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[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

DX推進者に必要なモノとはITスキル? 業務理解? いいえ、強い心です。

マーケターコラム、今回はテレビ東京・明坂真太郎氏。テレビ局のDXを推進する過程で気づいたこととは?
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テレビ東京 明坂真太郎氏

こんにちは、テレビ東京の明坂です。

少し大げさなタイトルをつけていますが、今回は私が去年1年かけて当社の極めてアナログな営業組織を徐々に変革していった(とはいえ、まだ道半ばですが)体験談から、昨今盛んに話されているDXにまつわる、推進者にとって大切な気づきについて示唆します。

なお、タイトルでは「強い心」と書いていますが、ITスキルも業務への理解も当然必要です。

※本記事では既存業務の改善プロジェクトの話を書いていますが、既存業務を構築した方や既存システムを導入された方の積み重ねがあってこその改善です。今回は、今直面している課題を解決するミッションを担当する上で必要なアクションであったまでで、その方々の仕事の価値を否定する意図はありません。ご了承ください。

営業部門への異動と小さな葛藤

私は2017年から、テレビ東京の今の職場で、主に番組のデジタルプロモーション業務などに携わってきました。

そして2020年度、営業局といういわゆるスポンサーの方々にCM枠を販売する部門の、マーケティング変革を行うセクションへ異動。徐々に減少しゆくテレビ広告市場の営業プロセスの課題抽出と改善に取り組むことになりました。

テレビ局というのは、コンテンツのクリエイティブに関してトップレベルのノウハウを持つ企業です。正直なところ、そんなテレビ局で営業変革というオカタイ仕事をするのは、「テレビ局で働く意味って」と思う部分も多少あります。しかしテレビ広告市場の行く末と自社の現状を加味すると、当然マーケターとして重要なミッションであることは理解し、腹を括って取り組むことにしました。

とにかく、ちらかった課題

営業局内には、販売商品(テレビCM)ごとにセクションが存在します。最初は、各セクションの現状の業務と課題についてヒアリングすることからはじめました。

私は前職のリクルートでCM出稿の業務を扱う部門にいたため、テレビCMの買い方や買う単位をはじめ、買い手の目的、KPI、効果などなど、通常より多少は知識がありました。しかし改めてテレビ局内部の立場からテレビCMのセールスを見てみると、想像以上に複雑でした。

現在テレビ東京は、新型コロナウイルス感染症対策として、社員の出社率2割、テレワーク7割を目指しています。そのためヒアリングはほぼリモートで行うことしかできず、それなりの苦労がありました。

結果、多くの人から話を聞いてわかったのは、現場には個々人の目線でさまざまな課題が存在していること。それらの課題は、標準化や仕組み化によって解決できる可能性があるにもかかわらず、そうしたスキーム(構想や計画)が存在していないということでした。

良く言えば、どんな課題でも個別に解決できるプロフェッショナルたちですが、悪く言えば知の蓄積・共有による情報伝達の効率化や、全体を俯瞰しての中長期的な戦略を描くということがすぐに行えない環境でした。

テレビ局固有の特殊性はあるものの、見込み顧客の管理やコミュニケーションを行うMA(マーケティングオートメーション)や、顧客ごとの商談の進捗や見込み度の管理および可視化を行うSFA(セールスフォースオートメーション)をはじめとするデジタルツールによる業務改善余地が残されているなと感じました。

広告という商品には、買い手(スポンサー)の目的やKPIがさまざまであるという特性があります。また、標準化よりも個別対応の重要度が高いことや、購買に至るまでのロジックにはお互いの関係値なども大きく加味されるという業界特性があることも理解しなくてはいけません。その上で、どのように業務の効率化と品質向上を行うかの未来図を描くことにしました。

課題とソリューション、双方が優れていないとエクセレントじゃない

さらに業務フローのヒアリングを進めていくと、SFAがすでに仕組みとして導入されていることがわかりました。

ただ、SFAによって生み出されている価値はせいぜい問い合わせとやり取りのログ化ぐらいで、「少しリッチだけど操作が使いづらいエクセル」のような活用度合いでした(これ、わりと多くの企業で「あるある」だと思います)。

