BtoB企業が検索エンジンから見込み客を集客するには? キーワードから考えるコンテンツマーケティング
中小企業、特にB2B企業では広告宣伝費が潤沢にあるわけではなく、サイトにどうやって集客するかは担当者の悩みの種ではないでしょうか。今回は、中小企業のB2Bサイト担当者が検索エンジンから効果的に見込み客を集客するためSEO対策として、キーワードからコンテンツを作るコンテンツマーケティングについて解説します。
お客さんは商品が欲しいわけではない。効果が欲しいのだ!
キーワードからコンテンツを作る方法を解説する前に、なぜキーワードから考えるべきなのかを、ユーザーの気持ちになって考えてみましょう。
お客さんは商品が欲しくて買うのではありません。その商品を使うことによる効果や機能が欲しいのです。
たとえば新聞を買う人は新聞が欲しいわけではなく、新聞を読むことで最新の情報を得たいから新聞を買うのです。ですから、最新の情報が得られれば、必ずしも新聞にこだわる必要はなく、テレビニュースやインターネットニュースでもかまわないのです。
ホームページやWebコンテンツを作るとき、この考え方を忘れてはいけません。ユーザーが検索エンジンでキーワードを入れて、商品を探しているときは、その効果が欲しいのです。
お客さんが検索するキーワードからコンテンツを考える
では、実際に上記の考え方を具体的な例を用いて紹介していきます。今回、事例として紹介するのは、粉砕機やかくはん機を製造するメーカーのタニナカO&K株式会社です。
突然ですが、皆さんに質問です。粉砕機やかくはん機を購入したい見込み客は、どんなキーワードで検索してくると思いますか?
考えてみてください。
最初に思い浮かぶのは「粉砕機」というキーワードではないでしょうか?
粉砕機のメーカーなのだから「粉砕機」というキーワードで検索されます。当然といえば当然です。しかし、前述したようにお客さんは「粉砕機」が欲しいわけではありません。「粉砕機」を使うことで、何かを細かく砕きたいのです。つまり、粉々にできるのであれば粉砕機でなくてもいいかもしれません。
ユーザーが絞り込むキーワードで上位表示されることを目指す
実際に検索エンジンで「粉砕機」と検索した結果を見てみると、さまざまな用途で使われる粉砕機がひとまとめに掲載されています。
「自動車やバイクのような大型な物を粉砕する粉砕機」「樹木や竹を粉砕する粉砕機」「製薬会社などで薬を作るために使われる粉砕機」など広範囲の検索結果がヒットします。
こういった場合、お客さんはまず「粉砕機」と検索した後、この検索結果から自分が探している粉砕機を見つけようとするでしょう。しかし、すぐに見つからなかったら、自分が粉砕したいものや使う状況など、検索結果を絞り込むような具体的なキーワードで検索するはずです。
たとえば、大手食品メーカーが「じゃがいも」を大量にする業務用のじゃがいも粉砕機を探していたとします。
その場合、粉砕機とまず検索してみて、自分が欲しい検索結果が得られなかった場合、「じゃがいも 粉砕」や「じゃがいも 粉砕 業務用」といったキーワードで検索するでしょう。より精度の高い検索結果を得るために、ユーザーは絞り込むためのさまざまなキーワードを入力します。
タニナカO&Kでは、ユーザーが絞り込んだキーワードで上位表示されるように、じゃがいもを粉砕した事例をウェブサイトで事例紹介として掲載しているため、「じゃがいも 粉砕」で検索したときにちゃんと検索結果に表示されます。しかし、競合他社のウェブサイトはほとんど表示されないため、見込み客はタニナカO&Kのウェブサイトだけを見ることになります。
そしてそのページを見ると、実際に粉砕機を使ってじゃがいもを粉砕した事例が掲載されています。食品メーカーはじゃがいもを粉砕したいわけですから、やりたいことそのものが事例紹介として掲載されているわけです。ですから、ユーザーにとってほしい情報が手に入り、サイトを掲載している企業としても見込み度の高いユーザーがサイトに訪問してくれることになります。
実際に、このページを見た食品メーカーから問い合わせがあり、トントン拍子に契約がまとまりました。
「粉砕機」というキーワードで検索された場合、タニナカO&Kの粉砕機では粉砕できないものを粉砕したいと考えている人も多くいます。しかし、「じゃがいも 粉砕」で検索してくる人の多くはじゃがいもを粉砕したいと考えているわけですから、顧客になる可能性が非常に高いことはおわかりだと思います。
