SEOとコンテンツ改善で売上がたった半年間で16倍! 高速PDCAの回し方を大公開
Webサイトを立ち上げたものの売上があまり上がらず、予算の投下が難しいサイトに対して、高速PDCAサイクルを回しながら、SEOに加えてコンテンツ改善を行うことで、月間売上が半年で16倍になったノウハウを紹介します。
ボックスティッシュ販売サイト「TAKARABAKO」の背景
ボックスティッシュ販売サイトのTAKARABAKOは2014年8月にオープンした企業向けボックスティッシュ販売サイトです。製造元だからできる高品質、低価格の商品を小ロットで販売しています。ネット販売が中心でしたが、なかなか集客ができないことが悩みでした。
施策の方向性
サイトオープン当初、TAKARABAKOの売り上げがあまりなかったこともあり、サイト運営や広告にかける予算が潤沢にありませんでした。そこで、予算をそこまで掛けることなくできる、次のような集客施策を2015年3月より約半年間かけて、段階的に実施しました。
- 第1ステップオーガニック検索からユーザーを獲得するためのSEO施策を実施(約3か月間)
- 第2ステップコンバージョンを上げるコンテンツ改善を実施(約3か月間)
第1ステップ
オーガニック検索からユーザーを獲得するためのSEO施策を実施
第1ステップとして、SEO施策を実施するにあたって、次のような流れで実施していきました。
①Google Search ConsoleとGoogleアナリティクスを連携して現状分析
解析の下準備のためにまず、Google Search Console(旧Googleウェブマスター ツール)を導入しました。
サイトオープン当初に、Googleアナリティクスはすでに導入済みだったので、今回はGoogleアナリティクスだけでは解析が難しい、「サイトマップ登録」や「インプレッション獲得」などの詳しい解析を行うために、Google Search ConsoleとGoogleアナリティクスを連携しました。
また、Googleアナリティクスのデータからサイトの現状を調べました。
また、Googleアナリティクスのデータからサイトの現状を調べたところ、Googleアナリティクスは導入されているものの、コンバージョン設定(目標設定)を行っていないことがわかりました。そのため、購入手続きが完了されるとコンバージョンするといった設定を行いました。
アクセス数がそもそも少なかったため、アクセス数を増やすためにサイトのSEOを強化することにしました。
②SEO対策の実施
オーガニック検索からの流入を増やすために、SEO施策を行いました。
SEO施策を行ううえで重要となるのは「キーワード選定」です。どのようなキーワードを選定するかを見誤ると、検索順位が上がったにもかかわらずアクセスが増えなかったり、コンバージョンに結びつかなかったりと何のための施策かわからなくなってしまいます。
キーワードを選定するときは、売り上げにつながり、アクセスが発生するキーワードを選ぶことがとても重要です。
キーワードの選定方法
前段落で説明した、Google Search ConsoleとGoogleアナリティクスを連携させることでキーワード選定のヒントを得ることができます。
- どのようなキーワードで検索されたときに、自社のサイトが表示されるのか
- そのキーワードでの掲載順位やクリック数、CTRなど
これらを使って、表示回数がある程度多く、CTRが高いキーワードをピックアップしていきます。たとえば、あるキーワードの掲載順位が2、3ページ目にもかかわらず、見に来てくれるユーザーが多い場合、そのキーワードは他と比較してニーズが高いと判断できます。
また、上記で選定したキーワードと一緒に検索されるキーワードも調べるといいでしょう。
今回、TAKARABAKOの場合上記条件にあてはまるメインキーワードは、次のようなものでした。
ボックスティッシュ
BOXティッシュ
これらのキーワードと一緒に検索されているキーワードは、次のようなものです。
ボックスティッシュ 販売
ボックスティッシュ 激安
メインのキーワードと一緒に検索されるキーワードを調べるには、「goodkeyword※」というサービスを利用するといいでしょう。そこで調べた一緒に検索されるキーワードをGoogle Adwordsのキーワードプランナーに入力し、検索数が多いものをSEOで施策を行うキーワードとして選定するといいでしょう。
また、他社と差別化できる「強み」があるならば、それをキーワードとして加えていくといいでしょう。
TAKARABAKOの場合、一般的なティッシュボックスも販売していますが、「オリジナルデザインのボックスティッシュが作れる」ことがユーザーにとってのメリットであり、TAKARABAKOにとっても一番売りたい商品でした。そのため、今回は次のキーワードを最重要キーワードとしました。もちろんボックスティッシュのみでも上位表示されるようしますが、優先順位は下げました。
フルオリジナル ボックスティッシュ
トップページでは、メインとなる上記のキーワードを設定し、下層ページではもっとユーザーのニーズに合致するニッチなキーワードを設定していきました。そうすることで検索エンジンからサイトへ訪れたユーザーが欲しい情報と一致する可能性が高くなりコンバージョン率が高まります。
たとえば、下層ページに野球関連のボックスティッシュを取り扱っている場合は、次のようなキーワードを設定します。
球団名 ボックスティッシュ
※GoogleはAutocomplete APIの利用を制限すると発表しているため、突然このサービスが利用できなくなる可能性があります。
③SEO施策の結果:約3か月で8倍の売り上げ獲得
トップページや下層ページでキーワード設定を行った結果、2015年3月~5月の3か月でオーガニック検索からの流入が7倍に増加しました。そのおかげでリスティング広告の出稿を減らしたにもかかわらず、売り上げはこの時点で当初の8倍となりました。
第2ステップ
コンバージョンを上げるコンテンツ改善を実施
さらに、売り上げを向上させるために第2ステップの「サイトへ訪れたユーザーのコンバージョン率を上げるためにコンテンツ周りの改善」を実施しました。コンテンツ施策を実施することで、なんとさらに売り上げを2倍にすることができました。
当初と比較すると売り上げが16倍にも跳ね上がりました。具体的にどのようなコンテンツの改善を行ったのか事例を紹介する前に、PDCAを回す方法を解説します。
PDCAとは?
