【レポート】Web担当者Forumミーティング 2014 Spring

Googleアナリティクスとエクセルで場当たり的Web運用をステキに改善するコツ/HARMONY

Googleアナリティクスとエクセルを利用し、サイト全体を改善する実践手法を解説
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自社のサイト運営を任されたものの、どうしても場当たり的な運用になってしまい、「サイトを隅々まで管理しきれない」「うまくCVRを上げられない」「目標を達成できない」そういった悩みを抱えているWeb担当者は多いのではないだろうか。年間500以上の企業ホームページを分析・指導するHARMONY(ハーモニー)の石井氏は、Googleアナリティクスとエクセルを利用し、サイト全体を論理的に改善していく手法について講演した。

大事なのは「現在あるページをすべて戦力化すること」

株式会社HARMONY
取締役
石井 研二氏

Web担当者Forumミーティング 2014 Springのランチセッションでは、「誰も教えてくれないWeb管理の実践」と題して、HARMONYの取締役の石井研二氏が登壇した。同社は、ホームページチェックツール「Check Up On」やLPOツール「GoalCreator」など、幅広いツールやサービスを展開し、経営分析・Web分析・データ分析・コンテンツまでバリューチェーン全体をカバーするコンサルティングを提供している。

石井氏は年間500以上の企業ホームページを分析指導する日本のアクセス解析・サイト運営の草分け的人物であり、本セッションではWeb管理の実践的なノウハウについて講演した。

まず石井氏は聴講者に「みなさん、自社のホームページが正確に何ページあるかご存じですか」と呼びかけた。把握しているつもりでも、把握できていないページが残っていることはしばしばある。たとえば、前の担当者が不要だと判断してリンクを外してしまったページがWeb上にはそのまま残っていて、Google検索で引っ掛かってくることがある。

石井氏は、リンクを消されてしまった人気コンテンツを発見し、手を入れて復活させることで人気を博した事例があると述べ、これまで企業が作り続けてきたコンテンツページという“資産”こそWebの大きなパワーになるものだと語る。すなわち、自社サイトにどんなページがあるのかを把握するところが、Web担当者のスタートだと言えるのだ。

Googleで検索すると、古いニュースリリースやメルマガが上位に出てきてしまうことがあります。ある企業では、Google検索でPDFの古いニュースリリースが上位に表示されてしまい、そこに記載されている内容が、今より機能が悪く、値段も高いことから、ユーザーに直帰されてしまうということが起きました。大切なのは、現在のページをすべて戦力化すること。すべてのページがお客様を出迎えて、一番見てほしいページに誘導することです(石井氏)

石井氏によると、現在、企業サイトを訪れる際にトップページから入ってくるユーザーは25%程度だという。つまり、トップページのニュースを更新しても25%しか見られない、ホームページに入ってくるお客様にニュースを見せたいなら、アクセス数の上位50位以内のコンテンツすべてにニュースを表示するような仕組みを作る。そうすれば、コンテンツ不足を嘆くこともなくなるというわけだ。

資産活用することができますか?/トップページ/ニュースリリース/製品情報/メールマガジン/過去のリリース一覧/資産/今見せたい情報/メールマガジンバックナンバー/資産
リンク切れページや過去のニュースリリースなどの“資産”から今見せたい情報へ、訪問者を誘導する

“簡易サイト構成表”で、すべてのページの成長や減衰を把握する

それでは、自社の大量のページをどうやって管理していけばいいのか、石井氏はGoogleアナリティクスとエクセルを使い、実践的なWeb管理を行うための“簡易サイト構成表”作成法を説明した。手順は下記の通りだ。

簡易サイト構成表の作成手順

  1. Googleアナリティクスを開く
  2. 「すべてのページ」の「セカンダリディメンション」から「ページタイトル」を選ぶ
  3. ページタイトルつきの表になるので表示行数で「5000」を選ぶ。
  4. エクセルにエクスポートする
  5. これをURL順に並べ替えると、「簡易サイト構成表」が完成
簡易サイト構成表の作成手順
まず、Googleアナリティクスの左メニューから、「行動」→「サイトコンテンツ」→「すべてのページ」の順に選択し、画面中央のセカンダリディメンションから「ページタイトル」を選んで並び変える。