確かに「粉砕機」というキーワードで検索する人に比べて、「じゃがいも 粉砕」というキーワードで検索してくる人はそれほど多くはいません。もしかすると1か月に1人だけかもしれません。
しかし、タニナカO&Kのウェブサイトには、「じゃがいも 粉砕」の事例だけでなく、「生ぶしの粉砕」「魚のあらの粉砕」「ラーメン生地の粉砕」「パンのみみの粉砕」「かぼちゃの粉砕」「ぎょうざの皮の粉砕」など実に多くの事例が掲載されており、それぞれのページがそれぞれのキーワードで上位に表示されています。
1つの事例ページからの訪問者が1か月に1人だったとしても、事例のページが100ページあったとしたら、毎月100人の見込み度の高い顧客を集めることができます。
検索エンジンで検索してくる人は、なんとなくあなたの会社のウェブサイトにやってくるわけではありません。何かの悩みや欲求があって、それを解決する方法を探してたどり着くのです。
自社の商品を検索している人は、
- どんな悩みや欲求をもっているのだろうか?
- どんなキーワードで検索をするだろうか?
ということを考えて、そのキーワードにヒットするページを作成しましょう。
商品・サービスありきでウェブサイトを作るのではなく、ターゲットとなるお客さんの悩み・欲求を明確にして、そのお客さんの気持ちになってウェブサイトを作っていくことが大切です。
コンテンツ作りは自社内で行った結果、30%が売り上げUP
これらの事例紹介のページは業者に依頼して制作してもらうのではなく、CMS(コンテンツマネジメントシステム)のWordPressを利用して自社内で追加・更新を行っています。追加費用を発生させることなく、リアルタイムにページを追加・更新できることはCMSのメリットでしょう。
ページを作り込むことで、タニナカO&K株式会社では事例紹介ページの作成前に比べて売り上げを30%アップさせることに成功しました。
絞り込むキーワードの選定方法
ここからは、キーワードの選定方法について説明します。通常、「キーワードを考えてください」といわれると、キーワードを羅列すると思います。
たとえば、ウェブサイト制作会社の場合、次のようなキーワードがあるでしょう。
サイト制作
ウェブ制作
ホームページ制作
ホームページ 安い
ウェブサイト 大阪
このキーワードを選定するときにありがちな間違いが、キーワードを「サイト制作、ウェブ制作、ホームページ制作」の3つに絞るという方法です。
これらはどれもメインとなるキーワードです。サイト制作会社を探すときに「サイト制作」だけで検索する人はいても、「サイト制作、ウェブ制作、ホームページ制作」という3つのキーワードを一緒に使って検索する人はいません。
多くの人は、「サイト制作」というメインのキーワードに、「中小企業」「エステ」「安い」「大阪」などキーワードを組み合わせて検索します。「サイト制作」だけでは業者が多すぎるので、そのなかから自分の好みに合う業者を絞り込むためのキーワードを入力します。
キーワードコンビネーションで上位表示
絞り込むためのキーワードを選定する場合は以下のような表を使い、「メインキーワード」「特徴キーワード」「地域キーワード」の3つのカテゴリに分けて考えます。
私はこれをキーワードコンビネーションと呼んでいます。
メインキーワード | 特徴キーワード | 地域キーワード |
---|---|---|
サイト制作 | 中小企業 | 大阪 |
ウェブ制作 | BtoB | 吹田 |
ホームページ制作 | 製造業 | |
: |
メインキーワード
「メインキーワード」は、何かを検索するときに最初にユーザーが思い浮かべるキーワードです。サイト制作会社の場合、「サイト制作」や「ウェブ制作」「ホームページ制作」がこれにあたります。
特徴キーワード
「特徴キーワード」は、言い換えれば、ユーザーのニーズを表現するキーワードです。
特徴キーワードは、「中小企業」「BtoB」「製造業」「値段が安い」「デザインがきれい」「エステの事例が多い」といった検索されるものであれば何でもいいわけではなく、「どんなニーズを持ったユーザーにサイトに来てもらいたいか」「自社が応えられるユーザーのニーズや欲求、願望、困った、悩みはどんなキーワードなのか」といった視点で考えていく必要があります。
