【レポート】Web担当者Forumミーティング 2018 Autumn

オウンドメディアの成長に不可欠な「コントローラブルな体制」構築のための2つのポイント

コンテンツマーケティングの成果改善(グロースハック)に必要なアクションとは
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オウンドメディア運営において、「品質」と「成果」は大きな課題だ。コンテンツの品質を保ち、成果改善を行うために、制作・運用パートナーの選定や、インハウス編集部の立ち上げに苦労する担当者は多い。

Web担当者Forumミーティング 2018 秋」に登壇したストロボの下山氏は、「コントローラブルな体制づくりがオウンドメディア成長のカギを握る」と語り、コンテンツマーケティングの成果改善(グロースハック)に必要なアクションについて紹介した。

「メディア規模が大きくなるほど、品質が下がる」のジレンマ

下山哲平氏
ストロボ 代表取締役社長 下山哲平氏

更新頻度が1日10本以上あるような一定規模のオウンドメディアを運営する担当者にとって、「コンテンツの品質が上がらず、校正、校閲に時間ばかり取られる」「作ったコンテンツのグロースハックに何をすればよいのか」などの悩みは尽きないはずだ。特に、ライターと直接契約していない担当者はなおさらだろう。

こうした問題の背景には「具体的な解決策や実行部隊を提供してくれるパートナー会社がなかなか現れない」ことがあるのではないかと下山氏は指摘する。

理想的な制作体制は、内部の編集長を頂点に、編集・ディレクション管理を行うディレクターが、各カテゴリーのディレクターを束ねる。そして、カテゴリー別のディレクターは、検品者やライターを束ねていく体制だろう。

編集長からディレクター、検品者やライターが一つのライン上に統制されているのが理想形

しかし、現実には編集長は内部の人間でアサインされるものの、ディレクター以下の組織は外部パートナーからなる場合が多い。

実際は、外部パートナーが実行部隊となることが多い

こうした体制では、“中の人”である編集長の立場からは、外部パートナーの体制、工程がブラックボックスになりやすく、どんな人から、どのようなフィードバックが行われているかが見えにくい。また、依頼しているパートナーの縦のラインも、編集長からは「コントローラブル」であるとはいえない。これが大手のコンテンツ・メディアのよくある課題だと下山氏は指摘する。

体制がコントローラブルではないために、記事に対してフィードバックしているのに、「改善していることが感じられない」といった課題や、パートナーからは漠然とした「リライトしましょう」という提案がくるばかりで、グロースハックのためのPDCAサイクルが実行できていないといった課題につながる

本来は、メディア規模が大きくなると再現性が上がるはずだが、現実にはメディアの規模が大きくなるにつれ、品質が下がるということが起きてしまう(下山氏)

オウンドメディアの制作体制を「コントローラブル」にするには?

では、こうした課題から脱却するために体制を「コントローラブル」にするにはどうしたらよいか? 下山氏は以下の2つのポイントを示した。

  1. 朝令暮改に対応できる布陣にこだわる
  2. 量に比例しない契約形態

その① 朝令暮改に対応できる布陣にこだわる

1つ目が「朝令暮改に対応できる布陣」、つまり「臨機応変に対応できる体制づくり」だ。そもそも、コンテンツの品質を改善するには、下記のようなレギュレーションの改定・更新を常に行っていかなければならない。

  • NGワード、NG表現
  • 検品ツール
  • 参照可能サイトなど、情報源の定義
  • 盛り込んで欲しい訴求内容やフレーズ集

完璧な仕様や、見本原稿、発注依頼内容は最初からは作れない。常に変わっていくべきものであり、毎日変更していけるような体制が重要になる(下山氏)

こうした臨機応変な体制は、品質だけでなく、成果の面でも意味を持つ。成果をスピーディに出すには、執筆テーマの変更や差し込みは日常茶飯事だ。

ホットトピックスが発生すれば、「このテーマの記事を今すぐ作りたい」、あるいは「成果が出たこの施策を横展開したい」というニーズは発生する。しかし、従来の体制では、急を要する状況に対しても「今月分の執筆は、ライターに対してすでに手配済みなので、来月から変更反映させていただきます」となってしまう。

そこで下山氏は、「“ABC”なパートナー」の存在をカギとして挙げる。ABCとは、下記の頭文字を取ったものだ。

  • A:あたりまえのことを
  • B:ばかになって
  • C:(誰にもできないくらい)ちゃんとやる

そこで、パートナー選定の際には、下記のような質問をしてみて欲しいと下山氏は呼びかける。

  • デイリー納品できますか?
  • レギュレーション変更反映のリードタイムはどれくらいですか?

