成果につなげる! コンテンツマーケティング最前線

未経験者4人のチームが「独り立ち」するまでの6か月

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未経験者4人のチームが「独り立ち」するまでの6か月

小川キャリアHUBのスタートから独り立ちまで、どうやってコンテンツ制作をしていったのですか?

柳川最初は当社チームが月2本作り、白砂さんチームに月4本作っていただきました。まずミエルカで重要なテーマ・トピックを抽出し、構成案を作った段階でお互いレビューし合います。当社チームの構成案には、白砂さんチームの方々から「重要なテーマ・トピックが入っていません」「ユーザーの意図からずれています」と、何度も添削していただきました。

白砂でも3か月ほどすると直しがだいぶなくなりました。やはり皆さん広報など文章を書いてこられているので、コツをつかむのが早かったんでしょうね。

柳川白砂さんチームの構成案を毎回見て、大事なポイントを吸収できたことも大きかったと思います。3か月後からは当社チームの割合が増えていって、6か月後に独り立ち。現在は当社チーム4人だけで、月4本ほど投稿しています。各ペルソナがどの時期でどう動くのかを年間カレンダーにまとめ、時期に合ったコンテンツ制作を心がけています。

「このパンフレットの図、使えますよ!」社内の資産を生かして検索順位1位を獲得

小川特に印象に残っているコンテンツはありますか?

柳川苦労したのは「派遣法改正で変わったことをわかりやすくまとめました」の記事ですね。

競合サイトの多くは「派遣元」か「派遣先」の視点で書かれていたのですが、キャリアHUBでは「派遣で働く人」にとってわかりやすいコンテンツを心がけました。5月に白砂さんチームに作っていただいた構成案を社内で引き継いで、法務など多くの部署を渡り歩き、3か月後の8月にやっと世に出たものだったんです。すぐに検索上位には来なかったのですが、公開してから6か月後の2月にターゲットキーワード「派遣法改正」で10位以内に入り、4月に1位に上がりました

白砂「派遣法改正」のように月間検索ボリューム1万以上のビッグワードは、数か月後から評価がついてくる傾向がありますね。

小川あとはグーグルのアルゴリズム変更で、これまで評価されなかった点が評価されるようになったということもあるのかもしれません。しかし、このコンテンツは内容をしっかり作り込んでいますし、図もわかりやすい。これを作るのは大変だったでしょう。

派遣法改正前(旧法)、改正後(新法)を比較した図
派遣法改正前(旧法)、改正後(新法)を比較した図

柳川もともと派遣法改正のときに作ったパンフレットに元の図があったんです。それを白砂さんが「これ使えますよ!」とアドバイスしてくださって。

白砂他社でも、いい冊子や図を社内で持っているのにWebで活用できていないケースはよくあります。このコンテンツは、そうした「社内の知見を凝縮して、Web施策に生かした」という点でも意味が大きかったと思います。

柳川そうですね。人材サービス会社として法的にも確かな情報を発信して、社会的な動きへの認知を広めることの大切さを感じたコンテンツでした。

社内にあるものをWebに活用できていないケースはよくある

近視眼的にコンバージョンだけを見るのではなく、長い目で見て“未来の顧客”に信頼感を残す

小川ターゲットキーワード「退職理由」で検索2位(2017年10月)のコンテンツも面白い試みですよね。

退職理由で伝えていいこと、伝えないほうがよいこと分類
退職理由で伝えていいこと、伝えないほうがよいこと分類サイトで見る

柳川これはもともと、外資の転職時期である11月ごろにあてて投入したコンテンツですが、結果的には日本の転職時期である2月に検索結果の1ページ目に上がりました。

「退職理由」で検索する人は、次の職場があらかた決まっていて、もう人材サービスは必要ないかもしれません。でも「ランスタッドの印象を少しでも残しておきたい。もし次の転職を考えるときが来たら社名を思い出してもらいたい」という気持ちを込めて制作した1本です。

白砂構成案はちょっと難しかったですよね。「退職理由」を分析すると、ペルソナはぼんやりと次の2人がいました。そこでペルソナのタイミングによって伝えるべき内容を変えました。

