Shopify(ショッピファイ)は何がすごい? ECサイトで選ばれる理由
ECサイトのプラットフォームの「Shopify(ショッピファイ)」をご存じでしょうか。コロナ禍でECサイト構築需要が高まるなか、ShopifyでECサイト構築をする企業が増えています。一体何がすごいのか。選ばれる理由を『いちばんやさしいShopifyの教本』(インプレス:刊)の著者4名に話を聞きました。
Shopifyは、なぜ人気急上昇なのか?
――Shopifyはどんなツールなのでしょうか。
加藤: Shopifyは、本格的なネットショップを開設・運用できるクラウド型のECサービスです。2021年現在、世界175カ国、170万店舗以上で使われています。月額利用料金タイプのクラウドサービスで、ベーシックプランなら月29ドルから本格的なECサイトが運用できます。2004年にカナダでサービスをスタートしました。当初は日本語の管理画面はありませんでしたが、2017年に日本語対応が実施され、2019年頃からは日本のメディアでも取り上げられるようになってきました。
――Shopifyのすごいところ、いいところを教えてください。
岡田: 開発者の目線から言えばShopifyは、拡張性がすばらしく良い点が挙げられます。APIとアプリによって多様な機能が追加できます。いままでのECサイトでは、基本機能に無い機能を拡張しようとすると、大抵はフルスクラッチになってしまい、1つの機能追加のために他のカスタマイズができなくなってしまったり、不具合が出てしまったり、ということが多々ありました。
しかし、Shopifyの場合は、本体が柔軟に設計されているので、カスタマイズ性のポテンシャルが高いです。我々がアプリを作って追加したとしても、他の追加アプリへの影響は限りなく少なく、安心です。また、Shopify本体もかなりのスピードでアップデートがされ続けています。
東: 強調してお伝えしたいのは、越境ECを始めるための機能がワンセットになっている点です。Shopifyはグローバルスタンダードなサービスですから、海外の決済や税金対応も可能です。「全世界で使われている」という利点を生かしたECサイトの開発が可能です
Shopifyって難しい? 誰でも運用可能?
――新機能が多く、自由度が高いとなると、初心者には操作が難しいのではないでしょうか。
加藤: 難しい印象を持たれたかもしれませんが、個人で運用している人もかなり多く、決して敷居が高いものではありません。今回上梓した『いちばんやさしいShopifyの教本』(インプレス:刊)では、「初心者でも現場で使いこなせる」点をこだわって書きました。
井形: 初心者でも使えますが、サイトの管理をしっかりするならばPCがあったほうがいいですね。もちろん、Shopifyのスマホ向け管理アプリでECサイトの開設はできますが、すべての機能がスマホ対応しているとは限りません。機能を最大限活用したいのであれば、PCを使うことをお勧めします。
――「パソコンがなくてもスマホでショップが開設できる」といったサービスも、日本ではありますね。
加藤: そうですね、Shopifyはそこまでお手軽な感じではないのは確かです。Shopifyは、会社でも個人でもある程度こだわりを持ってショップを作りたい、ウェブサイトもきちんと作って運用したい、という人向けです。先ほど「グローバルスタンダード」と東さんが言われましたが、その通りで世界標準の機能はあるのですが、逆に日本国内で使われることの多い「配送日時指定」や「ギフト指定」や「熨斗の有無」は基本機能に含まれず、必要ならアプリを追加するという作業が必要になってきます。
――ある程度知識と操作の習得が必要ですね。
岡田: はい、そうですね。それから、Shopifyを使うけれど、サイト構築はShopifyパートナーに依頼する場合、社内に「専任のEC担当者」は一人立てるべきですね。開発に関する詳細までは理解する必要はありませんが、「どういう機能を追加するべき」「もっとお買い物しやすいサイトにするには」という部分はShopifyパートナーだけでは、判断しかねるところもあります。運営元と開発が二人三脚で進められるのが理想的ですよね。
Shopifyはどんな企業に向いている? 向いていない運用規模は?