この表を同様に毎月エクスポートし、URL順に並べ替え、エクセルのVLOOKUP関数でURLと訪問数を突き合わせて、データを新しく加えて更新していく。月の日数が31日だった場合は、30日に換算するなどの調整も行う。

それを継続的に行うことで、「Zチャート」(数値の変化や傾向を一目で確認できるグラフ)を作成できるのだ。

Zチャートの作成手順

  1. Googleアナリティクスで現在から2年前までのデータを呼び出す
  2. 2年間のグラフができるので、単位を「日」から「月」に変更する
  3. データをエクスポートする
  4. エクセルで開き、毎月の数字をどんどん足し算し、移動累計をとってグラフ化する。
  5. 毎月のデータがZチャートで蓄積できるため、季節感を排除した本当の流入数の増減を把握できる
  6. その後も毎月データを足していく
毎月のデータがZチャートで蓄積できる/上線が右下がりでは本当に困る/季節性を排除した本当の増減を把握
作成したZチャートにより、流入量の変化が一目で把握できる
B列は、毎月のセッション数を入れる
C列は、12か月前をゼロとして各月のセッション数を加えていく。C21セルなら“=C20:B21”
D列は、直近12か月の累計セッション数を入れる。D21列なら“=SUM(B9:B20)”

これにより、全ページの成長性あるいは減衰率を追いかけていくことができるのだ。また、このZチャートを活用する際に一番大事なのは“活動記録”だ。Googleアナリティクスで管理していても、半年前に何をやっていたのか、覚えていないケースがほとんどだ。それを防ぐため、あらかじめエクセルで記録表を作り、作業を行った「URL」、ページ変更やページ追加、広告出稿などの「作業内容」などをすべて記録しておく。もし人事異動などがあったときは、このファイルを後任に渡すだけで、会社がノウハウを蓄積していくことができるというわけだ。

活動記録は最も重要なファイル/URLはブラウザ確認時にアドレス欄からコピー/何年分か作っておくとあとがらくらく/エクセルのデータ>入力規則で「リスト」を選ぶとプルダウン入力が可能に
活動記録をつけておくことで、いつごろに何を行い、どのように流入が伸びたかをすぐ調べられる

また石井氏は、Webサイトを改善する手助けをするため、同社が開発したチェックツール「Check Up On」も紹介した。このツールを使用して、ある大手企業サイトの1,800ページのコンテンツをチェックしたところ、86万件もの問題点が発見された事例もあるという。たとえば、HTMLの基本的なルールが守られていない、最新情報にリンクが貼られていないなど、その内容は多様だが、これらを修正することでより良質なWebサイトに近づけることができる。

来てほしい人がサイトに来ていない

続いて石井氏の話は集客管理に移る。たとえば、総訪問者数10万人のなかで100人の顧客が資料請求した場合、CVRは0.1%となる。この際に、「CVRが低いからフォームを改善すべきだ」という声が上がるのはよくあることだ。しかし石井氏は、訪問者の目的はさまざまであるため、顧客が資料請求にたどりつく過程にこそ手を入れるべきだと強調する。

そもそも10万人すべてが資料請求を目的にしてサイトを訪れたわけではなく、いろいろな目的をもって訪問しているはず。資料請求ページから確認画面、送信完了までのフォームプロセスにおけるCVRが5~10%あれば、それ以上はフォームの責任ではない(石井氏)

実測しなければ改善は始まらない/総訪問者数 100,000人/1%/資料請求 1,000人/20%/確認画面 200人/50%/送信完了 100人/10%/悪いところに手を入れなければ/フォームプロセスのCVRが5~10%あればそれはフォームの責任ではない
CVRが低いのはフォームのせいとは限らない

ゴールが少ないのは集客の問題も大きい。“来てほしい人”が来ていない状態で適当なSEOや広告を打ち、その結果“来てほしくない人”ばかりが増えているというパターンが非常に多いのだ。

CVRはだいたい数%で固定されているものだと思い込んでいませんか? 世の中には、CVRがサイト全体で38%という化け物のようなサイトが存在します。総訪問者数、つまり分母を増やすのでは現実的ではない。あらかじめゴールしやすい人を集めれば、フォームを直さなくてもCVRの倍増は可能です(石井氏)