  • 今の職場に「辞める」と伝えるフェーズの人
  • 次の職場の面接で『辞めた理由』を回答するフェーズの人
対象キーワード「退職理由」を「画像クエリ」「質問クエリ」「ハウツークエリ」「ランキングクエリ」に分類し、検索タスク(ユーザーがその検索を通じて行いたいこと)をあぶり出したサジェストキーワードマップ
対象キーワード「退職理由」を「画像クエリ」「質問クエリ」「ハウツークエリ」「ランキングクエリ」に分類し、検索タスク(ユーザーがその検索を通じて行いたいこと)をあぶり出したサジェストキーワードマップ(ミエルカで作成)

小川コンバージョンの刈り取りだけ考えると、このコンテンツは生まれませんよね。でも先ほどおっしゃった「次の転職が来たら」という視点はすごく大事です。長い目で見た“未来の顧客”の記憶に信頼感を残せる。それもコンテンツマーケティングの魅力ですよね。

ペルソナのタイミングによって伝えるべき内容を変えた
ウェブアナリスト 小川卓氏
ウェブアナリスト 小川卓氏

白砂そうですね。「公開から1年間はコンバージョンではなく流入増を目指す」という方針で、各ペルソナに役立つコンテンツを残すことを優先しました。たとえば、次のスキルアップ系のカテゴリーにあるコンテンツも「力を付けてキャリアアップしよう」「これから子どもを預けて働くことを考えよう」という“未来の顧客”を応援するためのものですね。

柳川メディア立ち上げ時のKPIとしていたのは、10か月目のセッション数でした。それを実際に超えられたのは11か月目。目標に対してビハインドしていた数か月は本当に不安でしたが、白砂さんの「大丈夫です。アクセスは伸びますから!」という言葉どおり、年明けから一気に当初のKPI比160%まで伸びました

小川流入が増えたことについて、社内での反響はありましたか?

柳川はい。社内でも目立つサイトになり、「どうやって流入を増やしたの?」「コンテンツの書き方を教えて」という声が次々と挙がるようになりました。今では私たちのメイン商品である求人案件にもミエルカを使っています。ユーザーの知りたい情報を入れ、募集要項をいかに魅力的に書くかという部分で役立っていますね

別のメンバーがミエルカを使い始めるときも、毎月Faber Companyが開催しているミエルカ大学に参加させれば、入門編からメソッドを学んでもらえます。教えることに社内のリソースを割かなくていいのは助かりますね。

社内で「コンテンツの書き方を教えて」という声が次々と挙がるようになった

いよいよコンバージョンにつなげる施策に着手

柳川社内でも認知されたことで、次第に「キャリアHUBから求人案件へ誘導したい」という声も挙がってきました。それで次のステップとなる「コンバージョンにつなげる施策」を、白砂さんと小川さんに相談させていただくことになったのです。

メディアからサービスサイトへ送客する導線を設置

白砂「いよいよこのときが来たか」と、うれしかったですね。まずは派遣登録など各サービスサイトや案件詳細へ送客するため、ページ下部の基本的な導線を3つご提案しました。

  1. レコメンデーション(おすすめ求人)
  2. 記事最下部やフッターにブランディングバナー
  3. クロージングコンテンツ(※未作成)

柳川③はまだこれからなのですが、全コンテンツに①②を設置したことで、季節要因で流入が減った夏季も、主要な5つのサービスサイトへのメディアからの送客数は伸び続けました。現在は、年間のべ2万人を送客できる規模まで育っています

コンテンツの下部に「①レコメンデーション」と「②ブランディングバナー」を設置した例
コンテンツの下部に「①レコメンデーション」と「②ブランディングバナー」を設置した例サイトで見る
流入が減る夏もサービスサイトへの送客数は増え続け、年間2万人を送客している
流入が減る夏もサービスサイトへの送客数は増え続け、年間2万人を送客している

白砂もう1つの導線③は、コンテンツからいきなりコンバージョン(登録)はしづらいので、「転職したい」気持ちを醸成して、そこから登録サイトへ誘導するためのコンテンツを記事本文下部に設置するものです。たとえば英語のコンテンツなら、「英語のスキルを生かして子育てから外資系企業へ再就職! Aさんの場合」などの体験談などですね。

