【レポート】デジタルマーケターズサミット2018 Summer

シニアの認知率は驚異の70%超! 温泉旅館予約サービス「ゆこゆこ」が描くデジタル成長戦略

旅行予約サイト顧客満足度ランキング6位の温泉旅館予約サービスの「ゆこゆこ」が打ち出す3つのマーケティング方針と、成果を最大化する外部パートナー選定のコツとは
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全世代平均のサービス認知率はおよそ30%程度だが、60歳以上になると70~80%にまで上がるカタログ通販型の温泉旅館予約サービス「ゆこゆこ」。旅行予約サイト顧客満足度ランキング(2017年度・2018年度/オリコン・国内旅行部門)においても6位を獲得するサービスだ。EC全盛の時代を「ゆこゆこ」は社内、外部ベンダーをどのように巻き込み向き合っているのか。「ゆこゆこ」が描くデジタライゼーションとは。

近藤嘉恒氏小寺規晶氏
ブレインパッド マーケティングプラットフォーム本部 本部長 近藤嘉恒氏(左)と、ゆこゆこホールディングス 経営戦略室室長・マーケティング部 部長 小寺規晶氏(右)

「デジタルマーケターズサミット 2018 Summer」に登壇したゆこゆこホールディングスの小寺規晶氏は、“ゆこゆこ”独自のデジタルマーケティング戦略について解説した。聞き手は、DMPサービス「Rtoaster」で知られるブレインパッドの近藤嘉恒氏だ。

「“温泉” に特化した事業にシフトチェンジ」し次を目指すデジタル新戦略

ゆこゆこホールディングスは、温泉旅館・ホテル予約サイト「ゆこゆこネット」と、お宿情報誌「ゆこゆこ」を展開している。全国約2,500件の旅館・ホテルを掲載し、700万人もの会員を持ち年間259万人のお客様を温泉旅行にご案内している。温泉旅館・ホテルに特化した宿泊予約サービスで知られる企業グループだ。

サービスの源流は2000年にスタートした新聞掲載用の旅館広告で、その後、カタログ・電話を用いた「カタログ通販型」の予約取次へと発展、近年はデジタル系のチャネルも拡大中だ。2006年にいったんリクルートの傘下に入ったが、2016年に再独立し、第2創業期へ。小寺氏も2016年のタイミングで、外資系コンサルティング会社からゆこゆこに参画した。

ゆこゆこの事業内容

ゆこゆこは、約700万人の会員に対し、シニア層の占める割合が大きいのが特徴だ。また、カタログ・電話による予約受付体制をしっかり構築しており、コンタクトセンターにかかってくる電話は1日あたり5000件に達するという。

(全世代平均の)サービス認知率はおよそ30%程度だが、これが60歳以上になると70~80%にまで上がる。その意味では「ターゲティングが非常に研ぎ澄まされていたサービス」だと言える(小寺氏)

ゆこゆこにおけるカタログ通販の重要性は確固たるものだが、とはいえ、どんなビジネスモデルも次の成長モデルを重ねていかなければならないのが常。2016年の再独立以降、デジタルシフトを核とした新戦略を打ち出すなど、「第2創業期」として新たな成長を目指している。

そして、ゆこゆこネットは思い切ったシフトチェンジを進めている。もともとのシニア向け旅行事業という位置付けを、敢えて“温泉”に特化した事業と再定義することで、ゆこゆこにしか提供できない価値=ゆこゆこ“らしさ” の創造を目指している。

気軽な旅だけど相談したい──“らしさ”のポジショニングで差別化

ゆこゆこは、オリコン調べによる旅行予約サイト顧客満足度ランキング(2017年度・2018年度/国内旅行部門)において6位を獲得した。一休.com(2位)、じゃらん(4位)、JTB(8位)、楽天トラベル(10位)などの大手サイトも名を連ねる中で、今や知る人ぞ知る温泉旅館予約サイトとして、業界内で注目を浴びる存在となっている。TBS系テレビ番組「がっちりマンデー!!」では、「ランクインしてるけど知らない会社」特集で取り上げられた。

旅行予約サービスの分野は参入企業が多く、競争は激しい。その中で地位を確立し、成長していくために小寺氏が挙げるのはズバリゆこゆこネットにしか提供できない価値=ゆこゆこ ”らしさ” を創造する「ポジション」である。

