インタラクティブ広告~デジタルコンテンツ時代に響く広告とは~
by Yahoo!
「インタラクティブ広告 ~デジタルコンテンツ時代に響く広告とは~」――「広告」と「コンテンツ」に関して、サントリービジネスエキスパートの坂田氏、バスキュールの朴氏、ブルーカレントの本田氏をスピーカーに迎え、ヤフーの友澤がモデレータとして行った、ad:tech tokyo 2013の1日目の公式セッションの様子をお届けする。
冒頭、モデレーターの友澤が本セッションのテーマである広告とコンテンツに関してオーバービューを紹介し、次のように語った。
広告を考える際に「How」の要素、つまり「どの面」「誰に」「どのようなクリエイティブを」という側面ばかりが強調されるが、そのもっと前の段階で「What」(何を伝えなければならないか)や、「Why」(なぜそれを行う必要があるか)ということを前提として考えなければならない。
今日のテーマであるクリエイティブは、その「How」の要素の1つなのだが、「広告クリエイティブ」に関してポイントを整理すると、次のように分けられると友澤は言う。
- 「ブランデッドコンテンツ」 か 「ノンブランデッドコンテンツ」 か
- 「フィクション」 か 「ファクト」 か
広告のクリエイティブはブランド自身の立場でプロダクトやサービスの良さを語る「ブランデッドコンテンツ」か、第三者にそれを語らせる「ノンブランデッドコンテンツ」のいずれかに分けることができる。
また、クリエイティブではある事実をもう少し膨らませたり、こういう未来があるよというビジョンを見せたりする「フィクション」をベースにしたものと、具体的な事実である「ファクト」をベースにしたものとの2つのパターンがある。
これらの組み合わせである広告クリエイティブと、「どの面」「誰に」という要素を組み合わせて広告は生み出されていく。
そうした前提のもとで、登壇した各スピーカーが、このフレームに沿ってインタラクティブなクリエイティブについてそれぞれ紹介していく形でセッションは進んだ。
インタラクティブなクリエイションの領域はますます広がる
バスキュールの朴氏は次のように語ったうえで、具体的な事例を交えながら、ブランデッドコンテンツの最近の傾向について解説していった。
スマートフォンの普及やテクノロジーの進化に伴い、インタラクティブなクリエイションの領域はますます広がっている
(バスキュール朴氏)
ブランデッドコンテンツはフィクションからファクトベースへ
ブランデッドコンテンツは従来フィクションで作られることが多かったが、最近の傾向としては、ファクトをベースにしたブランデッドコンテンツが支持されることが多いのだという。
衛星軌道上にGalaxy S IIを打ち上げてスマートフォンから撮影した地球の写真を伝えた「SPACE BALLOON PROJECT」や、フィクションをベースにした広告で有名な「AXE」を使って本当に女性の気持ちは揺れ動くのかを検証した「AXE脳科学研究所」などは、「ファクト」をうまく組み合わせることでブランデッドコンテンツは非常に効果を上げている。
プロダクトやサービスそのものと連携してブランドを拡張させる
ブランドを絡めてインタラクティブな体験を経験させることでブランドを拡張させるような取り組みも、行われている。
年代の描かれたコカ・コーラを買うとその年に流行したヒット曲を聞くことができるミュージックプレーヤーを提供したコカ・コーラの「Share a Coke and a Song」はその一例だ。
また、東京ディズニーリゾートが行った「HAPPINESS CAM」は単なるカメラアプリではなく、実際にその場を訪れることで特殊なエフェクトが発生するという特別なブランド体験を提供している。
メディア自体をインタラクティブに活用
メディアも単純に決まった枠を提供するものとして捉えるのではなく、メディア自体をインタラクティブに活用する取り組みが行われている。
mixiで行われた「Social Banner Project」ではバナー広告スペースにユーザーのマイミクがデザインしたNIKEのシューズを登場させた結果、50万種類ものバナーが作成された。
BSジャパンで放送された「BLOODY TUBE」では血液型別のチームに分かれて出演者が競う放送に、視聴者もスマートフォンでゲームに参加できるというインタラクティブな試みも行われた。
スマートフォンの普及やテクノロジーの進化に伴い、インタラクティブなクリエイションの領域はますます広がっている。
朴氏は、インタラクティブな広告・コンテンツの可能性について次のようにまとめた。
コンテンツ作りの可能性だけではなくメディア体験自体もクリエイトできるようになった
(朴氏)
PRが生み出す「ノンブランデッドコンテンツ
PRが生み出すのはパブリシティではなく、ノンブランデッドコンテンツだ
(ブルーカレント本田氏
続いてブルーカレントの本田氏からは「戦略PR」と「ノンブランデッドコンテンツ」について語られた。本田氏によると、PRには次の特徴がある。
- PRにはそもそもインタラクティブ性がある
- PRは「ノンフィクション」かつ「第三者発信」である
- ノンブランデッドコミュニケーション(PR)はブランデッドコミュニケーション(広告)と両輪の役割
「PR(Public Relations)の語源は18世紀後半、南北戦争時に生まれた利害関係者との対話(Dialogue)の技術が語源である