その② 量に比例しない契約形態

2つ目は、ライターとの契約形態だ。量、すなわち文字数をベースにライターと契約すると、新規制作については意欲的に取り組んでもらえるものの、作った記事に対して、後から手入れを行うことに対しては及び腰になりがちだ。

ライターからすると、文字数をベースに制作案件にアサインされると、「速報ネタで、すぐに700文字程度で記事を出したい」「過去にアップした記事に、最新動向を踏まえ、数行追記したい」というように、短時間で負荷が高い作業に対応することは“割に合わない”ことだからだ。

そこで見直して欲しいのが、ライターとの契約を「量」ではなく「人月型」にすることだ。

これにより、ライターの立場からは、1カ月の「業務量」に応じた契約形態となるので、その中でどの作業に従事するかは裁量に任せられることになる。「1カ月の業務量(時間)の中で、急ぎの記事制作に対応することをやり繰りしてほしい」というオーダーにも臨機応変に対応してもらいやすくなるのだ。

こうした人月ベースの準委任型契約は、今のコンテンツマーケティングには少ないが、「成果のためには契約形態にこだわることも一つの方法だ」と下山氏は述べる。

実際にストロボでは、直接雇用した内製ライターによる制作体制を中心に据え、需要増減部分に対して、こうした準委任型の専属契約ライターを採用しており、「今月は前月比で2倍の量のコンテンツを作る」といった需要の増減にも柔軟に対応しているという。

内製体制を持っているがゆえに、文字量ではなく、月の作業量でリソースマネジメントが出来るため、「今すぐこの施策を実施したい」というクライアントの要望に対しても、コストを増やすことなく、すぐ対応できることができるようになった(下山氏)

文字数で縛られた外注ライター中心の体制ではないパートナーを選定したいと思う場合、下記のような質問をしてみるとよい。コントローラブルな体制を持ち、制作現場をしっかりマネジメントできる会社であれば、スムースな回答が返ってくるだろう。

  • この案件で1記事所要時間は?
  • 1人月専任化した場合の月額費用は?
  • 1人月の中での新規時期制作と既存記事修正の割合想定は?
  • 1カ月のタスクスケジュールのイメージを教えて?

注意したいのは、ただ根掘り葉掘り聞くのではなく、自社内でどこの部分を担い、パートナーにどこを担ってもらいたいのかを明らかにするための質問だということだ。大事なことは「パートナーにどのようなアクションと成果を求めるか」であり、そこに答えられる体制とノウハウを持つパートナーであるかを見極めることが本当に重要なことだと下山氏は説明した。

申し送り、スケジュール――「ABCメソッド」の実践例

下山氏は、実際にオウンドメディアの品質改善に取り組んだ際の「ABCメソッド」について、事例をもとにしたノウハウを紹介した。

その① ライター及び校正担当者からの申し送り

ライター及び校正担当者からの申し送りについては、「納品フォーマットをExcelで作り、原稿欄の横に申し送り欄を設けると良い」という。

原稿欄と申し送り欄を一つの納品フォーマット内に用意することがポイント
  • 記事制作の際の参照元
  • どのように参考記事を解釈したか
  • 気になる点
  • 確認してほしい点

これらをライターに記入してもらうことで、ディレクターや編集長とのコミュニケーションが深まり、やり取りの内容が可視化されることで、品質の標準化にもつながっていく。

申し送りはライターとのコミュニケーション(下山氏)

その② スケジュールの組み方

下山氏は「スケジュールの組み方で勝敗の8割が決まる」と言い切る。

通常は、テストで1~2記事を執筆してもらい、そこで内容の品質チェックやメディアコンセプトに合致しているかなどの「すり合わせ」を行い、記事制作のレギュレーションを固め、量産体制に移行していく。

