ヤフー、クリテオ、リクルート住まいカンパニー担当者が語る、テクノロジー・マーケティングの課題とは
by Yahoo!
DSP/RTB、スマートデバイスやアプリ対応、増え続けるタグなど……新しいテクノロジーへの対応は、いつもウェブ担当者にとって悩みの種の1つだ。ヤフーは、マーケターがマーケティング活動にフォーカスできる環境を作り、デジタルマーケティングを加速させることに取り組んでいる。
ad:tech tokyo 2013の1日目に開催されたスポンサーワークショップ「Marketing × Technology」では、企業が取り組むテクノロジーとマーケティングの課題についてのセッションが行われた。
モデレータは、ヤフーのテクノロジーソリューションを統括するマーケティングソリューションカンパニー テクノロジーソリューション部の石井。スピーカーとして、提携サービスであるクリテオの鈴木氏と、広告主であるリクルート住まいカンパニーの成田氏を迎えて進めた。
顧客の「深度」も加味し入札できるリターゲティングとレコメンデーション
ワークショップは、クリテオ鈴木氏によるサービス紹介から行われた。
2005年創業、アドテクノロジーの会社では珍しくフランスに本社を持つクリテオは、もともとeコマースサイトのレコメンデーションシステムを提供する企業としてスタートした。その後レコメンデーションの統計解析の仕組みをアドテクに流用することでこの分野に進出し、現在では42か国、6000以上のパブリッシャー、4000以上のクライアントを持つ。
クリテオのサービスの最大の特徴が、レコメンデーションとリターゲティングを融合させたディスプレイ広告だ。
たとえば、あるeコマースサイトを訪れたユーザーが、その後、Yahoo! JAPANの広告が配信されるページを訪れたとします。そこに出る広告としてクリテオが表示される際には、我々は、ユーザーごとに内容が異なる動的なバナーを表示します。バナーに表示されるクリエイティブは、そのユーザーが以前に訪問したeコマースサイトで見た商品や、その商品と関連が深い商品などのレコメンドを組み合わせたものです。
我々の広告の特徴は、ユーザーの興味関心の「深度」に応じて広告を出し分けたり、入札価格のコントロールをしたりできるため、非常に効果が高いということです。
(鈴木氏)
クリテオの特徴としては、次のようなものがある。
サイトに訪れたユーザーを配信対象に、リターゲティングのディスプレイバナーをクリテオのネットワークで配信する。
ディスプレイ広告には、ユーザーが回遊したページの商品(リターゲティング)やそれに関連する商品(レコメンド)が表示される。
「カートページに進んだ顧客には高額入札」など、ユーザーがどの階層まで見たかによって入札価格を調整できる
さらにクリテオでは配信されるパブリッシャーの面ごとにボタンや背景などバナーのクリエイティブや、表示されるアイテムも含め常に効果を上げるために自動で最適化を続けている。
「どういう企業がクリテオのサービスに向いているのか
」という石井の質問に対して鈴木氏は、以下のポイントを挙げた。
- 「総合通販」「衣料品」のような日常的にサイトを訪れるeコマースサイト、または、「人材」「旅行」「不動産」を扱うようなサイト
- カタログデータやページ階層が整理されているサイト
一方、ページ階層ごとに異なるタグを設置したりすることによる導入負荷や、サイト訪問者を中心に広告配信するリターゲティングというサービスの性質上、広告主により向き、不向きが存在するようだ。
タグ設置の導入負荷については、タグマネジメントツールの利用が有効だ。クリテオでは、ヤフーが提供するYahoo!タグマネージャーを公式に推奨している。
クリテオを効果的に活用しているSUUMO
次に、リクルート住まいカンパニーの成田氏から、自社の紹介とクリテオの事例紹介が行われた。
月間1070万ユーザー、成田氏が「オンラインで住まいを探している人のおおよそ2人に1人がユーザー
」と語るように、住まい探しでは非常に高いブランド力を持つ「SUUMO」。成田氏は、そのミッションである「ユーザーの集客」に対してクリテオが発揮している効果について、こう語った。
特にリターゲティングとレコメンデーションに相性のいい領域の場合には、とても費用対効果の高い実績を残しています。
リスティングを集客の中心としながら、スタティックのディスプレイ広告とクリテオのようなダイナミックディスプレイも新たに集客の柱として今後も組み合わせていきたいと思っています。
(成田氏)
SUUMOには、新築分譲マンションや賃貸などさまざまなサービス領域がある。いずれの領域でも「許容CPA内
」としながらも、コンバージョン数やCPAなどの指標をクリテオと他の集客施策で比べると、領域によって大きな違いがあるのだという。
過去SUUMOでも興味・関心別のリターゲティングを「実は手運用で行っていた
」という成田氏は、クリテオのサービスについて「深度に応じた入札をスケーラブルにコントロールできるというメリットは、とても大きい
」と語った。
タグマネジメントやスマホ対応など課題は多いが……
次に成田氏が、SUUMOが現在取り組んでいるテクノロジー上の課題について語った。
リスティングはどこまで改善可能か?