「気軽な旅か勝負の旅か」「自分で選ぶか相談して決めるか」――この2軸で旅行予約サービス業界を分析した結果、ゆこゆこが目指すのは「気軽な旅だけど、相談したい」というニーズを秘めたお客様の取り込みだった。

ゆこゆこの業界内ポジションのイメージ

リアル店舗を構えた大手旅行代理店であれば、窓口でじっくり相談しながら旅程を決められる。一方、ネット専業の予約サイトであれば、相談の手間なくコスト重視で旅行先を決められる。そのどちらでも満たせない、「気軽な旅だけど、相談したい」というユニークなポジションこそが、ゆこゆこの目指す道、ゆこゆこネットにしか提供できない価値だという。

そうした差別化を改革につなげる流れとして、ゆこゆこでは、専門性を強みに、より温泉にフォーカスしたビジネス展開をはじめている。例えば、全社員が「温泉ソムリエ」認定を目指す社内を巻き込んだプロジェクトだ。

一見すると、知識向上以外に業務と関連はなさそうだが、社員の意識改革を狙った取り組みだったという。現在は約200人の社員のうち、112人が資格保有者。「日本で最も温泉ソムリエが多い会社」となった。

差別化のため、「温泉×旅」により特化

ゆこゆこの打ち出す3つのマーケティング方針

一方で小寺氏が苦心するのは「過去の成功体験」による足かせだ。ゆこゆこはすでに18年の歴史を重ねており、社員から「以前はこうだった」「過去の実績では……」という感覚が噴出してしまうこともある。

会社をよくしたいという思いは、皆が持っていると信じている。ただ、時代が急速に変わっていく中で、これまでの「正しい」は大きく変化している。感覚に基づいた意思決定から、データに基づいた意思決定へとバランスの比重を移していかなければならない(小寺氏)

では、時代の変化、環境の変化に対応していくマーケティングの在り方をどう考えているのか。ゆこゆこでは大きく3つのマーケティング方針を打ち出している。それが下記の3つだ。

  1. タビマエからタビアト 生活のOnePiece化
  2. デジタルとリアルの融合
  3. 顧客の“価値”の可視化と創造

その① タビマエからタビアト 生活のOnePiece化

旅行は「宿の予約」だけでは完結しない。「旅行したい」と思わせるだけの情報であったり、煩雑になりがちな旅行計画を簡単にとりまとめるためのテクノロジーなども必要だ。これが「タビマエ(旅の前)」である。

そして、旅行後の思い出を記録したり、SNSでシェアしたりするのが「タビアト(旅の後)」だ。タビマエとタビアト両方を含めて、IT技術が貢献できる領域は多い。

その上で小寺氏は「予約手続きだけをみて、お客様をすべて理解することは不可能だ。タビマエ・タビアトを含めて、お客様との接点を広げ一気通貫で行動をデータ化し、それを活用していく事がマーケティング的には重要」だと強調。

このようなデータ活用を通じて、「温泉ならゆこゆこで予約しよう!」 という世界が作れると考えている。そして、ゆこゆこでの温泉体験がお客様の生活の一部として自然と馴染むこと(生活のOnePiece化)を目指している。

予約の前後、「タビマエ」「タビアト」も重要視

その② デジタルとリアルの融合

ゆこゆこはカタログ通販を主力とする時代が長かったため「まずはとにかくデジタルマーケティングを導入しよう」という点から改革を始めた。今後、Cookieやサードパーティのデータによる顧客行動分析も本格化させたいと小寺氏は話す。その先には「1人の顧客をリアルでもデジタルでも理解する」という将来像を描いている。

技術の進化で顧客理解は深まっているが、現状はまだ、デジタルはデジタル、リアルはリアルで完結してしまっている。顧客IDが統合されているかというレベルではなく、1人の顧客を本当の意味でリアルからもデジタルからも分析し、よりシームレスな対話ができるようにしたい(小寺氏)

マーケティングをリアルとデジタルの両面で

その③ 顧客の“価値”の可視化と創造

ゆこゆこが顧客へアプローチするチャネルは、2か月に1回送付される会員誌以外にも、アプリ、ソーシャル、メルマガ、リスティング広告など種々ある。この中では、「メルマガの開封率はどうか」「広告のクリック率はどうか」といった形で、“チャネル別”にKPIの最適化を目指すのが通常だ。

