「タグマネージャー」はタグを一元管理するだけではない! 隠れた機能を美少女キャラで解説
タグマネージャー(以下:タグマネ)は、タグを一元管理するだけではありません。この機能他に、ユーザーの回遊行動に基づいて広告配信ができるターゲット設定機能、D3Pと呼ばれるツール間のデータを相互利用する機能があります。タグマネージャーをフル活用すると、解析ツール、A/Bテスト、リターゲティング広告などの効果をさらに上げることができます。
この記事では、タグマネをフル活用するために機能を3つに分け、それぞれの特徴を解説します。また、タグマネを身近に感じてもらえるように擬人化して「タグマネちゃん」として解説していきます。タグマネちゃんが最後どのように進化を遂げるのかにも注目!
ワンタグだけがタグマネージャーではない! タグマネの真価とは?
タグマネージャーは、タグマネジメントシステムとも呼ばれ、一般的によく知られた使われ方は、キャンペーンなど複数あるタグを一元管理できる機能でしょう。しかし、これではタグマネを使いこなしているとはいえません。
タグマネには、解析ツール、A/Bテストツール、リターゲティング広告などで施策を行う場合よくある課題を解決できる機能もあります。たとえば、次のような課題を解決できるのです(解決方法は記事中で解説)。
アクセス解析で、サイトにとって効果的なユーザー行動はわかった。でも、打ち手につながらない。
A/Bテストで、ページの効果が良い方はわかった。でも、その効果が初回流入のユーザーなのか、リピートユーザーなのか、判断がつかない。
解析データを活かして、効果の良いユーザーにのみ広告を配信して、低コストで高コンバージョン率を獲得したい。
そこでこの記事では、タグマネの機能を次の3レベルに分けて解説していきます。
※リンクをクリックするとその解説に移動します。
タグマネをあまり使ったことがない人は、まずは1を読んでタグを導入することから始めてみてください。タグマネをすでに使っている人は、2と3を読んでタグマネをフル活用して効率的な広告運用をしてください。
レベル1
タグを一元管理するワンタグ機能
タグマネの基本機能として、「タグを一元管理するワンタグ機能」です。タグマネジメントツールが普及する前は、ワンタグツールと呼ばれるツールが普及していました。現在、国内では「Yahoo!タグマネージャー」や「Googleタグマネージャ」が有名です。どちらも無料で使えるタグマネです。
オンライン上でマーケティング施策を行う場合は、タグと呼ばれるものをWebサイトのHTML内に記述して、その効果測定をしていきます。タグの設置が必要なものとしては、次のようなものがあります。
- アクセス解析ツールのタグ
- ウェブサイトのA/Bサイトツールのタグ
- サイトやキャンペーンのコンバージョンのタグ
- リターゲティング、行動リターゲティング用のタグ
- アフィリエイトなど
キャンペーンやサイトの種類が増えれば増えるほど、設置するタグが増えていき、管理すべきタグがどんどん増えていきます。
タグマネを入れない旧来のやり方でタグを設置する場合は、Excelなどを使ってタグ管理を行い、1つ1つタグを手動で設置します。
新しい解析ツールを導入するたびに、また、新しい広告キャンペーンを行うたびに、外部のWeb制作会社や社内のサイト管理をしているシステム部門に、タグの設置や効果測定データの提出を依頼することになります。これでは、どのページにどのタグがあるのか管理が大変になり、いちいちタグの設置とタグを外す作業が発生するので、タイムリーな広告運用ができず機会損失が起きてしまいます。
それらの問題を解決できるのが、タグマネのワンタグ機能なのです。
広告を運用するマーケティング担当者がタグマネを利用して、「親タグ」のみ設置しておけば、タグマネの管理画面内でタグを設置することが可能になり、タグ設置までの工数とコストが大幅に下がります。
タグマネを擬人化した「タグマネちゃん」は、現段階では複数のことをテキパキとこなし、円滑に進むようにサポートしてくれる“部活のマネージャー”というイメージです。
ここまで説明したワンタグはタグマネの基本機能です。次から、タグマネをフル活用して効果的なウェブマーケティング施策を行うためのターゲティング機能を紹介していきます。
レベル2
ユーザー回遊行動をもとにした高度なターゲティング・イベント設定
次に紹介するのは、高度なターゲティング設定機能です。この機能は、主に広告の静的バナーのリターゲティング広告に有効な機能で、ユーザー回遊行動をもとに広告配信ができる機能です。この機能を使うにはタグマネ上で、JavaScriptを書く必要がありますが、技術者とうまく連携すると、効果が悪いユーザー回遊を除いたり、広告配信の出し分けをしたりが可能となります。
