インタビュー

LINE Creative Lab上で、Adobe Expressの機能が使えるようになった!アドビ×LINEヤフー協業の目的・背景を聞いた

今回の連携でどのようなことができるようになったのか。LINEヤフー 林嘉信氏、岩村沙絵氏、アドビ 有川慧氏に話を聞いた。
 

2023年10月、LINEヤフーと「クリエイティブ創作支援の協業」を発表したアドビが、その具体的な動きの第1弾として、「LINE Creative Lab」において「Adobe Express」との連携機能の提供を開始した。今回の連携でどのようなことができるようになったのか。協業の目的や背景と併せて、LINEヤフー 林嘉信氏、岩村沙絵氏、アドビ 有川慧氏に話を聞いた。

プロのデザイナーでなくても画像作成やデザインをする時代

数年前まで、Webサイト周りのデザインや画像・動画の作成は、プロのデザイナーが一手に引き受けていた。しかし、デジタルマーケティングにおけるWebサイト、アプリ、SNS、デジタル広告の利用拡大により、スピーディに多数のクリエイティブが必要になったことで、デザイナーに細かに発注する時間的/コスト的な余裕がないというケースが増えている。また、個人経営の店舗や小規模な会社などは、そもそもプロのデザイナーに依頼する予算の捻出が難しいという事情もある。

そうした企業が重宝しているのが、各種デジタルツールや生成AIだ。LINEヤフーが提供する「LINE Creative Lab」は、LINE広告やLINE公式アカウント用のクリエイティブを手軽に制作できる、無料のクリエイティブ作成ツールである。LINEアカウント、またはLINEビジネスアカウントがあれば使える。主な特徴は以下のとおり。

  • すべての機能が無料で利用できる
  • 多数のテンプレートが用意されている
  • 複数のデザインを自動で作成してくれる
  • 動画クリエイティブが作成できる(LINE広告を利用可能なアカウントのみ)
  • 作成したクリエイティブをダウンロードできる
  • 他媒体用の画像を一度にまとめてLINE広告用のサイズにトリミングできる

LINE広告を少額から始めたい、LINE公式アカウントをもっと活用したいという層に、気軽に簡単にクオリティの高いクリエイティブを作れるように提供しているデザインツールが、「LINE Creative Lab」ということだ。

一方、アドビでも、ノンプロフェッショナルが使いやすいツールを提供している。それが「Adobe Express」だ。Adobe PhotoshopやAdobe Illustratorなどとも連携が可能なAdobe Creative Cloud内のデザインアプリで、無料から活用できる。

こちらも、テンプレートが提供されていて、それに必要な手を加えるだけで“イケてる”デザインができるというもの。SNSの投稿画像や簡単なアニメーション、YouTubeのサムネールやロゴ、ポスターやちらしなど、さまざまなテンプレートがある。また、「Adobe Stock」の素材や「Adobe Fonts」のフォントが利用でき、生成AIの機能も使える優れものだ。

「Adobe Express」と「LINE Creative Lab」の連携機能を提供開始

アドビとLINEヤフーの協業の背景

LINE広告やLINE公式アカウント用のクリエイティブは、他のSNSやバナー広告とは画像サイズが違うため、既存のサイズのテンプレートをそのまま流用できない。Photoshopなどの画像編集ソフトを使って修正しなければならないが、よくわからない、手間がかかりそう、と思う人も多いだろう。

LINE広告やLINE公式アカウントを活用する広告主や個人事業主が広告クリエイティブ、つまり画像を作るプロセスに課題を感じているケースがすごく多かったんです。なんとかして解決できないか思案していたところ、アドビさんがノンプロフェッショナルでも気軽に使えるアプリを提供していることを知り、「LINE広告やLINE公式アカウントのテンプレートの実装」ができないか相談に行きました(林氏)

当初は、ツールを連携することまでは想像していなかったという。しかし、「開発を進めるには、お互いにきちんとビジネスケースがあるのか、ビッグピクチャーを描いた方がいいという話があり、議論を重ねた」(林氏)。その結果、2023年10月の「クリエイティブ創作支援のため協業」の発表に至ったというわけだ。

今、プロのデザイナーではない一般の方も自分でデザインしなければならない世界になり、クリエイターエコノミーが活性化しています。クリエイティブ制作のニーズが非常に増えていくだろうというマーケットの動向もあり、業界に大きく打ち出していこうという話になりました。ですから協業内容では、ツールの連携だけでなく、最新動向や創作活動に役立つノウハウが学べる講座の提供や、コミュニティの共創にも言及しています(林氏)

 LINEヤフー株式会社
 ビジネスPF統括本部ビジネスソリューション開発本部
 ビジネスインキュベーション部クリエイティブソリューションチーム リーダー
 林嘉信氏

「Adobe Express」という製品は、「すべての人につくる力を」というミッションのもと、提供しているアプリです。今まで、アドビといえばプロデザイナー向けのツールというイメージがどうしても強かったのですが、より多くの方にクリエイティビティを発揮してもらおうということで打ち出している製品なので、ミッションに強く共感し、ぜひ一緒に取り組んで盛り上げていきたいと思いました(有川氏)

 アドビ株式会社
 マーケティング本部戦略・統合マーケティング部
 マーケティングスペシャリスト
 有川慧氏

ツール連携で何ができるようになったのか

ツールの連携では、以下の4つのメリットがあるとLINEヤフーの岩村氏は言う。

①機能連携

「LINE Creative Lab」の画面内に「Adobe Express」を起動できるボタンが設置され、これをクリックすることで「Adobe Express」が立ち上がる。また、「Adobe Express」は「Adobe Stock」や「Adobe Fonts」とも連携しているので、そこで提供されている画像やフォントを利用でき、素材集めの手間も削減できる。