サイト改善を継続的に行うためには、PDCAを回す必要があります。PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4段階を繰り返すことによって、継続的に改善することです。今回は、「なるべく早く効果を出してほしい」との要望だったので、高速PDCAを実施することにしました。
- Plan(計画)アクセス解析結果から問題点を分析する
- Do(実施)施策の実施とリスティング広告の出稿
- Check(評価)施策の評価
- Action(改善)更なる改善
Plan(計画)アクセス解析結果から問題点を分析する
SEO施策を行ったことで、オーガニック検索からの流入が増え、売り上げは向上していましたが、サイト解析を行った結果、次のようなことがわかりました。
- サイト全体の直帰率が高い
- トップページ、商品ページからご利用ガイドのページを見ている人が多い
- ページ下部のクリック率が低い
そこで、それぞれの問題点をさらに解析してきました。
①サイト全体の直帰率が高い
「直帰率が高い」場合、一般的に考えられる原因は、オーガニック検索もしくは、広告からサイトに訪れたユーザーが求めていた情報が足りないためすぐにページを閉じてしまうことなどが挙げられます。ではTAKARABAKOの場合、どのページがボトルネックだったのでしょうか?
3月のデータを確認したところ、サイト全体の直帰率が72.11%でした。
特にランディングページとして流入の多いトップページの直帰率が75.62%とサイト全体の直帰率よりも数値が高かったため、まずトップページの直帰率の改善を最優先に行うことにしました。
②トップページ、商品ページからご利用ガイドページを見ている人が多い
トップページや商品ページから直帰しないユーザーの多くが、「ご利用ガイド」のページを見ていました。この理由を探る方法として、ユーザーにアンケートを取る方法も考えられますが、理由がわかるまでに時間がかかってしまいます。
そのため今回は、サイト内にヒートマップを実装し、「ご利用ガイド」のスクロール解析を行いました。調査期間が短かったため、結果の精度は低いかもしれませんが「ユーザーがどんな情報を求めて、ご利用ガイドのページを見ているのか?」に対する回答の仮説を立てる1つの資料が得られます。
TAKARABAKOで実施した結果、次のようなデータが得られました。
通常スクロール解析を行うと、ページ上部の滞在時間が長くなりますが、TAKARABAKOではページ中程(赤枠)の滞在時間が長くなっています。そこには、「送料について」が記載されていました。
この結果から、サイトに来たユーザーは、「送料についての記述を探してこのページに訪れているのではないか」という仮説が成り立ちます。
③ページ下部のクリック率が低い
ページ下部に配置されているコンテンツのクリック率が低く、本来ならば、いかにスクロールさせるかを考える必要がありますが、スクロールをさせなくても目的のページへ誘導することができれば問題ないとも言えます。
特に今回の対象サイトTAKARABAKOの商品点数はそれほど多くありません。ということを踏まえるとファーストビュー(サイトを開いたときに見える範囲)にできるだけ多くの要素を入れることでこの問題は回避できるのではないかという仮説が成り立ちます。
Do(実行)施策の実施とリスティング広告の出稿
Plan(計画)で解析した仮説をもとに、次のような施策を行いました。
送料に関する情報をトップページでわかりやすく伝える
「ご利用ガイド」ページの解析から送料について調べているお客様が多いことがわかったため、トップページの目立つところに「送料無料」のバナーをスライド表示で配置しました。
ファーストビューに「強み」となるコンテンツを配置
アクセスしてくるユーザーが、一番利用している画面サイズに合わせて、ファーストビューに「強み」となるコンテンツを配置し、スクロールせずともページ下部や商品ページへ移動できるようにしました。
サイドバーに取扱商品を配置
サイドバーを見ればTAKARABAKOで取り扱っている商品がわかるようにしました。もともと、商品数が多いわけではなかったので、すべての商品名をサイドバーで紹介しています。TAKARABAKOのターゲットは、個人客だけでなく、ノベルティ販売を行う業者や同業も含まれます。そのため、あえて「○○W(※)」といった業界用語を使っています。