集客のベースとして質・量ともに効果的な施策であるリスティング広告だが、効率化の天井が見えてくると、そこを改善するテクノロジーが登場するということの繰り返しになっている。
直近ではGoogle AdWordsのRLSA(検索広告用リマーケティング リスト)のような、検索時に広告が表示されていない「広告在庫」を活用した新機能などに期待している。
複数のDSPで自社が入札を競いあう「重複Bid」への懸念
複数のネットワークを利用しているため、1人のオーディエンスに対して複数のネットワークから自社の入札が競合しあい、結果的に自社で値をつり上げてしまう「重複Bid」の状況になっていないかということを懸念している。
こちらについては、抜本的な解決策について検討している。
増え続けるタグによるサイトレスポンスの悪化
DSP、リターゲティング、アクセス解析など、さまざまなサービスを利用しているので、そのたびにサイトに埋め込むタグが増えており、そのためにサイトの表示パフォーマンスに影響がでてきている。このため、SUUMOでは、いち早くYahoo!タグマネージャーなどのツールを導入した。
スマートフォンでの集客
スマートデバイス、特にスマホは移動中の隙間時間に閲覧されることが多いが、アプリに注力すべきかモバイルウェブに注力すべきか、また、OSやデバイスごとの予算配分など、選択肢や課題が非常に多い。
なかでもタグが増えることによるレスポンスの悪化が最も大きな課題だと語る成田氏に対して、モデレータの石井からは、ヤフーの提供するタグマネジメントシステム「Yahoo!タグマネージャー」に関して紹介が行われた。SUUMOをはじめとする2000クライアント以上の広告主が導入しているツールだ。
タグの問題については、我々の提供しているYahoo!タグマネージャーで解決できます。
単にタグの管理をするだけのツールではなく、タグの処理をブラウザ上で行わずJavaScriptの読み込み処理を別で行う「サーバーダイレクト型」という形式でもタグを配信でき、ページの読み込み処理に影響を与えないのが特徴です
(石井)
Yahoo!タグマネージャーのOEM提供元であるブライトタグ社が特許出願中の「サーバーダイレクト型」であれば、タグの読み込みはブラウザの処理とタグの処理を別で行うため、サイトのレスポンスに影響を与えない。サイト環境にもよるが、レスポンス向上によるアクセス数のアップが期待できるという。
また、タグマネージャーでのイベントトラッキングによる複雑なリターゲティングなど、高度なマーケティングも可能だ。
今後のスマートフォンやタブレットの市場環境について「アプリ単体やウェブ単体ではなく、モバイルウェブとアプリとのシナジーが重要だ
」と語った石井は、最後に、ヤフーのテクノロジーソリューションとして、次のように語り、ワークショップを締めくくった。
マーケターが解決しなければならない課題を、Yahoo!タグマネージャーをはじめとするソリューションにより解決していきたい。
それにより、本来行うべきマーケティング活動へフォーカスできる環境を作り、デジタルマーケティングを加速させることがヤフーの使命であると考えている。
(石井)
ソーシャルもやってます!