テスト記事の確定から量産体制に移行していくのが一般的だ

しかし、このスケジュールだと、テスト記事に対するチェックバックと、ライターの修正対応、修正稿に対するチェックバックに1週間ほどを要してしまう。その間、ライターはテスト記事への修正対応と、量産に両方取り組まなければならず、テスト記事の「合格」が出ないままに量産体制に移行するため、品質のバラツキが発生しやすく、その後の出し戻しの作業負荷も高くなりやすい。

そこで、テスト記事に対する「下地固め」に集中的に取り組むことを下山氏は推奨する。つまり、最初の1~2記事の執筆の際に、1記事目に対するフィードバックを即日で行い、ライターには1記事目の修正対応と2記事目の執筆を並行して行ってもらうのだ。

1記事目の修正対応と2記事目の新規制作を並行することで、2記事目の精度が“後出しジャンケン”的に高まり、チェックバックの負荷が少なくなるだけでなく、良質な記事制作の再現性を高めることにもつながる(下山氏)

これによって、クライアントからの「合格」が出やすく、すみやかに量産体制に移行していくことができるのだ。

その③ “マクロハッカー”の存在

クライアントへの納品フォーマットを確定するには、「品質の定義」が必要になる。これについても、いわゆる市販の校正ツールを利用するよりは「社内でExcelのマクロを書けるような“マクロハッカー”がいるとよい」と下山氏は述べる。

というのも、クライアントへの納品フォーマットはExcelでやり取りされるケースが多いからだ。記述ルールなどの細かいレギュレーションを決め、それに沿ってチェックを自動化していくには「どうしても市販のツールではチェックのアルゴリズムがブラックボックスになってしまい、自分たちで成果物の品質を定義できない」と下山氏は指摘するのだ。

校正ツールに大規模なシステムは必要なく、Excelのマクロ機能を活用して欲しい(下山氏)

なお、マクロハッカーがいなければクラウドソーシングなどを利用することも一つの選択肢となる。

成果改善にはコントローラブルな体制は必須

続いて、コントローラブルな体制でグロースハックに取り組む際のノウハウは次のとおりだ。

  • 世の中に初めて出た情報に対して、最速を狙う
  • 「リライト」「リッチ化」等の言葉に惑わされない
  • たった一行と関連情報の提示が上昇気流を生む

世の中に初めて出た情報に対して、「発注から〇日後に納品します」ではお話にならない。たとえば、「Core iプロセッサー」について執筆した過去記事に対しては、最新プロセッサーが登場したタイミングで、「Core iシリーズ(i3/i5/i7/i9)の違いを比較! 初代から最新世代まで分かりやすく解説」などのように、ユーザーの検索動向に対応した動線を記事に追加する

他社がやれていないこと、成果に結びつきやすい施策ほど、スピーディーに行う必要があります(下山氏)

また、コンテンツを良くするというと、どうしても「一からリライトしよう」「もっと内容をリッチにしよう」という流れに行ってしまいがちだが、ほんの一行でも最新情報を補うことが重要で、むしろ問われるのは「他社が追随できないスピードでそれを行うこと」だというのだ。

オウンドメディア運営にも“セカンドオピニオン”を

ストロボでは、オウンドメディアのグロースハックのためのサービスとして、「オウンドメディア・セカンドオピニオンサービス」を提供している。これは、大手企業のデジタル事業を数多く手がけてきたストロボの独自ノウハウやオペレーションマネジメント体制を基に、コンテンツ制作・運用における「品質」と「成果」を改善する「セカンドオピニオン」型のサービスだ。

社内研修などを通じて、現状のレギュレーション及び執筆フォーマットの改善や、執筆から編集・校正・校閲などのオペレーションフローの見直しといった、現体制の問題点、改善点を洗い出していく。

実際に、月産1000本以上の大規模メディアにおいて、下記のような成果を上げている。

  • ライターへの差し戻し率が40%改善
  • インハウス編集部門の検品工数が60%削減
  • 低迷した記事の60%が検索上位に
コンテンツ制作・運用における「品質」「成果」を改善できる

オウンドメディアの改善のためには、こうしたサービスを利用することも検討して欲しいと下山氏は呼びかけ、セッションを締めくくった。

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