※○○Wとは、ティッシュ枚数のこと
メインビジュアルに商品特徴、送料、主力商品をスライド表示
TAKARABAKOとして伝えたい情報に加えて、ユーザーニーズが多い情報をファーストビューでスライド表示しました。スライド速度を上げることで、ユーザーの目に触れる機会を多くする工夫をしています。
総取引回数や総顧客数で実績をアピール
オリジナルパッケージのティッシュボックスが作れるという強みがあるとしても、立ち上げたばかりのサイトでは知名度はありません。そのため、ユーザーに安心して注文してもらえるように、総取引回数や総顧客数をトップページに配置しました。
TAKARABAKOでは、大手薬局や大手ディスカウントショップなどにも商品を卸しています。また、ブログで詳細を書くことでユーザーの納得を引き出す仕掛けを行いました。
リスティング広告を出稿する
第1ステップのSEO施策を行ったことで、売り上げが増加しました。その結果サイト運用に掛けられる予算が増え、リスティング広告の出稿を出せるようになりました。
リスティング広告をこのタイミングで出稿する目的は、改善を行い施策がうまくいったかどうかを確認するためです。
そのため、リスティング広告を出稿するときは、「完全一致」、「絞り込み部分一致」を使って、サイトで実施しているキーワードとかい離がないようにします。
もちろん対象を広くすることで異なる角度のユーザーを獲得することは可能ですが、あくまでもここでリスティング広告を出す目的は、改善施策の検証のためです。ですから、主力キーワードの直帰率が下がったのか、CVR(コンバージョン率)が上がったのかを検証することが先決です。その成果が確認できた後に、他キーワードでコンテンツを追加したり、リスティング広告出したりしていくべきです。
Check(評価)施策の評価
今回Do(実施)で行った、リスティング広告を出すことでオーガニック検索の1.5か月分のデータを1週間ほどで獲得できました。そのデータをもとにGoogleアナリティクスやヒートマップの解析することで、施策の成果を判定していきます。
結果:リスティング広告出稿前後でサイト全体の直帰率が7ポイント下がった
リスティング広告を出稿する前、サイト全体の直帰率は50%まで改善していましたが、上記の改善施策を実施した結果、43%まで下がりました。
また、トップページに送料無料を出すことで、ガイドページへ移動するユーザーの数が減り、もくろみ通り各商品ページへ移動するユーザーが増加しました。
改善という課題に関しては、一定以上の効果が出たと言えるでしょう。しかし、目標は直帰率を下げることではなく、売り上げを上げることです。
トップページの直帰率が下がり、商品ページにユーザーが流れたことで、サイト全体のCVRの改善はされました。しかし、商品ページで絞りこんでCVRを確認してみると、変化がないことがわかりました。
Check(評価)するとき注意すべきポイントは、行った施策がどこに影響を与えたのかを把握することです。
施策を行って、サイト全体の数値が改善しているからといって、満足をしてしまうと気付きづらい箇所ですが、商品ページのCVRを改善することで更なる改善の余地があります。
Action(改善)更なる改善
サイト全体のCVRが上がったことに満足することなく、次に改善すべき箇所に気付けるデータ解析をすることが、PDCAサイクルを回す重要なポイントです。
商品ページの改善施策を更に行うことで、次のような結果を得ることができました。
- サイト全体の直帰率 72.11% → 19.01%
- トップページの直帰率 75.62% → 31.62%
- 売上 16倍(2月比)
- ページビュー数 1,232 → 8,328
PDCAを回し、改善施策を行うことで、トップページやサイト全体の直帰率が下がり、月間ページビュー数も7倍以上に増えました。
また、大口の取引先が増え、大量注文が増えたことで、サイト運用開始時点から半年で売り上げを16倍とすることができました。
今回ご紹介した方法は、一事例であってどのようなサイトでも同じようなことができるとはいえないかもしれませんが、リスティング広告とSEO、そしてコンテンツの改善をバラバラに考えずにサイト全体としての売り上げが上がるように、皆さんもぜひ自社のサイトに合った改善施策を行っていただきたいと思います。
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