たとえば、機械に使われる部品を作っている会社の場合、次のような強みがあったとします。
- 高精度の部品加工
- 小ロットでもオーダーに応じられる
- 納期が早い
つまり、自社に強みとマッチするユーザーはどんなキーワードで検索するだろうかと考え「高品質」「小ロット」「短納期」……とキーワードを増やしていくのです。
納期が早くない会社が「短納期」のキーワードで上位表示されたとしても、訪問者は増えるかもしれませんが、納期が早くないわけですから受注は増えません。どんなニーズを持ったユーザーに来てもらいたいのか、競合他社と比べて自社の強みは何なのかを把握した上で、それら強みをユーザーがどんなキーワードで入力するのかに変換して特徴キーワードを選定しましょう。
地域キーワード
「地域キーワード」は地域を表すキーワードです。自社のウェブサイトを制作してほしいと思ったときに、電話やメールだけで打ち合わせをすることもできますが、やはり会って打ち合わせをしたいという人は多いでしょう。その場合、打ち合わせに来てくれる業者を探すために、地域のキーワードを使う可能性は高いです。この地域キーワードにどんな地名を使うかは扱う商材によって変わってきます。
ウェブサイト制作の場合は、「大阪」や「吹田」のような「市」や「都道府県」といった規模のキーワードが使われる場合が多いです。しかし、整骨院の場合は、自分の家や職場の近くで探しますからもっと具体的な町名や駅名で検索されることが多くなります。
もちろんネット通販の場合は地域キーワードは使われないことがほとんどでしょう。見込み客が地域のキーワードを使うとしたらどんなキーワードを使うだろうかという視点で考えてみてください。
各カテゴリに入るキーワードは、思いつくものはすべて記入してください。また、商材によって特徴キーワードや地域キーワードが変わる場合は、それぞれ別の表にして考えてください。
各カテゴリにキーワードを入力したら、次にそれらのキーワードを組み合わせていきます。
キーワードから必要なページを考える
次の切削加工会社の事例でキーワードの組み合わせを考えてみましょう。特徴キーワードは次のように複数ある場合もあります。
メインキーワード | 特徴キーワード1 | 特徴キーワード2 | 特徴キーワード3 | 地域キーワード |
---|---|---|---|---|
切削加工 | 精密 | 自動車部品 | ステンレス | 大阪 |
旋盤加工 | 高品質 | トランスミッション | 銅 | 東大阪 |
高精度 | ブレーキ部品 | ニッケル |
上記の例で見ると、メインキーワードは「切削加工」「旋盤加工」の2つがあります。まず「切削加工」というメインキーワードに対して、1つの特徴キーワード、地域キーワードを組み合わせてできるキーワードは、次のようなものがあります。
切削加工 精密
切削加工 高品質
切削加工 高精度
切削加工 ステンレス
切削加工 銅
切削加工 ニッケル
切削加工 大阪
切削加工 東大阪
同様に複数のキーワードを組み合わせると、次のような組み合わせができます。
切削加工 精密 ステンレス
切削加工 精密 銅
切削加工 精密 ニッケル
切削加工 精密 大阪
切削加工 精密 東大阪
切削加工 精密 ステンレス 大阪
切削加工 精密 銅 大阪
切削加工 精密 ニッケル 大阪
切削加工 精密 ステンレス 東大阪
切削加工 精密 銅 東大阪
切削加工 精密 ニッケル 東大阪
切削加工 高品質 ステンレス
切削加工 高品質 銅
切削加工 高品質 ニッケル
切削加工 高品質 大阪
切削加工 高品質 東大阪
切削加工 高品質 ステンレス 大阪
切削加工 高品質 銅 大阪
切削加工 高品質 ニッケル 大阪
切削加工 高品質 ステンレス 東大阪
切削加工 高品質 銅 東大阪
切削加工 高品質 ニッケル 東大阪
切削加工 高精度 銅
切削加工 高精度 ニッケル
切削加工 高精度 大阪
切削加工 高精度 東大阪
切削加工 高精度 ステンレス 大阪
切削加工 高精度 銅 大阪
切削加工 高精度 ニッケル 大阪
切削加工 高精度 ステンレス 東大阪
切削加工 高精度 銅 東大阪
切削加工 高精度 ニッケル 東大阪