「顧客理解がさらに深化し、顧客1人1人異なる“価値”を可視化できれば、状況も変わる」と小寺氏は言及する。「Aさんにはカタログとメルマガ」「Bさんにはカタログを送らず、アプリとソーシャルだけ」というように、チャネルを意識することなく、顧客本位を貫きながらそれでいてなお売上最大化を目指す世界が実現できることになる。

顧客の“価値”のために施策を使い分ける

あくまで目的の実現のためにマーケティングツールを導入

ゆこゆこは、マーケティング戦略を根本的に改革していく中で、組織変更にも大胆に取り組んでいる。ブレインパッドの近藤氏は、外部取引先の観点からゆこゆこを見ていて、その変更スピードの速さに舌を巻いたという。

経営の意思決定のスピードが本当に速い。組織の課題をとにかく解決するという目的が、ハッキリしているからこそなのだろう。計画から遂行まで最初にじっくり考えるより、走りながら考える体制に見える(近藤氏)

小寺氏が組織と並んで重要だと指摘するのが「マーケティングインフラ」だ。MA、BI、データウェアハウスなどの技術を人力で代替することは物理的・速度的に無理な以上、マーケティングツールの役割は大きい。ただし、闇雲にツールだけを導入してもダメ。あくまで目的があって、その実現のために必要なツールを導入すべきだと小寺氏は述べる。

目的をハッキリさせた上で、マーケティングツールを選ぶ

ゆこゆこでは、顧客の価値の可視化とゆこゆこらしさを実現する為に豊富なチャネル連携で顧客一人ひとりに最適なプランを提供し、スピーディーに実行できる事を目的とした時、ブレインパッドの提供するDMPの「Rtoaster」(アールトースター)を「マーケティングインフラ」の主軸として導入する事に至った。

これによってサイト内のレコメンド機能が高度化し、コンバージョンレートが2.85倍に伸長。またレコメンドにあたっては、「ユーザー軸」「温泉軸」の2軸で機械学習を行い、結果に反映させている。近藤氏によれば、2軸型でのレコメンドは非常に珍しく、ゆこゆこの要望に応える形でブレインパッドが開発したという。

DMPの導入効果

ゆこゆこでの具体的なパーソナライズ施策やレコメンドエンジン搭載のプライベートDMP「Rtoaster」の活用方法はブレインパッドのWebサイトから見られる。

また、宿泊予約者向けメールマガジン「ホスピタリティ・プログラム」は、MAによって実現したサービスだ。予約完了の翌日には宿の情報、2日後には宿周辺の観光情報、そして出発前日には現地の天気予報という具合に、スケジュールに沿って情報を配信する。

温泉コンシェルジュなら、きっとこういうことをしてくれるよね、という内容をMAで行える(小寺氏)

こうしたホスピタリティ・プログラムの開始によって、メールの開封率は81.8%まで増加した。また、お誕生日メールもMAを活用して高度化することで、CVRが300%まで伸長した。こうした配信シナリオはデータドリブンで自動作成できる。

MAは、シナリオに基づいた高度なメール出し分けを行うには便利なツールである。しかし近藤氏によれば、単なる一斉メール配信程度にしか使えていない企業も多いという。ゆこゆこの利用例はまさに模範的だと近藤氏は評する。

ゆこゆこのMA施策

小寺氏は、今回説明した内容は、構想・計画中のものが少なくないとしつつも、とにかくスピード感をもって対応にあたっている事を強調した。

パートナー選びは「自分たちのビジネスに寄り添い、伴走してくれるかどうか」 そして 「柔軟性とスピード感」

講演の最後に、小寺氏は社外のパートナーに対して求めることについて、「自分たちのサービスへのこだわりを理解して、一緒に成長していけるようなパートナーであることが重要で、ブレインパッドさんはまさに自分たちが求めるパートナーだった」とした。一緒に併走しながら、自分たちのこだわりにとことん付き合ってくれるというところもよかったという。

最近は旅行業へ参入する企業も多い。そんな中で、何より自分たちはスピードを維持できなければ、中堅企業である以上すぐに失速してしまう。それをしっかり汲んで、どんどん改善していける、そしてゆこゆこのスタッフを巻き込み、もしくは自分たち以上に自分たちのことを好きになってやってくれる。それだけのスピード感に応えてくれるのがブレインパッドであり、Rtoasterの意義だと思う。今後もブレインパッド協力の下でマーケティング施策を拡充したい(小寺氏)

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