――Shopify導入に向いている企業、向いていない企業などありますか。
加藤: 個人から大企業まで幅広く対応可能です。米国では「ユニリーバ」やBudweiser(バドワイザー)を展開する「アンハイザー・ブッシュ」、「ネスレ」などがShopify Plus(上位プラン)でネットショップを開設しています。また、日本では「Fancfranc」のネットショップや、「とらや」「土屋鞄製造所」の越境ECサイトで使われています。スケーラビリティの面ではECをやりたい企業なら、向いていない企業はないと思います。
東: Shopifyはサーバーのセキュリティや安定的な運用を実現することに力を入れています。ネットショップには、主にユーザーが操作するフロントエンド側と、決済や商品管理を行うバックエンド側の2つに機能を分けられますが、Shopifyのバックエンドは他に比べて非常に優秀です。
――具体的にどういうことでしょうか。
東: 「Shopifyのサイトが落ちた」ということはほとんど聞いたことがありません。欧米圏で一斉に大量の注文が集中するブラックフライデー・サイバーマンデーでも短時間での大量注文にも耐えられるようになっています。
ちなみに、いわゆるECパッケージと言われるインストール型、クラウド型のサービスでは専門性が高く安心感もありますが、インストール型ではサーバー保守が必要になったり、注文が集中すると画面遷移で表示遅くなったりすることが多いのですが、安定性ではShopifyに軍配が上がります。
――テレビCMで瞬間的にアクセスが集中したり、フラッシュセールを行ったりする企業は安心して使えそうですね。ほかに、採用をお勧めするとしたらどんなケースですか。
東: 1店舗から複数店舗まで、実店舗とネットショップを連携させたい場合にお勧めです。Shopifyには、「Shopify POS」というサービスがあります。これを追加することで実店舗と統合したCRMが可能になります。個別のシステム開発が不要という点でとてもメリットが大きいと思います。
加藤: ゼロから素早くサイトを立ち上げて、アジャイルに機能拡張をしていきたいという場合には非常に適しています。一方で、ECサイトの仕様を細かく決めて開発していくようなウォーターフォール型の場合にはあまり向きません。1年後にどんな機能がShopifyに追加されているかわからないですし、小さなことでも仕様に縛られてしまうと拡張機能がその通りに動作できないケースもあるからです。
――もうひとつ不安といえば、日本語にどのくらい対応しているのでしょうか。
井形: 世界中から約7,000、日本からは約100のアプリがアプリストアにあると聞いています。日本のアプリはいますごく求められているので、EC系のプログラム開発者にとってもチャンスだと思います。定番と言われるアプリの半分は海外製で、日本語に対応していないものもあります。先日、「日本語で問い合わせできてうれしいです」と言われました。日本語アプリの需要を感じますね。先に紹介した熨斗に対応するアプリは日本のベンダーがリリースしています。
――ヘルプを英語で読むのは辛いので、日本語のアプリはどんどん増えて欲しいです。
加藤: 逆に、EC担当者に英語ができる人を置くと7,000の世界のアプリが選択肢になります。海外進出も視野に入れるなら、そういう人材を選ぶというのも手かもしれません。
岡田: あとは、Twitterでつぶやくと教えてくれる人がたくさんいます(笑)。我々もShopifyの新情報は、Twitterで知ることが多いです。
井形: Shopify自体オープン・インターネットという考え方を大切にしていて、技術をクローズドにしないんです。そのために、Shopifyの情報やノウハウはシェアされているのもすごくいいですね。コミュニティが強いために利用者も開発者も共にメリットが得られ、一緒に成長していける環境です。
マーケティング目線でShopifyは推せる?
――Shopifyは基本機能でもアクセス分析やストア分析ができるとのことですが、このあたりの特徴を教えてください。マーケターにとってのメリット・デメリットがあれば知りたいです。
岡田: マーケティング的には短期間に低コストで企画を実行できるというのが一番かなと思います。メルマガ配信やカゴ落ちメール、クーポンやディスカウントなどを利用して販売を促進できますし、InstagramやFacebookなどのSNSと連動した集客、Googleショッピング広告との連動集客も可能です。
また、Shopifyの管理画面の中には、「ストア分析」機能があり、レポート画面では売上、集客、利益率、顧客ごとの売上、キャンペーン分析などの情報を見て分析できます。これがかなりリッチな情報なので、基本的にはShopifyのデータだけ見れば日々の情報把握はOKです。外部の流入経路を見たいということがあればGoogle アナリティクスを見ますが、非常によくできている機能です。
加藤: Google アナリティクスとは連携していますが、Googleアナリティクス4にはまだ対応していないので注意が必要です。
Shopifyはこれからどうなる?
――皆さんがShopifyに期待することはなんですか。
井形: 2021年にパートナーを表彰するアワードを実施していて、Shopifyコミュニティの活性化に貢献した会社を表彰するなどしていますが、今後もShopifyパートナーを支えていってほしいと思います。Shopifyのミッションは、起業する人を支援することです。Shopifyで成功する人もいますし、その一方で我々のようにShopifyで成功するのを助けることが仕事になる会社がたくさん出てくることを期待しています。
岡田: Shopifyはほかの機能との接続が速いのが特徴ですね。移り変わりが早いので、APIもいまも十分に贅沢な環境ですが、さらにそういうものが次々出てくることを期待しています。
東: 「Shopifyは小売のOS」とShopifyのCEOが言うのを聞いて衝撃を受けた人間のひとりとして、Shopify POSもそうですし、Shopifyが目指す進化というのは、小売全体の在り方を変えていくと思っています。変化の激しいECの世界で流れに遅れたくないならばShopifyを使っておけば安心、というふうに今後はなっていくかなと予想しています。
加藤: 僕はエンジニア出身なのでその視点からいうと、ECシステムがOSのような形で成長していくということは、コマースの体験がデータ化している状況です。いまはデータ化できて便利になったな、という段階ですが、今後はコマースをする側がデータを使ってよりよい製品を作ったり、UXを向上させたり、といったことも可能になるでしょう。これからは、データを見ることから一歩踏み込んで、データをアクションに繋げられるシステムになるといいなと思っています。
――皆さん、ありがとうございました。
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