」と前置きがあり、PR自体にそもそもインタラクティブな性質があるとした。
また、PRはファクト(事実)で情報を作るノンフィクションであり、ブランド自身ではなくメディア(マスメディア、ソーシャル)に語らせることに特徴がある。
「PRはブランデッドなコミュニケーションに反応しない人に向けて発信されるもの、空気作りの役割を果たすもので、ブランデッドなコミュニケーションである広告とは両輪の役割を果たすものである
」と語った本田氏は、PRの具体的ないくつかの事例を挙げた。
- おむつの広告ではなく、赤ちゃんの睡眠をテーマにした記事
- カップスープの広告ではなく、しょうがブームを特集した記事
- ウイスキーの広告ではなく、さまざまなメディアに取り上げられることでハイボールがブームとなる
「こうしたノンブランデッドなコンテンツを戦略的に仕掛けていくことが、いわゆる『戦略PR』である」のだという。
本田氏は次のようにまとめ、PRの目的についてあらためて定義した。
PRが生み出すのは単なるメディアのパブリシティではなく、インタラクティブ性を持ったノンブランデッドコンテンツだ
(本田氏)
メディアとともにインタラクティブなコンテンツを仕掛ける
生み出したいのは、新しくて驚きがあって、お客様の心に届くコンテンツ
(サントリービジネスエキスパート坂田氏)
サントリービジネスエキスパートの坂田氏からは、メディアとともにインタラクティブなコンテンツを仕掛けていく事例が語られた。
坂田氏の組織がミッションとするのは、個別のブランドのマーケティングではなく、ブランド担当とともにプロモーションしていくなかでインターネットメディアに対する戦略をサポートすることだ。
サントリー社内でウェブプランニングの考え方として共有されている、
- What to say(何を伝えるか)
- How to say(どのように伝えるか)
- Where to say(どこで伝えるか)
を紹介したうえで、「最近は前者2つがテクノロジーの進歩により重視される傾向がある
」と語った。しかし、坂田氏の考え方としては「『どこで』という場所を重視していく考え方、つまり露出するメディアと連携していく戦略を取っている
」とも語った。
その中で効果の上がった事例として紹介されたのが、Yahoo! JAPAN上で実施された「ザ・プレミアムモルツ」の「リバイタライズ」キャンペーンだ。
ブランド視点で「新しくなった、おいしくなった」ということを単にテレビと同じクリエイティブで実施するよりも、メディアと連携し「特別なメッセージ」として伝えていきたい、と坂田氏は考え、Yahoo! JAPANのトップページがディスプレイ広告のクリックにより大胆に変化し、特別なCMが流れるプロモーションを実施した。
好評に終わったキャンペーンは翌年インタラクティブ性を高めて再び実施され、好評を博した。一連のプロモーションに対する反響は営業からもあり、影響力の大きさを感じたという。
通常は、流通への商談はCMの投下量が大きく左右します。しかし、今回のネットのプロモーションは「相当商談の武器になります」と初めて言われました。
(坂田氏)
その他LINEでスタンプを手掛けたりYouTubeでブランドオリジナルのコンテンツを発信したりなど、メディアと特別な連携をするという取り組みを今後も継続していきたい、と語った。
本セッションでは会場からの質問に「インタラクティブに」答えるという取り組みも行っており、寄せられた質問に対しそれぞれの観点から示唆に富む回答がなされた。
まず「ブランデッドコンテンツのKPIはどのような指標で見ているのか」という質問に対して、は、次のような回答があった。
CTRなども見ていくが、パーコストで見ていくよりは、ブランド認知が向上したかを調査するなど、昔ながらのマーケティングを粛々とやっていく (坂田氏)
マウスオーバーをどれくらいしてもらったかなどインタラクティブレートの指標も重要 (友澤)
「死にそうなブランドはコンテンツで救えるか」という質問に対しては、次のような回答だった。
そのブランドが必要とされていた環境や時代などに立ちかえり、ノンブランデッドコンテンツでニーズの再喚起を行えるかもしれない (本田氏)
テクノロジーで何かを解決しようと考え込まない方がいい。テクノロジーはあくまで手段。誰に何をどのように伝えていくか、というところから考えないといけない (友澤)
「コンテンツ作りのポイントは」という質問に対しては、スピーカーは次のように答えた。
ブランドの根っこのベネフィットと密接なストーリーを作れるかということが重要。ユーザーが潜在的にもっているエモーションに触れていくものでないと、内輪受けになる (朴氏)
コンテンツはブランドと生活者をつなげる役割。メディアという観点だけでつながろうと思わないことだ (本田氏)
最後に友澤が本セッションを振りかえり、次のように締めくくった。
正直なところ、インタラクティブなコンテンツには、KPIや予算など考慮しなければならないことも多い。しかし、「媒体社」「クリエイター」「エージェンシー」と組んで、よりインタラクティブなコンテンツをディストリビューションする流れも、生まれつつある(友澤)
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