[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

高い目標と現状のギャップがマーケターを大きく成長させる

マーケターのリレーコラム、今回はエイチームフィナジー・稲垣昌輝氏。高い目標が持つ意味と、それを達成するための考え方、とるべき方法について。
エイチームフィナジー 稲垣昌輝氏

仕事には必ず目標があります。みなさんも日々、目標を達成するために努力を重ねていることでしょう。

目標の達成が難しそうな場合、どう対処するかによって、マーケターは2種類に分けられます。

「①目標の難易度を下げるマーケター」と「②目標達成を目指すマーケター」です。

多くの会社では、個別またはチームごとに目標を設定し、それに対する達成度合いで評価を決めるMBO(目標管理制度)が一般的です。

目標を切り下げることで、目標の達成確率は上がります。しかし、みずからの能力を高め、より優れたマーケターになりたいと考えている方は、目標の難易度を下げてはいけません。

今回は、目標の達成が難しいときに、マーケターはどのような方法をとるべきかについて、私の考えを紹介したいと思います。

安易に目標の難易度を下げるマーケターが失っているもの

誰しも目標に近づいている実感がないと不安になります。

不安になると、「どうしたら不安を解消できるか」という自己防衛本能が働きます。

そして、手の届く範囲まで目標の難易度を下げることで安心を手に入れ、それと引き換えに「成長機会と時間とお金」を失ってしまいます。

そもそも、目標はつねに現状に対して高めに設定されています。「あ!このままいくと達成できないかも!」と感じている状態が当たり前なのです。

なぜ目標は高めに設定されているのか?

私は、MBO以外に複数の目標管理法を実践したことがあります。

たとえば、Googleが採用している目標管理法「OKR(Objectives and Key Results)」や、1970年代にアメリカでコーチングをベースに開発された会議の方法論「すごい会議」。

両方の共通点は、「高い目標」を立てることです。

OKRでは、達成度60~70%程度になるよう高いレベルで目標設定することが推奨されています。よりストレッチした目標を追うことで成長を促すことが可能となるわけです。

同じく「すごい会議」も「達成できないぐらい高い目標」を掲げ、それに対してどのようにアプローチしていくのかをチームで話し合います。

「高い目標」を立てるのは、個々人の成長によって大きな成果を生む狙いがあるからです。現状とギャップのある「高い目標」を課されたチームや人は、異なるアプローチ方法を試したり、抜本的な改革にチャレンジしたりするようになります。

言い換えれば、「高い目標」は、コンフォートゾーンから脱する良いきっかけを与えてくれるのです。

目標の達成が難しそうだと感じたときこそが、じつは一番大きく成長できる機会です。安易に目標を下げずに「どうすればうまくいくか」を考えて、即行動に移すべきです。

「高い目標」を達成するために欠かせない3つの習慣とは?

目標の達成が難しそうなとき、できない理由を考えてはいけません。理由をいくら挙げても、何一つ解消しません。大事なのは、「どうすればうまくいくか」を考え、高い目標を追い続けることです。そのために役に立つ3つの習慣を紹介します。

①固定観念を排除する癖をつける

まずは、つねに固定観念を排除するようにすることです。

今「当たり前」に思っている前提条件に縛られていることで、目標達成が遠のいている可能性があります。

ヒト・モノ・カネ・情報の「当たり前」を疑い、固定観念を取り除いた上で、高い目標を達成するために必要な「変化」を探ることが大切です。

もちろん、今できる範囲での工夫は必須です。しかし、今持ち合わせていないリソース(ヒト・モノ・カネ・情報)を手にすることで高い目標の達成確度が高まるのであれば、権限を持つ上長に交渉するといった仕事も必要になってきます。

時には外部の有識者の脳をお借りして、問題解決に向かわせる「柔軟な発想」や「頼る力」も必要だと思います。

②自分に質問する

固定観念を排除するといっても、普段どおりに仕事をしていては、なかなかその存在に気づくことができません。どのような固定観念に縛られているのか、気づくための方法として「自分に質問する」があります。

固定観念をあぶりだし、「どうすればうまくいくか」を考えるきっかけとして、次のような問いを自分に対してぶつけてみましょう。

【方法について】
  • もっといいやり方はないか? うまくいくために必要なルールはあるか?
  • 個々の能力は必要十分か? どんな学びが必要か?
  • 自分はどのような可能性を排除しているか?
【対ユーザー】
  • ユーザーが最高の将来を手に入れるためにできることは何か?
  • プラットフォームの逆風を受けても曲げられない信念は何か?
  • 継続して利用してもらうためにできることは何か?
【提供価値について】
  • 競合優位性を築くためにどんなサービスを提供する必要があるか?
  • 自社サービスの不便なところは何か?
  • 紹介したくなる仕組みはあるか?

物事をイメージや解釈で判断している場合は、ファクトの洗い出しから手をつけていきましょう。ファクトなしに正しい判断はありえません。各質問への回答に対して、ファクトから脱線しないように「なぜ、そう思うのか?」を追加で質問するようにしてみてください。

③目標に対する進捗状況をチームで管理する

高い目標を達成するためには、進捗状況を正しく把握しておく必要があります。

理由は、目標が高いがゆえに「このままでは未達で終わる→では、どうすれば達成できるか」を繰り返し問う必要があるからです。

マーケティング職は、チームで進める仕事が多いため、自分の進捗が良くても仲間の進捗が悪いと残念ながら高い目標には届きません。

自分だけでなく、チーム全員の高い目標に対する進捗が良いのか悪いのかを把握するためには、「報告の型」にこだわる必要があります。

目的なしにTODOやコミットメントを「点の情報」として共有するのではなく、約束をするように決められた型で効率良く進捗を追っていきましょう。

【報告の型】
  • ①完了事項・進行中事項・着手予定事項を見える化し、目的地と進行速度の認識を合わせる
  • ②進捗の良し悪しとその要因。悪い場合は、いつまでにどう巻き返すのか?
  • ③TODOやコミットメントを見直す必要はあるか? なぜ見直す必要があるか? どう変更するか?
  • ④ ①②の内容をもう少し考えたい場合、いつまでに考え、いつ報告をもらうか?
  • ⑤ 前回報告時に決めたアクションが期日内に完了したか? まだの場合、なぜか? どうするか?

チームの中には、「なぜ? いつ? どうする?」と立て続けに問われると、問い詰められていると勘違いして、萎縮してしまうメンバーがいるかもしれません。

だからこそ、あらかじめ「報告の型」を決めて、全員が統一された型に則って進捗状況を報告し合うなどの工夫が必要になってきます。

より自立型のチームを目指す場合は、質問される形式ではなく自発的に上記①〜⑤に沿って説明していく方が好ましいかもしれません。

また、「報告の型」からもわかるように、実施事項よりもリカバリーの「内容・理由・スピード」の方がよっぽど重要です。

計画どおりにいかないなんてことは、マーケターにとって当たり前の状態です。そもそも「想定していなかった事態を受けて、いかに軌道にのせていくか」、これこそ我々マーケターが本来注力すべき仕事ではないでしょうか。

◇◇◇

高い目標は、その高さに意味があります。現状と目標のギャップこそが成長余地だからです。

高い目標を達成するためにあらゆる方法を考え、実行するマーケターは大きな成長機会を得ることができる一方で、安易に達成しようとして目標の難易度を下げるマーケターは、「安心」と引き換えに「成長機会と時間とお金」を失います。

今回の記事の内容が、皆さんの目標達成に貢献でき、大きな成長機会につながれば嬉しく思います。

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