「旋盤加工」のメインキーワードも組み合わせると更に倍のキーワードが考えられます。キーワードから組み合わせとして考えられないものがあれば外しましょう。
キーワードの掛け合わせを自分でやるのが面倒な場合は、次のようなキーワード掛け合わせツールがあるので、こういったツールを使ってみるのもいいかもしれません。
キーワード掛け合わせツール | SEM従事者のためのコミュニティ|SEMカフェ
http://sem-cafe.jp/tools/keywords1
無料のリスティング広告のキーワード掛け合わせツール、「KARABINER」をリリースしました。 | アナグラム株式会社
https://anagrams.jp/info/release-004/
ページを作る
このような組み合わせができたら、次にそれぞれのキーワードに対してヒットするページを作成していきます。
- 「切削加工 精密 ステンレス」というキーワードにヒットするページを作るとしたら、ユーザーはそのページに対してどんな情報を求めているのだろうか?
- 「切削加工 精密 銅」というキーワードにヒットするページを作るとしたら、ユーザーはどんな情報を求めているのだろうか?
といった具合に、検索キーワードにマッチするページを作っていきます。
まず商品ありき、サービスありきでページの内容を考えてキーワードを選定するのではなく、見込み客が検索するとしたらどんなキーワードを使うだろうかと考え、そのキーワードにヒットするページを作っていくのです。
これらのページにヒットするページとなると、「事例紹介」「お客様の声」「コラム」などのページが作りやすいです。
たとえば、「切削加工 精密 ステンレス」というキーワードからは、ステンレスの精密な切削加工の事例ページを作成します。タイトルや本文にそれらのキーワードを散りばめながらページを作成していきます。ページタイトルとしては、「精密なステンレス切削加工」という題名が考えられます。
ページごとにキーワードを変える
同様の精密なステンレス切削加工の事例が複数あった場合に、次のようにページを作成しているケースを見受けます。
- 精密なステンレス切削加工1
- 精密なステンレス切削加工2
- 精密なステンレス切削加工3
しかしこれでは、上記の3つのページは「切削加工 精密 ステンレス」というキーワードにはヒットしますが、それ以外のキーワードにはヒットしにくいページになっていまします。
この場合は、3つの事例をそれぞれ次のようなページにすれば、各ページが別のキーワードで検索にヒットするようになります。
- 精密なステンレスの切削加工
- 高品質なステンレスの切削加工
- 高精度なステンレスの切削加工
同様に
- 精密なステンレスの旋盤加工
- 高品質なステンレスの旋盤加工
- 高精度なステンレスの旋盤加工
というページも作成可能です。同じ事例であっても違ったキーワードを使ってページを作成することができます。
ただしキーワードさえ入れておけばいいというわけではありません。そのページを見込み客が見たときに、納得できるページになるようにコンテンツの中身を充実させましょう。
最後に
B2B向けSEOで大切なのは、顧客の立場に立って考えることです。
BtoBのウェブサイトで顧客が求めているのは「経費の削減」か「売り上げアップ」のどちらかです。まずはターゲットを明確にし、その顧客がどんな悩み・欲求を抱えているかを考えます。
そして、その悩み・欲求から顧客が検索エンジンで検索するとしたらどんなキーワードを使うかを想定して、そのキーワードにマッチするページを作成していきます。そのページにはその顧客の悩み・欲求を解決する方法として自社の商品があることを明示して問い合わせにつなげます。
このときに忘れてはいけないのは、ウェブサイトは自社の商品・サービスをわかりやすく伝えるツールだということです。SEOだけが得意で中身のない会社の場合、一時的にアクセスや問い合わせは増えるかもしれませんが、永続的な成果はありません。顧客の悩み・欲求と真摯に向き合い、それを解決する方法を常に提案し続けることがウェブサイトの成功にもつながることを忘れないようにしなければいけません。
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