リターゲティング広告について簡単におさらい
ターゲティング設定機能を紹介する前に、一般的なリターゲティング広告について簡単におさらいしておきましょう。
リターゲティング広告とは、自社のサイトに訪れたユーザーが、広告配信枠を持つ別のサイトへ訪れたときに、自社サイトへの再訪を促す広告を配信することです。
一般的なリターゲティング広告を設計する場合は、サイト内の各ページに到達したユーザーインサイトに応じて、ページ単位でリターゲティング広告の設計を行います。たとえば、以下のようなことです。
- TOPページに訪れたユーザーには、ブランド名やロゴを訴求する広告。
- 商品(サービス)ページに訪れたユーザーには、閲覧したページの商品やその商品に対する疑問に答えるような広告。
- フォーム入力ページに訪れたユーザーには、購入を検討した商品や割引を促すような広告。
- サンクスページを訪れたユーザーには、類似した商品や購入した商品を訴求する広告。
しかし、この広告配信の方法では、訪問したページを基準としているため、あくまでもこのページに訪れるユーザーは、こんなニーズを持っているだろう、または、ユーザーは○○な状態だろうという仮定に基づいて配信していることになります。
サイトのどのページに訪れても、同じ広告を配信しているものと比べれば広告の配信効果は高いはずです。しかし、さらに広告の配信効果を高めるには、サイト内のユーザー行動に基づいた広告をした方がいいでしょう。
それを可能にするのがタグマネのターゲティング機能です。ページビュー数をCookieに付与させておき、Cookieを発動条件にして、「Yahoo!ディスプレイアドネットワーク」や「Googleディスプレイネットワーク」や「DSP」などのリターゲティング広告のタグを発動させることにより、広告の出し分けができるリスト作成がきます。
このリストを作成することで、コンバージョン率が改善した事例を紹介します。
事例で解説
タグマネを利用してリターゲティング広告のコンバージョン率UP
アフィリエイトからの流入にはリターゲティング広告を出さないリストを作成し、コンバージョン率がUPした事例を紹介します。
解析データ分析
解析データのリファラ(参照元)を以下の項目で比較しました。
- 純広告
- アフィリエイト
- オーガニック検索
- ソーシャル
- メールマガジン
- ノーリファラ
そうすると、アフィリエイトからの流入が他の項目と比較すると効果があまり出ていないということがわかりました。そこで、「アフィリエイト経由のユーザーは、ポイント目当ての流入が多いのでは」という仮説を立て、次のような施策を実施しました。
実施策
リファラごとのリターゲティングリストを作成し、アフィリエイトからの流入にはリターゲティング広告を出さないようにしました。
結果
アフィリエイトからのユーザーを除外することで、コンバージョン率は1.54ポイント改善しました。質の良いユーザーが多くなるので、入札価格を上げることにより、配信面も広がりコンバージョン数も増えています。
紹介した事例は、たくさんある改善方法のなかの1つです。この他にも、タグマネを利用することにより、さまざまなリスト作成が可能になりますので、ご紹介致します。
自社運用の状況によって、どのような施策を行えばいいか判断が難しいと思いますが、上図の右欄に優先順位を「★」の3段階で記載しています。まずは、優先度が高い項目で運用データのCTR(クリック率)やCVR(コンバージョン率)などを他の項目と比べてみてレートが悪いものがあったら、そのリストを作成してみるなど試してみてください。
特におすすめなのが、コンバージョン回数に合わせたリターゲティング広告を配信することです。引き上げ率をKPIにしているお客様であれば、初回購入ユーザーのリストを作成し配信することが可能です。コンバージョン回数に応じて、広告を出し分けることでリピート率が高まります。これらを実施するには、JavaScriptの技術が必要になりますが、施策の幅が広がりますし、精度を高められます。
ほらタグマネちゃんが、複数のことをテキパキとこなし、円滑に進むようにサポートしてくれだけでなく、部活の選手一人ひとりの練習メニューを考えてくれるような“デキるマネージャー”に見えてきませんか? 眼鏡をはずしただけ……?!(笑)
しかし、まだ利用されてない機能があります。最後に紹介するのがD3Pです。聞き慣れない機能だと思いますが、これを知るとタグの見る目は、さらに変わってくるかもしれません。
レベル3
ツール間のデータの横串を可能にするD3P機能
D3Pとは、「タグが設置されている複数ツールのデータをリアルタイムに見て、データを相互利用ができる」といった機能です。