来てほしい人を増やすために意識すべきは“入り口のキーワード”だ。どういった検索キーワードでユーザーが流入してきているのか、直帰率の低い有効なキーワードはどれかなどを確認し、それらを増強あるいは改善するという作業が重要である。特に注目すべきは直帰率で、このキーワードの時には直帰率が高いなどということがあれば、急ぎ改善すべきだと石井氏は語る。

Googleアナリティクスで有効なキーワードを調べる方法

  1. 「オーガニック検索」でセカンダリディメンションに「ランディングページ」を指定してエクスポートする
  2. “直帰率”順に並べ替えて色付けする
  3. ページ順に並べ替える
  4. その個々のページに流入するのに有効なキーワードを探す
Googleアナリティクスで有効なキーワードを調べる方法
まず、Googleアナリティクスの左メニューから、「集客」→「キーワード」→「オーガニック検索」の順に選択し、画面中央のセカンダリディメンションから「ランディングページ」を選んで並び変える。

また、流入上位のページに、どのページから流入しているかを調べることも大切だ。ページAから流入した場合には直帰率が高いが、ページBから流入した場合には直帰率が低いという場合には、ページAをまっさきに改善し、ページBにこそSEOや広告を投入して伸ばすべきである。そういった観点で、「直帰率の高い入口」「新規獲得率の高い入口」「CVR率の高い入口」などを個々に確認し打つ手を考えるのだ。上位50ページの改善で、かなりの効果が見込めるという。

目標の洗い出しと、“打つ手”のプランニングを行う

石井氏は最後に「目標管理」の重要性について語った。「まず大事なのは、目標をすべて洗い出すこと」(石井氏)だという。

目標を全部洗い出してみよう/最初は順不同でOK/5つずつ切り良く並べ替え
CVRが低いのはフォームのせいとは限らない

まず、ホームページにおいて、達成できたら嬉しいゴールを、100でも200でも、それ以上でも結構ですからすべて完全にリストアップしてください。最初は順不同で結構です。そして、それがどの部署に関わる内容なのか、どの程度重要な内容なのかを社内であちこちに聞いて回り、最終的にGoogleアナリティクスで管理したい20項目をリストアップします。そのままエクセルで“目標管理表”を作り、進捗状況を管理していくのです。Web担当者に協力的な部署の成果が優先的に出るようにがんばって、その成果を横展開していくというのも実践的でしょう(石井氏)

複数回の施策を打って目標達成を目指す場合は、毎回の目標値をリストアップすることも重要だ。たとえば、最終目標が「あるページの訪問数をプラス1000すること」だとすると、「打つ手1ではプラス600」「打つ手2ではプラス500」「打つ手3ではプラス500」というように目標値を明確に定めておく。この際に、打つ手のいずれかが空振りだったり、期待値の60%しか達成できなかったとしても、全体としての目標が達成できるように多めの値を設定しておくべきだ。もちろん、打つ手が多いほどリスクは分散される。

こうして目標達成までの道のりを複数回の打つ手に分けて計画し、それぞれの作業時間と、効果が出るまでの時間、着手できるタイミングなどを組み合わせ、目標達成までの時間管理表を作成する。石井氏は、目標達成までを四段階に分けて管理する「四分点管理」を勧める。最初の4分の1の期間ではほとんど効果は出てこず、最後の4分の1で一気に効果が出てくる。この表に予実管理実績を重ね合わせるのがお勧めだ。

目標達成の四分点管理/作業時間/達成時間/目標達成度の4分点/打ち手1/打ち手2/打ち手3/打ち手4/打ち手5/打ち手6/打ち手7/全体の作業時間/全体の達成時間/作業時間/達成時間/25%/50%/75%/100%/時間の4分点
目標達成の四分点管理

最後に石井氏は、「従来の感覚的・場当たり的なサイト運営ではなく、全体を把握して戦力化し、集客からゴールまでの道筋を論理的に構成する本当のWeb管理・運営を実現しましょう」と語るとともに、サイト改善・売上向上に有効なツールとして、同社のASPツール「HARMONY TOOLS」を紹介し、講演を締めくくった。

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