐藤氏は提案をブラッシュアップした。最終的にできあがったのが、「FUJIFILM DMP構想」だ。

既存データを活用する「FUJIFILM DMP構想」の提案

課題:メールやDMでも接触できていない顧客をどう掘り起こすか

最大の課題は、「メール中心のCRMコミュニケーションで、カバーできない既存顧客を取り込みたい」ということだった。

富士フイルムは、メールで接触できなかった顧客に対して、郵便によるDMのアプローチを行っていた。これ自体は大きな成功を収めているが、メールでも郵便でも接触できていない顧客もいると考えられる。Googleアナリティクス360のプラットフォームを使えば、そういう人たちにもリテンションできるというシナリオを作り、メール/リアルのDM/広告での多面的なアプローチを提案した。

ここから一年以上の検討の末、キャンペーンが始まったという。仕組みとしては、図のような構成だ。Googleアナリティクスで会員IDを蓄積していたことが、大きなポイントになった。

マッチングさせたデータをもとに、広告配信を実施

富士フイルムにあるCRMデータを角田氏がLTV(ライフタイムバリュー)分析し、会員IDをキーにして、過去2年間の購買実績による顧客ランクのデータを、Googleアナリティクス360と連携させた(インポート機能は無料版のGoogleアナリティクスにもあるので、ここまでの流れは無料版でも可能)。

富士フイルムでは、GoogleアナリティクスのデータやCRMのデータを、Googleのクラウド型分析基盤「BigQuery」に出している(この部分が有料版の機能)。分析結果からリマーケティングのリストを作り、キャンペーンシナリオに連動させた。

このキャンペーンの結果、CVRが最大約21.4倍という驚くべき数字が出た。佐藤氏は、「リマーケティングすれば全部に当てるより反応が高いとわかっていたが、ID連携とアドワーズのターゲティング精度の高さを痛感した」「キャンペーンを回して、1週間目くらいから大きな差が出た」とコメントをしている。いくつものキャンペーンを見てきた山浦氏も「5倍くらいは行くと思ったが、ここまでとは想定外」だったという。

成功のポイント:「胸襟を開いて手の内を見せる」こと

大きな成果を出したすばらしい取り組みにも、それぞれの立場で苦労があった。

広告主の角田氏「分析と発想の転換、周囲への説明」が大変

広告主の角田氏の立場では、「分析そのもの」と「発想の転換」の2つに苦労した。LTV分析を行ったが、「分析に長けているとか好きというわけではないので、やるぞと一歩を踏み出す決心の苦労はあった」という。

また、「“広告は新規顧客獲得に使うもの”というイメージを持っていたため、リピーターにWeb広告を使うという発想がなかった」とも苦労を述べた。これまでやってこなかったことなので、周囲に説明するのも難しかったという。

エージェンシーの佐藤氏「PDCAを回しながら広告の予算配分」することはチャレンジ

エージェンシーの立場である佐藤氏は、広告予算の配分に苦労したという。「年賀状のプロモーションは、GoogleやFacebookなど全部込みで予算が付いていて、シミュレーションしながら配分していく」。

「CRMの取り組みをいくらから始めればいいか、最初は頭を悩ませた」と佐藤氏は言う。これは、「少額から始めて結果がよければ他の予算をまわすという体制で、PDCAを回しながらやる」ことで解決した。新しいことへのチャレンジなので、テクニカルな部分でも苦労があったという。

リセラーの山浦氏「関係者を巻き込む」ことが成功のポイント

リセラーの立場である山浦氏は、「苦労と言ってはいけないが」と前置きして、まずエージェンシーに提案に行き、そこから広告主である富士フイルムに一緒に提案に行くまでサポートしたことを、力を注いだ点として挙げた。一般的に、サポート対象範囲は契約で決められていて、そこまで突っ込んだ対応は難しいケースもある。しかし、一緒になって動いたことが、今回の事例では成功ポイントであったようだ。

イベントの模様

広告主/エージェンシー/データ基盤の提供者の関係性を見直してみよう

今回の紹介事例は「広告主/エージェンシー/データ基盤の提供者」の3つが一体となって、データ活用を進めて成果が出た事例だ。こうした体制をどの企業でも取れるとは限らないだろう。

エージェンシーは、CPAなどのパフォーマンスにこだわりがちだが、ビジネス課題の解決に寄与しているかという視点を持つべきだと思う。オーナーシップを持つことが必要。そのためには、広告主との関係性が重要。みんなで1つのゴールに向かっていこうとする感覚が広告主にあると、僕らもがぜんやる気が出ます(佐藤氏)。

具体的には、広告主がどのようなデータを持っているのか、何がわかるのかといった踏み込んだ情報を共有してもらえれば、エージェンシーとしても提案の幅が広がるということだ。佐藤氏はこれを、「データの解放」と表現した。

富士フイルムビジネスエキスパートの佐藤裕介氏

データ基盤の支援という立場では、テクニカルサポートだけでなく施策に踏み込んでいく必要があり、そのときに、広告主だけでなくエージェンシーとも密接な関係を持ちたい。しかし、エージェンシーのほうはあまり入ってこないことが多いです。今回の成功は、富士フイルムビジネスエキスパートが、前のめりに進めてくれたことが大きかった(山浦氏)。

データ基盤側からは、エージェンシーがデータを解放してくれることを望んでいるようだ。

アユダンテ チーフエグゼクティブコンサルタント 山浦直宏氏

角田氏は、広告主の立場から「今回は成功した事例を紹介しているが、毎回このようにきれいなコミュニケーションができているわけではない」と釘を刺す。「いかにオーナーシップを持ってもらうか」「丸投げしないこと」がポイントだと述べた。

とはいえ、全員がすべてを理解するのは、スピードが失われるだろう。富士フイルムのe戦略推進室では、さまざまなパートナーシップを作るときに、以下の3つを柱として推進しているという。

  • Speed:スピード感を持つ
  • Knowledge:情報感度を高く持って、知識を付けていく
  • Technology:何ができるのか明確にする

そのうえで角田氏は、「データ統合にあたってオーナーシップを持ち合う組織作りには、丸投げせず、かつ円滑に進ませるためにも、お互いがどのようなデータを持っていてどのようなことができるかを、包み隠さずに言う勇気が必要」だと結論を述べた。

富士フイルム e戦略推進室の角田旬氏
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