ツール間のデータを横串で見たいときってありますよね。たとえば、ツール間のさまざまなデータをつないで活用するためには、プライベートDMP(データマネジメントプラットフォーム)を導入して一元化する方法もありますが、導入までのハードルが高いです。
さらに、プライベートDMPは導入の仕様がすべて決まっており、サイトやタグの記述なども仕様に合わせる必要があり、導入までのハードルが高くなります。場合によってはサイトを改修する必要もでてきます。また、今まで利用していたツールが使えなくなり、導入前後でも、操作方法やレポートに大幅な時間と工数がかかります。
それらを解決できるのがD3Pなのです。ちなみに、D3PとはDigital Data Distribution (D3P)という意味です。
では、D3Pができることを次のような例で解説します。
たとえば、解析ツール、A/Bテストツール、広告配信ツールの3つで施策を行っていたとします。ツール単体で次のような課題があるとします。
- 解析ツールの課題
解析でサイトにとって効果的なユーザー行動はわかるのだが、打ち手につながらない。 - A/Bテストツールの課題
ページの効果が良い方はわかったが、その効果が初回流入のユーザーなのか、リピートユーザーなのか、判断がつかない。 - 広告配信ツールの課題
解析データを活かして、効果の良いユーザーにのみ広告を配信して、低コストで高コンバージョン率を獲得したい。
これらの課題に対して、タグマネのD3Pを利用すれば、以下のような解決策を実施できるのです。下記図のように、タグマネを間に挟むことによって、各ツールのタグの発動条件や、Keyになる値をそれぞれ付与することにより、データの可視化ができるようになり、次の打ち手につながります。
解析ツールの課題
解析でサイトにとって効果的なユーザー行動はわかるのだが、打ち手につながらない。解決策
タグマネで、1stパーティCookieを付与させて、付与した1stパーティCookieベースで、タグの発動条件付けを行い、効果の良い行動をとったユーザーにのみ、打ち手のタグを発動させることが可能です。A/Bテストツールの課題
ページの効果が良い方はわかったが、その効果が初回流入のユーザーなのか、リピートユーザーなのか、判断がつかない。解決策
タグマネで、初回流入ユーザーにのみ、初回訪問日と初回リファラを付与します。特にGoogleアナリティクスでは、データの中身が見えないので、カスタムディメンションを付与させておくことにより、初回訪問日と初回リファラによる、アトリビューションが可能になります。また、A/BテストツールのCookieにあるユーザーを判別するIDを解析ツールに付与させることにより、ユーザー単位での解析が可能です。
広告配信ツールの課題
解析データを活かして、効果の良いユーザーにのみ広告を配信して、低コストで高コンバージョン率を獲得したい。解決策
タグマネが付けた1stパーティCookie情報をもとに、全ネットワークへ広告の配信を行うことが可能です。たとえば、Googleアナリティクスのリマーケティングだと、Googleのネットワークにしか配信ができなかったですが、タグマネのD3Pを使えば、GoogleやYahoo!など、すべてのネットワークに同一条件の配信が可能です。
このように、タグマネをしっかりと使いこなせば、さまざまな可能性を秘めています。そのためには、使いこなすためのウェブマーケティングの知識と、インターネットの仕組みと、プログラミングの知識と、分析能力と、各種ツールの理解が必要スキルになります。
かなり広範囲の知識が必要になりますが、タグマネの機能を活用すれば、次の施策の一手を打てる可能性が高くなるということを知っていれば、実際に自分が手を動かさずともアウトソースするという方法も選択できます。
さて、タグマネがとても万能なツールに見えて来ませんか? まさに、ゆるキャラの枠を飛び越え、マルチな働きをする「ふなっしー」のように、美少女タグマネちゃんはがなんと「タグッシー」に大変身!
タグマネは、ツール間を横グッシー!……(笑)
まとめになりますが、マーケターのコモディディ化が進むといわれていても、クライアントの業種やユーザー行動は、そのクライアント特有のものであり、この世に一つしかありません。施策をテンプレート化するだけでは、本当の課題解決にはなりません。
誰のために施策を提供するかを考えれば、決してインスタントでは良い成果を返すことができないことがあるのも、理解いただけると思います。あなただけの「タグッシー」を探してみてください。
ウェブマーケティングは、才能よりも経験と実務が大切です。さまざまな手法と技術を用いて、読者のみなさんの課題解決ができて、世界で一つだけの施策を紡げることを、記事を通して願っております。
ソーシャルもやってます!