とにかく、個々のノウハウや気合いによって現場が回っているという状況を改善し、組織全体として効果を出すような施策が打てるようにするために、SFAとMAを導入しようと考えました。

  • SFAによって、業務プロセスの標準化と可視化を行い、全体の業務効率を引き上げる
  • MAを用いて、新規リードや既存リードに対して既存の営業リソースを極力使わない形でアプローチし、商談化をするプロセスを構築する

このような方針で、おおむね現場での改善の方向性をすり合わせることができたので、役員へ予算確保のプレゼンを行い、いざDXプロジェクトとしてスタート。

まずは、SFAやMAの導入支援ベンダーとともに、現状の業務プロセスや実装されている機能、データ構造などを深く見てみました。

その結果わかったのは、既存の営業業務フローにおける課題設定が甘く、とりあえず元の業務フローに合わせてシステムを乗せたに過ぎない状態だということでした。

業務プロセスの標準化や可視化は、優れたソリューションがあれば、コンサルティングやベンダーの支援を受けることでカバーできることもあります。しかし、既存の業務に対して課題を設定し、中長期的な先を見据えた上であるべき姿を描くことは、中の人間にしか行えません。

クリティカルな課題の設定と優れたソリューションのマッチによってのみ、エクセレントなアクションが生まれる。

そのような信条のもと、双方の要素をブラッシュアップするべく、時に業務側、時にシステム側の視点に立ってあるべき姿を詰めていく作業は、実にタフではありますが、デジタルにもマーケティングにも精通しているからこそ担える作業として、マーケター冥利に尽きる任務であると私は思います。

もっとも大きな障壁は人の変化

ここまでは比較的スキル寄りの話をしてきました。しかし、プロジェクトを進めるにあたってもっとも難しいと感じたのは、現場の人たちに業務改善の価値を理解してもらい、積極的に取り組んでもらうことです。

システムや業務フローについては、適切なロジックで設計して構築すればその通りに動作してくれますが、人はそう簡単に変化できません。

それは現状維持バイアス(予測不能なものに対して現状維持の価値を高く見積もってしまう心の動き)がかかってしまっているとかそういった話ではなく、純粋に見えている未来のビジョンに対する解像度に差があるためです。

現場の人たちに100%変化にコミットしてもらうためには、時間をかけて差を埋めていくしかありません。

システムの設計やクリエイティブのディレクションのように誰かが定義したゴールに皆で向かうのではなく、当初はゴールだと認識できないゴールに対して既存の組織を導くわけですから、とても神経を使う、丁寧で時間がかかるコミュニケーションが必要です。

説明しただけで簡単に埋まる差であればそもそも外から支援する必要はないですし、進める上で当然認識の齟齬やすれ違いから衝突することもあります。

タイトルで書いた「強い心」というのは、クリティカルな課題と優れたソリューションから生まれるアクションの価値を、粘り強く現場とコミュニケーションしながら納得してもらい、プロジェクトを完遂するまで折れない心です。

DXを推進するためにはもちろんITスキルが必須です。それに加え何より人間臭い地道なコミュニケーション力が必要で、パラメーターをITスキルに全振りしていても変革は起こせないなと自戒を込めて思いました。

まだまだ変革は道半ばですが、完遂した際には良い経験だったと思えればよいですね。

なお、本コラムでは比較的ファジーにDXという言葉を使っていますが、ツール導入やデータ分析による業務効率化・精度向上は、それ自体がDXの本質というわけではなく、デジタルを活用するために必要な一歩に過ぎません。なんとなく社内でのプレゼンスを考えてDXという言葉を使ってしまいがちだったりもしますが、デジタルをフックにビジネスの強みを構築できるまで、私のチャレンジは継続していくことでしょう。

本テーマやそれ以外についてもくわしく聞きたいことなどあれば、私のTwitterアカウントへリプライをいただければ幸いです。Clubhouseでのディスカッションなどにもお気軽に誘ってください。

それでは。

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