グーグルのAMPがSEOやマーケティングに及ぼす8つのマイナスの影響とは?
この記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。後編となる今回は、AMPがSEOやオンラインマーケティングに及ぼすマイナスの影響を見ていこう。まず前編を読んでおく
AMPは、SEOやオンラインマーケティングマイナスの影響を及ぼさないのか?
1. AMPコンテンツには送信フォームがない。
つまり、読者に購読や連絡先情報の送信を促してリード獲得を目指しているパブリッシャーは、現状ではAMPページではリード獲得できないということだ。
AMPページから通常のHTMLページに誘導してそちらでフォームを使うか、AMPの仕様がアップグレードされて、AMP向けに最適化したコンテンツに送信フォームを追加できるようになるまで待つ必要があるということだ。
2. AMPは、パブリッシャーサイト以外のページ表示速度をめぐるSEO問題を解決しない。
AMPが現状で対象とするのは「ニュース」系の記事やブログ投稿だけで、通常のEコマースサイトやブランドサイトを高速化する狙いはない。
主要コンテンツとして重点を置いているのが記事やブログ投稿ではないEコマースサイトは、AMPのデザイン上の制約が厳しすぎると感じるだろうし、従来のHTMLを使い続けたいと思うだろう(逆に言うとEコマースサイトでも、ニュース性のあるコンテンツがあるのならばAMP化する価値はあるかもしれないが)。
3. 検索連動型広告のインプレッション数が減少する可能性がある。
検索キーワードが広範にわたる場合や一般的なもの(「ニュース」「ファッション」「食」など)である場合、AMPに対応する記事は、検索連動型広告よりも頻繁に表示されることになると見られる。つまり、検索連動型広告のインプレッション数が減少する可能性があるということだ。この想定を覆すためには時間をかけ分析するしかないだろう。
4. 外部のスタイルシートやJavaScriptは使えない。
AMPでは外部のスタイルシートやJavaScriptを利用できないので、ページのデザインやユーザー体験は地味なものになりがちだ。
パブリッシャーもそうでない人も、
- デザインによってユーザーの再訪問を促すほうがブランドにとって重要なのか
- コンテンツそのものが問題で、訪問ユーザーもページの表示速度しか気にかけない状況なのか
を判断する必要がある。前者の場合は、とりあえずAMPは見合わせるほうがいいかもしれない。後者の場合は、すぐにでもAMPの実装を開始するほうがいいだろう。
ページが単調になるのを防ぐために実験的コンポーネントを使う場合には、コンポーネントにバグが含まれていたり、AMPの次期仕様でそのコンポーネントが使えなくなったりするリスクがあることは頭に入れておきたい。
5. ドメインオーソリティに悪影響があるかもしれない。
Learn SEOのページによると、「ドメインオーソリティとはMozが開発したスコア(100点満点)で、検索エンジンにおけるウェブサイトの順位を予測する」とある。計算に含まれる要素の1つが、リンクしているルートドメインの数だ。
AMPがSEOにとって間接的なマイナス要因となるのは、パブリッシャーのサイトが獲得するリンクの数が減少する可能性があることだ。
というのも、検索ユーザーが目にするAMP対応コンテンツはグーグルがキャッシュしたものであり、そのURLはgoogle.comのものだ。ということは、そのコンテンツにだれかがリンクしても、そのリンクはパブリッシャーのドメイン名ではなく、google.comに向けられるのだ。
たとえば、以下に挙げたのは、iPhone 6でAMPのカルーセル検索結果からアクセスして読み込まれた記事のスクリーンショットだ。
URLの「https://www.google.com/amp/www.bbc.co.uk/news/amp/35800232#」が「www.google.com/amp/」で始まっており、その後に記事の元のドメインが続いていることに注意してほしい。記事を閲覧する間も、訪問者はパブリッシャーのウェブサイトではなくGoogle.comにとどまっている。
6. 必然的に、パブリッシャーがコンテンツに広告を配信する方法が変化する。
これは、広告についてパブリッシャーに見直しを迫り、何らかの方法で広告をブロックしている16%の顧客を苛立たせないようするという点で、良いことかもしれない。しかし、高帯域を要する凝ったデザインの広告を駆使して注目を集めようとしているパブリッシャーにとっては、具合の悪いこととなるだろう。
こうしたパブリッシャーはAMPを使わないことにするか、他の広告戦略を見つける必要がある。
もちろん、パブリッシャーがグーグルのAMPに対応する広告パートナーシップ(Outbrain、AOL、OpenX、DoubleClick、AdSenseで構成される)のいずれかのサービスを利用していれば、広告の改善を目指すパブリッシャー自身の負担は大幅に軽くなる。広告パートナーシップは広がりを見せており、ますます多くのパートナーが広告をAMPの仕様に対応させつつある。
7. コンテンツ開発予算を増やす必要がある。
AMPに対応済みのコンテンツ管理システム(CMS)を実装していない場合は、AMPの開発に予算を割り当てるか、追加機能としてカスタムまたは拡張CMSに組み込む必要がある。
8. できの悪いHTMLページではAMPを利用することはできない。
これは実際のところ、AMPのプラスの側面でもあり、マイナスの側面でもある。グーグルに取得されてAMPのキャッシュに置かれるまでには、すべてのページがエラーのない状態になっていなければならないのだから、これはプラス面だ。つまり、ユーザー側から見れば、さまざまなデバイスでコンテンツをダウンロードする際に、より優れた体験が得られるということだ。
ただし、パブリッシャーにとっては、すべてのページのデバッグを強化するために時間(と工数)を割り当てなければならないのは、マイナス面だといえよう。
幸いなことに、グーグルはAMPのバリデータを提供している。
結論
ページの表示速度は、グーグルのアルゴリズムにおける検索順位決定要因だ。グーグルがコンテンツをより速く、より簡潔に構築して表示する独自の方法を打ち出したということは、SERPに表示するページの価値を示す指標として、同社がページ速度の重要性をさらに高めたいと考えていることの表れだ。
サイトが主に(製品のマーケティングや販売ではなく)長文のニュース系コンテンツを扱っている場合は、AMPに乗り換えるべき条件が整っていると言える。AMPを追加する目的が、コンテンツをモバイル向けに最適化する新たなトレンドをいち早く取り入れたいということのみにあるのなら、AMPへの対応はパブリッシャー自身にも彼らのSEOによる順位獲得にも恩恵をもたらすだろう。
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