[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

成長は「範囲」の先にある デジタルマーケターの成長に”リアルな体験”が必要な理由とは?

マーケターのリレーコラム、今回はエイチームフィナジー・稲垣昌輝氏。デジタルマーケターが大きく成長するために踏み越えるべき「範囲」について。
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エイチームフィナジー 稲垣昌輝氏

人は無意識のうちに、自分の「範囲」を定め、それに従って行動する生き物です。

個人的な話で恐縮ですが、最近、異動に伴って以前よりも責任範囲が大きくなったことで、人が持つ「範囲」について考える機会が増えました。

「範囲にこだわる」という特性は、個人の成長、組織の成長という点から考えると、マイナスでしかありません。自分の「範囲」を決めるということは、自発的に自分に「制限」をかけているのと同じだからです。

会社という組織において、それぞれが自分の「範囲」=「分」をわきまえて動くことは非常に大事なことです。しかし、その「範囲」を不可侵としてしまうと、個々人の成長に蓋をしてしまうことにもなりかねません。ひいては、組織の成長、そして企業の成長にも影響する可能性があります。

人が、企業が、大きく成長するためには時として、その「範囲」を踏み出すことが必要です。今回はその解決のための具体例として、デジタルマーケターが踏み越えるべき「範囲」について考えたことをご紹介したいと思います。

オンラインという「範囲」を超える

多くのデジタルマーケターがまず意識する「範囲」は、「オンライン」でしょう。インターネットの中だけが仕事の範疇だと思っている。しかし、デジタルマーケターこそ、常日頃から、積極的にリアルの体験を積み重ねていくべきです。

これからはOMO(Online Merges with Offline)という概念を踏まえたマーケティングが、必要不可欠になっていきます。オンライン/オフラインという範囲を意識して仕事していては、この流れに乗っていくことは難しいでしょう。

実際、現在携わっているプロジェクトでもオンライン施策だけでは、顧客体験(CX)向上の観点から不十分な例もあり、消費者の広告慣れも相まってオフライン施策による実際の満足度向上を狙う動きが必要になってきています。

マーケターという仕事の本質は「人の心を動かし、行動に変化を与え、生きる活力を与えること」です。もっと言えば、行動に変化を与えるだけでは不十分で、実際に変化したことでさらなる満足を実感してもらうところまでが、マーケターの仕事だと思っています。

上記のすべてが、顧客体験の向上に帰結しますが、そうした顧客体験を作るためには、デジタルマーケターもみずからの「範囲」を超える体験――すなわち、リアルでの体験を重ねていかなくてはいけません。

細かい説明は割愛しますが、人は最終的に「感情」で意思決定をします。そのときの「感情」をできるだけ多く、実体験から獲得しておくことがマーケターの引き出しの量と質に好影響を与えることにつながると考えています。

意外と特定の感情について「知っている or 知らない」で本人のアウトプットが大きく変わり、社会からの評価にも雲泥の差がつくことは珍しくありません。

成長を促す「良い体験」の5つの条件

リアルでの体験、いわゆるオフライン体験は、以下の3つに分類できると考えています。

  1. 新しいモノ/サービスなどを試す
  2. 労力や時間的な効率に縛られず、あえて効率が悪いほうを選択し体験する
  3. 人に会って直接話を聞き、メディアを通さずに生の情報を得る

こういった体験を自己投資と捉え、積極的に行っている方も多いと思います。しかし、大切なのは、体験したその先です。体験後に得られるものは何か、そこに自覚的でなければ、オフライン体験とは「未経験」を「経験済」に塗り替えていく作業でしかありません。

私は、下記にまとめた5つのポイントをすべて含んで、初めて「体験」をしたと言えると思っています。

  • 【目的】なぜ、何のために、体験するのかが明確
  • 【発見】気付きや発見があった
  • 【変化】行動や考えが変化した
  • 【付加価値】ネット上では得られない、知識や知恵が得られた
  • 【他者への影響】他人に話す価値があり、他人が興味を持つ魅力があると感じられた

