【レポート】Web担当者Forumミーティング 2018 Autumn

10ヵ月で自然検索流入が約10倍。BtoB向けオウンドメディア「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」SEO担当者が語るコンテンツの勘所

検索流入を増やしたい場合、SEOは欠かせない。「ターゲットキーワードがない」「異なる検索意図に埋もれる」などの課題をどう解決したか
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オウンドメディアは、企業と未知なる顧客を繋ぐ施策として重要性を増している。しかし、いざ運営するとなると課題は山積みだ。PVが伸びない、もっと記事を効率的に作成するにはどうしたらいいのか――。

安定的な流入を獲得する場合、検索ユーザーを意識したSEOは欠かせない。「Web担当者Forumミーティング 2018秋」では、パーソルキャリア株式会社で人事・採用担当者向けメディアのSEOを担当する塚本氏が、「効果8倍!? 『顧客はこう呼び込む!』パーソルキャリア事例にみるB2Bマーケティング成功の勘所」と題して講演を行った。聞き手はFaber Company(ファベルカンパニー)の大森和博氏だ。

塚本裕美氏大森和博氏
パーソルキャリア株式会社 転職メディア事業部 営業本部 営業企画統括部 営業企画部 BtoBマーケティンググループの塚本裕美氏(左)と、Faber Company カスタマーサクセスチーム エヴァンジェリストの大森和博氏(右)

人事・採用担当者向けのオウンドメディアの位置づけ

パーソルキャリアは、転職サービス「doda(デューダ)」、アルバイト求人情報サービス「an(アン)」などの求人情報関連メディア運営のほか、人材紹介、教育研修などを幅広く手がける企業だ。

転職を検討している個人はもちろん、企業の人事・採用担当者もまた、パーソルキャリアにとって直接の顧客。B2C、B2Bどちらの面でもノウハウを長年蓄積してきた。

塚本氏がSEOを担当する「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」は、経営者や人事・採用担当者向けのB2B型のオウンドメディアである。ただ、サイトオープン直後の主要な集客手段は、ソーシャルかキュレーションメディアからの流入のみだった。そこで安定的な流入を確保するために、検索流入の増加を目指して乗り出したのが、SEOだ。これが半年前(2017年12月頃)のことだった。

人材サービス市場は完全にレッドオーシャンで市場競争が激しい。同様のオウンドメディアも多数ある。そこで「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」では「(読者の企業が)自社採用力を高めるためのノウハウ提供」をコンセプトに掲げて、自社採用力を強化するためのメディアとして立ち上がった。

企業の人事・採用担当者向けメディア「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」

SEOをするといっても、なにからやればよい?

とはいえ、SEOをはじめてすぐの塚本氏は、すぐに“壁”に直面した。それが下記の2つだ。

  1. ターゲットキーワードがない
  2. 異なる検索意図に埋もれる

直面した壁① ターゲットキーワードがない

ターゲットキーワードがない」というのは、どう選んだらよいかが分からないことと同義。どんなキーワードが検索された際に、「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」が上位表示されるべきなのか?その目標設定ができなかったのだ。

当時を振り返ると、「人材紹介」「求人広告」……この他に何かあったっけ?というような状態(塚本氏)

そこで塚本氏らは「Google トレンド」などを使って、検索傾向を分析。もともと流入の多かった「試用期間 解雇」のキーワードについて調べたところ、特定の時期になると検索数が増えていることが分かった。

一般に、人の採用が動くのは4月や10月で、そこから1~3カ月程度は試用期間。その試用期間が終わるタイミングで人事・採用担当者が「試用期間 解雇」と検索し、「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」に辿り着くという仮説が立てられた。

恐らく人事・採用担当者は○○月になったら必ずコレをやるという周期がある。その「年間トレンド」をおさえれば、読まれるコンテンツが作れることに気付いた(塚本氏)

この気づきの結果、人事・採用担当者の年間スケジュールなどを調べ、制作と公開のタイミングをそこに合わせるなどの対応を行うようになった。

また、人事・採用担当者は法律にも大きく左右される。例えば「2018年問題」は、派遣労働を巡る法改正にともなって懸念される事態で、実際にキーワードとして検索される機会も増えた。法改正などの人事関連のニュースに合わせて新規コンテンツを作成したり、既存コンテンツを修正したりといった施策も実施していった。

直面した壁② 異なる検索意図に埋もれる

こうしてターゲットキーワードを絞り込んだとしても、「どんな意図で検索されたか」にも注意を払わねばならない。

例えば「面接官」「求人票」「人事 資格」といったキーワードで検索するユーザーは、果たして人事・採用担当者なのだろうか。それとも転職希望者なのだろうか。「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」は人事・採用担当者向けのオウンドメディアなのだから、訪れてほしいユーザーは前者である。

この異なる検索意図が混在するキーワードのユーザーを推定するため、塚本氏はルールを決めた。「検索上位10サイトのうち、5サイト以上が人事・採用担当者向けであればターゲットキーワードに採用」というものだ。

このルールでは「面接官」は上位10サイト中、採用担当者向けのコンテンツが6つあったのでターゲットキーワードに採用。一方で「面接」は条件に当てはまらず、不採用にした。

「面接官」の検索上位10サイトのうち、6つが採用担当者向け、4つが面接を受ける人向けだった。よってターゲットキーワードに採用

MIERUCAで実践した3つのポイント

「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」ではこれらの施策に加え、2017年12月に、Faber Companyが提供しているSEOプラットフォーム「MIERUCA(ミエルカ)」を導入。そこから約10カ月でオーガニック検索での流入が約10倍に達した