公開済みのコンテンツを3種類に分類して誘導を最適化

柳川導線を設置する以外にも、小川さんに提案していただいた「コンテンツを3種類に分類し、それぞれにあった誘導の最適化を行う」という施策も、近く実装予定です。

小川私が提案したのは、直帰率が高いコンテンツと、低いコンテンツのピックアップを行うところから始める方法です。

たとえば「主婦や学生に人気の「登録制バイト」って何?7つのメリットと共に解説します!」のようなコンテンツなら、具体的なバイト求人への誘導はすごく効きます。一方で「保育園はいつから預けられるの?保活はいつから?入園までの保活事情を解説します」のようなコンテンツを読むユーザーは、転職への温度感がまだ高まっていません。

同じペルソナ向けの読み物へ誘導したり、新規関連コンテンツが公開されたときにプッシュ通知を送ったり、あるいはメールマガジンへの登録を促したりなど、「関係性を持ち続けられる施策」へ案内したほうが、求人案件をレコメンドするより効果的な場合もあります。

直帰率が高いコンテンツと低いコンテンツをピックアップして分析する
コンテンツを3種類に分類して、ユーザーの気持ち、盛り上がりに合わせて見せるコンテンツフッターを使い分ける。たとえば「派遣」「働く」を主テーマにしたコンテンツならランスタッドトップページ、クロージングコンテンツに誘導する、周辺の読み物コンテンツならブランディングを重視して関連記事に誘導する、など。
コンテンツを3種類に分類して、ユーザーの気持ち、盛り上がりに合わせて見せるコンテンツフッターを使い分ける

白砂セミナーに誘導する方法もありますね。たとえばこれから職場復帰を目指す方なら、託児所付きのキャリアアップセミナーなどにご案内するとか。

柳川なるほど! 実はマーケティングオートメーション(MA)ツールも導入予定なんですが、まずはユーザーの動きを見ること、データを取ることが大事ですね。

小川より正確にいうと、ユーザーを「個別に」見ることです。セッションごとのPV数よりは、訪問回数の分布とかで見ていったほうがターゲティングしやすいと思いますよ。

5回来てくれたユーザーと、1回しか来ていないユーザーでは1ページビューの価値が全然違うはずです。「3回以上訪問して、なおかつこのコンテンツを見ている人には、態度変容を促す施策を行ってみてはどうか?」といった設計ですね。たとえば求人案件をピンポイントで紹介してみる、あるいは診断などの検討系コンテンツを案内するなどが考えられます。

柳川そこでのユーザーとのコミュニケーションも、心が通うようなものにしたいですね。問題解決をしたり、共感したり、働く人に寄り添うようなコンテンツを届けたいです。

検索以外のユーザーと出会えれば、オウンドメディアの可能性がもっと広がる

白砂メディア運営を続けていくと、ネタ枯れを感じることもあると思います。早めに検索以外の流入元も開拓しておくといいですね。たとえばニュース系サイトに配信したり、転職の話が入っているドラマ仕立ての物語をソーシャルで拡散したりする施策もおすすめです。

検索はなんらかの課題を解決したい、比較的忙しいユーザーが来るものですが、暇つぶしにスマートフォンやアプリを見ているユーザーも潜在的に「転職したい」と思っている層がいるかもしれない。そこでの出会いを広げれば、オウンドメディアとの相乗効果が狙えると思いますよ。

小川ペルソナが変わると、やれることが広がります。コンテンツに限らず、オンラインチャットや掲示板で匿名の転職相談をしたり……。キャリアHUBが本当の意味で仕事との出会いを創出する“ハブ”になるために、まだまだ3年から5年はやることがいっぱいあると思います。社内で議論すれば、いいアイデアが出そうですよね。

柳川まだまだ先があるんですね。新たな道に導かれている感じが(笑)。でも、本当に必要な施策だと思います。今考えているのは、いろいろな働き方をしているお客さまの生の声を社内で集めること。その声をコンバージョンに寄与するようなクロージングコンテンツに生かしていきたいと思っています。

小川いいですね。ある1人のストーリーを「この仕事ってこういうメリットがあり、転職によって私の生活がこう変わって、家族との会話が増えた」とかリアルに描き出せれば、他のユーザーが「こうなりたいな、私もやってみよう」と興味を持つんじゃないでしょうか。ぜひ取り組んでみてください。

白砂立ち上げに携わった者として、キャリアHUBのこれからが本当に楽しみです。現在のご様子を聞けてよかった。柳川さん、ありがとうございました!

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