5つのポイントの中でも、特に【付加価値】と【他者への影響】が、体験の良し悪しを大きく左右します。

体験を通じて、Webサイトにはない情報を得るのは、オフライン体験ならではの価値です。そうして得られた価値を、どのような形で人に伝えるか。「人に話したくなる要素」について考えることは、広告やクチコミ戦略を考えるヒントにもなります。

生身の人間と直接触れ合うことができるのは、オフライン体験の最大の利点だと思います。デジタルで使うのは基本的に視覚と聴覚ですが、リアルは五感をフルに刺激してコミュニケーションを行います。無意識の刺激によって思考が活性化しますし、セレンデピュティに出会う確率も、リアルのほうがずっと高いはずです。

すべての実体験が良い体験である必要もないと考えています。短期的に見て悪い体験、つまり後悔したり失敗した体験もまた「良い体験」だと評価できると思います。ただし、その悪い体験によって本人の思考や行動に変化が見られる場合に限りますが。

「範囲」を踏み越えることで、成長は加速する

範囲について、もう少し掘り下げて考えてみましょう。「範囲」とは「思い込み」でもあります。人は無意識の思い込みによって、さまざまな制限を自分に課しています。

前項では、デジタルマーケターだからデジタルだけやっていればよいと、勝手に範囲を設定してはいけないという話をしましたが、組織においては、このように勝手に範囲を設定する行為は、非常によく見られます。その部署が持つ職域、その肩書の人が持つ職域、その入社年次の人が持つ職域、みんなそれぞれの立場において、なんとなくこのへんだろうと範囲を定めて、その範囲の中でだけ仕事をする。よくある光景です。

しかし、個々人が、なんとなく思い込みで定めてきた「範囲」を守っていては、個人も組織もその先の成長がありません。1人ひとりが勇気を出して少しずつ自分の「範囲」を踏み越える。これは大事なポイントです。

私の好きな野球に例えますと、セカンドが浅いセンターフライを取ってもいいと思うのです。セカンドがそこまでできるなら、センターの守備範囲をもっと後ろにすることができるし、その影響は他のポジションにも広がります。こうしてチームメンバーの個々人がそれぞれ少しずつ「範囲」を広げていけば、チーム全体の守備範囲も大きく広がっていくはずです。

個々の「範囲」は相対的に決まってくる側面があるため、上長や同僚、チームメンバーとのアライメントが重要になってきます。また、同じ職種でも属する事業やそのフェーズ、チームや他職種のレベル・特徴、上長などによって適した「範囲」は異なります。

日々範囲を超えるトライを行うことでしか属する組織の中で適した「範囲」を見つけることはできません。そして、ファインプレイはいつだって「範囲」を超えた先にあるものです。範囲を逸脱したことを責めるのではなく、認めることが、大きな成長の果実を得る可能性につながっていくのです。

もし、範囲から踏み出すことを認める文化づくりを怠ってしまうと、「範囲」に囚われた挑戦が見られない仕事を行う集団がじわじわと中期的に形成されていくと私は考えています。

まとめ

誰でも、ときに自分の仕事に停滞感を感じることがあると思います。そんなときは、自分自身がこだわっている「範囲」がないかどうか、振り返ってみてください。「範囲」を自覚することで、範囲に囚われて制限をかけていた自分に気付けます。また、飛び越えるべき課題が可視化されることで、人や会社の成長を促すガイドとしても役立ってくれるはずです。

うまくいっていないときにすべてを自責で考えるのではなく、あくまで今属している組織において、「範囲」に囚われている部分はどこか? 踏み出せるポイントとタイミングは? を俯瞰的に考えてみて欲しいのです。

皆さんに制限をかけている「範囲」はいったい何でしょう。ぜひ、TwitterやFacebookなどでお聞かせください(このコラムの感想も大歓迎です)。

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