画面右上に[Adobe Expressで作成]のボタンがある(画像は2024年3月15日時点のもの。現在は異なる可能性があります)

「アドビはプロ向け」と視界に入っていなかったLINE広告やLINE公式アカウントを利用する方に認知してもらい、「使いやすい」「機能が豊富」と思ってもらえるのがアドビにとってもメリットとなる。また、社内にデザイナーがいる企業では、最初のテンプレートをデザイナーが「Adobe Express」で作って、クリエイティブが摩耗してクリック率が下がったと思ったら広告運用の担当が自分で手を加えるような使い方もできそうだ。

 LINEヤフー株式会社
 ビジネスPF統括本部ビジネスソリューション開発本部
 ビジネスインキュベーション部クリエイティブソリューションチーム
 岩村沙絵氏

②テンプレートの新規追加

「Adobe Express」内に、LINE広告やLINE公式アカウント専用のテンプレートが約470点追加されている。このテンプレートを利用して、効果的なクリエイティブが作成できる。テンプレートは大量にあるので、「美容」「飲食」など検索して絞り込むことができる。

「Adobe Express」が提供する計470点の豊富なテンプレート

プロのデザイナーが、業種ごとのデザインの知見をもとに新たにデザインを制作して、テンプレートとして提供した(有川氏)

統計調査からわかったLINEヤフーのプラットフォームで反応の良い要素や傾向などを共有し、参考にしながら作成していただいた(林氏)

③広告管理画面にそのまま入稿

「Adobe Express」で作成したクリエイティブを、LINE広告の管理画面に直接登録できる。従来であれば、「Adobe Express」で作成したクリエイティブをローカルに保存してからLINE広告の管理画面にアップロードする必要があったが、その手間が不要になる。

ここまでの流れを簡単に紹介した動画がある。

【Adobe Express】「LINE Creative Lab」との連携機能で、広告クリエイティブの制作をレベルアップしよう | アドビ公式

④生成AIを活用したクリエイティブ作成

「Adobe Express」では生成AIの機能も使えるので、「LINE Creative Lab」のユーザーが「テキストから画像生成」や「生成塗りつぶし」の機能が使えるようになる。

プロンプトからの画像生成は、作りたいものが明確な人は使いこなせると思うが、「LINE Creative Lab」がターゲットにしている方はそこまで明確ではない方もいる。だから、テンプレートで使っている画像を少し変えたいなどの使い方がメインだと思います。

背景として使っている画像の上にテキストを重ねたいが、映り込んでいる要素がじゃまだなというときに、余計なものを風景で塗りつぶしたり、顔を少し変えたりするといった使い方です。生成AIに興味がある方がまず使ってみるには、いい機能だと思います(林氏)

以前は、不要なものを選択ツールで地道に選択して削除しなければならず、かなり手間がかかりました。それが、範囲を指定して簡単に取り除けるようになり、作業効率が格段に改善しています(有川氏)

「Adobe Express」が提供する生成AI機能「テキストから画像生成」

どのような課題を抱えるユーザーに使ってほしいのか

想定しているユースケースとして、大きくは2つある。

ひとつは、マーケティング予算が大きく、配信効果を高めるためにクリエイティブのテストやPDCAを実施している企業。そちらに向けては、LINEヤフーのプラットフォームで反応の良い要素や傾向が盛り込まれたテンプレートを提供している。

逆に、予算や時間が十分ではない人、本業は別にあってデジタル広告のクリエイティブ制作もやらなければならなくなったような人。そういう人は往々にして知見がなく、広告クリエイティブをどうやって作ればいいのかわからない。そういうユーザーに向けては、悩まなくてもいいようにガイドとなるようなテンプレートを提示し、必要な部分を修正すればいいという環境を提供する。

約470点のテンプレートが提供されているので、それらを使うだけでもかなり高品質のクリエイティブが作れることだろう。これらのテンプレートは、LINEヤフー社内でも「素晴らしいデザイン」として話題になったとのこと。そして慣れてきたら、話題の生成AIをちょっと触ってみるというチャレンジもできる。

また、今後の展開に関して岩村氏は、「より多くのLINEヤフーのプロダクトをご利用いただいているオーナーのために、多様なクリエイティブフォーマットへの対応やグローバル向けのテンプレートなども拡充していきたい」と意気込む。もちろんこれは、アドビ社の協力が不可欠となる。

林氏は、「今回の『LINE Creative Lab』と『Adobe Express』の連携は、LINEヤフー社とアドビ社の協業の第一ステップ。生成AIが出てきて、やり方や世界観が劇的に変わっていく可能性もある。そういうニーズをしっかり捉えることが重要だし、クリエイターエコノミーを盛り上げていきたいと考えている。それをアドビと一緒にやっていきたい」と言う。

有川氏も「まだここは最初の一歩。将来的に継続的な取り組みをして、広告だけではなくエンタメなど、クリエイターの社会をより盛り上げていく、あるいは生成AIやクリエイティブツールが使われるのが当たり前のようなカルチャー作りが一緒にできればよいなと思っている」と語った。

2024年3月29日には画像作成で悩む人を対象に「Adobe ExpressでつくるLINE公式アカウント制作」をテーマにオンラインセミナーの開催を予定している。無料なので、興味がある方は参加してみてはいかがだろうか。

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