約10カ月でオーガニック検索流入が約10倍になった

どのようにMIERUCAを活用して成果につなげたのか、ポイントは3つだ。

  1. ユーザーの気持ちをデータで把握
  2. ユーザーの気持ちに“応える”コンテンツ
  3. 社内プレゼンスを高める

ポイント① ユーザーの気持ちをデータで把握

「働き方改革」というキーワードは、人によって受け取る意味が違う。「働き方改革」によって生活スタイルが柔軟になると考えるポジティブ派がいる一方、守るべき社会規範がまた1つ増えると考えるネガティブ派もいる。

ある特定の検索キーワードを人々がどう捉えているか、それを判断するための“客観的データ”になりえるのが、「サジェストキーワード」だ。Google検索の際に表示される、入力キーワードとセットで検索されるキーワード群のこと。「働き方改革」であれば続けて「まとめ」「概要」「簡単に」などがサジェストされるが、このサジェストキーワードこそが「ユーザーの知りたいこと」だと大森氏は説明する。

検索のサジェストキーワードは、ユーザーが知りたいことを把握するための良い材料

MIERUCAは、サジェストキーワードの関係性をネットワーク図として可視化し分析する機能を備えている。その分析の結果、「働き方改革」に対してネガティブな検索キーワードが多いにも関わらず、Webにはポジティブな側面を伝えるコンテンツが多いという、ニーズのミスマッチが発生していたことを突き止めた。つまり、「働き方改革」をネガティブなイメージで捉えているユーザーに向けたコンテンツを作れば、ユーザーに評価されるのではないかという仮説が成り立つ訳だ。

ポイント② ユーザーの気持ちに“応える”コンテンツ

続いて、ターゲットキーワードでの検索上位サイトを分析する。検索順位でより上位を目指すためには、競合コンテンツよりも良いコンテンツを作るしかない。当然、競合分析が重要となってくる。

コンテンツを作るときは必ず検索上位サイトを見る。そこでは、ユーザーの声に応える内容が入っているか、読者の知識レベルをどの程度と想定して書かれているか、理解を助けるための図版などをどれくらい使っているかなどをチェックする(塚本氏)

「働き方改革」でユーザーに評価されているサイトをMIERUCAで分析すると、法規に関する言及が多い事も分かった。これもまた「ユーザーが知りたいこと」であり、コンテンツ化にあたっての参考となる情報である。

気持ちに“応える”ための構成

その上で塚本氏は「dodaらしさ」を加えることにもこだわる。

他のサイトと同じことをやってもユーザーにとって意味がない。「doda」ならではのオリジナリティを出す工夫をしている。「doda」でしか出せない情報、例えば「doda」独自の採用ノウハウなども盛り込んでいる(塚本氏)

これらの取り組みが奏功し、「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」の記事は「人事 資格」の検索時に第3位表示されるようになった。同様に「働き方改革 いつから」で3位、「人材紹介 手数料」では第1位を達成している。

SEOの成果が現れつつある(※2018年11月時点の順位)

ポイント③ 社内プレゼンスを高める

SEOは地道な作業であり、数カ月は検索流入が向上しない可能性もある。この事実を社内で共有しておくことは重要だという。

当然だが、社内にはSEOについて分からない人も多い。最初のうちは、わずかな順位変動についてもレポートやイントラ公開などを通じ、社内でこまめに報告していた(塚本氏)

また、担当者が複数いると、「誰が」「いつ」「どのような施策を」行ったかが共有されず、細かな修正を繰り返していると実施したことを忘れてしまうこともある。そこで塚本氏は「Google Analytics」のメモ欄に施策を直接書き込んでおくことにした。こうすると後々の施策レポート作成時も振り返りが楽になる。また、レポートは他の部署や営業など他職種の人間でも分かりやすい内容になるよう心がけた。

社内の関係者にSEOの有効性と成果を伝えていくことが重要

コンテンツは資産、コンテンツ制作は投資

大森氏は「(オウンドメディア用に作った)コンテンツは、メルマガやCRMなどに流用・二次活用ができる。つまり、コンテンツは資産であり、コンテンツ制作は投資だということ。ぜひ徹底的に使い倒すべき」とアドバイスした。

「ダイレクト・ソーシング ジャーナル」はSEOによって検索流入が安定化してきており、今後はより積極的なコンバージョンの獲得も目指す。今後はさらなる流入を拡大するとともに、MAやヒートマップなどもいれて活用しコンバージョンを拡大していこう、とチームで話していますと塚本氏は言う。

SEOについて、当初はとにかくテクニカルなものだと想像していた。しかし実際にやってみると、検索するユーザーのニーズを捉え、知りたい気持ちに応えるのが本質だと気付いた。大森さんが「資産だ」とおっしゃるのはまさにそう。とっつきにくいと思われがちなSEOだが、是非一度やってみてほしい(塚本氏)

オウンドメディア向けに作った記事は「資産」として多面展開できる

大森氏は最後に、MIERUCAが機能面での拡充を追求する一方、ユーザー会などによるマーケター同士のつながり作りにも力を入れているとアピール。導入企業が1200社を超えてなお、顧客の成功を支援していきたいと述べ、講演を締めくくった。

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